村の過疎化を止めろ 2話 |
「そこの女子に取り憑いてる悪霊、今の内なら見逃してあげるから消えなさい」
ショーを始めようとした途端に現れた薙刀を持った女子高生。すごい形相でそう
言い放つから圧倒されて誰のことを言ってるのか気づかなかったが。
視線の先にあるのが私だから私へ向けてる言葉に他ならない。
ショーの演出だと子供や御年寄りは思っていたことだろうけど、私達にとっては
計算外の出来事である。だが・・・。まずは成立させることだ・・・!
私は足摺りをして、片足を後ろにずらす。
「よくわかったな、だが私は悪霊ではなく神だ」
声色を変えていかにも取り憑かれてる風を装って演技をすると頭の中で鬼角が
慌てて私に声をかける。
『おい、お前何言っとるんじゃ』
私は思考で鬼角に言葉を返す。まずは人目を惹き付けることが私の役目だと
思ってる。だから今回は悪役にでもなってほしいと。それに対して黙る鬼角を見て
私は了承したものだと思い込んだ。
「だが、お前が悪だと感じるのなら私を倒してでもこの娘を助けてみるのだな」
「よし、わかった」
よし、相手をその気にさせたぞ。目からやる気満々な雰囲気を感じ取れる。
だが頭の中で再び鬼角が私に訴えてきた。
なによ、しつこいな〜って言うとさっきとは声色が異なる様子だった。
『あいつは普通の女子高生じゃなさそうだぞ・・・。特別な力を宿してるようじゃ』
まぁ、それは私も薄々感じていたけど。まさか神様の力を借りても負けるわけじゃ
ないよね。私の言葉に鬼角は考え込んでいるようだった、その間に女の子は私の前まで
くるといきなり薙刀を振るってきたではないか。
私は後ろに飛び退いてそれを寸前でかわす。かわしたはずだが、体にビリッと
微電流みたいなのが流れた感覚がした。私と相手とでは相性が悪い、そんな予感がした。
そして手元から相手へと視線を戻すと思いの外、大きく間合いができていた。
必死に回避したとき、鬼角の能力で身体機能が向上しているのだろう。
しかし、ちょっと避けただけで体の節々が痛く感じられた。
こりゃ鬼角の言う通り人外な力を使おうものなら体が壊れてしまいそうな勢いだ。
かといって、相手も特殊な能力の持ち主だから手段を選べるほどの状況になかった。
「覚悟!」
「うおおおおおっ!」
相手の子も私の不利さを悟ってか薙刀を前に出して突進するようにぶつかってくる。
それを私は腕をクロスさせて相手の突進を受けたが、数秒の後にあっさりと
吹き飛ばされる。
近くにあった木に背中を強打して一瞬息ができなくなっていた。
そんな私に薙刀の先端を突きつけて、私の中から悪霊を出そうと何かを呟き始めるのを
私は大きい声を上げて阻止をした。
「ごめんなさい!ごめんなさい!私の負けです〜!」
「!?」
一瞬何事かと詠唱していた言葉を中断して私を見ていた目が丸く見開いていた。
それをチャンスとばかりに相手の子を全力で蹴って跳ね除ける。
その後に私はジャンプで木の太い枝に着地すると、この台詞を吐き捨てるように言った。
「な、なかなかやるようだな。今日の所はここで勘弁してやるわ!」
そこから風を切るようにして跳んで走って、神社へ逃げ帰ったのだった。
その直前に見えた相手の子がポカーンとした表情で私を見ていたのが
妙に印象に残っていた。
「いったあああああああい」
『だから無理すんじゃないって言ったじゃろが』
神社兼実家に戻った私は鬼角に手当てをしてもらった、打撲がすごくて非常に痛い。
だけど鬼角が言うには骨などは折れていないようでよかった。
『どうしてあの場で除霊されなかったんだ?』
神様だからそういうので消えるわけではないらしいけど、私は悪霊扱いされるのは
あまりに忍びなかったから、つい対決に挑んでしまったのだった。
「だって、唯一の家族だし」
『そうか・・・』
「あ、でも盛り上がったよね!? 一歩前進した感じでいいじゃん」
『懲りないな、お前も』
「えへへ」
『だけどなぁ・・・』
「なに? 何か気になることでも?」
言いにくそうな反応をする鬼角に私は次の言葉を促すと。
『こういうのは外に情報とか何かの形で発信しないと意味なくないか?』
「あ・・・」
今気づいたけど、落ち込むのは私らしくないから無理にでも明るくして
その場をやり過ごすのだった。
でも、相手になってくれた子どこかで見たことあるような気がするんだよなぁって
思いながら寝るまでの間に全くわからなかったのでそのまま寝ることにした。
そして翌日に思い出すことになるのだった。
「おかえり〜。どうだった?」
入り口で出迎えてくれたパートナーが手をさし伸ばしてくれるのを私は進んで
手を取って中へと入る。学校からやや遠いアパートに二人暮らし。
比較的新しいのか、あんまりボロい部分は見当たらなかったから選んだ理由でもあった。
「何か疲れてるみたいだね」
「あぁ、うん・・・何か変なのと当たってね」
精神的に疲れた私はリビングまで歩いて、コタツの傍に膝をつくとパートナーが
用意していたお茶を啜った。
「お疲れ様、雀」
「ありがとう、芽衣」
「今日は見世物にされた気分だったわー」
「えぇ、どうしたの。詳しく聞かせて」
「うん・・・あのね」
普通の人間だけど、どこか普通とは違っている私と芽衣は出会ってから芽衣の体の
弱さを知ってここへ向かったこともあるが、妖気を感じたこともあり、この地域で
暫く暮らそうとしていたのだが、どうやら的外れだったようだ。
「というわけで、ここに居ても仕方ないと思うの」
せっかくだからもっと綺麗な場所で養生させてあげたいと思ったのだが、
私の話で納得する所か彼女の焦点が合わない瞳が輝いて見えるように感じた。
「なにそれ面白い。そんな面白そうなことがあったのにどうして出ようとするの?」
「あ、いや。だからここに居ても修行にもならないし、芽衣にとっては不便だから」
「いやー」
子供が地団駄踏んで訴えるような言い方で拒否られてしまった。
私はあることがきっかけで彼女に強く出られないためにこうやって下手に下手に
するしかないのである。
「ねぇ、ワガママ言わないで・・・」
「雀ちゃんはどうか知らないけど私は別にここの場所嫌じゃないよ?」
どうやら芽衣は私がいない間に近所の人たちと打ち溶け合って話も盛り上がっていた
らしい。そのことを聞いたときは改めて彼女のコミュニケーション力はすごいなと
思い知らされた。
「だから、一度だけでもいいから。私にも体験させて?」
「しょうがないなぁ、無理はしないでよね」
妖気を感じたから妖怪か悪霊の類でもいるのかと思ったけど戦った相手は普通の
女子に取り憑いた感じがしたんだけど、悪い気配を感じなかったのよね・・・。
と、私が悩むように唸ってると芽衣が突如歩きだしたから私もついていくことにした。
大変だけど、この時間はそんな悪い気がしなく。ずっとこのままでもいいと思えた。
ただ、この辺の地域はお店が極端に少なくて色んな面で不便なのは改善したいけれどね。
私は次の日体が痛いのを堪えて学校に到着して教室へ向かうと、教室内で
転校生と顔を合わせて挨拶をした瞬間。鼓膜が切れそうなほどの大きな声で
転校生と私が同時に叫んでいた。
「あ、あんた・・・昨日の」
「それはこっちの台詞」
私達のやりとりを見て、目を細くして微笑んでいるもう一人の転校生の幽霧さんが
ある言葉を口にしたことで昨日の出来事が確定するのであった。
「あぁ、みきさんが昨日雀ちゃんが言った相手なの?」
「え・・・?」
やはり見間違いでもなんでもなく、相手が今目の前にいるふてぶてしい子だった。
そして相棒を思われる隣にいる彼女も私を見てニコニコ笑顔を浮かべている。
「どうして私ってわかるのさ」
「だって全然隠してなかったじゃない」
ふてぶてしい社さんがこれまた物凄い憎たらしい言い回しで私に強く言い放つ。
だけど私は反論できる言葉が見当たらないで黙ってしまう。それは全てを認めたことに
なるのだが。
「変身するなら全体的にしなくちゃね。衣装だけ変わっても・・・」
小ばかにするように言う途中で急に途切れるように言葉を詰まらせる。
そして額に手を当てて疑問に思ったことを私に投げかけた。
「ってことはあの悪霊とは故意で手を組んでるってことよね・・・。場合によっては
貴女に危害を加えるかもしれないわよ」
「ちょっと、うちの神様を悪霊扱いしないでよ!」
「神様?」
流石に家族を悪霊呼ばわりされては幾ら海より心が広い私も怒るだろう。
私が怒ったことより、私の口から発せられた言葉に二人は興味津々とばかりに
聞いてきた。
「あっ・・・」
長くなりそうだと感じた社さんはひとまず話しを打ち切って残りの授業に集中する
ように私を促した。
これまで私の実家の話に興味がある子はそこそこいたけど信じてくれる子は
誰一人いなかったから説明するのが正直だるかったのだ。
でも、もし信じてくれて。私の気持ちに乗ってくれたのならば、これほど頼もしい
二人はいないと思えた。その希望に齧りつくように私は落ち込む気持ちを奮い立たせた。
勉強は嫌いだったけど、良い方向へ行くことを期待して集中力を断たせずに
私でもすごいと思うくらい勉強が進んだと思った。
そうしている内にあっという間に放課後になり、だらだらと残っている理由もなく
私は二人を連れて神社へ向かうことにした。
お世辞にも学校から近いとはいえず、1時間近くも徒歩で道を歩き、山を歩き
階段を昇り続ける。さすがに二人の表情も疲れの色が見えてきた。
「だいじょうぶ?」
「あんた、ここを毎日通ってるの?」
「うん」
「どおりで足腰が丈夫なはずだわ・・・」
体育でずっと走り続けても笑顔を崩さなかった私のことを言っているのだろうか。
頭を動かすのは苦手だけど、体を動かすのは好きな方だから少し嬉しいかも。
なんとか神社にたどり着くと息を整えて社さんが真剣な面持ちに変わり
私の案内の後に苦笑しながら視界に捉えた神様に向かって吐き捨てるように言った。
「随分とぐーたらな神様っぽいわね」
それは私も思うことだった。みんなの視界に入っている半透明のうちの神様は
朝からずっと瓢箪に入っている酒を飲み続ける。どれだけ入ってるのかどういう仕組み
なのかわからないが、常にあそこの中には酒が入っているみたいなのだ。
『ん、ワシのことか』
横になっていた神様は起き上がって私達の方へ向くが、やや目が虚ろだから
意識がハッキリしてるかも不明である。
『お前かぁ、前回ワシたちの前に現れたのは』
「へー、いくら薄まった神でも相手の器を測れる力はあるのね」
『信仰を失い、鬼の力とはいえ。神は神じゃ。舐めるなよ、小娘』
睨みあう鬼角と社さん。でもどこかお互い楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
私はどうすればいいのかアタフタしてると、隣で幽霧さんが微笑ましそうに見つめている
からほっといていいのかもしれないという結論についた。
それから長い時間はかからずに本題に入る私達。神様の居る部屋で話し合うことに。
神棚のある中心の壁際の床に鬼角が座り、中心の畳には社さんと幽霧さんが私と
向かい合う形になった。
私がどうしてああいう形であの場にいたのか。まずはこの過疎化した村の話を
することにして、それから私の考えを伝えるとまずは社さんが頭を抱える。
「何も考えなしでああいう行動に出たの・・・」
「それじゃ何をアピールしてるかわからんなぁ」
その隣で嬉しそうに呟く幽霧さんは指を立てて提案した。
「私、けっこうパソコンに詳しいから色々手伝ってあげてもいいよ」
「ちょっと、芽衣・・・!」
「目見えないのに出来るの?」
出来るとなったら当然食いついてしまう私。たまに無意識で失言をしてしまうが
個人的には悪気はないのだけど相手を傷つけてしまうようだ。しかし、今回は。
「うん、出来るよ」
と、言い切る幽霧さん。止めにかかる社さんの言葉を振り払うようにして事を
進めようとするので、途中で観念したかのように説明を聞く側に戻る。
専門用語なのか、私が無知なのか。知らない言葉を羅列していく彼女。
私の頭はパンク寸前のところで言葉が止まる。
「私の助けは貴女に必要ですか?」
「う、うん!お願い!」
「ちょっと芽衣・・・」
「その代わりにお願いがあるのだけど」
「え、なに?」
その要望は私の想像を遥か上にいくものであった。
「山神さんと一戦交えたいわ〜」
「え・・・無理でしょ・・・目見えないんだから」
「また出たよ・・・この子の好戦癖」
悩みの種のように再び頭を抱えながら、やっぱりという雰囲気を込めた反応を見せる
社さん。再び視線を幽霧さんに戻すとさっきの穏やかな雰囲気から不敵な視線を向ける。
「この好条件を使って一度でいい、私と戦ってくれますか」
「うっ・・・」
彼女の背後からゆらめいた何かが見えてきた。それは悪い空気を纏った何か。
でも霊ではない、まるで神様の一人かのように見えた。あれは・・・。
『ほう、ここに貧乏神がいるとは。久しぶりじゃのう』
そこでずっと見守っていた鬼角は嬉しそうに呟く、盲目で見えないはずの
彼女の瞳がゆっくりと開き、黄金色の瞳が辺りにプレッシャーを与えた。
『すみません〜。私の意志じゃないんです。すみません〜』
後ろから現れた貧乏神はえらく弱腰でいて、今の幽霧さんとは真逆の印象。
今の彼女が本来の性格なのだろうと私は察した。
「小さい頃からやりたいことが何もできなくて、この子のおかげで私は何でも
できるようになった。結果の代償は小さくないけれど私は本望よ」
誰にとも言うことなく自身に言い聞かせるようにして悦にいっている表情だ。
でも何かに縛られる生活を送っているのは私だけじゃないことに仲間意識を持つ
ことはできた。
彼女が協力してくれるのなら、私もそれ相応に応じなければいけないことも。
「わかった、全力でやりあおう!」
「なら、私もできることをやらせてもらうわ」
「やれやれ・・・二人共・・・。しょうがないわね」
社さんも観念して3人の気持ちは一つになった。鬼角も途中から酒を飲むのを
止めて私達の様子を微笑ましく見つめていた。
『人間がここまでやる気なら、神である我らが拒む必要はないな』
『ですね〜』
貧乏神もおろおろしながらもやることを嫌がることはなかった。取り憑いても
主導権は幽霧さんにあるようだった。
「では、趣旨から考えましょう〜」
決まってからはいつものように穏やかな幽霧さんに戻り、頭が一番回る彼女の
提案から始まり、これからどうなっていくのかが楽しみで仕方ない私なのだった。
続
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思いつきの話2話目。個人的に村おこしするために必要な知識は一切ないので矛盾だらけですが、見てもらえれば嬉しいです。多分面白くないですw | ||
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