真・恋姫無双 幼き命を護る者 第4話 |
第4話 事情聴取
「どういうつもりだ?」
大将の所へ案内しろという俺の提案に
賊達は疑問の声をあげる。
「本当ならお前達を袁術の所に連れて行くべきかもしれない。
そしたら多少は報奨金か何か貰えるだろう。」
「…………。」
そうなっていた場合を想像したのか賊達は息をのむ。
「だがお前達の話を聞いて袁術の所に乗り込む前に
情報をもっと集めておくべきと思ったんだ。」
うかつに近付いたら不審者として処断されかねない。
「まぁ、疑問に思う事はあるかもしれないけが、
死にたくなければ案内して欲しい…。」
そう言って思いっきり脅す。
「う………。」
何人かは俺に気圧されたのか震えている。
「わかった、案内するよ。」
覚悟を決めたのかリーダーが前に進み出る。
「よし、じゃあ案内お願いするよ。」
賊達は俺が全員の体を縄で繋ぐと、リーダーを先頭に歩きだした。
俺は先頭でリーダーと2人で歩く。
「ん?」
出発しようと街の入口へ差し掛かったとき、地面に妙な物が落ちていた。
「これは俺のバッグ?」
それは確かに俺が転生前の世界で使っていた肩掛けカバンだった。
中を確認すると文房具を中心にきっちり揃っていた。
そして手紙らしき封筒が1枚入っていた。
『あった方が便利かな?と思い追加で送っておきました! 神より』
疑問は色々あるがあえてツッコまない事にした…。
せっかくの贈り物なのでありがたく受け取っておく事にした。
中身は後で確認するとして、今は目の前の事態を片付けよう。
「ところで今更だがお前の名前を聞くのを忘れていたな…。」
気を取り直して出発する前にリーダーの男の名前を聞く事にした。
戦闘中の檄の飛ばし方や、堂々とした振る舞いを見る限り唯の賊とは思えない。
「俺の名前か?誰がつけたかは忘れたが、俺の名は程遠志だ。」
俺にとっては予想外な名前が出てきた。
「じゃあ本当に『黄巾党』っていうのは知らないんだな?」
案内してもらう道中俺は程遠志に何度も確認する。
ちなみに賊達は手を攻撃して倒したので徒歩での移動に支障はない。
程遠志という名は黄巾党の武将として有名だが、彼はそんなものは知らないという。
(黄巾党が動き出す前だからか?それとも黄巾の乱自体が発生しないのか?)
いずれにせよ今後の時代の流れに最大限注意を払う必要がある。
俺の知っている歴史を過信し過ぎると痛い目を見るかもしれない…。
「さぁ、着いたぞ。ここが俺達の根城だ。」
1時間ほど歩いて着いたのは山の中腹にある洞窟だった。
入口には見張りが数人いるのが見える。
「ここまで来たら正面から堂々行くか!」
俺は賊達を引き連れ洞窟の入口へ歩き出した。
「止まれ!貴様何者だ!」
案の定見張り達が俺を取り囲み武器を向けてくる
「まぁ待ってくれ。戦いに来た訳では無いさ。俺は遠方からの旅の途中なのだが
あんた達の仲間が近くの集落を襲っている所に遭遇した。」
「!」
見張りは驚愕しているようだ。やはり今回の一件には何か事情があるようだ…。
そして俺は胸に抱えた子どもを見せる。
「集落の人間はこの子ども以外は全員死んだ。本来なら即座に処断するべきだが
何か事情があると感じ一度ここに連れてきた。あんた達の大将と話がしたい…。」
事の重大さを理解したのか見張り達は黙って俺達を中へ案内した。
洞窟を進みながら他の仲間の様子を観察する。
殆どは20代ぐらいの若い男達が中心のようだ。
俺の事を訝しげに見る奴が殆どだが、危害を加えてくる様子は無い。
もう1つ気になる事があった。
(随分綺麗に清掃されているな…。)
洞窟の中である以上ほこりっぽさはあるが、ごみは殆ど落ちていなかった。
そのまま洞窟をしばらく進むと大きく開けた場所に出た。
その部屋の中央に少し立派な椅子があり一人の男が座っていた。
「あんたか、ウチの奴らをとっちめてくれたのは…。」
白髪混じりの40代ぐらいに見えるその男は、比較的冷静な声で俺に切り出した。
「俺の名は桐山達也、遠方からの旅の途中で今回の件に出くわした。」
「俺は馬元義だ。大体の事は部下から聞いたが、あんたには迷惑をかけたな…。」
そう言って男は座りながらであるが頭を下げた。
馬元義、出自や経歴は忘れたが確か黄巾党の一員だった気がする…。
黄巾党の人間に会う事が多いようだ。
「単刀直入に聞くが今回の件あんたの指示なのか?」
「なぜ、そのような事を聞く…。」
「ただの賊にしてはあんた達は随分統率力が取れているように感じた。」
言葉こそ荒っぽいが入口の見張りや、この部屋にいる奴らはしっかり組織化されていた。
この馬元義という男も大将として中々の素質があるように見える。
何よりこの綺麗に清掃された洞窟を見て、彼らがあんな事をするとは思えなかった。
「どうなんだ?」
俺が今一度問い詰めると馬元義は「はぁ…。」と深いため息をついた。
「信じてはくれんと思うが一切指示していない。俺達は今まで1度も殺しはしていない…。」
「人殺しをしていない?賊として活動してきたんだろ?」
「確かに賊として今まで約半年、月に2〜3回は略奪をしてきた。
だが俺達はなるべく抵抗されないように、大勢で脅して物資を奪って来た。
多少傷つける事はあったが1度も殺しはしていないんだ。」
「じゃあなぜ今回のような事が起きたんだ?」
「元々俺達は人口100人くらいの村の人間だった。農民として暮らしていたが
ここ数年の飢饉や不作、疫病とかの影響ですっかり食べ物が減ってしまった。
そこに追い打ちをかけたのが袁術の圧政だ!このままでは村が全滅してしまう。
そう思った俺達は賊になった。そして奪った物資で故郷の奴らを食わせているんだ。」
そこまで話すと馬元義は、俺の後ろで縛られている程遠志達に目を向けた。
「そいつらは最近俺達の仲間になった。違う村の出身だが境遇は似ていた。
だから仲間として歓迎したんだが、もっと目を光らせておくべきだった。
俺達を警戒してか、ここらを通る商人もすっかり減ってな…。俺は内心焦っていた。
そいつらの行動も俺の心情を見抜いたからかもしれん。」
「………。」
程遠志達は馬元義の話を肯定も否定もせず黙って聞いていた。
どうやら今回の件は程遠志達の暴走によるものらしい。
「なるほど、大体の事情はわかった…。」
先にこっちに来て正解だったと俺が安心していると、
一人の若者が血相を変えて駆け込んできた。
「馬元義様大変です!」
「どうした。」
「袁術の軍がこちらに向かって来ています!」
どうもこんにちはkenです。
新年度が始まって1週間皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回は賊軍の本拠地に乗り込みました。
事情を理解した主人公がどのような行動に出るのか。
次回をお待ちください!
説明 | ||
恋姫無双のオリジナル主人公&転生モノです。頑張って月2回のペースを維持したいと思います。原作キャラは次回から登場する予定なのでもう少しお待ちください…。駄文だとは思いますが、誤字脱字・文脈のアドバイス・展開の要望などをぜひどうぞ!誹謗中傷は勘弁して下さい…。 |
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