IS 飛翔する白き翼 第9話
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第9話

 

アリーナでの一件から2週間・・・ついに学年別トーナメントが始まろうとしていた。

 

待機室

 

「すごい人数だなあ、クラス代表戦の時も多かったけど、今回はその数倍近くいるぞ・・・」

 

「企業にとっても大事なイベントだからね。有能な3年を見極めてスカウトしたり、援助してる生徒の成長を確認する為にいろんな国、企業の人間が集まるんだよ」

 

「そうなのか・・・」

 

学年別トーナメントは、IS学園の大きな行事の一つである。第1アリーナが1年、第2が2年、第3が3年と分けられており、今年から3人1組に変更された。組み決めは自分たちで決めるが、余った人たちはくじ引きで決められその日に発表となる。本音と簪は同じクラスの友達と一緒に出るので、箒と沙紀が組んだのだが、残り一人はくじ引きからになった。

 

「箒ちゃん、強い人だったらいいね」

 

「そうだな、沙紀」

 

(今度こそ私は強さを見誤らず勝つことができるのだろうか・・・・)

 

「あっ、対戦表が発表されるみたいだよ!」

 

「「「なっ・・・・!?」」」

 

だが、対戦表をみた一同は言葉を失った。

 

 

『第1試合、ヒイロ・ユイ、シャルル・デュノア、織斑 一夏VS倉持 沙紀、篠ノ乃 箒、ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

 

「こんなことってあるのかよ・・・・」

 

「強い人だけど・・・まさかこうなるとは思わんかった・・・・・」

 

 

だが、この状況を好機とみている者が一人いた。

 

「コレはいい・・・手間が省けた」

 

口元に笑みを浮かべ、ラウラは待機室から出て行った。

 

 

 

 

アリーナ

 

「一夏、デュノアわかっているな?」

 

「ああ、わかってるぜ・・・ヒイロ」

 

「僕も大丈夫だよ」

 

アリーナ中央にはもう両者そろっている。特に異彩を放っているのはヒイロのウイングガンダムだ。今のガンダムはフルアーマー装備なので、いつもと違い重武装のイメージを周囲に持たせている。

 

「ふん、特殊追加兵装(オートクチュール)か・・・・幾ら強化武装を施したところで、このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前では意味はない・・・」

 

「・・・・・」

 

だが、ここでラウラは大きな勘違いをしている。確かに一般的にはオートクチュールは強化用の武装だ。マイクロミサイルや背部2連装レーザー砲などの武器増加、追加装甲による防御力向上という点から見てもそう言える。しかし、このフルアーマー装備は『足枷』だ。ウイングガンダムの持ち味である機動性は大きく低下し、総合火力や格闘力はノーマル時より劣り、防御面は元々装甲が破格な耐久力を持っているのであまり問題にないのだ。

 

そこに試合開始の放送が流れる。

 

「間もなく、学年対抗トーナメント第1試合を始めます。両チームは所定の位置についていますね。では、これより第1試合を開始します・・・・・・

 

 

3・・・・・・・

        2・・・・・

              1・・・・・

                     スタートです!!」

 

開始の合図がでると同時に一夏とラウラが動いた。

 

「「叩きのめす!!」」

 

雪片弐型とプラズマブレードがアリーナ中央で火花を散らす。ヒイロはそれを確かめると、ガトリング砲と背部のレーザー砲を沙紀と箒に放った。

 

「お前たちの相手はこの俺だ・・・」

 

幾つの火線が二人に向かう。

 

「させんよ!!」

 

箒の前に立った沙紀は、左腕に装備された物理シールドでそれを防いだ。今の神識の装備は機動性重視の『隼』。背部に装備された2基の大型スラスターとそれについている大型可変翼が特徴だ。ヒイロは防がれるのがわかると、攻撃を止め、一度上昇した。

 

「すまない、沙紀」

 

「かまんよ。絶対にこの勝負勝とう!」

 

「もちろんだ!」

 

2人はうなずきあうと、ヒイロを追って飛翔した。

 

 

一夏、シャルルvsラウラside

 

一夏とラウラはアリーナの中央で火花を散らしていたが、途端に一夏の動きが止まった。

ラウラがシュヴァルツェア・レーゲンのAICを起動させたのだ。

 

「うっ・・・・」

 

「開幕直後の先制攻撃か・・・わかりやすいな。しかも、アイツにあの2人を任せ、私には2人がかりということか・・・・」

 

「そりゃ、どうも・・・以心伝心でなによりだ」

 

「ならば次に私がどう動くかもわかるだろう?」

 

「ああ、わかってるさ・・・慌てることは何も無いってな!」

 

一夏がそう言うと背後からサブマシンガンを構えたシャルルがあらわれる。

 

「させないよ!!」

 

マシンガンから放たれる弾丸がレーゲンのエネルギーを削っていく。これには、ラウラも白式にかけたAICをやめ、回避行動をとった。だが、ラウラは軍人だ。回避行動をとりながらも、まず一夏をとらえようと両肩に装備された4基のワイヤーブレードを放ってくる。

 

「そいつの弱点はもうわかってるぜ!!」

 

一夏はそう言うと、向かってきていたワイヤーブレードを雪片で弾きながら剣に巻きつかせた。だが、ラウラ動じない。元から一夏を捕縛するために放った武器に、わざわざ自分から捕まりに来たのだから

 

「何が弱点だ。笑わせる・・・自ら捕まりに来るとはな・・・・それにまだ2基ある!」

 

残りの2基のワイヤーブレードが白式の両腕に巻き付く。

 

「残念だったなあ!これで動けまい!!」

 

だが、ラウラは忘れていた。これはチーム戦だということを・・・

 

「シャルル!やれ!!」

 

「わかってるよ!一夏!!」

 

ラウラの左前方から右手に近接ブレード『ブレッド・スライサー』を装備したシャルルが向かってきていた。

 

「その程度・・・・・うっ!?」

 

ワイヤーブレードは相手の動きを制限することができる。しかし、それは同時に自分の動きも制限するということである。まして、自分よりもパワーが相手のほうが強いと・・・

 

「いけええええ!!」

 

一夏は力任せにレーゲンをシャルルのほうに放り投げた。機体の力関係はレーゲンのほうが高いが、シャルルに気を取られたこと、スラスターの推力を借りられたことで白式に負けた。

しかし、ラウラもやり手だった。投げられている最中にワイヤーブレードを強制排除すると、空中で体勢を整え、シャルルの攻撃を避けた。

 

「あれを避ける!?」

 

「さすがに・・・一筋縄ではいかないか・・・」

 

そんな二人をよそにラウラは焦っていた。絶対にあの2人の男に負けるわけにはいかない。

 

「私が・・・・・・・私がお前達なんかに負けるはずがない!!」

 

両手のプラズマ手刀を展開し、2人に斬りかかる。

 

 

 

ヒイロvs沙紀、箒side

 

ヒイロは沙紀と箒を相手取り戦っていた。だが、ヒイロのエネルギーはほとんど減っていない。絶対防御が働かない限り減ることのない事を考慮しても、装甲に傷がつくほどの攻撃はほとんど避けたか、シールドで防御していたのだ。

 

反対に沙紀の神識は背部スラスターの一つと物理シールドを破壊され、エネルギーは3分の1しか残っていない。箒の打鉄に至っては、2つの浮遊型物理シールドがすべて破壊され、1本だけのISブレードも剣先が折れ、ところどころにひびが入っている。エネルギーはもうほとんど残されていない。

 

「くっ、当らない!」

 

(2人とも結構できるな・・・しかし)

 

沙紀は代表候補ということもあり、また自機をよく理解しているためできることはわかっていたのだが、箒は訓練機の打鉄でここまでできるとは思っていなかった。しかし、それでも戦争を経験した者、ましてヒイロのような者からみれば、相手にもならない・・・

 

「向こうも片が付くか・・・」

 

一夏達の様子を見てヒイロはそう判断した。早めに終わらせたほうが、問題なく自分に課した任務を遂行できる。

 

「これで終わらせる・・・・」

 

ヒイロはウイングをバード形態へと変形させた。ISが航空機に変形したことに観客席から驚きの声があがる。

 

「変形した!?」

 

箒の驚きをよそに、ウイングはスラスターを全開にし、箒と沙紀の間をかすめ飛んだ。

 

「速い!?」

 

「そんな・・・データ以上なんて・・・」

 

その時、FAウイングが出した速度は倉持技研が出した予測データを軽く超えていた。しかし、今は戦闘中、沙紀はそのデータに驚きつつ、攻撃の手はやめない。しかし、失速から極超音速飛行まで出来るウイングのバード形態の通常航空機では考えられない動きに、弾は一つも当らない。

そして、ヒイロは極超音速飛行で二人の後ろに回り込むと、バード状態を解くと同時に全武装を目標に向けた。

 

「ターゲット・ロック・・・・・ファイヤー!」

 

ガトリングガン、背部の2連装レーザー砲、アーマー内蔵型マイクロミサイルが一斉発射され、幾つもの火線、白い尾を引くミサイルが二人を襲う。

 

「終わらせんよ!」

 

「まだ負けらない・・・私は!!」

 

2人は先行してきたミサイルを撃ち落とす、切り落とす・・・レーザーやガトリングは残ったシールドで防ぐ、避けると試みるが、数が多すぎた・・・

ミサイルの直撃によってできた爆煙で2人は見えなくなる

 

「撃破完了・・・」

 

煙が晴れると、機能停止した2機が地面にゆっくり着地した。装甲の至る所が焼け焦げているが、絶対防御が働いたためにパイロットは傷一つしていない。

 

「ヒイロはやっぱり強いね・・・」

 

「また私は・・・・私は勝てないのか・・・」

 

そんな二人を横目で見つつヒイロは、一夏達の方向に視線を向けた。そこに、緊急事態を告げるサイレンが鳴り響く。

 

「えっ、何!?」

 

「なんだ!一体何が起きた!?」

 

周囲が驚きの声を上げる中、ヒイロは一人冷静にしていた。

 

「発動したか・・・・。お前達は避難しろ」

 

「ヒイロは?ヒイロはどうするんよ!」

 

ヒイロは沙紀の言葉を無視するとFAパックを解除し、右手にバスターライフルを展開した。

 

「ターゲット確認・・・目標を破壊する」

 

 

 

 

一夏、シャルルvsラウラside

 

 

「そこ!」

 

ラファールの両手に装備されたアサルトカノン『ガルム』から放たれた弾丸がレーゲンに向かって幾つも放たれる。

 

「そんなもの!」

 

ラウラは左手をその方向に左手をかざすと、向かってきていた弾はすべて手前30p空中で止まる。だが、シャルルの目的はあてることではなかった。

 

「かかったね・・・」

 

「何!?」

 

零落白夜を発動した白式が、ラファールとは反対の方向から斬りかかる。これにはラウラも反応しきれない。

 

「あたれええええええ!!」

 

「くっ・・・・!!」

 

AICを発動する余裕もなく、ラウラに雪片のレーザー刃が迫る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                              はずだった・・・・

 

だが、ラウラに刃が当たる瞬間、白式の零落白夜の輝きが消え、同時に雪片も実剣に戻ってしまう。

 

「ちっ、こんな時にエネルギー切れか!!」

 

「ふっ・・・驚かせる!」

 

零落白夜が切れたことに一瞬躊躇し、動きが遅れた一夏をラウラは蹴り飛ばす。

 

「ぐはっ!」

 

蹴り飛ばされた勢いで一夏は壁にたたきつけられた。

 

「運が悪かったな!」

 

たたきつけられた白式に、レールカノンの砲身が向けられる。だが、一夏はその場から動こうとしなかった・・・

 

「忘れたのか?俺達は3人なんだぜ?」

 

それと同時に幾つものミサイルがラウラを囲むように辺りに直撃し、砂煙で視界をなくした。

 

「ちっ!目くらましのつもりか!!」

 

だが、その一瞬が命取りだった。

ラウラがシャルルに気づいた時には、もうすでにかなり接近している。

 

「貴様、いつの間に・・・・まさか瞬時加速!?だが、貴様にはまだ使えないはず・・・この戦闘で物にしたとでもいうのか!?」

 

予想外のシャルルの瞬時加速にラウラも驚きを隠せない。

 

「この距離なら外さないよ!!」

 

「第二世代如きの武器に・・・・・・・!?」

 

 

ラウラは言いかけて気づいた。第2世代最高の破壊力を持つ武器の存在を・・・シャルルは口元に笑みを浮かべると、左腕シールドの先端がパージされ、本機の切り札が現れる。

 

「盾殺し(シールド・ピアース)!!」

 

リボルバー機構の装備によって、炸薬交換による連続打撃が可能となった69口径のパイルバンカー。残りのシールドエネルギーをゼロにさせるには十分すぎるほどの威力である。

 

「させるか!!]

 

左手をシャルルに向け、AICを起動させようとする。

 

「ぐはっ!?・・・・・何!!」

 

だが、それは使用許諾(アンロック)されたガルムを持った一夏によって阻止された。

 

「もらった!!」

 

シールド上部(パイルバンカーの後方)に取り付けられたスラスターによって破壊力が増大されたパイルバンカーが、連続した何発もの爆音と共にレーゲンのシールドエネルギーをすさまじい速さで消していく。

 

「これで・・・チェックメイトだよ!!」

 

最後の爆音と共に、壁にたたきつけられたレーゲンのシールドエネルギーはゼロとなり、その場で沈黙した。たたきつけられた反動で眼帯が外れたが、ラウラは動かない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(力がほしい・・・負けることのない最強の力を・・・・・)

 

 

 

 

  『欲するか?・・・・・・強大な力を・・・・絶対強者の力を・・・』

 

 

 

「・・・望む・・・・・負けることのない・・・・絶対強者の力を!!」

 

 

 

 ≪機体損害レベルD、IS操縦者の精神負荷・・・最大値、ロック解除、ヴァルキュリートレースシステム起動≫

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」 

 

ラウラの叫びと同時にレーゲンが放電しだす。その瞬間、レーゲンが黒い液体のような物になると、ラウラを包み込み、大きな人型を作り出していった。

 

 

 

 『ならば渡そう・・・絶対強者の力を・・・・すべてに絶望を与える力を・・・』

 

 

 

緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響く中、重装甲を思わせる巨大な体、マントとともとれる6枚の翼をもった赤と黒の機体・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                     ガンダムが姿を現す

 

指令室

 

「織斑先生・・・あれは・・・」

 

「ああ、あの見た目からすればヒイロのウイングとおなじガンダムだな・・・だが、レーゲンの変化の仕方から見れば条約で禁止されたVTシステムのはず・・・・よくわからんが今は生徒の避難と奴の鎮圧が最優先だ!」

 

「はい!!」

 

教師陣に指示を出した千冬は再び画面に視線を戻した。

 

「ガンダム・・・・一体あれが何を意味するというんだ」

 

 

アリーナ

 

その機体・・・ガンダムは背中から実大剣を抜き取った。大剣は刃が拡張し、機体と同じぐらいの大きさになる。それを両手に構えると、見た目では考えられないスピードで一夏に迫り、大剣を振り下ろした。

 

「がはっ!!」

 

回避しようとしたが、あまりの速さによけきれず、左腕装甲に刃がかする。しかし、すさまじい攻撃力で、一夏は後方に吹き飛ばされ、かすっただけのはずの部位の装甲は破壊され、肌からは結構な出血がでていた・・・・また、ISのエネルギーもその攻撃で切れてしまう。

 

「一夏!!」

 

シャルルは重機関銃『デザート・フォックス』を手に持ち、ガンダムに狙いを定める。しかし、相手の動きのほうが格段にはやかった。

 

 

「速い!?」

 

 

下からすくい上げられた大剣によってデザートフォックスは切り落とされ、そのまま振り下ろされた剣がシャルルを襲う。

 

「きゃあ!」

 

反射的にシールドを前に出すが、その必要はなかった・・・横から払われたヒートロッドが、大剣の軌道を変えたのだ。

 

「ヒイロ!!」

 

「早く、一夏と共に退避しろ・・・・こいつは俺が破壊する!」

 

 

 

一夏&シャルルside

 

 

ヒイロに促されて、シャルルは一夏の元に駆け寄った。

 

「大丈夫、一夏!腕から結構血が出てるよ!!」

 

しかし、一夏はシャルルの言葉を無視して、怒りにふるえながら手を強く握りしめ、地面を殴りつけた。

 

「あれは千冬姉の技だ!! 姿形は違っても、あの太刀筋を見ればわかる!あんな奴が千冬姉の真似を するのは絶対に許せねえ!!それにラウラもラウラであんな奴取り込まれたってこともな!!」    

 

だが、エネルギーの切れた白式では何もできない・・・

 

「一夏、僕のエネルギー使いなよ。僕もエネルギーは少ないけど、後1回零落白夜を使えることはできると思うからね・・・」

 

「すまないな・・・シャルル」

 

シャルルはラファールから電力供給ソケットを取り出すと、白式に接続した。エネルギーを回復した白式は腕部、脚部装甲と雪片だけを展開した。

 

「一夏、必ず戻ってきてね。約束だよ?」

 

「わかってるさ・・・・じゃあ、行ってくるぜ!」

 

一夏はそのままヒイロの元に向かった。

 

 

ヒイロside

 

 

ヒイロはその機体を前にして驚愕していた。

 

(VTシステムは過去のモンド・グロッソの戦闘方法をデータ化し、再現・実行するシステムのはず・・・・確かに動きは織斑 千冬に似ているが・・・あれはガンダムだ。だが、俺の知っているガンダムにあのような機体はない・・・・しかし)

 

「たとえガンダムであっても、貴様は倒すべき敵だ!!」

 

 ヒイロはバスターライフルをガンダムに向け、トリガーを引いた。しかし、ガンダムはそれをサイドステップで避ける・・・だが、それこそがヒイロの狙いだった。バスターライフルは地表などに直撃すると、広範囲に向かってプラズマと爆風が起きる。バスターライフルは威力が高すぎることが問題だが、これなら効果的にダメージを与えられ、相手をよろけさせることもできる。

 ヒイロの狙い通り、ガンダムは体勢を崩し、後方に倒れこんだ。そこに、サーベルを抜いて斬りかかる。

 

「はあああ!!」

 

だが、それで終わるような敵ではない。スラスターをふかして、サーベルをギリギリで避けるとすぐに大剣を左から薙ぎ払った。

 

「くっ・・・・」

 

ヒイロはサーベルで受け止める。

 

「ぐああああああああ!!」

 

だが、攻撃力が高すぎるために後方へ弾き飛ばされてしまった。ヒイロは、空中でスラスターを使って体勢を整えようとするが、ガンダムの追撃が迫る。

 

「ちっ!」

 

ヒイロは、ガンダムの追撃を紙一重でかわすと間合いを取った。

 

(あのパワーとスピードは厄介だな・・・)

 

そこに、シャルルからの電力供給をうけ、少しの装備を付けた一夏がヒイロの傍に寄った。

 

「ヒイロ、頼む。俺にやらせてくれ・・・アレは俺が片を付けないといけないんだ・・・」

 

腕部、脚部装甲と雪片といった最小限度の装備を付けただけであったが、ヒイロには決意の強さが一夏の瞳をみてわかった。

 

「・・・了解した。だが、俺もアレを倒さなければならない・・・・お前はラウラを・・・アレは俺がやる。いいな?」  

 

「わかったぜ、ヒイロ!」

 

一夏の決意の返事を聞いたヒイロは、改めてガンダムに向き直るとサーベルを構え、ガンダムに向かってスラスターを全開させて飛んだ。ガンダムは大剣を正面に構え、ヒイロの攻撃をうけようとする。  

 

「もらった・・・」 

 

だが、ヒイロはガンダムのすぐ手前で急上昇した。

 

「?」

 

これにはガンダムもヒイロの意図が読めず動けない。ヒイロは、ガンダムの上空でサーベルをもう1本抜き取ると、スラスター全開で急降下しながらガンダムに向かって2本のサーベルを振りおろした。

 

 

ガンダムは、それを大剣で受け止めるが、スラスター全開の急降下によりパワーのました2本のサーベル

に耐え切れず、大剣が根元から折れる。

 

「一夏!」

 

「おう!!」

 

剣を失ったガンダムに零落白夜を発動させて迫ると、一夏は雪片を振り下ろした。

切り開かれた場所からラウラが現れ、ガンダムから解放される。

 

かすかに見えた視界のなかに腕を広げた一夏の姿を見た。

 

そんなラウラを一夏は優しく受け止めると、脚部スラスターを使って後ろに飛んだ。

パイロットを失ったガンダムが暴走しだす。そんなガンダムにヒイロはバスターライフルの照準を合わせる。

 

「ターゲット・ロック・・・・・ファイヤー!!」

 

巨大なビームがガンダムを包み込み、後には残骸とコアしか残っていなかった。

 

「目標破壊・・・任務完了」

 

 

 

医務室

 

「・・・ここは?」

 

目を覚ましたラウラの視線にまず入ったのは知らない白い天井だった。

 

「目が覚めたか?」

 

「教官?私は一体・・・確か、試合中だったはずですが・・・」

 

ラウラにはシステム発動時の記憶がないようなので千冬は事の次第を語った。

 

「お前の機体には条約で禁止されているVTシステムが組み込まれていた。また、何らかの影響でそのシステム自体も暴走していてな、止めるのに手間がかかったぞ。まあ、お前を止めたのはアイツとヒイロだがな・・・」

 

千冬の言葉にラウラはうつむいてきていた。

 

「教官、一つ聞いてもよろしいですか?」

 

「なんだ」

 

「なぜ、私は負けたのですか?戦闘技術なら負けるはずは・・・」

 

ラウラの言葉を千冬は手をかざして遮った。

 

「それには二つ理由がある。まず一つは、お前は強さを力と同じものだと考えているようだが、それは正解であり不正解だ。確かに力がなくては強いとは言えない。だがな、それ以上に『心』が強くなくては、真の意味で強いとは言えない・・・ヒイロはそれを知っているからこそ強い・・・まあ、ヤツはそれを否定しているがな・・・・」

 

千冬はそう言って医務室入口に視線を送った。

 

「二つ目だが・・・そうだな・・・私の弟を見ていれば答えが出てくるだろう・・・まあ、気を付けろよ?アイツには女をたぶらかす素質があるようだからな・・・」

 

笑みを浮かべながらそういうと医務室の出口に歩いて行った。

 

「気づいていたか・・・」

 

医務室のドアのすぐ横には腕を組んで壁にもたれかかっているヒイロがいた。

 

「ふっ・・・・ほどほどにしてやれよ?」

 

そういうと千冬はそのまま去って行った。

ヒイロが医務室に入ってきても、ラウラは以前の様に敵意をのせた視線は送ってこなかった。ヒイロは、腰のベルトの間に挟んでいた拳銃を抜き取るとラウラに銃口を向けた。それでも、ラウラは動かず、瞳を閉じた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・お前を殺す」

 

そういうとヒイロはトリガーを引いた。

 

 

 

 

 

 

『カチッ』

 

 

 

 

という音がするだけで銃口からは弾は発射されなかった。

 

 

 

そのことに驚いたラウラはヒイロに顔を向けた。

 

「任務、完了・・・・・これで過去のラウラ・ボーデヴィッヒは死んだ」

 

そうい言うとヒイロは、拳銃を仕舞って医務室から出て行った。

 

ヒイロが去ったあと、ラウラは泣いた。ただ、悲しみの涙ではないことは確かだった・・・

 

 

 

とあるラボ

 

「もう動き出したとはねえ・・・ん?これは!ちーちゃん!?」

 

パソコン画面を前に束はそうつぶやいていると、千冬から電話が入った。

 

「久しぶりだね、ちーちゃん!2か月ぶりかな〜」

 

「久しぶりだな、束。一つ聞きたいことがあって電話した」

 

「わかってるよ、ちーちゃん。でも大丈夫、あのシステムを造りだした研究所は跡形もなく破壊して、データもすべて消去したから・・・死傷者ゼロだから安心してよ!あと、あのガンダムについては私もよくわからないから〜」

 

「わかった・・・」

 

そう言って千冬からの電話が切れた。

 

「計画を早める必要がありそうだな・・・」

 

束の横にコーヒーカップを手にした北欧系の男が立つ。

 

「そうだね〜。まあ、アレも完成してるし・・・もうちょっとしたらイベントがあるみたいだしね・・・でもその前に、今度の日曜日にIS学園からゴーレムのコアを取り戻してほしいんだけど・・・大丈夫かな?」

 

「私にとってはさほど問題ではありませんよ」

 

そう言うと男は、部屋を出て行った。

 

「ガンダム・・・一体その名前は何を意味するんだろうね〜」

 

 

 

翌日のSH

 

「改めまして、シャルロット・デュノアです。皆さんよろしくお願いします」

 

突然のカミングアウトに教室中が静寂に包まれる・・・

 

「シャルル・デュノアさんは、シャルロット・デュノアさんで、実は女の子でした・・・・」

 

真耶のその一言で静寂が破られた。

 

「ってことは、デュノアさんはユイ君や織斑君と今まで一夜を共にしていたってこと!?」

 

そんな中、一夏の中の警報が最大クラスで鳴り響きだす。

 

「なんか危険な気がしてきたんだが・・・・・・おわっ!?」

 

一夏の左耳スレスレをレーザーが飛んだ。

 

「オホホホホ、外してしまいましたわ」

 

一夏が振り返ると、そこには周囲にピットを展開させたセシリアがいた。しかも、スターライトも構えている。

 

「やべえ・・・セシリアの周りから真っ黒なオーラのような物が見える・・・」

 

その時、突如教室の後ろの壁が砕け飛んだ。

 

「一夏ああああああああ!!」

 

甲龍を展開した鈴が壁をぶち壊して、龍咆をぶっ放す。

 

「鈴!?それはいくらなんでもやばいって!?」

 

とっさに腕を正面に構えるが、いつまでたっても衝撃は来なかった。腕を構えたところで、直撃すれば死ぬほどのものだが・・・・

 

「・・・・ん?ラウラ!?」

 

そこには、レールカノンをなくしたシュヴァルツェア・レーゲンを装備したラウラが右手を鈴にむけてかざしていた。AICを発動させ龍咆を止めたのだ。ヒイロも動こうとしたが、視界に動くラウラを見かけやめたのだ。

 

「・・・・・・・ありがとな、ラウラ。おかげで助かったぜ・・・IS直ったんだな」

 

「コアは無事だったのでな・・・予備パーツでくみ上げることができた」

 

「そうなのか・・・」

 

それで、終わるはずだった。だが、ラウラは一夏の胸倉をつかむと、一夏の唇に自分の唇を合わせた。

 

「!?」

 

「お前を私の嫁にする!!異論は認めん!!」

 

「へっ・・・・?」

 

ラウラの言葉に一夏は理解できない様子で、箒、セシリア、鈴、シャルロットにあってはショックのあまり微動だにしなかった・・・

 

 

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小話

 

 お久しぶりです。更新遅くなってしまいすみませんでした。

 

 読んでくれた方にはわかるかもしれませんが、あのガンダムは・・・・です。(筆者の表現力が足らないので難しいかもしれませんが・・・)

 

ちなみに最初はアストレイ・レッドフレームにしようかと思いました。(刀つながりで・・・)

 

以前はほかのガンダムを出さない予定でしたが、ネタに困ってきたことと出したいモビルスーツが増えましたので、進路変更します。

 また、ISの続刊、またアニメの2期も決まりとてもうれしいです!

 

 

次回はまだ未定です・・・(すみません、原作通りにするか、オリジナルにしようか迷っているので・・・)

説明
トーナメント戦です。今回はちょっとしたモノも入れていますので、
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タグ
ヒイロ・ユイ ガンダムW インフィニットストラトス 

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