【南の島の雪女】姉妹デート(終)
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【手はそのままで】

 

白雪と六花は、M&Aから逃げ出し、そこからさほど離れていない

スーパー(ジュスコ)の1階に身を隠していた。

 

六花

「追ってこないね、風花さんたち」

 

風花たちの追ってくる姿が見えてこない。

ほっ、と安心する六花。

 

白雪

「六花、いつまで手をにぎっているつもりだ」

 

六花

「ご、ごめん、お姉ちゃん」

 

謝りつつも、六花は、まだ手を離してくれない。

 

六花

「あの、あの、もう少しにぎってていい、かな?

 いやなら、すぐやめるから」

 

上目づかいで白雪を見て、恥ずかしそうにお願いしてくる。

 

恥ずかしいし、うざったいので、さっさと強引に手を離したかったが、

そうすると、なんとなく六花がかわいそうに思えて、

白雪はためらった。

 

白雪

「わかったよ…。

 にぎってほしいなら、もう少しそのままでもいい。

 でも、トイレのときくらいは離してくれよ?」

 

六花

「うん、ありがとう、お姉ちゃん!」

 

白雪は、周囲の目をきょろきょろと気にする。

 

ジュスコの店内に、あまり人はいない。

平日の午前中というせいもあるが。

 

まだ幼い感じのする六花と手をにぎっているのは、

周囲の目から見て、ほほえましいかもしれないが、

白雪にとっては少し恥ずかしいことだった。

 

白雪

「六花。逃がしてくれたのはありがたいが…。

 これからどうするつもりなのだ」

 

六花

「デートの続き。

 風花さんたちに邪魔されたから」

 

白雪

「おう、わかったとも。

 だが、昼までにしてくれよ。

 ちょっと、お義母さんの手伝いをしないといけないのでな…」

 

六花

「おかあさん?

 …ああ、今、お姉ちゃんが住んでいるところの、

 ご家族のお母さんのことだね」

 

白雪

「そうだな」

 

六花

「…何人目だろ。おかあさん。

 もう何人目の『おかあさん』なのか、数えるの忘れちゃった」

 

白雪

「無理もないさ。俺も何人目か忘れたよ。

 全国を放浪していたら、

 ものわかりのいいご家族のお世話になることも、よくあるからな」

 

白雪が、追われる身として、全国を放浪する間、

どこぞのご家族のお世話になったことは、一度や二度ではない。

 

六花

「いいなぁ。そうやって、すぐ自分の居場所を見つけちゃう。

 うらやましいなぁ」

 

白雪

「…俺も不思議だよ。人徳があるのかね」

 

六花

「もう、お姉ちゃんったら。

 自分で人徳があるなんて、言っちゃって!」

 

あはは、と白雪と六花は笑いあう。

 

周りのおばさんがた

「まあ、あの子たち、お手手なんてつないじゃって」

 

周りのおばさんがた

「かわいいわねぇ」

 

周りのおばさんがた

「ちょうど、私の孫もあれくらいのトシで…

 いいわねぇ、私も孫と手をつなぎたいわぁ」

 

白雪と六花が手をつなぐ様子を見て、噂しあうおばさんがた。

だんだん恥ずかしくなってきて、白雪と六花は顔を赤くさせる。

 

白雪

「お、おい、六花。上の階に行こうか」

 

六花

「う、うん…」

 

1階は、食品売り場が多い。だから買い物客がそれなりにいる。

人目を気にした2人は、まだお客さんの少ない、上の階へと姿を消す。

 

 

【六花と料理】

 

ジュスコ3階のくまさん書店。

別名、本屋コーナーとも言う。

 

本屋コーナーで、恋愛・結婚関連の書籍に、六花の目がいっていないか、

少し心配する白雪。

 

「ふふふふーん♪」

 

白雪の心配は杞憂に終わりそうだ。

六花が楽しそうに読んでいるのは、料理関連の本だった。

 

白雪は、六花の横にいき、声をかける。

 

「おい、六花。少しは料理をできるようになったか」

 

「ううん。おいしそうだから、見ていただけ。

 こんなの作ろうとおもわないよ」

 

「なんだ、お前、ほんとうに料理に関心がないのな」

 

「ねぇ、お姉ちゃん! この料理、作ってよ!

 わたしに食べさせてっ」

 

「はっはっは。そういって、俺の家に上がりこむ口実を作りたいだけだろ?」

 

「…チッ」

 

六花の舌打ち。

 

「え、まじすか」

 

白雪は目を点にして困惑した。

 

 

【六花と、大人の小説】

 

「お姉ちゃん、すこし、手をはなしていい?」

 

「あ、ああ。いいぞ」

 

「少しまっててね」

 

つないでいた手が離れる。

六花は、本屋コーナーの奥に消えていく。

 

「あいつ、何の本を読みにいくんだ?」

 

とくに読みたい本もない白雪は、六花のあとを、静かに、こそこそとつけていく。

 

見つけた。

 

「どきどき」

 

顔を赤くしながらも、ある小説に釘付けになる六花。

恋愛小説でも読んでいるのかなと、白雪が少しのぞきこんでみると、そこには。

 

恋愛など、とっくに超越していた。

冷たい雪女も、あっという間に沸騰しそうな内容。

 

花を散らされる。花と花同士をこすりあわせる。

花の中をかきみだす。つぼみを無理やりこじあける。

そんな内容ばっかりだ。

 

よく見ると、六花が立ち読みしている周辺は、ぜーんぶそういう小説で埋め尽くされている。

 

(おいおい、六花。まだこういう本は、早いんじゃないのかな?

 昔は、もっと子供向けの本を読んでいたはずなのに…)

 

六花の変化を見て、ショックを受ける白雪。

でも、六花のプライベートをつっつくのもかわいそうなので、

何も言わないでおいた。そういう本に興味をもつ年頃なのだ、と自分に言い聞かせる。

 

「…お姉ちゃんも、こういう本、読む?」

 

六花は、小説に目を通したまま、うしろにいる白雪に、声をかける。

 

「うお!? お前、俺がいるの、気づいてたのか」

 

「お姉ちゃんの気配ぐらい、見えなくてもわかるよ」

 

おそろしいことを言い出す自称妹。

 

「で、どうなの、お姉ちゃん。こういう本、読む?」

 

白雪に目を向ける。瞳があやしく輝いている。

 

そして、そういう本を読んでない、とはっきり言い切れない白雪。

実は少々、目を通したことがあり、それなりに楽しんでしまったのだが、

六花にはとても言えないことだった。

 

「…まあまあだ」

 

答えになっているかよくわからない、意味不明な回答を言ってしまう。

 

 

【六花と試着】

 

洋服売り場を通りかかると、六花が「あれ着てみたい」と言うので、

白雪はしぶしぶと、ついていく。

 

試着室前にて。

 

衣擦れの音がしばし聞こえ、やがてそれもぱたりとやんだころ、

試着室と外界をさえぎるカーテンが開く。

 

「じゃーん! どう、お姉ちゃん?」

 

六花の年齢に似つかわしくない、少し背伸びをしたようなかっこうをしている。

小学生が大人サイズのスーツを着たような、ちぐはぐな見た目だった。

 

「…お前がかっこいい服装しても、あんまり似合わないのだが」

 

白雪は正直な感想を言う。

 

「お姉ちゃん、正直すぎるよ!

 少しはほめてくれたって、いいじゃない」

 

「お前な…」

 

「お姉ちゃんみたいに、かっこよくなりたいの!」

 

「…お前がかっこよくなったら、

 かわいがることができなくなるだろう?」

 

「!」

 

六花は顔を赤らめる。

 

「あ」

 

あわてて口をふさぐ白雪。

別に口説きたいわけでもないが、思わず自然にしゃべってしまった。

俺は何を言っているんだ?と白雪は、自分の言動の不可解さに驚くのだった。

 

「お、お姉ちゃん…。

 うん、かっこよくなりすぎないようにするね」

 

頬を赤くしてとまどいながらも、照れ、うれしそうに笑みをうかべる。

 

「い、今のは冗談だ。

 お、お前がどんなかっこうしたって、かわいいから。

 かっこいい服装しても、かわいいから、

 だから、どんなにお前ががんばっても、かっこよくはなれない」

 

白雪はさらにあわてて、そして、墓穴を掘る。

 

「お姉ちゃん、そんなにほめられたら、恥ずかしいよ…」

 

(うあああああ、俺はさっきから、なぜこんな恥ずかしいセリフを!?

 言うつもりないのに、なぜ!?)

 

テキトーに評価して、テキトーに喜んでもらうつもりが。

なんだかあの娘、とっても幸せそうな顔をしてるんですけど。

 

白雪のもくろみが、音を立てて崩れていく。

いくらなんでも恥ずかしいセリフを言いすぎだろう。

自分のアルバムの中で、間違いなく、黒い、とてつもなく黒い、思い出が

できてしまいそうだった。

 

 

【バカザナさんと白雪】

 

風花

「いちゃいちゃするのも、そこまでですわよ!」

 

洋服売り場の、セール品のカゴの裏から、飛び出す人影。

 

白雪

「…バカザナ!」

 

霜花

「わたしもいるよー」

 

ちいさな霜花は、風花のうしろから、少しだけ顔をのぞかせる。

 

風花

「ちょっと目を離したスキに、六花と何をいちゃいちゃと…。

 手までつないじゃって!

 しかもなんか、か、かわいい、とか、六花を、く、口説いてましたわよね!?

 見ていて、顔から火が出そうでしたわ!」

 

白雪

「き…きいてたのかっ!? さっきの言葉…ぜんぶ…」

 

白雪は顔を赤くする。

さっきの試着のときの、恥ずかしいセリフも、ぜんぶ聞かれていたのか。

 

もしそうだったら。ああ。風花の記憶を抹消させてくれ。

俺のブラックアルバムを、やぶりすててくれ。

 

ふ、ふひいぃぃぃぃ。はふかしいいいい。

恥ずかしすぎて、白雪は、心の中で、枕に顔をうずめ、奇声をあげていた。

 

風花

「…そんなことより、白雪」

 

白雪の恥ずかしそうな心情を察してか、話題をきりかえる風花。

 

風花

「あなた、自分の立場を忘れてませんこと?

 のんきにデートできる立場じゃないってことくらい、

 わかってますわよね」

 

風花の顔が、マジメモードに変わる。

 

白雪

「…俺を捕まえるつもりか。

 だが、ここは沖縄。俺もお前も、雪女。

 沖縄では雪の術など使えんぞ。

 まさか、術もなしに俺を捕獲しようなどと

 考えてはいないだろうな」

 

風花

「ふっふっふ…」

 

白雪

(なんだ、あの笑いは…何か策でもあるのか?)

 

不適な笑みをうかべる風花。

何か、俺を捕まえる、すごい秘策でもあるのか。白雪は警戒し、身構える。

 

風花

「そうでしたわね。雪の術を使えないんでしたわね。どうしましょう…」

 

白雪

「ずこーっ!?」

 

さっきの笑い声はいったい何だったのか。

あまりの意味不明さに、白雪はずっこけるしかなかった。

 

白雪は、だからお前は『バカ』ザナなのだ、と心の中で突っ込んでおいた。

 

 

【雪女、熱中する】

 

白雪

「なあ、戦うなんてやめようぜ…。

 俺、そろそろ家に帰って、お義母さんの手伝いしないと

 いけないんだ。

 掃除とか、買い物とか…」

 

風花

「だまらっしゃい。

 勝負ですわ、白雪! あれで!」

 

風花は、奥のゲームコーナーを指差した。

 

風花

「術で勝負できないなら、ゲームで勝負ですわ。

 私が勝てば、白雪。あなたを連れ帰りますわよ」

 

白雪

「じゃあ30分だけだぞ」

 

白雪

(適当にやって、タイミングいいところバックれるか…)

 

30分後。

 

風花

「ムキー! どうして勝てませんの!?

 もう一度! もう一度ですわ! 白雪、次こそは絶対負けませんわ!」

 

風化は本日10度目の敗北を喫していた。

ゲームに負け続け、くやしさ爆発。雪女の熱い勝負魂がヒートアップする。

 

白雪

「おいおい…もう何回目のゲームだよ。

 雪女がアツくなってどうする」

 

六花

「さっすがお姉ちゃん、強いね!」

 

霜花

「どっちもがんばれー」

 

雪女たちは、ゲームコーナーで、すっかりゲームを満喫していた。

 

 

【六花とさよなら】

 

白雪

「休憩だ! 休憩休憩!

 30分も続けてゲームやってたら、目がおかしくなっちまうぜ」

 

白雪は、適当な理由をつけて、休憩を切り出した。

 

風花

「あら、白雪。逃げるんですの?」

 

白雪

「馬鹿を言うな。10分程度休むだけだ。

 おい、バカザナ。

 次、俺が勝ったら、お前、昼飯おごれよ」

 

風花

「望むところですわ!」

 

白雪はトイレに行くふりをして、物陰に隠れ、六花とコソコソ話をする。

あるお願いを聞いてもらうために。

 

白雪

「あーあ、バカザナのやつ、あんなに熱くなって。

 これじゃ、あいつは簡単にやめてくれないだろうな」

 

六花

「おつかれだね、お姉ちゃん」

 

白雪

「六花よ、俺のかわりに、バカザナとゲームしてくれないか。

 テキトーにやって、テキトーに負けて、満足させてやれ」

 

六花

「そんなこと言って、わたしにまかせて、どこかへ消えちゃうんでしょ。

 前もそうだったよ。

 そんなの、もういやだからね。お姉ちゃん」

 

白雪

「消えるんじゃない。家に帰るだけだ。

 また、いつでも会えるし、いつでもデートできる。

 いまは、俺を助けるとおもって、な?」

 

六花

「……お姉ちゃんのいじわる。

 そう言って、いつもいつも、わたしを言いくるめるんだから」

 

六花は、不機嫌そうな顔で、そっぽを向いてしまった。

 

白雪

「そんなに怒るなよ。な?

 俺も、今のお家の手伝いがあるんだよ。

 お姉ちゃんからのお願いだ、頼む」

 

六花

「何よ。こんなときだけ、お姉ちゃんぶってさ。

 もう、お姉ちゃんなんてキライ」

 

白雪

「あーあ。弱ったなぁ…」

 

お店の時計を見る。もう昼近い。お義母さんとの約束の時間が迫る。

 

そろそろ家に戻って、お義母さんの手伝いをしてやらんというに。

でも、ここで妹に嫌われてしまったら、頼みも聞かれなくなってしまう。

こうなったら、休憩時間の許すかぎり、謝って、なんとか機嫌を取り戻してもらおう。

そして、俺の頼みを聞いてもらおう。

 

白雪は、必死だった。

 

「俺が悪かった、妹よ。

 今まで俺が、六花を盾にして逃げたことは悪いと思っている。

 このとおりだ、許してくれ」

 

「本当に悪いと思っている?」

 

「本当だ…ほら、このとおり、頭も下げているからさ」

 

「お姉ちゃん、正座!」

 

「え?」

 

「正座して、謝ってよ」

 

「おいおい…かんべんしてくれ」

 

「お姉ちゃん。正座してって、言ったよね?」

 

六花は、たまに、白雪がおびえるほどの怖い顔をする。

 

「わかった、正座する。正座するから」

 

白雪は、ひざをおりまげ、正座の体勢をとる。

 

「ほら、このとおり…」

 

白雪は、頭を下げようとする。

 

「頭、さげなくていいよ、お姉ちゃん。

 そのままそのまま」

 

六花は、ゆっくり瞳を閉じる。

 

「ん…?」

 

ちゅっ。

 

「あっ」

 

六花のやわらかな唇が、白雪の頬に少しだけ触れ、離れた。

 

「えへへ。ひっかかったな!

 お姉ちゃんってば、だまされすぎだよ」

 

「ろ、ろっか…。

 恥ずかしいからやめてくれ。もう何回目だと思っている…」

 

ほっぺたを手でおさえて、顔を赤くする白雪。

 

「姉妹のスキンシップだよ」

 

「普通、姉妹ではこういうことはしない」

 

「ほっぺたより、お口のほうがよかった?」

 

六花は、いたずらっぽく笑みを浮かべる。

 

「…だんじて断る」

 

「お姉ちゃんったら、照れ屋さんなんだから。

 ばいばい、お姉ちゃん! 元気でね!

 お家の手伝い、がんばってね!」

 

六花は、白雪に笑顔で手を振ると、風花たちの待つ方向に走り去る。

そのうしろ姿は、白雪にとって、とても小さく感じた。

 

 

【枯野さん登場、そして退場】

 

枯野

「…どうやら私の出番はないようだな」

 

ゲームコーナー近くの、自販機の陰に隠れている枯野。

彼女も雪女であり、上司に命じられ、風花たちの監視を行っていた。

風花は、白雪を追いかける執念のあまり、上層部の指示を無視して暴走することがあるからだ。

 

ここからは、ゲームコーナーの様子がよく見える。

 

ゲームコーナーでわきあいあい(?)とする風花たちの姿を見て、

あまり止める必要はなさそうだ、と感じていた。

 

安心した枯野は、先ほど自販機から買った、

冷たいブラックコーヒーを少しだけ口にふくんだ。

 

枯野

(風花たちの監視役という仕事も、退屈なものだな…。

 厚雪様は、風花たちが勝手な行動をしないよう監視しろと言っているが、

 ほんとうなのか? 白雪と仲良しこよしじゃないか。

 私は、だまされているのではあるまいな)

 

枯野は、風花たちの監視任務について、疑問をおぼえる。

だが、疑問ばかりで、答えは出ない。

何をしているんだろうな、私は。

悩み多き雪女は、自販機の前で、フッと自嘲的な笑みを浮かべるのだった。

 

おじさん

「にーちゃん。自販機の前に立ってると、買えないから、どいてくれないかな」

 

枯野

「あ、すんませんした」

 

他人の監視をする前に、自分のふりを監視したほうがいいかな、と枯野は思うのだった。

 

枯野

(しかし、さっきのおやじ、私を「にーちゃん」とか呼びやがって。

 そんなに男に見えるか、私は)

 

短髪、長身、無駄のない体つき、きりっとした男性的な顔つき。

これだけそろった枯野を、女だと見抜ける人は、なかなかいなかった。

 

 

【風乃はなんでもお見通し?】

 

風乃の家に帰った白雪は、母親の手伝いを済ませ、

午後も16時をすぎたころには、風乃の部屋でくつろいでいた。

 

「ただいまー」

 

部屋のドアが開かれ、少女の声が、部屋中に響く。

 

「風乃か。今日は早いな」

 

白雪は、今日の掃除を終えて、寝っころがって、動画サイトを閲覧していた。

その視線は、ずっとパソコンに向けられたままで、

うしろにいる「風乃」に向けられていない。

 

「お姉ちゃんっ!」

 

「うわっ!? 六花!?」

 

白雪は、あわててうしろを向いた。

そこには、風乃ではなく、六花の姿が。

 

「…と言ってみたかっただけ」

 

六花の幻は一瞬で消えうせ、高校の制服を着た風乃の姿があらわれる。

 

「び、びっくりさせるな、ばか!

 お前、風乃じゃないか!」

 

白雪は、それが風乃であることを確認すると、心底ほっとするのだった。

 

「白雪、どうしてそんなに驚いているの?」

 

「…なんでもない」

 

「でも、すごくびっくりしてたよ?」

 

白雪の目が泳いでいることを疑い、風乃は顔を近づける。

 

「なんでもないったら、なんでもない!」

 

白雪は、恥ずかしそうに、風乃から顔をそむける。

 

「あやしいなぁ。

 もしかして、妹とジュスコでデートでもしたの?」

 

「なぜそんなにピンポイントな質問ができるんだ…?」

 

なぜ、俺の今日の行動を知っている。

これから始まる風乃の質問攻めに、白雪は、とぼけつづけたという。

 

< おわり >

 

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【あとがき】

 

ルートビアの味は、ドクターペッパーと少し似ているので、気になる人は飲んでみてください。

沖縄にあると思います。

 

 

【おまけ:ちゅーより恥ずかしいこと】

 

六花

「お姉ちゃんってば、ちゅーされたくらいで、顔赤くしちゃってさ。

 これが初めてじゃないのに」

 

白雪

「あ、あれは久しぶりにされたから、つい、恥ずかしくなってだな」

 

六花

「ちゅーより恥ずかしいことだって、昔いっぱいしたじゃない。

 なにをいまさら」

 

白雪

「わー! わー! 言うな、ばか!

 もう昔のことだろっ」

 

風乃

「え? ちゅーより恥ずかしいこと?」

 

白雪

「…しまった、風乃に聞かれてた!」

 

風乃

「オネショしちゃったの?」

 

白雪

「お前の『ちゅーより恥ずかしい』の基準を教えろ」

 

たしかにオネショは恥ずかしいけど、それは違うと白雪は思った。

 

 

説明
【前回までのあらすじ】
白雪は、自称妹の「六花」にデートに誘われ、ほいほいついていったが、
ハンバーガー店で、敵である風花・霜花に遭遇。
白雪、六花、風花、霜花は仲良くハンバーガーやポテトを頬張ったが、
スキを見て、六花が白雪の手をにぎり、ハンバーガー店の外に逃走したのだった。
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