真恋姫†夢想 弓史に一生 第七章 第十一話 |
〜一刀side〜
「関羽将軍より伝令!! 前方五里先に敵の城を発見、戦闘準備に入れとのこと。」
「分かった。各兵長に伝令!! 接敵が近い、気を引き締めるように!!」
「はっ!!!」
先頭を行く愛紗の隊から伝令が届き、俺の隊の兵士達は皆、戦を控えて顔を強張らせている。
このままでは思うような力が出せないだろうな……。こんな時、聖なら……。
「なぁ、皆。俺たちの太守って凄くないか?」
「………?? 本郷さん、一体どうしたって言うんだ?」
「良いから。どうなんだ? 聖を凄いと思わないか?」
「……そ……そりゃあ、凄いっすよね…。」
「そうだよな。武力もさることながら、頭も良いし。」
「なんと言っても優しいと思います。自分この前、木から降りれなくなった猫を助けている徳種様を見かけました。」
「へぇ〜……そんなこともしてるのか…。やっぱり聖って凄いよな!!」
「「「凄いです!!!!」」」
「なら、そんな聖に仕えれている俺たちって奇跡なんじゃないか?」
「「「奇跡だと思います!!」」」
「なら、今から戦う黄巾賊。数は向こうのほうが多いが、敵は烏合の衆だ……そんな奴らに勝つのは奇跡より難しいことか?」
「「「難しくありません!!!」」」
「ならば何故そんなに緊張している? 奇跡を起こした我等に、それ以上に難しいことは無いのだ!!! さぁ、行こう!!!! 我等の勝利の為に!!!!!!!!!!!!」
「「「うぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
兵士たちの士気は高い。
これなら黄巾賊相手にやられることは無いだろう……。
「一刀さん、ご苦労様です。」
「ありがとう麗紗ちゃん。」
「ふふふっ……。」
「どうしたの??」
「いえっ……何だか、さっきの鼓舞はお兄ちゃんみたいだなって思えて…。」
「俺なんてまだまだだよ……。きっと聖ならもっと上手いことやるさ。」
「しかし、部隊の今の雰囲気を作り出したのは間違いなく一刀さんです。もう少し自分の力を認めてはいかがですか?」
「…………認めれるだけの力があれば、俺も助けに行ったよ…。」
「そ……それは………その………あうぁぅ……。」
失言をしたと、麗紗ちゃんは罰の悪い顔をしながらあたふたとする。
その姿を見てると、俺の戦前の緊張もほぐれる。
戦場には慣れたとは言え、未だに緊張はするものだ。
敵であれ味方であれ、この戦で多くの命が俺の指示で消えるのだから……緊張しないほうがおかしい。
しかし、此度の戦はそれだけではない……。
彼女たちの…………天和たちの命がかかっているのだ……。
直接俺の手で彼女たちを救うことは出来ない……。
それは聖が自身の命をかけてすると言った。
ならば俺は俺のやれることをやるまで…………。
眼前に見える黄巾賊の注意を此方に惹き付け、聖が行動し易いようにすること…。
「………ありがとう、麗紗ちゃん。」
「えっ??? 何か言いましたか?」
「いやっ。さぁ、敵は目の前だ!! 頑張ろう!!!!」
「はい!!!!!」
………聖。
こっちは任せろ!!!!
その代わり、彼女たちを頼んだぞ……。
〜橙里side〜
「北郷様が自軍の兵を鼓舞したようです。」
「そうですか……。ご苦労様、下がってよいのですよ。」
「はっ…。」
戦場から離れた位置にある陣地。
私はそこで作戦の総指揮を担っている。
劉備軍のことは妹の朱里にやってもらっているので、実質は自軍のことだけなのだが、不安がさっきから拭い去れない。
相手は賊……。
こっちは訓練を受けた兵士……。
戦わずとも勝敗は明らかなのだが………何だろうかこの嫌な感じは……。
重厚で粘度の高く、どろっとしたようにまとわり付く嫌な感じのこの不安は、さっきから一向に消失しない…。
それどころか、時間が経つたびにより大きく、重いものへと変わる…。
もしかして……先生の身に何か起きたのでは……??
お願いなのです。先生、どうか無事に帰ってきて欲しいのです…。
「……どうしたの、お姉ちゃん?」
「へっ!!? その……なんでも無いのですよ……。」
「そう……。」
「あは……あはははっ……。」
流石に朱里には気付かれるかもしれないのです……。
しかし、この不安を持ったまま敵と戦をするのは得策ではない…。
今はとにかくこの不安を拭い捨て、目の前にある為すべきことをこなすのです。
全ては…………先生の為に……。
〜于吉side〜
「敵が現れました!! その数、およそ一万三千!!!」
「そうですか……。では、直ぐに迎撃の準備を…。」
「はっ!!!」
威勢のいい声を発すると、男は勢い良く天幕を飛び出し、各隊へと伝令をしに行く。
その後姿を目で追いながら、にやっとほくそ笑む眼鏡の男、于吉。
「ふふふっ。来ましたね、徳種君。この時を待ち侘びてましたよ…。噂に聞く君の軍略とその兵の力。存分に見せて私を楽しませてくださいね。 ………おっと、万一のことを考えて……。」
于吉は部隊指揮に向かう前にとある天幕へと向かったのだった。
〜一刀side〜
「敵、陣より出陣!!! その数およそ二万!!!!」
「分かった。関羽将軍に作戦通り動く旨を伝えてきてくれ。」
「御意!!」
「……思ったより多いですね…。」
「そうだね…。聖の予測だと全兵数の半分の一万五千だろうって事だったけど…。」
「何れ全ての兵を釣り出さねばなりませんから……これはこれで良かったと考えるべきかもしれません…。」
「となれば、どれだけ俺たちが踏ん張れるか…。この戦の勝敗はそこにかかってるってわけか…。」
「はい。我々は敵を惹き付け、釣り出し、横撃を与えるまで耐え忍ばなければなりません…。」
「……どれぐらい時間はかかるかな?」
「……敵の釣れ具合によりますが……二刻程度は最低でも耐えなければならないと思います…。」
「二刻か……。それだけの時間の間、あの大人数相手に耐え忍べとは……こりゃまた無謀な策に思えるね…。」
「……しかし、この兵力差を覆すためにもこの作戦でなければなりません。」
「そうだね…。じゃあ、徳種軍第三部隊の堅牢さ、特とご覧に入れようか。」
武器を抜き、皆の前に進み出る。
「良いか!!!! この戦、数では圧倒的に我等が不利だ!! しかし、我等にはこの逆境を打ち崩すだけの策がある!! この策の成功は我等徳種軍三番隊が握っていると言っても過言ではない!! 総員、自身の武に誇りを持て!! 隣の者に命を預け、お互いに守りぬけ!!!! さすれば、我等に叶う敵は無し!!!!」
「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
「全軍抜刀!!!!! 敵は唯の賊だ!!!! 訓練された兵士がいかに強いか、奴らに見せつけてやれ!!!!」
「「「「わああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
兵士たちの士気は上がり、此方の準備は整った。
もう間もなく、お互いの最前線がぶつかる。
今ここに、黄巾の乱の最終決戦が始まったのだった。
「改めてみると、凄まじい数だな…。」
襲ってくるのはまさに人の波と呼ぶに相応しいほどの兵の塊。
あれだけの人数に包囲されたら、殲滅されるのは時間の問題だろう…。
「良いか、包囲されたら一大事だ!!! 常に敵の動きに注意して、背後をとられないようにしろ!!!」
自軍に伝令を飛ばし、戦場に再び目を向ける。
金属音がけたたましく鳴り、怒声と罵声、悲鳴と苦悶の声が木霊する戦場。
敵味方入り乱れて行っているのは命の奪い合い。
人が人を刀で切ったり、槍で突いたり、弓で射掛けたり……そうしてここら一体は真っ赤な大地へと変貌を遂げる…。
受け入れるべきものではない……こんな戦い、直ぐに無くさなければならない………その為にも……。
「敵将の首もらった〜!!!!!!!」
「一刀さんっ、危ない!!??」
ザシュッ!!!!
「………うぐっ……。」
「……俺は今、人を殺すんだ……。」
賊の腹部に剣を突き立て、一撃の下に命を奪う。
賊の身体から剣を引き抜けば、剣は真っ赤に染まり、生臭い血の香りが鼻腔をつく…。
この匂いを嗅ぐたびに………改めて自分はとんでもない世界に来たんだなと実感する…。
「伝令!!!! 関羽将軍の部隊も苦戦模様……兵に余りがあれば此方によこして欲しいとのことですが…。」
「そうか、愛紗さんの方も厳しいか………。残念だけど、こっちもそんな余裕は………おっと…軍師様達はそんなことはお見通しか……。」
後方の陣の方を見れば、そちらから土煙が近付いてきている。
どうやら予備兵力もつぎ込むようだ…。
「麗紗。敵はどのくらい出てきてる?」
「そう……ですね……。七割近くは既に出てきていると思うんですが……。」
「そうか……。後三割近くもまだ陣内にいるのか………。」
このまま消耗戦になれば数で負けている分、こっちが不利である。
どうにかして策を成功させたいものだが……。
「全軍が突撃してこないってことは、敵にも優秀な指揮官が居るって事かな?」
「はい。多分、お兄ちゃんの報告にあった于吉という人物でしょう…。用兵術にも優れているとは……厄介な相手ですね…。」
「そうだね…。追加の兵が来たとは言え、このままでは多勢に無勢……。何か……何か一手ないのか…。」
一刀は歯痒そうな顔をしながら、戦況を眺めていることしか出来なかった。
その頃、後方の軍師たちのところでは…。
「……予備兵力はこれで無くなったのです…。後は、この兵が尽きる前に敵が釣れれば良いのですが……。」
「……厳しいね。今はまだ、愛紗さんや北郷さんが頑張ってくれてるから前線はもっているけど、崩壊するのも時間の問題だろうし……。」
「むむむっ………。こういう時、先生ならどうするのでしょうか……。う〜ん………。」
戦況は思わしくない方向で進んでいる。
既に此方に余裕は無く、前線もギリギリの状態……。
崩壊していないのは、単に率いている将が愛紗と一刀であるからだろう…。
まさに針の筵状態である…。
しかしそこに、思っても見なかった救援が登場することで、事態は一変する。
「あら〜……結構派手にやられちゃってるわね…。どうしたの、あなたたちの力はそんなもの?」
「あっ……あなたは……!!??」
「とにかく、今ここで敗れて敗走されても困るし……ここは貸し一つね♪」
その人は桃色の髪を揺らし、にこやかに笑ったかと思うと次の瞬間、表情を険しいものへと変え、部下に指示を出していく。
「我等はこれより敵に突撃する!! 目標は正面の黄巾賊。その数およそ二万!!!! 屈強なる孫呉の兵たちよ!!! その力、存分に天に見せつけよ!!! 奪われた同胞の命の借りをその剣に込め、奴らの血でもってその罪を償わせろ!!!!」
「「「「応っ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
「全軍突撃!!!!!!! わしに続け!!!!!!!!!!!!!!!!」
「「「「うおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
大地は揺れ、空気さえも震えるほどの鬨の声が当たりに響き渡り、高く高く掲げられた暁の旗には、その一団を示す『孫』の字がはっきりと読み取れるのだった。
「ん?? 何だか後方が騒がしいな……。」
「報告します!!」
「どうした!?」
「後方から、謎の軍団です!!」
「なんだって!? 旗印は??」
「旗印は………えんじに『孫』の文字です!!」
「『孫』!? まさか、新手か!? 直ぐに対処を……。」
「駄目です!!! 間に合いません!!!!」
猛烈な勢いで突進してきた赤い鎧の一隊は、俺たちの間をすり抜けながら前方の黄巾賊へと向かっていく。
「………どうなってんだ…??」
「……どうなってるんでしょうか…??」
どうやら、麗紗も今の状況がつかめていないらしい…。
「んっ?? そなたら二人は、徳種軍の将で間違いないか?」
人波が去っていく中、一人の女性に声をかけられる。
「……あぁ……確かにそうだけど……。」
「ふむ、ご苦労だったな。我が名は孫堅。これより我が孫呉もそなたたちと協力しよう。一緒に敵を討ち滅ぼそうぞ!!」
急な展開にあたふたしていると、敵の勢いが弱くなっているように思える。
「今が好機!! 我等が敵を抑えている間に、隊の編成を済ませておけ。その後、敵が釣れ次第そなたたちの作戦通りに動くぞ!!」
「っ!!?? は……はい!!!!」
未だ何が起こったのか詳しくは理解できていないが、一つだけ分かったことは俺たちに救援が来てくれたと言う事だ。
これで、なんとかなりそうだ……。
弓史に一生 第七章 第十一話 黄巾の乱 END
後書きです。
今話は一刀がほぼメインのお話です。
恋姫の世界に来たばかりの一刀とは比べ物にならないほど成長した一刀。
これも、常日頃から優秀な人を目の当りにしているからでしょうね……。
そして、蓮音様カッコいい!!!! …………はっ!?
ピンチに颯爽と駆けつけるところは、主人公並みの存在感です。
さて、蓮音様が駆けつけたことで戦線は持ち直しました。
今後どうなるのか……聖はどうしたのか……次回以降をお楽しみに……。
そして、前書きで書いていた今後についてですが………。
来週、再来週はまだ大丈夫なんですが、五月の三週目から場合により投稿ができなくなるかもしれません……。
と言うのも、書いている時間を取れないかもしれないんですよね……。
実習が始まるとどうしても時間が………勿論、ここで打ち切りとかそういうことはしません。
時間を見つけ次第書いては投稿、書いては投稿となる恐れはあるので、前々から皆さんに知っておいてもらいたいと思い、今回こうして書かせていただいてます。
次回はいつも通り日曜日に上げます。
それではお楽しみください!!!!
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 今回は後書きに、今後について報告がありますので、御一読戴くと幸いです。 |
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