英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 484 |
〜幻影城〜
「さて………主達も去ったから、私達も帰ろうか、ナベリウス。」
「ん………」
セリカ達が門の中へと入って行った後、リタはナベリウスと共に光の階段の前に来た。
「リタちゃん………君には最初から最後まで本当にお世話になったな………」
「……ナベリウスさんもありがとうございました。………そしてこれからも………冥界にて迷いし魂達をあるべき道へとお導きして頂く事………よろしくお願いします。」
「フフ………私達も今回の件のお蔭で主やエステル達とも会えた上、今以上に強くなれましたから、お礼を言いたいのはこちらの方ですよ。」
「……それが………わたしの………お仕事だから………気にしなくていい………でも………ありがとう………みんなと………一緒………楽しかった………」
ケビンとリースの言葉を聞いたリタとナベリウスはそれぞれ微笑んだ。
「そういやリタちゃんはオレ達と一緒に取り込まれたから、すぐに会う事になるな。」
「元の世界に帰れば、やはり”冥き途”へと帰られるのですか?」
「いえ。ナベリウスにタルタロス様へお伝えする情報を伝えておきましたから、再びゼムリア大陸を放浪します。」
「リタの………伝言………タルちゃんに………伝える………」
そしてケビンとリースの言葉にリタとナベリウスはそれぞれ答え
「リタちゃんは今度はどこに行くつもりなの?」
ティータは興味深そうな様子でリタに尋ね
「次は以前プリネちゃん達と一緒に行った事のある”クロスベル”という自治州に行って、そこでしばらくの間、色々調べるつもりだよ。」
「え……………」
「ティオ?どうしたのだ。」
尋ねられたリタは答え、リタの答えを聞いたティオは驚き、ティオの様子をラグタスは不思議そうな表情で尋ねた。
「あの………実は仕事の関係で数ヵ月後に私もしばらくの間、クロスベル自治州で仕事をする事になっているんです。」
「え………そうなんだ。じゃあ、もしかしたら近い内に会えるかもしれないね。」
「だったら、あたし達とも会えるかもね。」
「そうだね。」
「ミント達もクロスベルにいるもんね!」
そしてティオの話を聞いたリタは驚いた後微笑み、エステル、ヨシュア、ミントはそれぞれ会話をした。
「これは驚いたな………俺達の娘達も数ヶ月後にクロスベル自治州に留学して、イリーナさんの妹さんと同じ職場で短期間になるけど、仕事をすることになっているんだ。」
「もしかしたら、同じ職場の同僚になるかもしれませんね。」
ウィルは意外そうな表情で呟き、セラウィは微笑んだ。
「………皇族の方の親類や領主のご息女のような身分が高い方達と私が一緒の職場になれるとは思いませんが………一応、名前だけ聞いてもいいですか?」
「あ、じゃあ私も一応憶えておくね。もしかしたら会うかもしれないし。」
「あたし達も憶えておくわ。」
ウィルとセラウィの話を聞いたティオとリタ、エステルはイリーナやウィルに視線を向けて尋ねた。
「私の妹の名はエリィ………エリィ・マクダエルです。向こうであったら、ぜひ仲良くしてあげて下さい。あの娘には大天使の方が護衛代わりにいますから、同じ天使と契約した者同士話が合うかもしれませんし………」
そして2人の疑問にイリーナは答えた後ラグタスに視線を向け
「………ティオ。できれば、そのエリィという人物に接触したい。メヒーシャに聞きたい事があるしな………」
「………わかりました。クロスベルに行ったら、できるだけそのエリィという方に接触できるように頑張ってみます。………ウィルさん達のご息女達の名前はなんというのですか?」
視線を向けられたラグタスは静かな表情でティオに言い、言われたティオは静かに頷いた後、ウィルやセラウィに視線を向けた。
「俺達の娘は3人いてね………長女は俺とセラウィの娘――――セルヴァンティティ・ディオン―――みんなは”セティ”って呼んでいるよ。」
「セティの下の妹達の名前はシャマーラとエリナです。」
「………セティさんにシャマーラさん、エリナさんですね……わかりました。」
「ちゃんとみんなの名前、覚えました。もしその中の誰かが何かで困っていたらできる限り、力になりますね。」
「僕達もできる限り、力になります。」
そしてウィルとセラウィの話を聞いたティオは頷き、リタとヨシュアは微笑み
「ありがとう。セティ達にも君達の事を話しておくよ。」
「フフ、私はエリィを少しだけ驚かせてあげたいですから、黙っていておきますね。」
ティオとリタの言葉を聞いたウィルとイリーナは微笑んで頷いた。
「あ、それと………リースさん。女性として”色々”と頑張って下さい。一人の女の子として応援しています。」
「……………ありがとうございます。」
可愛らしい微笑みを浮かべるリタの言葉を聞いたリースは頬をわずかに赤くして頷き
「ハハ…………リースが女性として頑張るって………なんか想像できへんな。」
ケビンは苦笑しながら呟いたが
「うわ〜………ケビンさん、今の言葉は男としてサイテーな発言よ………」
「全くだね!」
エステルはジト目で怒りの表情のジョゼットと共にケビンを睨み
「……………………」
「ケビンさん?」
リースは威圧感のある無言の無表情で同じように威圧感を纏った笑顔のリタと共にケビンを睨んだ。
「う”………スマン!今のはオレが完全に悪かった!本当にスマン!」
一方睨まれたケビンは焦った後、必死の表情で謝罪した。
「フフ………それじゃあ、またいつか会いましょう!」
「………ばい………ばい………」
そしてリタとナベリウスは微笑んだ後、光の階段を走って登り、門の中へと入って行った。
「………あれだけいた人数が半分近くまで減ったか……」
「………少し寂しいですね。」
「でもそれはここにいる全員がわかっていたはずよ。」
リタ達が門の中へと入ると、ウィル、セラウィ、エリザスレインが会話をしながら光の階段の前に来た。
「3人共………今回も手伝ってくれてありがとう!」
「ウィルさんには装備や道具の関係で本当にお世話になりました。」
「……ありがとうございました。ウィルさんが創った装備や道具に何度助けられたか………」
そしてエステルは微笑みながらウィルを見つめ、ケビンとリースは会釈をして感謝の言葉を言った。
「俺としても見た事のない素材でさまざまな物が創れた上、さまざまな人達から色んな知識を教えてもらったり、共に開発をしたりする事は勉強になったよ……それに今回の件のお蔭でセラウィ達と同じ時を歩めるようになったしね。」
「はい………お礼を言いたいのは私達の方ですよ。」
「……世界広しと言えど、あんな変わった方法で”神格者”になるなんて、貴方ぐらいよ………」
ウィルとセラウィはそれぞれ微笑み、エリザスレインは疲れた表情で溜息を吐いた。
「………私もウィルさんやティータさん達のお蔭で魔導杖のスペックが高くなりましたから、みなさんの足を引っ張る事がなく、助かりましたけど………唯一つ苦言を言わせてもらいますが、原型すらも無くなり変わり果てたこの魔導杖、財団の開発チームにどう報告すればいいんですか?その事を考えると、めんどくさいです………」
一方ティオは静かな表情で答えた後、自分が持つ”影の国”に現れた時と比べ、ウィル達の改造や強化により原型すらも無くなっている魔導杖―――魔杖ケイオスハートをウィルに見せると同時にジト目でウィルを睨み
「アハハ………」
「あうっ………ご、ごめんね、ティオちゃん。つい夢中で後の事を考えていなくて………」
ティオの言葉を聞いたウィルは苦笑し、ティータは申し訳なさそうな表情でティオを見つめ
「今回の件やその変わり果てた魔導杖に関してはエプスタインの方に七耀教会(オレら)から説明しといて、ティオちゃんにあんまり追求がいかんようにしとくわ。」
「………わかりました。必ずですよ。」
ケビンの話を聞き、ティオは静かに頷いた。
「さて……と。永恒達ともしばらくお別れだね。また、いつか会おう!」
(ああ。またいずれ会う日が来るその時まで、またな。)
「私やパラスケヴァスはその気になればいつでも会いに来れますから、その内会いに行って差し上げますわ。……精霊王女たるこの私が直々に出向いてあげる事、光栄に思いなさい!」
(―――――――――――)
そしてウィルの言葉にサエラブは頷き、フィニリィは高貴な雰囲気を纏って口元に笑みを浮かべてウィルを見つめ、プリネの身体の中にいるパラスケヴァスはウィル達を見つめ
「それじゃあみんな、お元気で!」
「またいつか、会いましょう!」
「……それじゃあね。」
ウィル達はそれぞれ微笑んだ後光の階段を登り、門の中へと入って行った。
「さて……そろそろ既に生を全うした我々も帰りましょうか……」
「はい。」
「ええ。」
「「ああ。」」
ウィル達が門の中へ入ると、シルフィア、ティナ、ラピス、リン、ティファ―ナが光の階段の前に来た。
「それでは陛下、イリーナ様………我々はお先に失礼します。再び陛下達と共に戦ったこの記憶……魂の奥底に刻み付けておきます。」
「私は今回の件で陛下達に真の幸せが訪れた事をこの目で確認し………本当によかったです。」
「陛下。エステルに生まれ変わった私達はエステルと共に陛下達を見守っています。」
「貴方達が永遠の幸せである事……心から願っている。」
「生まれ変わっても我が主は永遠に貴方です、陛下!新たな生を受け、陛下達との記憶を忘れていても、いつか必ず思い出し、陛下達の前に参上します!」
シルフィア達はそれぞれ微笑みながらリウイとイリーナを見つめ
「ああ。生まれ変わった再びお前達と出会う事……楽しみにしている。いつかまた会おう………我が戦友達よ。」
「みなさん、お元気で…………」
見つめられたリウイは静かな笑みを浮かべて、優しげな微笑みを浮かべているイリーナと共にシルフィア達を見つめた。
「………お世話になりました。シルフィアさんの”聖騎士”としての在り方……オレ達にとっても勉強になりましたわ。」
「わざわざ治癒魔術を教えて頂き……本当にありがとうございます、ティナさん。ティナさんに教えてもらった治癒魔術……一人でも傷ついた方達の傷を癒すために使わさせてもらいます。」
「自分達としてもシルフィア殿とティファ―ナ殿のような騎士に出会えて、光栄だった。」
「皆さんの新たな生が幸せに満ちた生であることを心から祈っております。」
そしてケビン、リース、ミュラー、ユリアはそれぞれ会釈をしてシルフィア達を見つめ
「えへへ……ラピスとリンと一緒に戦えたり、楽しく話したりした事………絶対忘れないわ!」
「またいつか会いましょうね、ティナさん……」
「シルフィア様達と出会えた事………永遠に余は忘れん!生まれ変わったシルフィア様と出会える事………余は絶対に信じているぞ!そして……必ずシルフィア様のお言葉を父に伝えるぞ!」
エステルとペテレーネは微笑み、リフィアは胸を張って高々と叫んでシルフィア達を見つめ
「………サフィナさんへの伝言……必ず伝えます。そして……ティファ―ナさん達が誇る”ルクセンベール”の誇り……絶対に忘れません。」
「ミントはミントのやり方でみんなを守っていくね、シルフィアさん!」
ツーヤは静かな笑みを浮かべ、無邪気な笑みを浮かべているミントと共にシルフィア達を見つめた。
「ええ………私達もいつかみなさんと再会する事………心から楽しみにしております。」
「皆さんにイーリュンの加護を………」
「フフ、それじゃあね。」
「さらばだ!」
「またいつか会おう!誇り高き戦友達よ!」
そして仲間達に見つめられたシルフィア達はそれぞれ微笑んだ後シルフィア達は光の階段を登り、門の中へと入って行った。
「さて………と。そろそろ私も帰ろうかな……」
「……貴女より遅く帰還するなんて屈辱……絶対に受けてたまるものですか。」
シルフィア達が門の中へと入って行くとカーリアンとファーミシルスが光の階段の前に来た。
「フフ……今回も楽しかったわ♪いえ……シルフィア達とまた一緒に戦えたから、それ以上ね♪」
「……今回の件のお蔭で久々に歯ごたえのある奴等とも戦えて楽しかったわ。一応、礼を言っておくわ。」
そして2人はそれぞれ不敵な笑みを浮かべてケビン達を見つめ
「こちらこそ、ありがとうございました………2人の力には随分助けてもらいましたし………」
見つめられたケビンは静かに頷いた後、口元に笑みを浮かべて2人を見つめた。
「フフ、当然でしょ?この私がいるのだから。」
「フン。当然の結果をそんなに誇る必要がないでしょう?」
「一々煩い奴ね〜………ま、これでようやくあんたの顔をしばらく見れなくて生々するわ!」
「それはこちらの台詞よ。」
一方カーリアンとファーミシルスはいつもの口喧嘩を始めた後、互いを睨みあった。
「フフ………お二人の仲は相変わらずですね………」
「全く………この2人も少しは変わってくれてもいいものを………おい。時間がないのだから、続きは帰ってからにしろ。」
その様子をイリーナは微笑みながら見つめ、リウイは溜息を吐いた後、2人に注意し
「過去の学習をせず、相変わらず人に迷惑ばかりかけおってからに………これだからカーリアン婆は………」
リフィアは溜息を吐いた後呆れた様子でカーリアンを見つめたが
「なんですって〜!?いつもカミーリ達に心配させて、最終的に私とリウイに毎回、回収されるあんたに言われたくないわ!」
「い、痛い、痛い!痛いのじゃ〜!!」
怒りの表情で近づいたカーリアンに頭をぐりぐりされて呻き
「リフィアこそ学習していないじゃない。………なんでそうなるとわかって、言うんだか………」
エヴリーヌは呆れた表情で突っ込んだ。そして気が済んだカーリアンはリフィアから離れ、光の階段の前に戻った。
「じゃあね♪また、どっかで会いましょう♪」
「………失礼するわ。」
カーリアンは片目をウインクし、ファーミシルスは静かな表情で言った後、光の階段に登り、門の中へと入った。
「………そろそろ私達も帰りましょうか。」
「はい。」
「ああ。」
カーリアン達が門の中へ入ると、自分の使い魔達全員を自分の身体に戻したプリネ、ツーヤ、レーヴェが光の階段の前に来た。
「またしばらくお別れね、ヨシュア………」
「次に会えるのはいつになるかわからないが………次に会った時はもっと見違えている事を期待しているぞ。」
「うん……2人とも元気で。ツーヤ、姉さんと………君にとっては色々思う事があるかもしれないけど、できればレーヴェの事をこれからも頼むよ……」
プリネとレーヴェに微笑まれたヨシュアは頷いた後、ツーヤに視線を向け
「………お任せ下さい。主を守る事は当然ですが、部下を守る事も上司の努めですから………最も、レーヴェさんより実力がないあたしがレーヴェさんを守る事なんて、ないと思いますが………」
視線を向けられたツーヤは頷いた後、苦笑しながら言った。
「リシャール大佐………”剣聖”直伝の剣技、見事でした。」
「フフ………失望させていなくて幸いだよ。私の方こそ君の本当の実力を知れて、よかったよ………」
一方レーヴェはリシャールに視線を向けて口元に笑みを浮かべて見つめ、見つめられたリシャールも口元に笑みを浮かべた。
「アガット・クロスナー………次に会う時、どこまで強くなっているか、楽しみにさせてもらおう………」
「へっ。次こそはテメェに一泡吹かせてやれるぐらい強くなってやるぜ。」
「もう、アガットさんったら………」
リシャールから視線を変えたレーヴェの言葉を聞いたアガットは不敵な笑みを浮かべ、ティータは苦笑しながらアガットを見つめた。
「そういえば、ツーヤ………ミントが”扉”で記憶を取り戻した話を聞いて、ずっと気になっていたんだけど、確か貴女を指定した”扉”もあったわよね?もしかしてミントのように、貴女も記憶を………」
一方ある事を思いだしたプリネはツーヤに尋ね
「………はい。全て思い出しました。あたしが何者であるかを。」
尋ねられたツーヤは静かに頷いて答えた。
「え………!?」
「わあ………ツーヤちゃんも思い出したんだ!よかったね!もしかしてツーヤちゃんは実は凄いドラゴンだったりするの?」
ツーヤの言葉を聞いたクローゼは驚き、ミントは嬉しそうな表情をした後、首を傾げてツーヤを見つめ
「アハハ………さすがにミントちゃんみたいな凄いドラゴンじゃないから………あたしの過去は―――――」
見つめられたツーヤは苦笑して答えた後、自分の正体――――かつては一国の王女であった事を説明した。
「ふ、ふえええ〜〜〜!?ツーヤちゃんがお姫様だったなんて………」
「わあ………!凄いよ、ツーヤちゃん!」
「………ようやく納得できました…………幼かった貴女があんなにも礼儀作法がしっかりしていた事に………」
ツーヤの過去を知ったティータは驚き、ミントは表情を輝かせて静かな表情になっているペテレーネと共にツーヤを見つめ
「ツーヤちゃんが王女だったなんて………………ねえ、ツーヤちゃん。一つだけ聞いてもいい?」
クローゼは驚いた後、不安そうな表情でツーヤに尋ねた。
「はい、何ですか?」
「ツーヤちゃんは自分の国や家族の元に帰りたいと思わないの……………?」
「………………今のあたしはマスター―――プリネ様の”パートナー”です。これがあたしが決めた”道”です。それは誰にも揺るがす事はできません。………それにあたしがいなくなった後のアルフヘイムは妹がしっかり治めていますから、大丈夫です。」
クローゼの疑問にツーヤは凛とした表情で答え
「………強いのね、ツーヤちゃんは………私もツーヤちゃんを見習わないとね…………」
答えを聞いたクローゼは眩しそうな表情でツーヤを見つめた。
「……ありがとう、ツーヤ。これからもよろしくね………」
「はい、マスター。」
そしてプリネとツーヤは互いの顔を見て微笑み合った後、レーヴェと共にケビン達に背を向け、光の階段を登り、門の中へと入って行った。
「よし、プリネの姉である余達も続くぞ。」
「ん。」
「うふふ。勿論、お姉様の妹のレンも続かないとね♪」
プリネ達が門の中へと入って行くとリフィア、エヴリーヌ、レンが光の階段の前に来た。
「此度の件………良い冒険であった!感謝するぞ!」
「エヴリーヌも一杯楽しめたから、お礼を言っておくね。………ありがとう。」
「うふふ………こんな素敵な”お茶会”に招いてくれてありがとう♪」
そしてリフィア達はそれぞれ微笑みを浮かべてケビン達を見回し
「……こちらこそリフィア殿下達の力に何度助けられた事か。礼を言いたいのはこっちの方ですよ。」
「……ありがとうございました。………お元気で。」
ケビンとリースはそれぞれ微笑みを浮かべて答えた。
「………ねえ、セオビットお姉様。お姉様に聞きたい事があるんだけど。」
「?何かしら。」
レンの疑問を聞いたセオビットは首を傾げて尋ねた。
「………”本物”の親ってそんなにいいものなの?お姉様がお姉様の本当のママと話すようになってから、お姉様、前と比べて凄く明るくなったように見えるし。」
「!レン…………」
「…………………」
レンの疑問を聞いたペテレーネは驚き、静かな表情のリウイと共に黙って見つめた。
「…………どうかしらね。私と母様の場合は事情が一般の親子とはあまりにも異なるから何とも言えないけど………少なくとも私は母様と和解した事に後悔はしていないし、母様とこうやって親子として接する事に幸せを感じているわ。」
「セオビット……………」
一方尋ねられたセオビットは静かな表情で答えた後微笑み、シルフィエッタは優しい微笑みを浮かべてセオビットを見つめた。
「………………そう………………」
そしてセオビットの答えを聞いたレンは複雑そうな表情で考え込みながら呟いた。
「レンちゃん………あのね……レンちゃんが昔、どれだけ傷ついたかわからないけど………わたしはレンちゃんのお父さんとお母さんは今でもレンちゃんの事を大切に想っている………そう願っていてもいいよね………?」
「………………………ふ、ふん。勝手にすればいいじゃない。でも、オーバルギアの方は願うだけじゃなくってちゃんと完成させて……絶対にメンフィルに留学して来なさいよ?レンとメンフィルで強くした”パテル=マテル”はどんな挑戦だって受けるんだから!」
優しい微笑みを浮かべて語るティータの言葉を聞いたレンは複雑そうな表情で考え込んだ後、真剣な表情でティータを睨んだ。
「うん……頑張るね!」
「ふふっ………」
「やれやれ………物騒なチビっ子どもだぜ。」
レンの言葉に嬉しそうに頷いたティータをエステルは微笑ましそうに見守り、アガットは呆れた表情で溜息を吐いた。
「それでは、さらばじゃ!」
「またね。」
「皆さん、ご機嫌よう♪」
そしてリフィア、エヴリーヌ、レンは別れの言葉を継げた後ケビン達に背を向けて、光の階段を登り、門の中へと入って行った。
「……次は私達が帰りましょうか、母様。」
「ええ…………」
リフィア達が門の中へ入るとセオビットとシルフィエッタが光の階段の前に来て、ケビン達を見回した。
「………今回の件で過去を清算できたから、感謝するわ。………ありがとう。」
「私は今回の件に巻き込まれたお蔭でようやく幸せになれました………本当にありがとうございました。」
「………こちらこそ、色々お世話になり、ありがとうございました。シルフィエッタ姫のこれからの人生が幸福に満ちた人生である事を心から祈っております。」
セオビットとシルフィエッタに微笑まれたリースは静かに頷いて微笑んで言った。
「フフ………帰ったら色々とお話ししましょうね、シルフィ。」
「はい、イリーナ………」
「………2人ともいつの間にそんなに親密になった?」
そして微笑みあっているイリーナとシルフィエッタを見たリウイは眉を顰めて2人を見つめたが
「フフ……それは勿論………」
「”女の秘密”ですよ、あなた………」
「……………」
2人に微笑まれ、呆れた様子で黙り込んだ。
「それじゃあ、父様。私達は先に帰っているわね。………他のみんなも機会があれば、また会いましょう。」
「またいつか、みなさんと再会できる事、心から願っています!」
そしてセオビットとシルフィエッタはケビン達に微笑んだ後、光の階段を登り、門の中へと入って行った。
「………これでメンフィルの者達は俺達だけだな。………そろそろ俺達も皆に続き、帰還するぞ。」
「「「はい。」」」
セオビット達が門の中へ入ると、リウイ、イリーナ、エクリア、ペテレーネが光の階段の前に来た。
「リウイ、今回も手伝ってくれてありがとうね!すっごく助かったわ!」
「………俺達は元の世界に帰還する為に当然の事をしたまでだ。こちらこそ再びお前達やかつての戦友達と共にの共闘できた事………良い思い出になった。」
エステルに微笑まれたリウイは静かな笑みを浮かべて答えた。
「えへへ………聖女様達と仲良くするのはいいけど、イリーナさんを一番大事にしてあげなさいよ!グラザ様も貴方にその事、言ってたでしょ?」
「………それぐらい言われなくてもわかっている。余計なお世話だ。」
そしてエステルの言葉を聞いたリウイは溜息を吐いて答えたが
「フフ………エステルさんの言う通り、私を”一番”大切にして下さいね、あなた?」
「………………………」
すざましい威圧が籠ったイリーナに笑顔を向けられ、冷や汗をかいて黙り込んだ。
「ふふっ…………あ、そうだ。イリーナさん、よかったね!エクリアさんとリウイが仲直りできて!」
「ええ…………今回の件に巻き込まれた事、感謝しています………ようやく姉様とリウイと一緒に笑い合える日が来たのですから………」
「………エステルさんにはセリカ様の事も含め、本当にお世話になりました………もし何か困った事があればいつでも相談してください。私で力になれる事があれば、喜んで力をお貸ししましょう……………それと……フェミリンスの事、よろしくお願いします………」
「うん、任せて!」
(………子孫に心配されるほど、私は落ちぶれていませんわ。)
エクリアに微笑まれたエステルは微笑みで返し、エステルの棒の中にいるフェミリンスは溜息を吐いていた。
「聖女様、今回も一緒に戦えてとても嬉しかったです!」
「そんな……私の方もエステルさん達と共に行動ができ、楽しかったですよ………それと前から気になっていたのですが、その”聖女様”という呼び方はどうにかならないのですか?リウイ様達より敬称を付けられている事に、正直畏れ多いのですが………」
エステルの言葉に微笑みながら頷いたペテレーネは苦笑しながらエステルに言ったが
「あら、いいじゃない。それだけ貴女が慕われているという証拠なんだし。」
「えへへ、ごめんなさい…………でも聖女様はあたしにとっていつまでも憧れの存在ですから、呼び方を変えるなんてできません!」
「それにご存知かと思いますが、この娘の考えを変えるのなんて無理ですよ………なんせ”神”すらも自分の考えで説得した娘ですから。」
「あう……………ハア………わかりました………もう、諦めます………」
イリーナとエステル、シェラザードの言葉を聞いて溜息を吐いて頷いた後、シェラザードに視線を向けた。
「フフ………シェラザードさんとはそれなりに会っていますから、みなさんの中ではすぐにまた会いそうですね………」
「ええ。また色々と指導、お願いします、師匠。」
「………最初はその呼び方に慣れませんでしたけど………不思議ですね………今ではその呼び方に心地よく感じているのですから…………貴女は私にとってたった2人の弟子の1人。魔術以外でも相談があればいつでも相談して下さいね。私は貴女の師匠であると同時に………貴女の姉から任されている身ですから。」
「………はい。その時はよろしくお願いします。」
「………勿論貴女もよ、ティオさん。短い間とはいえ、貴女は私にとって大切な教え子ですから………」
「………ありがとうございます。その時がくれば、お願いします。………ペテレーネさんもお元気で。」
ペテレーネに微笑まれたシェラザードとティオはそれぞれ会釈をして頷いた。
「ええ………皆さんもお元気で!」
「またいつか、会いましょう!」
「今までお世話になりました………ありがとうございました!」
「それぞれが目指す道に辿り着ける事………心から祈っているぞ。我が戦友達よ………!」
そしてペテレーネ、イリーナ、エクリア、リウイはそれぞれ微笑んだ後光の門の中へと入って行った…………………
既にお気づきと思いますが零に向けての話がいくつかあります♪………感想お待ちしております。
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第484話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます。 Mr.ハリマエ様 まあありますよ。ちょっとだけですが。 本郷 刃様 3rdは公式でZ(零)へと繋がると謳っていますからね(sorano) この3rd篇自体が零に向けての伏線と言っても過言じゃないですからね(本郷 刃) 次回も何かしらの付箋があるのかな?(黄昏☆ハリマエ) |
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