本編(序章完結・後編) |
悪魔騎兵伝(仮)
第四話 嵐の後に告げるもの
C6 盟主の威光
C7 貴族の傲慢
C8 灯の眷属
C9 盟主任命(仮)
C10 前夜
次回予告
■序章完結におけるあとがき
C6 盟主の威光
トーマ城玉座の間。玉座に座るエグゼナーレ、傍らにはヴォルフガング・オーイーと三大臣。周りにはトーマ城に駐留する各国の一同が集い、玉座の周りに現れる各国の画面に映る代表者達。ゼウステス王国の画面に映るゼウステス99世が眉を顰める。
ゼウステス99世『法王様。何も…シュヴィナの地で新たな盟主を決め直す必要はないのでは?』
オンディシアン法王領の画面に映るアレクサンドルは目を細め、瞳を動かした後、ゼウステス99世の方を向く。
アレクサンドル『いや、別の会場を選ぶと余計な詮索をされると思うてのぉ。』
腕を組むゼウステス99世。
ゼウステス99世『まあ、確かにそういうことならば…。しかし、混乱を避ける為、盟主を早急に決めなくては。』
息を吐くアレクサンドル。
アレクサンドル『まあ、そうだな。そうしなければアレス王国の後継者問題も解決しないからのぉ。』
眼を見開くアレス王国の画面に映るヴィクトリア。
ヴィクトリア『ほ、法王様!それは…どういう??』
アレクサンドルは頬杖をついてヴィクトリアの方を向く。
アレクサンドル『実はアレス王国マール王の遺言でな。自分が死んだ時、盟主に王を決めてほしいと。』
アレクサンドルの方を向くアレス王国の一同。ヴィクトリアの瞳が見開かれる。
アレクサンドル『どうしたのだ?ヴィクトリア王女?』
息を切らすヴィクトリア。
アレクサンドル『ヴィクトリア王女!』
首を左右に振り、眉を顰めるアレクサンドルの方を向くヴィクトリア。ヴィクトリアは喉を鳴らす。
ヴィクトリア『…ふっふぅ。いえ、な、何でもありません。』
汗が噴き出る額に手を当てるヴィクトリア。
オクレパメラ『あ〜ら、何でも無いようには見えなかったのだけれど。』
シェプスト国の画面に映るオクレパメラを睨みつけた後、アレクサンドルの方を向くヴィクトリア。
ヴィクトリア『法王様。私はその様な事、一言も聞いておりません。何かの勘違いでは?』
ヴィクトリアはアレス王国の一同の方を見る。
ヴィクトリア『ほら、お前達からも何か言いなさい。』
デンザインが一歩前に出る。オンディシアン法王直轄15神将で15神将軍を務める奇跡の癒し手と呼ばれる聖女、灰色のジャンヌがアレクサンドルの画面に現れる。
ジャンヌ『勘違いではございません。』
ジャンヌは懐から書簡を取り出すとアレクサンドルに渡す。唖然とするヴィクトリア。眉を顰めるデンザイン。書簡を広げ目配せするアレクサンドル。アレクサンドルは顔を上げ、書簡を前につきだす。
アレクサンドル『ほれ、ここには盟主のと書いてある。どうだ?筆跡も確認するか。』
ヴィクトリアは歯を食いしばる。
ヴィクトリア『し、しかし、そこに書かれている盟主というのはエグゼナッセ様の事でございましょう!』
アレクサンドル『ここには盟主とだけしか書かれていない。これは貴族連合の盟主であれば誰であっても良いということなのであろう。』
ヴィクトリアは眼を見開く。ヂョルガロン王国の画面に映るヂョルガロン国王ギュウキュウの口が開く。
ギュウキュウ『誠に失礼ながら、この場で発言させて頂きます。』
ヂョルガロン王国の画面の方を向く一同。
ギュウキュウ『長男相続は貴族が長年遵守し続けてきた伝統!おこがましいようですが、盟主殿が選ばなくても既に決定されている筈です。我が国の古典国家復古もその伝統故、いまだにテウシン王国は復活できていないのです!』
一礼するギュウキュウ。ヴィクトリアはガッツポーズをする。
ヴィクトリア『そ、その通りですわ。王は長男相続が…。』
アレクサンドルの傍らに立つオンディシアン法王直轄15神将の13神将を務める鮮血のカルガルト・フォン・リヒトシュターゼイン。
アレクサンドル『アレス王国国王マールは聡明な王だった。ここは伝統よりも故人の遺志を尊重した方が良いと思うのだがな。』
アレクサンドルはカルガルトの顔を覗き込む。
アレクサンドル『どうだね。鮮血殿?』
頷くカルガルト。ヴィクトリアは眼を見開く。
ヴィクトリア『ほ、法王様の…お、おっしゃる通りでありますわ。お、おほほほほほほ。』
エグゼナーレの方を向くアレクサンドル。顎に手を当て、眼を細めるヴィクトリア。エグゼナーレが立ち上がる。
エグゼナーレ『失礼ながら…。』
ゼウステス99世がエグゼナーレを睨みつける。
ゼウステス99世『貴様はこの話し合いに参加できると思っているのか!』
エグゼナーレ『いえ、我が領海内にロズマール帝国軍の新鋭戦艦が侵入しました。』
ざわめきが巻き起こる。バッカがエグゼナーレを睨みつける。
バッカ『馬鹿じゃねえの?』
オクィ『敵の侵入を許すとはシュヴィナも落ちたものだ。』
神聖マロン帝国の画面に映るクトリンキン。
クトリンキン『まったく、何をやっているのか!』
眉を顰めるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『いえ、ご安心下さい。他国の力を借りずとも我々には超巨大航空戦艦アクマドがあります。』
パリィが眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げる。
パリィ『ああ、それで市民を避難させてたんですか。たいした自信ですね。』
拳を震わせるエグゼナーレ。シュヴィナ王国兵士Dが駆けこんでくる。
シュヴィナ王国兵士D『た、大変です!ロズマール王国から通電が!!』
エグゼナーレはシュヴィナ王国兵士Dの方を向き、正面を向く。
エグゼナーレ『宣戦布告か…。よかろう、受けて立つ。繋げ!』
ロズマール帝国の画面が現れ、ゼオン・ゼンゼノスがイシュトイリッタールと共に映る。ゼオン・ゼンゼノスを睨みつけ、一歩前に出るエグゼナーレ。
エグゼナーレ『現れたなゼオン・ゼンゼノス!』
ざわめきが起こる。ゼオン・ゼンゼノスは右手で頭を抱え、溜息をついてエグゼナーレの方を向く。
ゼオン・ゼンゼノス『…エグゼナーレ王子。貴国に向かった我が軍最新鋭のホバー戦艦メイルシュトロム・リョメルディオは…。』
眉を顰め、立ちつくすエグゼナーレ。
エグゼナーレ『えっ?ホ…ホ…ホバー…。』
青ざめるエグゼナーレ。ヴォルフガング・オーイーが一歩前に出る。
ヴォルフガング・オーイー『ホバーといえば…水陸両用。』
モーヴェ『じょ、上陸もあり得るということか!何と言う事を考えるのだ!アクマドの砲撃が届かない内陸まで逃げ込まれたら…。』
シュヴィナ王国兵士Eが駆けこんでくる。
シュヴィナ王国兵士E『た、大変です!て、敵戦艦が…敵戦艦がり、陸地に上がって行きました!』
顔を見合わせる三大臣とヴォルフガング・オーイー。エグゼナーレがシュヴィナ王国兵士Eを見つめる。
エグゼナーレ『天空軍を至急全機向かわせろ!アクマドと共に砲火を集中させろ!』
シュヴィナ王国兵士E『はっ!』
シュヴィナ王国兵士Eが一礼し、去って行く。ニーソウがチョウカツに耳打ちする。チョウカツは白い顎鬚をさすりながら、2、3回頷き、ニーソウの方を向いて口を動かす。エグゼナーレはゼオン・ゼンゼノスを睨みつける。
エグゼナーレ『謀ったな!』
眉を顰めるゼオン・ゼンゼノス。
ゼオン・ゼンゼノス『話を最後まで聞きたまえ。貴国に向かったホバー戦艦は貴国に使者として向かったヴロイヴォローグ将軍の部下によって強奪されたものだ。』
ざわめきが巻き起こり、顔を見合わせる一同。メルミン、ルソタソ領王国の画面に映るゼンドとルッソは額に装着したロッリ・コーンの角とショダ・コーンの角をぶつける。眼を見開くバッカ。
バッカ『ヴロイヴォローグだと!』
バッカの方を向くパリィ。
パリィ『ヴロイ…。』
モーヴェはファウスの方を見る。
モーヴェ『なんとあのヴロイヴォローグを討ち取ったと言うのか。アレス王国の王子は!!』
アレス王国の画面に映るヴィクトリアが眼を見開き、ファウスの方を向く。ざわめきが大きくなりトーマ城玉座の間の一同がファウスの方を向く。各国の画面に映る代表者達もファウスの方を向く。大きくなるざわめき。千年大陸連邦の画面に映るコルヴィデール・サンリバン。
コルヴィデール・サンリバン『あの少年が。』
アイ=アザト『あんな子が…。』
ロメン帝国の画面に映る皇帝タルキィサス。
タルキィサス『流石は剛強マール王の血を引いている子である。』
ゼウステス99世『貴族連合が下せなかった帝国軍の人型機構と帝国の誇る将を倒すとは…。』
オンディシアン教国の画面に映るクレメンス。
クレメンス『我が息子も倒せなかったあの男を下すとは…。』
親指の爪を噛みながらファウスを睨みつけるヴィクトリアの方を見るファウス。
ファウス『…お継母様。』
ゼオン・ゼンゼノスの赤い猫目に見つめられるファウス。ファウスは瞳を床に向けた後、ゼオン・ゼンゼノスの映る画面を見つめる。
ファウス『ゼオン皇帝。僕は…僕がそのヴロイヴォローグという方を殺したのです。』
ファウスは一歩前に出る。
ファウス『…僕が行けばそのヴロイヴォローグの配下の方達の怒りが収まるかもしれません。』
目を見開き、顔を見合わせる各国の代表者達。ヴィクトリアは満面の笑みを浮かべて立ち上がる。
ヴィクトリア『そうよ!良く言ったわファウス!』
ファウスはヴィクトリアを見つめる。眉を顰める各国の一同。
ファウス『お継母様…。』
エグゼナーレはファウスの方を向く。
ゼオン・ゼンゼノス『それは無理な話だ。』
目を見開いてゼオン・ゼンゼノスを見るファウス。
ゼオン・ゼンゼノス『彼らは私がシュヴィナと交渉するという姿勢に対して行動を起こした。彼らを止める為我が軍も少なからず被害を被っている。』
ファウス『は、話し合えば分かり合えるかもしれません!』
ゼオン・ゼンゼノス『脱走した縛り首が予定されている者がおめおめと処刑する側が設けた交渉のテーブルにつくと思うか!?』
目を見開くファウス。ゼオン・ゼンゼノスはエグゼナーレを見る。
ゼオン・ゼンゼノス『彼らの狙いはあきらかにシュヴィナ王国であり、エグゼナーレ王子。君の命だ。』
エグゼナーレは握り拳を震わせて、下を向く。ゼオン・ゼンゼノスは溜息を付き、傍らのイシュトリッタールを見つめた後、再びエグゼナーレの方を向く。
ゼオン・ゼンゼノス『彼らは我が国にとって賊軍では有るが…。』
赤猫目を見開くゼオン・ゼンゼノス。
ゼオン・ゼンゼノス『アレス王国とヨネス王国はともかく、講和を一方的に破ったシュヴィナ王国は信用することはできない。』
ゼウステス99世がゼオン・ゼンゼノスの方を向いた後、エグゼナーレを見つめる。
ゼウステス99世『確かにとても信用できる国家では無いな。』
クトリンキン『自業自得だ!』
ヨハンがヴィクトリアを見る。頷くヴィクトリア。ゼオン・ゼンゼノスを見つめるヨハン。
ヨハン『我々は貴国と講和を結ぶ事は大歓迎だ。』
頷くゼオン。
ゼオン・ゼンゼノス『分かりました。アレス王国とヨネス王国とは無条件で講和を結びましょう。』
頷くヨハンとヴィクトリア。エグゼナーレはゼオン・ゼンゼノスを睨みつける。呪文を唱えるゼオン・ゼンゼノス。トーマ城玉座の間の正面に現れる条文のホログラム。エグゼナーレはゆっくりと回るそれに近寄る。エグゼナーレを見下ろすゼオン・ゼンゼノス。
ゼオン・ゼンゼノス『シュヴィナ王国がその条文に書かれている事を承諾するのであれば、我々は貴国と講和を結び、我が国は彼らを正式に賊軍として認めましょう。』
頭に片手を当てて笑いだすエグゼナーレ。
エグゼナーレ『ふ、あははははふはははは!』
エグゼナーレの方を向く一同。
エグゼナーレ『そんなもの必要無い。我が国にはアクマドがあることを忘れたか!そんな部隊など血祭りに上げて…。』
シュヴィナ王国兵士Fが駆けこんでくる。
シュヴィナ王国兵士F『たたた、大変です!と、突如現れた航空機の大軍によってア、アクマドが…。アクマドの飛行板が使用不可及び舵損傷により航行不能と!!』
目を見開き、シュヴィナ王国兵士Fの方を見つめるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『嘘だ!あ…あのアクマドだぞ!あ、あの我が国が誇るアクマドだぞ!』
シュヴィナ王国兵士Fは額から大量の汗を流す。
シュヴィナ王国兵士F『嘘ではございません!』
パンデモがシュヴィナ王国兵士Fに駆けよる。
パンデモ『ほ、他の艦は?戦闘機は?』
シュヴィナ王国兵士F『アクマドの従属艦は全滅。我が国の天空軍は突如現れた航空部隊と敵艦から発進した航空部隊の挟撃に会い全滅…です。』
青ざめるモーヴェ。
モーヴェ『…アクマドも天空軍もやられただと。』
ヴォルフガング・オーイーは顎鬚をさする。
ヴォルフガング・オーイー『…まずいですな。残る戦力は少ない。』
泣き崩れるジェルン。
ジェルン『ああん。もう御仕舞よ!』
パンデモ『落ち着いて下さい!』
涙で化粧が崩れた顔をあげるジェルン。悲鳴をあげるパンデモ。
エグゼナーレ『き、貴様!こ、この!卑怯だぞ!!交渉中に天空軍の増援をよこすなんて!』
イシュトリッタールは眉を顰める。
イシュトリッタール『増援?先程、我が皇帝陛下もおっしゃいましたが、彼らは賊軍であります。我々からも追われる身なのですよ!』
エグゼナーレ『では、いったい何処から航空機の大軍が…。』
チョウカツが一歩前に出る。
チョウカツ『母艦を陽動に使った時間差攻撃じゃろう。』
エグゼナーレ『陽動…。そんな。』
目が潤みだすエグゼナーレ。ゼオン・ゼンゼノスはエグゼナーレを見つめる。
ゼオン・ゼンゼノス『もう一度言います。エグゼナーレ王子。もし、貴国がその条文を受け入れるのであれば、我が国は彼らを正式に賊軍として認めましょう。』
エグゼナーレ『お前らが賊軍として認めたからと言ってどうだというのだ!』
ヴォルフガング・オーイーが一礼して、一歩前に出る。
ヴォルフガング・オーイー『エグゼナーレ様!アクマドの戦闘不能により、我が国の現段階で導入できる戦力は微力。このまま我が軍のみで戦えば敗北は必至。我が国はこの地より撤退するしかありません。』
エグゼナーレがヴォルフガング・オーイーを睨み付ける。
エグゼナーレ『たかだか賊軍相手に引くことなどできるものか!この場でそんなことをすれば、シュヴィナは全国の笑いものになり、信用を失う!』
ヴォルフガング・オーイーが頷く。
ヴォルフガング・オーイー『しかし、この場でロズマール帝国が彼らを賊軍として認めれば…駐屯軍も戦闘に参加する事が出来ます。』
目を見開くエグゼナーレ。
ヴォルフガング・オーイー『先程の条文。少々不平等な所もありますが、ここはそれに目をつむり、早急に受諾し、ロズマール帝国と好を結ぶべきです。』
歯を食いしばった後、顔を上げ、周りを見回すエグゼナーレ。
エグゼナーレ『賊軍ならば貴殿達は我々に手を貸すのですね。』
顔を見合わせ頷く、各国の代表者達。バッカが腕を組む。
バッカ『まあ、賊軍ならなぁ。』
バッカの方を向くパリィ。
パリィ『無論ねぇ。』
エグゼナーレはゼオン・ゼンゼノスを見つめる。
エグゼナーレ『いいだろう。受諾する。』
ゼオン・ゼンゼノスは頷く。
ゼオン・ゼンゼノス『…では、彼らを我々はこの場で正式に賊軍として認めましょう。』
アレクサンドルは周りを見回した後、エグゼナーレの方を向く。
アレクサンドル『…これだけの軍勢をまとめるのは大変だろう。』
首をかしげるエグゼナーレ。アレクサンドルは周りを見回す。
アレクサンドル『ここにエグゼナーレを臨時の貴族連合盟主として任命しようと思うが…。』
ゼウステス99世がアレクサンドルの方を向く。各国の代表者達もアレクサンドルの方を向く。
アレクサンドル『無論、ロズマール帝国の賊軍を討伐する間だけだが。』
アレクサンドルは手で顎をさすり、ゼウステス99世の方を向く。
アレクサンドル『どう思うかね。ゼウステス99世殿?』
ゼウステス99世は眼を細めてアレクサンドルの方を向く。
ゼウステス99世『…よろしいのでは。』
頷き、周りを見回すアレクサンドル。
アレクサンドル『他に反論は?』
アレクサンドルは息を吐く。
アレクサンドル『無いな。では、エグゼナーレよ。貴殿を貴族連合臨時盟主として認める!』
跪くエグゼナーレ。
C6 盟主の威光 END
C7 貴族の傲慢
トーマ城城壁、エグゼナーレ、傍らにはヴォルフガング・オーイーと三大臣。周りにはトーマ城に駐留する各国の一同が集い、ロズマール帝国の画面にはイシュトリッタールが映っている。ホログラムで現れるトーマ城周辺の地図。ロズマール帝国賊軍の位置が示されている。トーマ城に駐屯する各国の簡易化された部隊のホログラムが地図の外に浮かんでいる。飛び交う各国の天空軍の偵察機達。フィオラ山地の方を向く一同。エグゼナーレが一歩前に出る。エグゼナーレは三大臣達とヴォルフガング・オーイーの方を見た後、正面を向く。
エグゼナーレ『軍議を開始する前に私はまだ戦場に出た事が無い。そこで、この戦闘における総指揮官を任命したいと思う。』
一斉にエグゼナーレの方を見る一同。バッカが満面の笑みを浮かべ、ヒート王国の兵士達を整列させる。
バッカ『俺が総指揮を執る!この動きを見よ!』
バッカは城壁の前に出て剣を振り上げる、左右に移動するヒート王国の兵士及び人型機構達。
バッカ『構え!』
一斉に武器を構えるヒート王国の兵士達。
バッカ『戦え!』
激しく打ち合う兵士達。
バッカ『止め!』
止まる兵士。チョウカツが目を細め、白い顎鬚をさすり、ニーソウに耳打ちする。2、3回頷くニーソウ。エグゼナーレの方を見るバッカ。
バッカ『どうだ!俺こそ総指揮官に相応しい。』
エグゼナーレ『バッカ王子。気持ちはありがたいが総指揮官はもう決めている。』
エグゼナーレはチョウカツの前に歩み寄り、一礼する。
エグゼナーレ『チョウカツ将軍、総指揮を任せます。』
頷くチョウカツ。バッカは眉を吊り上げて、エグゼナーレに駆け寄り、胸倉を掴む。
バッカ『なっ!てめぇ!!』
エグゼナーレ『無礼だぞ!』
バッカを睨みつけるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『私は臨時であるが貴族連合盟主だ!』
舌打ちするバッカ。
バッカ『盟主でなくなったら覚えていろよ。』
バッカは鼻息を荒げて、元の位置に戻る。エグゼナーレはチョウカツを見つめる。チョウカツは一礼する。
チョウカツ『よろしいでしょう。』
チョウカツを睨みつけるバッカ。チョウカツは咳払いしながらエグゼナーレの側へと進む。
エグゼナーレ『では、これより軍議を開始する!オーイー!』
ヴォルフガング・オーイー『はっ!』
ヴォルフガング・オーイーが一礼して一歩前に出る。
伸縮式指し棒でロズマール帝国賊軍の位置を指す。
ヴォルフガング・オーイー『敵は今、この位置を走行中。』
2、3回頷き、顎に手を当てるオクィ。
オクィ『後、数時間で御対面というところか。』
ヴォルフガング・オーイーは頷き、イシュトリッタールを見る。イシュトリッタールは一礼し、正面を見る。
イシュトリッタール『ヴロイヴォローグ残党軍の詳細については私から。』
イシュトリッタールの方を向く一同。
イシュトリッタール『ヴロイヴォローグ残党軍の駆るホバー戦艦メイルシュトロム・リョメルディオは…。』
ロズマール帝国の画面に映る艦橋が人型機構となり二刀流の大艦刀を装備し、艦首にドーザーブレード、前方に三連装の砲塔を二門、後方には双胴の飛行板及び上陸部隊用のハッチを持つホバー航空戦艦メイルシュトロム・リョメルディオの航空写真。感嘆の声が漏れる。パリィが一歩前にでる。
パリィ『ほう、こいつがねぇ。』
バッカは顎に手を当て、顔を上げる。
バッカ『おおっとこれはすげぇな。我が国にも欲しい位だ。』
キッドが手を叩く。
キッド『なんとすばらしい戦艦だろう!』
プリン姫は写真を見た後、アイ=アザトの方を向く。
プリン姫『アザト様。これは勇者ロボに似ておりません?』
アイ=アザト『まあ、確かに形状は似ておりますが…。』
エグゼナーレが眉を顰め、喉を鳴らす。一同はエグゼナーレの方を向く。ざわめきが止む。
イシュトリッタール『この艦はホバー戦艦であり、悪路に耐える為艦首にドーザーブレードを装備、前方に二門三連装の砲塔を装備し、艦尾方面に双胴の飛行板を採用しております。無論、上陸部隊用のハッチも。最大搭載量航空機100機、人型機構80機であります。』
ヨナンが飛び上がる。
ヨナン『そんなに入るのか!』
オクィ『我々の機動城塞でも標準…航空機50機、人型機構25機程度…。』
オクィは簡略化された各国の部隊のホログラムを見つめる。
オクィ『まあ、大抵は人型機構と航空機の比率は逆転しているがな。』
頷く一同。
イシュトリッタール『本艦の最大の特徴はリョ=メルディオ将軍により採用された人型機構の上半身型艦橋であり、その両手に大艦刀を装備する事によって戦艦でありながら近接への攻撃も得意ということであります。』
バッカが腕組みする。
バッカ『戦艦の癖に刀を振りまわせるのは魅力だな。』
キッドが前に出る。
キッド『では背後が弱点となるわけね。』
ヒジカタがキッドを見る。
ヒジカタ『そうとも限らないだろう。使い手の練度にもよるが。』
バッカは鼻で笑う。エグゼナーレがイシュトリッタールを見つめる。
エグゼナーレ『それで、残党軍の上陸部隊の編成は?』
イシュトリッタール『…分かりません。』
エグゼナーレはイシュトリッタールを睨みつける。
エグゼナーレ『そんな無責任な!だいたい元々貴国の軍勢ではないか!それとも貴国は我が国を貶めようと!』』
イシュトリッタール『分からないものは分からないのです!こちらだって反乱で混乱しているのです!情報部のサー…。』
イシュトリッタールは咳払いする。
イシュトリッタール『本部長ですら情報を把握できておりません!』
唖然とするエグゼナーレと三大臣達。チョウカツが咳払いし、フィオラ山地を見た後、地図を見る。
チョウカツ『敵の事はだいたい把握できた。味方の陣容を把握しておきたい。』
チョウカツはニーソウの方を向く。一歩前に出るニーソウ。
ニーソウ『はっ!』
チョウカツ『記録を。』
ニーソウは一礼し、呪文を唱える。ニーソウの前に現れる薄緑で半透明の板。チョウカツは一同を見回し、腰に両手を組んで置く。
チョウカツ『まず、我が軍はテンエン級空母1隻のみ。格納庫はハクヒとヒムキョクがシュヴィナに譲渡する金銀財宝で埋め尽くされておる。』
眉を顰め、目を見開くエグゼナーレ。そっぽを向き、鼻で笑うバッカ。
バッカ『総指揮官の部隊が空母1隻だけだとは…笑える!』
チョウカツはバッカを見つめる。
チョウカツ『ヒート王国は?見た所、お前さんの部隊が一番多そうだが…。』
チョウカツから更に顔を背けるバッカ。オクィがバッカの方を向く。
オクィ『おい、バッカ。』
バッカは眉を顰めて、チョウカツの方を向き、後頭部で両手を組む。
バッカ『はいはい。分かりましたよ。機動城塞ヒートに航空機20機、ヴェルクーク級人型機構40騎だ。』
パリィがバッカの方を向く。
パリィ『多いな。』
バッカ『あたりめえだ。第二次遠征でロズマール帝国の野郎ををギッタギタにしてやろうと思っていたからよ。徴兵令かけて一気に集めてやった。はは。』
頷くパリィ。
パリィ『ちなみに我が軍は機動城塞ポーターに航空機15、ヴェルクーク級人型機構35騎。』
バッカ『ほう、結構持ってきてるな。お前も。』
オクィが一歩前に出る。
オクィ『我が軍機動城塞ドジョに航空機10、ヴェルクーク級人型機構20騎。』
オクィの方を見るパリィとバッカ。
バッカ『少ねぇ!』
オクィ『元々、我が父の軍と合流する予定だったのだ。』
首を左右にふるバッカ。チョウカツは顎鬚をさすり、ファウスの方を見る。ファウスは頷いて一歩前に出、ヴェイロークも一歩前に出る。
ヴェイローク『我が軍は機動城塞ヴェルクシュイヴァンに航空機20、人型機構10騎。』
バッカ『こっちも少ねぇな!』
パリィ『第二次遠征をするつもりがあったんでしょうかねぇ。』
眉を顰めるヴェイローク。俯くファウス。チョウカツはヨナンの方を向く。ヨナンは一歩後ろに下がった後、一歩前に出る。
ヨナン『わ、我が軍に戦力なぞないぞ!ヴロイヴォローグとの戦いで全滅したからな!』
笑いだすバッカ、パリィ。サゼンが前に出る。
サゼン『我が国は駆逐艦ライメイにレイメイ級人型機構4機…。』
アイ=アザトとキッドがサゼンの方を向く。
アイ=アザト『ほう、あのサムライ人型機構として有名な…。』
キッド『駆逐艦ライメイは最高速度を記録したと聞いているぞ。』
サゼンはネイロの方を向き頷いた後、チョウカツの方を向く。
サゼン『なお、フィフス・エレメンタスは我が国の艦に同乗してきたため、戦力はありません。』
チョウカツは顎鬚を撫でる。キッドが前に出る。
キッド『我が軍は…アドヴァンス・ギャリー戦艦1隻のみ。』
ツァグトラが一礼する。
ツァグトラ『我が国はキコー級戦艦1隻、カッシャ級人型機構1機。』
ゲブセブは槍を持って、立ち上がる。2、3歩よろけながら進むゲブセブ。
ゲブセブ『我が国は…武装商船5隻。無論、わしも戦いますぞぉ!!』
ゲブセブは槍を上げる。
ゲブセブ『えいえいおーーーーっ!』
エグゼナーレがゲブセブに近づく。
エグゼナーレ『御年なのであまり無理はしないで下さい!』
ゲブセブは俯き、ハイテク車椅子に乗り込む。アイ=アザトが腰に手を当てる。
アイ=アザト『我が国は勇者ロボ1機のみ。』
頷くチョウカツ。
チョウカツ『あの勇者ロボとは心強い。』
チョウカツは眼を細めて、周りを見回す。
チョウカツ『あの調子のいい馬兄弟は?』
ヴォルフガング・オーイーが一歩前に出る。
ヴォルフガング・オーイー『北方九洲のカズーラ、バズーラ兄弟ですが、自ら斥候を志願し、フィオラ山地へと向かいました。』
チョウカツ『流石に、北方の山間の騎馬民族だ。』
チョウカツは顎鬚をさするのを止め、エグゼナーレを見つめる。
チョウカツ『して、シュヴィナ王国は?』
ヴォルフガング・オーイーは一礼する。
ヴォルフガング・オーイー『はっ、我が国はジェイコッブのテロ、ヴロイヴォローグの襲撃、アクマドの戦闘不能により…動員できる人型機構はわずか8機。戦闘機も20機程度。無論戦闘員も含めますとまだ若干の数はおりますが…。』
バッカが笑いだす。
バッカ『ははっ、シュヴィナも地に落ちたものだ。そんな弱小部隊を率いて何が盟主様だ!あほらしい!』
パリィ『ぼろぼろ負けておいて…よくまあ。』
眉を顰めるエグゼナーレ。チョウカツは咳払いし、ニーソウに手を向ける。半透明の板を渡すニーソウ。チョウカツは顎に手を当てながら、板を見つめる。
チョウカツ『思った以上に航空戦力が少ない。上陸部隊も敵搭載量を少し上回っている程度である。』
チョウカツはヴォルフガング・オーイーの方を向く。
チョウカツ『ところで、他国のこちらに向かっている軍勢はこちらに来るのかな?』
ヴォルフガング・オーイーは頷く。
ヴォルフガング・オーイー『はい。千年大陸連邦、フォレスト王国、フッシ王国、ロメンにシェプスト、アヴェロン大陸の騎士達を初めとする軍はこちらに向かっております。』
チョウカツは頷く。
チョウカツ『よろしい。』
チョウカツは地図の中央に立ち、板を折り曲げて呪文を唱える。板は小鳥の形となり、地図に映るトーマ城城下町上へと配置されて行く。
チョウカツ『部隊の配置はこの様になる。すぐさまこの位置に移動するように。』
パリィが目を見開く。
パリィ『なっ!これは、各部隊を分散させて市街地に配置するなんて…何を考えているんだ!』
バッカがチョウカツを睨みつけた後、地図を見つめる。
バッカ『人型機構の兵力差では勝っている!ここは全軍で一気にホバー戦艦を叩けば良いのだ!』
チョウカツは白い顎鬚を撫でる。
チョウカツ『ヴロイヴォローグと言えばゲリラ戦の名手。その部下もやはりゲリラ戦が上手。下手に山岳に誘い込まれればこちらの命取りとなる。爆撃にさらされなく軍議ができたのは奴らの天空軍が補給中だからだろうが、上陸部隊は着実に発進している筈じゃ。』
笑いだすバッカ。
バッカ『あんた常勝将軍とかいってただの臆病もんだな!たかだか賊軍の部隊を恐れるなどとは!』
チョウカツは顎鬚をさする手を止め、バッカを見つめる。
チョウカツ『さてな。しかし、時が経てば経つほど敵は不利になる。各国の部隊が到着すれば奴らは挟撃され、勝ち目はなくなる。奴らは必ず前に出る。我々は来た奴らを待ち伏せて、迎撃しながら時間を稼げばよい。それに、討伐することが目的ではない。貴族連合盟主を守りきることが目的じゃろう。幸い住民たちの脱出は終了しているので我々は全力で敵と戦える。』
頷く各国の一同。バッカは片方の眉毛を釣り上げる。パリィは眉を顰める。チョウカツは地図に映るトーマ城の上に立ち、下を向く。
チョウカツ『この城壁を本陣とする。本来ならば偽陣をいくつか張り、敵を攪乱させたいところだが、その様な資源的余裕も時間的余裕も無い。』
チョウカツはエグゼナーレを見つめる。
チョウカツ『エグゼナーレ様の隠し場所はトーマ城しかない。』
ロズマール帝国軍賊軍とグラルタ軍港を指す。
チョウカツ『グラルタ軍港も堅牢な防衛施設ではあるが、いかんせんロズマール帝国賊軍との距離が近すぎ、こちらから陣を張りに行くには遠すぎる。』
頷くエグゼナーレ。チョウカツは顔を上げ、キッド、クキ、ゲブセブ、ツァグトラを見回す。
チョウカツ『各海軍は対空攻撃と上陸部隊への支援攻撃をお願いする。』
クキ『分かりました。できる限り協力させていただきます。』
ゲブセブ『わしも!』
ツァグトラ『分かりました。』
キッド『了解した。今、アドヴァンス・ギャリーにタイヤをつけているところだ!』
チョウカツ『キッド殿、余計なことはしなくてよい!』
俯くキッド。チョウカツは地図を見下ろす。
チョウカツはヨナン、プリン姫、ジェルン、ヴォルフガング・オーイーにネイロの方を向く。
チョウカツ『ヨナン殿にプリン姫、ジェルン殿にオーイー殿、ネイロ殿。』
ヨナン、プリン姫、ジェルン、ヴォルフガング・オーイーにネイロが前に出る。チョウカツはニーソウの方を向く。ニーソウは一礼して、前に出る。正面を向くチョウカツ。
チョウカツ『あなた方は、このニーソウと共にトーマ城全体に魔法結界張って頂きたい。』
頷くヨナン、プリン姫、ジェルン、ヴォルフガング・オーイーにネイロ。
チョウカツ『さて、エグゼナーレ様であるが…。』
首をかしげるエグゼナーレ。
チョウカツ『我々を護衛する兵卒に紛れてもらう。』
眼を見開くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『私に…仮とはいえ貴族連合盟主の私に兵卒の格好をしろというのか!』
チョウカツ『無論。敵はエグゼナーレ様の場所をまだ把握できておりません。敵を多少なりとも足止めをする策であります。』
エグゼナーレは頷く。
エグゼナーレ『…分かった。』
チョウカツが周りを見回す。
チョウカツ『唯一の懸念は敵の部隊編成が分からぬ事じゃが、何か意見は?』
バッカが鼻で笑いそっぽを向く。暫し沈黙。エグゼナーレが一歩前に出る。
エグゼナーレ『これで軍議を終了する。この戦いにおける各国の参戦に感謝する。各員は定められた配置につき、健闘を祈る。』
鬨の声をあげる一同。
C7 貴族の傲慢 END
C8 灯の眷属
トーマ城壁には、チョウカツにヨナン、プリン姫、ジェルン、ヴォルフガング・オーイーにネイロ、ニーソウ。後方には護衛のシュヴィナの兵卒達が居る。トーマ城の正面には勇者ロボ、右側にはシーン皇国のレイメイ級人型機構が4機、左手にはアレス王国の人型機構及び起動城塞ヴェルクシュイヴァンが居る。前方にはヒート王国、ガイデン王国、ノーダ王国の部隊が展開し、グラルタ湾に浮かぶ各国の艦船。各国の航空機が飛び交う。ヴェルクシュイヴァン艦橋。玉座に座るファウス。傍らにはファンデラドンとカスト。マーアの隣の席の女オペレーターミーアがファウス達の方を向く。
ミーア『前方より巨大な反応と無数の反応。敵来ます!』
頷くファウス達。フィオラ山の山頂に現れるロズマール帝国軍賊軍のメイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦。その周りを飛ぶロズマール帝国軍賊軍のエビ戦闘機群。ファンデラドンが腕を組む。
ファンデラドン『遂に現れましたね。』
カストはファウスを見つめる。
カスト『ファウス様。航空写真より随分と大きいですよ。いよいよ始まりますね。』
ファウスは俯く。
ファウス『…こんな戦い。』
ファウスはファンデラドンの方を向く。
ファウス『他に解決方法はなかったの。あの席で僕は何もできなかった。軍議の場でも。戦わなくても話し合って互いに理解しあうことができれば…。』
ファンデラドンは首を横に振る。
ファンデラドン『無理でしょう。先に手を出したのがエグゼナーレ様とはいえ、彼らは彼らでロズマール帝国に対して反乱を起こしているのですよ。』
ファウス『だけど!』
ファンデラドンは正面を向く。
ファンデラドン『それにシュヴィナに攻め入ってきた時点で死罪は揺るぎありません。だから如何なる交渉にも望まないのだろうと思います。』
ファウスは項垂れる。
ファウス『そんな…。憎しみが憎しみを生んでこんなことに。』
ファンデラドンは眼を細めて頷く。エビ戦闘機がメイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦の頭上から離れ、市街地に向けて進む。迎え撃つ各国の戦闘機群。ミーアがファウス達の方を見る。
ミーア『森林より敵陸上軍来ます!』
ファンデラドンは頷き、双眼鏡を覗く。
ファンデラドン『…これは。』
ファンデラドンは同眼鏡を覗くのを止めた後、再び双眼鏡を覗く。
ファンデラドン『帝国軍は何を考えているのだ?あんなもので我々に挑むなんて。』
ファウスは玉座から立ち上がり、ファンデラドンの傍らに寄る。
ファウス『何があったの?』
ファンデラドンは双眼鏡を置く。
ファンデラドン『森林から出てきた敵の部隊の多数が…戦闘車両及び旧式のアスノタロテ級人型機構です。』
ファンデラドンを見上げるファウス。カストが前に出る。
カスト『あの帝国軍の新型人型機構はいないのですか。』
ファンデラドンは頷く。市街地より砂煙が上がる。
ファンデラドン『何事か!』
トーマ城城壁のチョウカツが振り返り、ニーソウを向いて口を動かす。マーアが機器の画面を見つめる。
マーア『はっ、ヒート王国及びガイデン王国が動き出しました。』
眉を顰めるファンデラドン。
ファンデラドン『なっ…。』
ヒート王国とガイデン王国の全軍は起動城塞及び航空機も含め、市街地で隊列を組み、敵軍に向けて砂煙を巻き上げて突撃していく。ノーダ王国の部隊が動き出す。唖然とするファウス。マーアがファウスの方を見る。
マーア『チョウカツ将軍より通電。進軍するなと!バズーラ兄弟がフィオラの森にて巨大な穴を発見したそうです!』
青ざめるファンデラドン。ファウスがファンデラドンを見上げる。
ファウス『どうしたの?いったい何が…。』
ファンデラドンは額から汗を垂らし、一歩前に出る。市街地の道を埋め尽くし突撃するヒート王国、ガイデン王国、ノーダ王国の軍勢。
ファンデラドン『…地中軍。』
地面が振動する。地響きが鳴り響き、バランスを崩すヒート王国、ガイデン王国、ノーダ王国の軍勢。ビルが倒壊し、彼らの上に落ちる。押しつぶされるヒート王国、ガイデン王国、ノーダ王国の軍勢。地面に穴が開き、帝国軍賊軍のブルム級蛇型機構が顔を出して再び地面に潜る。
ブルム級蛇型機構が掘った穴から出てくるヴェイ級人型多数。森林から突き進む軽トラの荷台に砲塔が取り付けられたケトラとアスノタロテ級人型機構の砲撃により、右往左往するヒート王国、ガイデン王国、ノーダ王国の軍勢。フィオラ山地の上のメイルシュトロム・リョメルディオが大艦刀を振り回し、竜巻を起こして、ヒート王国、ガイデン王国、ノーダ王国の天空軍を壊滅させる。
メイルシュトロム・リョメルディオのドーザーブレードが日の光に照らされ光沢を放つ。瓦礫に阻まれ身動きの取れないヒート級起動城塞、ポーター級起動城塞及びドジョ級起動城塞がエビ戦闘機の集中砲火を浴びて、破壊される。グラルタ湾の艦船の砲撃にさらされながら市街地に侵入していくロズマール帝国賊軍の部隊達。
踏みつぶされるヒート王国のパイロット。肉片と血と瓦礫が市街地を染める。ファウスは青ざめて震えながら、玉座に座り込む。メイルシュトロム・リョメルディオのドーザーブレードが日の光に照らされ光沢を放つ。山を駆け下り、市街地に突撃していくメイルシュトロム・リョメルディオ。大艦刀を振り回転させながら、グラルタ湾の艦船の放つ砲弾を切り払って進むメイルシュトロム・リョメルディオ。ファウスは立ち上がる。
ファウス『た、助けに行かなくちゃ!』
エビ戦闘機の機銃が撃ちこまれ、ヴェルクシュイヴァンが揺れる。バランスを崩すファウス。ロズマール帝国賊軍の軍勢と切り結ぶ、シーン皇国のレイメイ級人型機構とアレス王国の人型機構及びシュヴィナ王国の人型機構とヂョルガロン王国の人型機構。ブルム級蛇型機構が勇者ロボに絡みつき、トーマ城の正面から離す。エビ戦闘機と空中戦を繰り広げる各国の戦闘機群。
ファンデラドン『無理です。今、戦力差は逆転しました。』
トーマ城城壁では兵卒が一歩前に出る。プリン姫が勇者ロボの方を向き、胸を押さえる。チョウカツが城壁の手摺から、下を眺める。ケトラ、アスノタロテ、ヴェイの砲撃がトーマ城城壁に当たるが、跳ね返される。
ファウス『で、でも…そんなことをしたら、死んじゃう…。あの人達死んじゃうよ。』
揺れるヴェルクシュイヴァン。
ファンデラドン『そんなことを言っている状況ではありません。』
ヴェルクシュイヴァンを砲撃するケトラにアスノタロテ。レイメイ級人型機構の一機がヴェイ級人型機構の頭を蹴って飛び上がる。市街地の建物の屋根を飛んで、瓦礫の山に入っていくレイメイ級人型機構。
メイルシュトロム・リョメルディオのドーザーブレードが市街地に入り込む。緑のヴェルクーク級人型機構が一機飛び出し、瓦礫に埋め尽くされた市街地を脱出する。
逃げ惑うパイロット達を押しつぶしながら血で赤く染まり多数の肉片のつくドーザーブレードを輝かせ、大艦刀を振り回し、グラルタ湾に浮かぶ艦船の砲撃を切り払いながら進むメイルシュトロム・リョメルディオ。
緑のヴェルクーク級人型機構が、ヴェルクシュイヴァンの周りにいるアスノタロテ級人型機構とケトラを切り払い、艦橋横のカタパルトに飛び乗る。横を見るファウス達。緑のヴェルクークのコックピットのハッチが開き、バッカ、パリィ、オクィを担ぎ、額から血を流し、左腕を失い、おびただしい流血をするサゼンが、カタパルトを血で染めながら、飛び出る。艦橋の扉を開けるファンデラドン。艦橋内に入るサゼン。サゼンに駆け寄るファウスとカスト。
ファウス『あなたは…確か。』
サゼン『サゼンだ。』
サゼンは息を切らし、バッカ、パリィ、オクィを床に置く。
サゼン『王子たちは無事救出した。後は頼む。』
ヴェルクシュイヴァンが揺れ、カタパルト上の緑色のヴェルクークが地面に落ちていく。サゼンは崩れ落ちる。ファウスがサゼンに駆け寄る。
ファウス『大丈夫ですか!』
ファンデラドンはカストを見つめる。
ファンデラドン『カスト、サゼン殿を至急医務室へ。』
ファンデラドンは無線機を取る。
ファンデラドン『至急衛生班を!』
カストは頷いてサゼンの肩を持って、引きずりながら艦橋から出ていく。サゼンの方を見つめるファウス。砲撃音が鳴り響き、艦橋の窓が光で染める。振り向くファウス。崩れるトーマ城城壁。ファウスは立ちつくし、メイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦を見た後、エビ戦闘機の絶えまない爆撃とロズマール帝国賊軍の部隊の猛攻により、瓦礫と化していくトーマ城城壁を見る。
本陣のチョウカツが剣を抜く。チョウカツの額から汗が流れ、兵卒の一人が歯を食いしばり、握り拳を震わせる。ファンデラドンが目を見開く。
ファンデラドン『結界が破られた…。』
砲撃音が鳴り響き、トーマ城城壁の本陣の近くに砲弾が命中し爆発が巻き起こる。バランスを崩す本陣の一同。担架でバッカ、パリィ、オクィを運んで行くアレス王国衛生班の兵士達。
崩れ落ち、傾く本陣の城壁に雪崩れ込んでいくロズマール帝国賊軍。剣を抜くヴォルフガング・オーイーにヨナン、短剣を構えるネイロ、杖を前に突き出すプリン姫。チョウカツとニーソウ、及びシュヴィナ王国の兵卒たちが彼らを背に円陣を作る。ヴォルフガング・オーイーが呪文を唱え、本陣に壁が現れるが、エビ戦闘機の機銃により徐々にひび割れていく。
ファンデラドン『敵が多すぎます!』
ファンデラドンは青ざめ、メイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦と大艦刀を見つめる。押し込まれる味方の軍勢。砲撃、銃撃にさらされる中、エグゼナーレの扮した兵卒が兜を城壁の床に投げつけ、チョウカツの傍らに寄ると剣を振り上げる。兜は床をバウンドし、地面に落ちていく。
エグゼナーレ『私がシュヴィナ王国王子エグゼナーレだ!ロズマールの兵よ。我が首、取りたければ取ってみろ!』
エグゼナーレの横髪を銃弾が掠める。チョウカツがエグゼナーレを後ろに押す。帝国軍賊軍の軍勢がトーマ城城壁の本陣に集中する。
ファウスが前に出て、メイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦の向き、目を見開くファウス。ファウスはファンデラドンの方を向く。
ファウス『ファンデラドン!ヴェルクシュイヴァンをあいつの側面に体当たりさせるんだ!』
ファンデラドンは顔を上げる。
ファンデラドン『体当たり。』
ファンデラドンは首を横に振る。
ファンデラドン『駄目です!危険すぎます!!』
ファウスの方を向く一同。ファウスは頷く。
ファウス『あいつを止めるにはもう、それしか方法が無いんだ!』
ファウスの横顔を見て、頷くファンデラドン。ファンデラドンはマイクを取る。
ファンデラドン『総員警戒態勢、総員警戒体勢!これより、ヴェルクシュイヴァンを敵艦の側面に体当たりさせる。』
玉座から立ち上がって剣を振り上げて床に刺して、柄の部分を握りしめるファウス。後ろに避難するアレス王国のオペレータ達。動き出すヴェルクシュイヴァン。ヴェルクシュイヴァンが加速を付け弧を描く。メイルシュトロム・リョメルディオの頭部が動き、ヴェルクシュイヴァンを捉え、大艦刀を突き出す。全速力で突撃するヴェルクシュイヴァン。
艦橋が揺れ動き、ガラスが割れる。伏せるファウス達。ヴェルクシュイヴァンの後方から突き出るメイルシュトロム・リョメルディオの右手の大艦刀。メイルシュトロム・リョメルディオは左手の大艦刀を振り上げるが、グラルタ湾の艦隊の一斉射撃により左の砲塔と共に破壊される。右の砲塔はヴェルクシュイヴァンの車輪に巻き込まれ潰れる。
破壊されたメイルシュトロム・リョメルディオの艦橋から黒こげになり、燃え盛るロズマール帝国賊軍の兵士達が2、3人落ちていく。割れた環境の窓から現れる焦げたエントのモクジンの姿。城壁によじ登るアスノタロテ級人型機構多数。
墜落していくエビ戦闘機。千年大陸連邦のスピッツフレイム級戦闘機が飛び交う。スピッツフレイム級戦闘機の機銃により、蜂の巣にされ落下していくアスノタロテ級人型機構。
グラルタ湾に現れる千年大陸連邦とシェプスト国、アヴェロン騎士王府の大艦隊。後方で雄叫びが上がり、市街に雪崩れ込んでくるフォレスト王国、フッシ王国、ロメン帝国の軍勢。上陸する千年大陸連邦及びシェプスト国、アヴェロン騎士王府の人型機構達。
ケトラは踏みつぶされ、アスノタロテ級人型機構は破壊される。ブルム蛇型機構を引きちぎる勇者ロボ。ヴェイ級人型機構は羽交い絞めされ、数機の人型機構により取り押さえられる。
コックピットから脱出する帝国軍賊軍の兵士達はトーマ城に次々と向かっていく。モクジンはトーマ城を睨み付ける。ブルム級蛇型機構の潰れたコックピットから下半身を失ったホルスタイン獣人のバクゥーガが腸を引きずり、ハンドガンでトーマ城城壁を2、3回撃った後、動かなくなる。
ヴェルクーク級人型機構に羽交い締めされたヴェイ級人型機構のコックピットが開き、片角が欠け、顔面に切り傷を多数つける羊獣人のヨーデルが現れ、2丁拳銃でヴェルクーク級人型機構をの関節部を打ち抜き、取り囲んでいるヴェルクーク級人型機構の動きを止め、コックピットの方を向くが、アーチャー・ヴェルクーク級人型機構の放った矢が数十本ヴェイ級人型機構のコックピットに刺さる。
ヨーデルは舌打ちし、その矢を踏んでトーマ城城壁に跳ぶ。弧を描き、逆さまに落下しながらエグゼナーレに2丁拳銃を構えるがチョウカツの一閃により一刀両断されてトーマ城の地面に落ちる。顔をあげる少し焦げたモクジン。モクジンはトーマ城を睨み付ける。メイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦が七色に輝きだす。
モクジン『あの方は我々を照らす輝き…。灯の光だった。貴族として生まれたお前らには分かるまい!あの温もりと力強さは!我々の偉大なる親父、ヴロイヴォローグを自らのエゴの為に殺したのだ!この無念が!!』
ファンデラドンがモクジンをハンドガンで撃つ。倒れるモクジンは撃たれた個所を抑え、七色に輝き、立ち上がる。
モクジン『ヴロイヴォローグ公よ!永遠なれーーーーーーーーーーーーーーっ!』
メイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦の砲塔が七色に光、元に戻る。唖然とするファウス。舌打ちするファンデラドン。アレス王国のガガジェット級偵察機が上空を旋回し、飛び降りる世界強武の一人で鬼族のドルクゥーネ。ファウスが目を見開いてドルゥーネの方を向く。
ファウス『あれは…。』
ドルクゥーネの拳がメイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦の艦橋ごとモクジンを潰す。アレス王国の人型機構が市街地に突撃していく。左右に折れるメイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦から発射された七色に輝く砲弾がパノラマウンテンの方に向かって飛んでいく。
大爆発が起こり、巨大な煙が山々を覆う。パノラマウンテンの方を向く一同。暫くして煙がはれ、巨大な穴が開く。瓦礫の山が積み上げられ、帝国軍の賊軍の四肢の切断された死体、押しつぶされた死体がまばらに市街に散乱する。崩れ果てたトーマ城城下町。鬨の声が響き渡る。トーマ城城壁で膝をつくエグゼナーレは、その場に蹲る。
エグゼナーレ『こんなもの…こんなもの敗北ではないかーーーーーーーーーーっ!』
エグゼナーレは天を向いて号泣する。銃撃音が散発的に市街地に鳴り響く。剣の柄を持ち、大破したメイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦を見下ろすファウス。メイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦から出てくる帝国軍賊軍の兵士が、撃たれて倒れる。各国の兵士達が突撃し、メイルシュトロム・リョメルディオに乗り込んでいく。銃撃の音が鳴る。
割れた窓からヴェルクシュイヴァンの艦橋に入るドルクゥーネはメイルシュトロム・リョメルディオ級ホバー戦艦を見つめながらファウスに近づく。
ドルクゥーネ『夜には、片が付くでしょう。』
ファウスは体を震わせる。ドルクゥーネの方を見つめる一同。目を見開くファンデラドン。
ファンデラドン『あ、あなた様は!』
ファウス『せ、先生!』
ファウスは大粒の涙を流しながら、ドルクゥーネに抱きつく。
ファウス『ドルクゥーネ先生!』
ドルクゥーネは眼を細め、頷いてファウスを見下ろし、抱きとめる。泣きだすファウス。ドルクゥーネはファウスの頭を撫でる。
瓦礫と化したトーマ城とその城下町を進む、フォレスト王国のガンプ級機動城塞にフッシ王国のカシー級機動城塞にロメン帝国のシーザ級機動城塞。そしてアレス王国のヴェルクシュイヴァンU級機動城塞。散発的に鳴り響く銃撃の音。大破したメイルシュトロム・リョメルディオに乗り込んでいく各国の兵士達。銃撃の音が響く。
C8 灯の眷属 END
C9 盟主任命(仮)
瓦礫と化したトーマ城の周りを囲む各国の機動城塞。兵士達の死体を運んで行くシュヴィナ王国兵士。瓦礫の上を歩いて進むファウス、ドルクゥーネ、ヴェイロークにカスト。帝国軍賊軍の兵士を蹴り、唾を吐くシュヴィナ王国兵士多数。ファウスは胸に手を当て、目をそらす。
ヴェイローク『ドルクゥーネ殿が来るとは驚きです。』
ドルクゥーネはファウスの方を一瞬見た後、ヴェイロークの方を見る。
ドルクゥーネ『マール殿が戦死し、ヴィクトリア王女にお呼ばれした訳だ。生前懇意にしてもらったらからな。』
頷くヴェイローク。
ドルクゥーネ『この激戦にも関わらず、アレス王国の戦死者が出なかったのは幸いだった。』
ファウスは立ち止まり、穴に放り込まれる戦士者達を見つめる。靴音が鳴り響き、アレス王国第一王子メフィス率いる部隊が現れる。ファウスは眼を見開き、微笑む。
ファウス『お兄様!』
メフィス『噂は聞いている。たいそうな手柄を立てたそうだ。パチパチパチ。』
跪くファウス。メフィスは瓦礫の上を歩きながらファウスの横を通り過ぎる。顔を上げるファウス。カストが眉を顰める。
カスト『それだけ?…ヴロイヴォローグを倒し、命がけで帝国軍のホバー戦艦に体当たりしたファウス様を…それだけ!』
ファウスは立ち上がり、カストに手を向ける。
ファウス『カスト…いいんだよ。』
カスト『でも、ファウス様。これは酷すぎます!我々は先遣隊として派遣されて危険な目に会っている間、あいつらは本国でずっと引きこもっていただけじゃないですか。』
カストの口を押さえるヴェイローク。デンザインがメフィスの部下と共に現れる。
デンザイン『口を慎めカスト!メフィス様の前で!』
ヴェイロークがデンザインを見上げる。
ヴェイローク『デンザイン…!』
デンザインを睨みつけるヴェイローク。デンザインの後ろから現れるアレスの黒剣の一人、三枚舌のファフティフニス。
ファフティフニス『何かあったのか?』
デンザインは一礼する。
デンザイン『いえ、特には。』
デンザインはカストの方を向く。
デンザイン『ただ、このファウス王子配下の者がメフィス様の悪口を言ったもので。』
ファフティフニス『ほっほぅ。そうか。』
ファフティフニスは口から三枚に割れた舌を出しながらカストを見つめ、舐める。
カスト『ひゃっ、ひゃん!』
青ざめるカスト。ファウスがカストの前に立つ。
ファウス『止めてください!それはカストの責任では有りません!カストを抑えられなかった僕の責任です!』
ファフティフニス『あ〜。』
ファフティフニスは空を見上げる。
ファフティフニス『君がファウス王子様ね。いや〜。俺の舌には毒があるんだ〜よ〜。』
目を見開き、青ざめるファウス。尻もちをつくカスト。ファウスはカストの方を向いて呪文を唱える。ドルクゥーネが一歩前に出る。
ドルクゥーネ『お遊びは止めなされ!ファフティフニス殿!』
三枚に割れた舌を出し、頭に右手を当てるファフティフニス。目を見開くファウス。ファフティフニスは舌打ちする。
ファフティフニス『や〜。ばれた。ドルクゥーネ殿がいたらしかたないねぇ。ゲラゲラゲラ。』
立ち上がるファフティフニス。カストはファフティスニスを睨みつけて立ち上がる。
カスト『おのれ!たばかったな!』
ファフティスニスは背を曲げて、カストの顔を見るとカストの唇を舐める。
カスト『えっ!ひっ、ぎ、ぎゃっあ!』
カストは目を回してその場に倒れる。ファウスがカストに駆け寄る。
ファウス『カスト、大丈夫?カスト!カスト!!』
背を向けるファフティフニスを睨みつけるヴェイローク。ファウスがヴェイロークを見上げる。
ファウス『ヴェイローク、カストが!』
カストに近づき、脈を取るヴェイローク。ファフティフニスは振り返り、ヴェイロークを目を丸くして見つめた後、笑みを浮かべて三枚に割れた舌を2、3回出しながら正面を向いて歩いて行く。
ヴェイローク『大丈夫です。気絶しているだけですよ。』
ファウスは胸を撫で下ろす。
ファウス『あんな人見たこと無いよ。いったい誰なの?』
ヴェイロークは立ち上がり、ファフティフニスの方を向く。カストが立ち上がり、首を振ってハンカチーフで頬と唇で拭く。
ヴェイローク『アレスの黒剣。かつてファウス様の暗殺未遂と連座し、追放された手練れどもです。』
カスト『そんな奴らが何で?』
ドルクゥーネがファウス達の方を見る。
ドルクゥーネ『祖国防衛強化のため、ヴィクトリア様が呼び戻したのだ。』
ヴェイローク『なぜ、そのようなことを!!』
首を横に振るドルクゥーネ。眉を顰め、顎に手を当てるヴェイローク。暫し沈黙。ファウスはヴェイロークの方を向く。
ファウス『行こう。』
頷く一同は瓦礫の山を歩いて行く。瓦礫の山の上にはられた布だけの本陣の中に入って行くファウス達。
瓦礫の中央に座るエグゼナーレ、傍らには三大臣とヴォルフガング・オーイー。ヨナン、プリン姫にアイ=アザト、サンナンにクキ、ネイロ、キッド、ゲブセブ、ツァグトラ、バズーラ、カズーラが右に並び、千年大陸連邦の大提督ドレイク。フォレスト王国の第一王子ロングット、フッシ王国の王子イミズ、アレス王国の第一王子メフィスに
ロメン帝国の将軍ガバリヌスにシェプスト国の大臣アー、アヴェロン騎士王府のアーサーとその異父兄弟ウーサーを始めとする騎士達が並ぶ。各国の画面が浮かび、それに映る各国の代表者達。
ファウス達を見つめる一同。ざわめきが起こる。ファウスを見て腕組みをしながら頷くドレイク。ロングットはファウスを見た後、イミズの方を向いて口を動かす。顔を見合わせるアヴェロン騎士王府の騎士達。ドレイクが一歩前に出て一礼する。
ドレイク『22:00までに掃討作戦は終了するでしょう。』
エグゼナーレは頷いて立ち上がる。
エグゼナーレ『この度の戦の勝利は各国の協力の賜です。』
頷く一同。エグゼナーレはファウスの方を向く。
エグゼナーレ『ファウス王子。』
ファウスを見つめる各国の一同。ファウスは目を見開き、下を向くとヴェイロークの袖を掴んで一歩後ろに下がる。ヴェイロークはファウスの腰を触り、押す。ヴェイロークの方を見るファウス。頷くヴェイローク。ファウスは一歩前に出る。
エグゼナーレ『特にファウス王子の働きには目覚ましい物がありました。』
親指の爪を噛みながらファウスを見つめるヴィクトリア。
エグゼナーレ『ヴロイヴォローグを倒し、危険を顧みずホバー戦艦に体当たりした。』
ファウスは周りを見回す。
エグゼナーレ『この勇敢なファウス王子に祝福を!』
拍手喝采。メフィスの拍手は他とずれている。歓声が上がる。ファウスは深く一礼し、元の位置に戻る。エグゼナーレは各国の代表者達が映る画面を見回し、一礼する。
エグゼナーレ『ロズマール帝国賊軍を討伐いたしました。つきましては盟主の位。返上いたします。』
エグゼナーレの正面に移動するオンディシアン教皇領の画面に映るアレクサンドル。頷く一同。アレクサンドルは首を横に振る。目を見開くエグゼナーレ。
アレクサンドル『その必要は無い。エグゼナーレ王子。貴殿は…そのまま貴族連合の仮の盟主とする。』
目を見開く各国の一同。眉を顰めるゼウステス99世。エグゼナーレは跪く。
エグゼナーレ『戦は身から出た錆とはいいながら私の力量が貴族連合をまとめる盟主に足りず、折角盟主に任命されたのに多くの被害と犠牲を出しました。よろしいのですか?』
アレクサンドル『良い良い。今回の勝利で、貴殿の成長の可能性を見た。』
エグゼナーレは上体を上げ、目を見開く。
アレクサンドル『よくあの不利な状況の中、戦い抜いたのぉ。』
エグゼナーレの目から涙が零れ、その場に蹲る。
エグゼナーレ『あ、ありがとうございます。ありがとうございます。』
三大臣とヴォルフガング・オーイーがエグゼナーレの傍に寄る。アレクサンドルは顎をさする。
アレクサンドル『しかし、貴殿は仮の盟主だ。』
顔を上げるエグゼナーレ。
アレクサンドル『今後、盟主として相応しくない行為や失態、実績が伴わなければ容赦なくその地位は剥奪される。覚悟されよ。』
エグゼナーレは頷き、頭を下げる。
エグゼナーレ『は、はい!盟主の何恥じないよう粉骨砕身働きます!』
アレクサンドルは笑みを浮かべて頷く。
アレクサンドル『さて、エグゼナーレ王子は仮の盟主の為、後見人をつけたいと思うのだが…。』
ゼウステス99世の方を向くアレクサンドル。
アレクサンドル『…どうだねぇ。ゼウステス99世殿。』
目を見開くゼウステス99世。アレクサンドルは周りを見る。
アレクサンドル『もちろん。無理にとは言わんが…。』
ゼウステス99世は笑みを浮かべ一礼する。
ゼウステス99世『はっ!お任せ下さい!』
アレクサンドルは手を叩く。
アレクサンドル『ほう、引き受けてくれるか。』
ゼウステス99世『無論であります。』
エグゼナーレは立ち上がり、ゼウステス99世に向かい頭を下げる。
エグゼナーレ『ゼウステス99世殿、宜しくお願いします。』
2、3回頷くゼウステス99世。拍手喝采。メフィスの拍手は他とずれている。アレクサンドルは周りを見回す。
アレクサンドル『さて、エグゼナーレ王子が盟主と決まった所で初の大仕事をしてもらおう。』
眉を顰め呼吸を荒くするヴィクトリア。首をかしげるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『大仕事?』
頷くアレクサンドルはアレス王国の画面を見た後、ファウスとメフィスを見る。
アレクサンドル『アレス王国の国王を決めてもらおう。』
エグゼナーレはアレクサンドルを見つめ、ファウスとメフィスを見る。
アレクサンドル『一国の王を決める重要な仕事じゃぞ。』
喉を鳴らすエグゼナーレの額から汗が垂れる。
アレクサンドル『今宵はもう遅く、今日はお開きだ。明日の朝の会合でまた聞こう。よ〜く考えて決定しておくように。』
エグゼナーレの横にゼウステス王国の画面が移動する。
ゼウステス99世『エグゼナーレ殿。明日の朝までにどちらか決めておけということだ。分かっているな。』
頷くエグゼナーレ。ファウスはメフィスの方を向く、メフィスは溜息をついて伸びをする。消えていく各国の画面。去って行く各国の一同。エグゼナーレは溜息をついて、三大臣達とヴォルフガング・オーイーの方を向いて去って行く。
C9 盟主任命(仮) END
C10 前夜
布で覆われた本陣。ファウスの前に歩み寄るメフィス。
メフィス『お前に話がある。』
眉を顰めるヴェイロークにカスト。メフィスは溜息をつき、ヴェイロークとカストを見つめる。
メフィス『二人だけで話があるのだ。外してもらえないか。』
メフィスは両手を広げる。
メフィス『あーーーーーっ!』
山彦が響く。
メフィス『ここは声が漏れる。密談などには向かん場所だ。盗み聞きしてくれて構わない。』
目を細め、メフィスを見つめながら、頷いてシュヴィナの陣から去るヴェイロークとカスト。月明かりに輝くメフィスとファウスの影。
ファウス『お兄様。話とは?』
メフィス『私も母上も、王がお前になっても恨みはしない。』
暫し沈黙。
ファウス『ごめんなさい。正直、僕はどうしたらいいか分からなくて。』
メフィス『別にいい。エグゼナーレ様の決めた事だ。文句は言うまい。』
ファウス『…はっ、はい。お兄様。』
メフィス『正直、エグゼナーレ様が俺かお前かどちらを選ぶか楽しみだ。』
ファウス『お兄様…。』
メフィスはシュヴィナ王国の陣を覆う布から顔を出す。
メフィス『では、明日を楽しみにしている。』
ファウス『お兄様。』
メフィスは口笛を吹きながら布を上げて外に出る。ファウスは星空を見上げ、胸に手を当てる。歩き出すファウス。ファウスの背後に現れるドルクゥーネ。
ドルクゥーネ『ファウス…。』
ファウスは後ろを振り返る。ドルクゥーネがファウスに駆け寄る。ファウスは目を見開く。ドルクゥーネの拳がファウスの横腹をかすめる、ファウスの周りの瓦礫が起きあがる。横腹を抑え、吐瀉物を口から出すファウス。
ファウス『げほぉ、ごほぉ!』
ファウスはドルクゥーネの顔を見上げる。
ファウス『なっ、何をするんですか!うっ!』
目を閉じ、右腕を抑えるファウス。銃撃音が鳴り響き、ファウスの周りにできた瓦礫に弾が弾かれる。ドルクゥーネは跳躍して玉を避ける。蜂の巣にされ、所々千切れた布が、大きくめくれ上がる。布の破片が風に舞う。ファフティフニス率いるアレス王国兵士達がファウスに銃口を向けて取り囲んでいる。後方には俯くヴェイローク、ファンデラドン、エガロ、カスト。ファウスを睨みつけるグークラーク、ダンダスダン、シャロン達が居る。隣にはヴィクトリアのホログラムとバクールドのホログラム。ファフティフニスの隣に着地するドルクゥーネ。眉を顰めるファウス。ファウスが握った右手からは血が流れる。
ファフティフニス『…ドルクゥーネ殿、困るじゃありませんか。いくら責任をとるといっても…これでは我々の仕事がやりづらいですよ。』
瓦礫の隅より、ファフティフニスの方を向くファウス。ファフティフニスがハンドガンでファウスを撃つ。顔を引っ込めるファウス。火花が散り、青ざめるファウス。デンザインが一歩前に出る。
デンザイン『殺せ!!!』
銃撃音が鳴り響く。
ファウス『な、何をするの!止めて!』
カストがアレス王国兵士Dに飛びかかる。アレス王国兵士Dはカストと揉み合い、天に向けて発砲する。
アレス王国兵士D『何をする!このくそがきが!あいつは国賊だぞ!!』
ファウス『こくぞ…国賊??』
カストを振り払うアレス王国兵士D。カストは尻もちをつく。
シャロン『お前は憎くないのか!あいつはファウスとして我々を何年もたばかってきた農奴の息子なのだぞ!』
ファウスは両手の掌を見つめる。
ファウス『…のう…ど?』
カストは首を横に振る。
カスト『でも、これじゃあんまりだ。』
バクールドのホログラムがカストの方を向く。
バクールド『先程も申し上げましたが、当時ファウス王子を救出に向かったドルクゥーネ殿が真相を暴露したのです。彼が到着した時に既に王子は殺され、虫の息だった農奴の息子とすり替えたと。』
ファウスの方を睨みつけるヴィクトリア。
ヴィクトリア『あの暗殺事件であいつは農奴の身でありながら当時のファウス派の騎士どもと結託し、本物の王子とすり替わって今まで王を含め私達を騙してきたのよ!ずっとずっとずうっとねぇ!』
ファウス『そ、そんな、それじゃあ…。僕は…。』
轟く銃撃の音。軍靴の音を響かせながら近づくファフティフニスを先頭にしたアレス王国兵士達が銃を撃ちながら進む。
ファウス『違う、僕はファウスだ!アレス王国のマールの息子のファウ…。』
ファウスは地面に両手をつく。銃撃の音が鳴り響き、火花が散る。
ファウス『…あの、感覚…。』
ファウスは眼を見開き、青ざめる。
ファウス『確かに…あの位置じゃ…あんな風には。僕は…僕は…僕は…!』
首を横に振るファウス。
ファウス『違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!』
轟く銃撃の音。軍靴の音を響かせながら近づくファフティフニスを先頭にしたアレス王国兵士達が銃を撃ちながら進む。
ヴィクトリア『農奴の身でありながら王子となり、あろうことかエグゼナーレ様に媚びをうって更に王位を得ようとした。なんという欲深き悪徳か!重罪人だ!死罪だ!死罪だ!死罪だーーーーーーーーーっ!殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺…ごふっ、げふっ!』
ファウスの頭上を飛び交う銃弾。各国の機動城塞の明かりがつく。
デンザイン『撃てーーーーっ!撃て撃て撃て撃て!王子の名をかたる不届き者ぞ!!』
ファフティフニス『あいつは王子では無い!農奴の子だ!!』
ファウス『違う!』
ファウスは青ざめ、目から涙を流す。ファウスを覆う黒い影、顔を上げるファウス。ドルクゥーネがファウスを見下ろす。
ドルゥーネ『違わない。お前は…わしがすり替えた農奴のファウスだ。その過ちを今償う!』
ファウスは四肢を動かしながら、瓦礫の山から飛び出す。衝撃波に飛ばされる瓦礫、転がって行くファウス。銃撃音。
アレス王国兵士E『ちぃ!瓦礫が邪魔で当たらんぞ!』
ファウスは瓦礫の山から飛び出し、血の跡を残しながら走る。
アレス王国兵士B『逃げたぞ!追えーーーーっ!』
ヴェルクシュイヴァンU級機動城塞の格納庫に逃げ込むファウス。ファウスは息を切らして蹲る。
ファウス『ど、どうしてこんな事に、分からない。分からないよ!』
ファウスは俯き両手の掌を見つめる。
ファウス『僕は…ファウスじゃなかったの?…ファウスじゃなかったんだ…。そう…なんだ。』
暗闇の中からファウスの前に現れるドルクゥーネ。ファウスは眼を見開くが、すぐに表情は頬笑みへと変わって行く。ドルクゥーネがファウスの胸元を掴み、ハッチの壁際へ引き寄せる。ドルクゥーネを見下ろし、涙を流すファウス。銃撃音が鳴り響き、大量の銃弾がハッチ内の壁に辺り、火花を散らす。手を光らせて右手の傷の部分を持つドルクゥーネ。眼を閉じるファウス。ファウスの右腕から垂れる血が止まる。ドルクゥーネの目から涙が零れる。
ドルクゥーネ『わしが…お前を。』
軍靴の音が格納庫内に響き渡る。
ファフティフニスの声『ドルクゥーネ殿、小童相手にどれだけ時間をかけているのだ!』
ドルクゥーネ『すまぬ。随分と腕を上げたらしい。』
上を見上げるドルクゥーネ。ドルクゥーネはファウスをコックピットが開いているアレス王国のヴェルクーク級人型機構のコックピットのハッチの上に放り投げる。コックピットのハッチを転がるファウス。ファウスは怪我のしている腕を掴む。ファウスは眼を見開いてドルクゥーネの方を向く。
アレス王国兵士C『いたぞーーーっ!農奴の息子だ!ファウス王子の名をかたる不届き者だ!』
銃撃音。
アレス王国兵士D『あそこだ!撃てーーーい!』
アレス王国のヴェルクーク級人型機構のコックピットのハッチで疎らに火花が飛ぶ。ファウスは転がりながらコックピットの中に入り込む。全速力で闇で染まるフィオラ山地の森林の中に入って行くファウス機。各国の兵士達がヴェルクシュイヴァンU級機動城塞に駆け寄る。
フォレスト王国兵士の声『何事だ!』
フッシ王国兵士の声『敵襲か!』
C10 前夜 END
次回予告
幕開けた時代
■序章完結におけるあとがき
〜俺達の戦いはこれだから!〜
初めに言っておきますがこの第4話には多大なネタバレが含まれますので、是非1〜3話を呼んだ後でお読みください。※決して宣伝ではございません。きりが良いので1話から4話までを序章と致します。作者としてはこれで制限が大幅に解除されたなと。
何やら副題が付いているのでこれはもう少し書けということなのでしょう。使用する物は、ノートと筆記用具、パソコンではメモ帳を使って執筆した後、ワードにコピーして添削していきます。でも、まあ、誤字脱字が多いのや勘違い分を見落としたりしますが…。
作り方ですが、まずあらすじを考えノートに書きます。後はその流れに沿って細部を詰めていきます。まあ、要するにメモ帳の設計図を基に書いて行くという寸法。前後関係を合わせながら、話に矛盾が無いか、会話が不自然でないか等を自分の尺度でつきつめながら書いて行きます。そして…。
駄目だしを喰らいます。
この駄目だしが付けたしてすぐに終わる物なら良いのですが、削ったり、大幅な手直しということになると、前まで書いた文章を別の所に取っておいて素材とし、1から書き直します。チャプターの一個内で終わればそれでいいのですが酷い時などはC10ぐらいまで書いてC1から書き直しということを繰り返しています。
シノプシスの突き詰めが甘いんだろうと言うのもありますし、書いていていいアイディアが浮かび書き直すこともあります。
前後関係を合わせながら、話に矛盾が無いか、会話が不自然でないか等を自分の尺度でつきつめながら書いて行き、素材が使えると思ったら、切り貼りして使います。そして…。
駄目だしを喰らいます。
前後関係を合わせながら、話に矛盾が無いか、会話が不自然でないか等を自分の尺度でつきつめながら書いて行き、素材が使えると思ったら、切り貼りして使います。そして…。
駄目だしを喰らいます。
前後関係を合わせながら、話に矛盾が無いか、会話が不自然でないか等を自分の尺度でつきつめながら書いて行き、素材が使えると思ったら、切り貼りして使います。そして…。
駄目だしを喰らいます。
前後関係を合わせながら、話に矛盾が無いか、会話が不自然でないか等を自分の尺度でつきつめながら書いて行き、素材が使えると思ったら、切り貼りして使います。そして…。
駄目だしを喰らいます。
前後関係を合わせながら、話に矛盾が無いか、会話が不自然でないか等を自分の尺度でつきつめながら書いて行き、素材が使えると思ったら、切り貼りして使います。そして…。
駄目だしを喰らいます。
以下々
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ループって怖いですね…こんな事を繰り返しているのです。はぁ、これだから。
説明 | ||
・必要事項のみ記載。 ・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 ・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 |
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