刀と 〜4 |
「まあとりあえず、町に向かうぞ。」
そう一方的に動かない刀に言って、山を降りだす。
返事がない、ただの刀のようだ。
先ほどまでのやり取りは何だったのだろうかと思いつつ、もう一度刀を抜きたいという思いと、もう二度と抜きたくないという思いが交錯する。
確かめたい、確かめたくはない。
二時間ほど歩きながら考えていると、町に着いた。
小さな町で、一人の長がすべてを管理している。
一応、小さくても一通りの店はそろっている。
うちの師匠の家までたびたび来て、猪退治やら熊退治やらをたびたび依頼する。
小さい町なので最近はやりの山賊は、相手にしないので安全だ。
「ふぉっふぉっふぉ、それじゃ、師匠さんはお前にその刀を…ふぉっふぉふべっ」
「ふぉっふぉっふぉじゃねえよ。笑い事じゃないんだよ。どうすんだこれ。お前なら何か知ってるだろ。つーか、お前が頼んだんじゃねえのか?このジジイ?」
俺は長の唇を引っ張りながら、詰め寄った。
このジジイは師匠には熊退治とかを頼むのに、わざわざ俺に便所掃除やら、庭掃除やらを頼む。
師匠が行って来いというから、断るに断れない。
一度町中の蚊を退治しろ、と言われたことがある。
「わしは知らん。昔、師匠さんが言っとった刀はそれなのかと思っただけじゃよ。それとジジイって呼ぶな。お兄さんと呼べ。」
長は俺の腰のあたりを指差す。すなわち刀だ。
「ジジイ、師匠からこの刀のことなんて聞いた?」
俺は聞く。
「いや、面白い刀を持ってると言っとたな。それとジジイって呼ぶな。お兄さんと呼べ。」
「ジジイ、それで?」
「生きている刀だと。冗談だと思っていたが。それとジジイって呼ぶな。お兄さんと呼べ。」
「ジジイ、それで?」
「…それでおしまいじゃ。」
「それだけ?」
俺はがっくりする。
情報はそれだけかよ。
この先どうしろって言うんだ?
悩んでいると長が珍しく神妙な顔をして言う。
「…一つ相談じゃが、もう一度ここでその刀を抜いてみんか?」
「はぁ?…はぁ…」
なぜか断りはしなかった。
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http://www.tinami.com/view/54793の続きです。 途中からでも読めると思います。 読みやすいように書いてます。 読んで下さるとうれしいです。 |
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