Star Breakers -1st.key-
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 覚醒する意識を感じながら目を開くと、白塗りの天井があった。

 その光景を見ることで、ここが現実であることを確認する。

 赤黒い剣、虹色に輝く剣、黒い星―――思い出せることはそれ位か。

 もうひとつ思い出した。自分を夢から覚ます要因となったであろうあの「真黒い布」。

 おぼろげな記憶から更なる夢の内容を引きずり出そうとすると、頭が鈍い痛みに襲われた。

 詮索を諦めた彼は、寝汗を吸って重くなっているタオルケットを丸めて洗い桶の中に放り込み。

 身の丈を軽く超える両刃の大剣を背負い、丸い体に半分に切った惰円形の手足を取り付けた少年は 部屋を後にした。

 

 

     1st.key「黒と白の少年」

 

 

 木製の扉を開けると、焼のりの香りと味噌汁の匂い、二つの入り混じった空気が鼻腔をついた。

 少年は背中を向けて立っている、真白いおむすびに声をかけた。

 「よう、マティ」

 奇妙にも手の無い体で鍋の湯を流し、白むすびは振り返った。

 「あ、おはようカービィ。今日はゆっくりだったね」と穏やかな笑みを浮かべて挨拶を返す。

 このマティと呼ばれた少年、本名はマティルというのだが、短いながらも四肢のある

 黒玉少年カービィを基準としても普通といえる外見ではない。

 両手が無く、両足が無く、顔のパーツは中央少し上にぎょろりとうごめく眼と、

 三日月型に開く口のみ。

 それに加えて長方形のゴーグルを装着し、赤く伸びる舌は

 器用に鍋をガスコンロの上に置いている。

 誰の目から見ても、異形としか言いようのない姿だった。

 そんなことを気にした様子もないカービィは湯気を立てる味噌汁をお椀に入れている。

 白と黒のお椀の内、彼のものであろう白いお椀は少し汁の量が多かった。

 その間にマティルは白光りするご飯を茶碗によそい、焼のりを二枚ずつ皿に乗せた。

 二人で食事をするのがやっとの大きさのちゃぶ台に、ご飯茶碗、焼のりの皿、

 お椀、焼き魚の長皿を置く。

 最後に自家製の梅干しが入った瓶を脇に置いて、両手を合わせて「いただきます」。

 少年二人の四月二十七日は、質素な和朝食から始まった。

 

 「そういえば、今日は生誕祭か」

 食事を終え、湯呑を片手に新聞を読んでいたカービィがつぶやくと、

 「そうだね、生誕祭が終わったら春が来るよ」

 それを聞きもらすこと無く、食器を拭いていたマティルが返す。

 毎年今日この日に行われる『生誕祭』。

 それはこの地に眠る土地神を年に一度祀り、

 春の訪れを祝い一年間の安泰、幸福を願うものである。

 ―――と、この街の長老が言っていたからそうなのだろう。

 (って言っても、この街にはでかい桜の樹一本しかないんだけどな)

 桜の開花=春という公式に疑問を感じつつ次のページを開くと、

 数枚の写真とゴシック体の題字が目に入った。

 写真は殺されたと思われる大企業関係者の顔写真だった。

 ワドルディ、ペンギ―、バウンダ―族の顔が横一列に並んでいる。

 横書きの見出しには「神を恐れぬ連続惨殺未だ止まらず」、

 縦書きの見出しには「ついに東の大陸へ進出か」と書かれていた。

 「なぁマティ、この街に連続殺人犯が来るかもしれないぜ」

 文章に目を走らせつつ幾分興奮した様子でカービィが言うと、

 皿洗いを終えたマティルが嘆息しながらこちらへやって来た。

 「もうカービィ、そんなこと嬉しそうに言わないでよ。…確かに楽しそうだけど」

 常識はあるものの、マティルだってこの街で生まれ育った子供だ。

 小さい頃は、退屈な街でいつもカービィと一緒に楽しいことを探していた。

 今でこそそういったことに首を突っ込むのは慎んでいるが、

 こういうことに好奇心をそそられるのは事実だった。

 一心不乱に記事を速読していたカービィは、犯人が近いうちにアリミナルという

 街の図書館を狙っている、という旨の文を見つけた。

 ビンゴだ。何を隠そう、アリミナルというのは自分たちが住んでいる街の名前なのだ。

 「今日は祭りがあるから、大人たちは皆仕事が無い。行くなら今夜だ、どうするマティ?」

 煽るような口調でカービィが尋ねる。「当然行くよな?」と、眼が口以上に語っていた。

 正直、生誕祭の日にやることなんて毎年同じだ。

 神輿をほこらに担いでいくのは子供の内だけだし、大人は揃って酒に呑まれてしまい、

 酔っていない大人を探す方が難しい。

 一回くらい抜け出してもばちは当たらないのではないだろうか。

 見つかった時の言い訳を考え始めたあたりで、マティルの答えは決まっていた。

 

 今夜二人は、真夜中の図書館に潜入する。

 それが「面白いこと」どころでなく、「とんでもないこと」に発展すると知らずに。

 

 

     Next.key「作戦名・夜間図書館突貫作戦」

 

 

 

 

 

序章を読んでくださった方は久方ぶりです、

1st.keyからの方は初めまして、義之でございます

知らん間に序章から三カ月も空いてしまいまして、本っ当にすみません!

本編は、できる限り二、三週間に一話ペースを予定しております

さてやっとはじまりました「Star Breakers」、一話の登場キャラが二人ですね(汗

先に申しておきますとこの小説、オリ設定満載の完全自己満足作品となっておりますので

話についてこれなくなってしまった方はいつでも途中下車して頂いて構いません

ちゃんと終わらせられるかどうかもわかりませんが、気の向く限り読んでいただければ幸いです

 

それでは2nd.keyのあとがきでお会いいたしましょう〜

説明
カービィの二次創作小説です
オリ設定満載なのでご注意を
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