東方小話 〜RAINYDAY RAIN〜
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  ・東方小話 〜RAINYDAY RAIN〜 ・

 

 

 

 

 

 ・博麗流梅雨時グルメ

 

 

 

 

 

  ザァァァァァァァァァァァァァ――――――――

 

 

 

 季節は梅雨時。

 

 空を隠す雲という灰色からは雨露が絶え間なく降り注ぎ、ここ博麗神社の境内にも季節の風物詩たる紫陽花がぽんぽんと咲き誇っている。 赤系統と青系統が混生しているところを見ると もしかしたらそこらに動物の死骸でも転がってるのだろうか。

 

 

  ザァァァァァァァァァァァァァ――――――――

 

 

 慈雨、喜雨とも表現される空からの恵みの水は紫陽花の葉に当たり、伝い、地面へと落ちて濡れる大地を更に潤す。

 紫陽花の下には腰掛に使えそうな小ぶりな岩があり、その上には小さな緑色のアマガエルが一匹、顔を中空に向けていた。 体色を見る限り、まだ岩に擬態はしていないようである。

 

 この雨、強弱の波はあっても降りに降り続いてもう一週間であった。 

 

 

 

 

 そんな境内の中心である神社の中、住居スペースで霊夢と萃香は卓袱台に突っ伏してだれていた。 宛ら湿気た煎餅だ。 もしくは敷きっぱなしの煎餅布団だ。

 

 ただし梅雨時の湿気に参っているわけではない。 振り続ける雨の陰鬱な気に当てられているのでもない。

 

 「ねぇ…… 萃香……?」

 「…………、なに?」

 

 

 「そこらに生えてきてるキノコとカタツムリ、 どっちがいい?」

 

 

 「ちょっと待ってそれって今日の晩御飯のこと言ってるの!?」

 ……単に、空腹で動く気が失せているのであった。 霊夢のびっくり発言に萃香、『死んでる場合じゃねぇ!』ってな具合にがばっと跳ね起きる。

 部屋の隅の畳の上には、件の 人差し指ほどの大きさの『そこらに生えてきてるキノコ』が大小で並んでカサを広げていた。 目には見えないが胞子がワッサワッサ出てることだろう。 実際他の目に付かないところにもキノコの幼生はいくつか育っていて、……もしかしたら陰の氣が滞留していることの影響を神社と言う場所のせいで受けているのかもしれない。

 

 今日も今日とて霊夢、元気無く貧乏やってます。

 

 「いや ね? 外の世界だとカタツムリが高級な料理に使われるとかなんとか聞いて ね?」

 「えぇぇぇ…… 外の世界ってそんなに貧しいことになってるの……?」

 跳ね起きたはいいけども萃香、すぐさまへにょりと再び卓袱台に突っ伏す。 特徴的な二本の角も、湿気を帯びているかのように また逆に枯れ切った木の枝のように景気の悪い様となり果てているから哀れである。

 近頃は大工の手伝いという金子の入手口を得ている萃香だが、都合が付かないのが続いての長雨のコンボで収入を得られず、ここしばらくほぼ飲み食いをしていない。 大工殺すにゃ刃物は要らぬ 雨の三日も降ればいい というやつだろうか。

 それは博麗神社の食費の一角を担っているので、それが途絶えれば まぁこうなるのは必然なわけで。

 

 「まぁナメクジよりはいいかなって…… この際 」

 「ナメクジが食材の候補に挙がったことがわたし驚きなんだけど……」

 「だって雑草ばっかりで それも正直不味いし   たまには お肉っぽいものも食べたいのよ……」

 「ナメクジとかをお肉って思ったらもうだめだと思うよ……」

 「前に紫陽花食べたら永遠亭の世話になったし……」

 「あぁ…… たしか毒なんだっけ?」

 

 作者もナメクジやカタツムリ ひいてはでっかい幼虫とかが食料となっていることは承知している。 実際フランスでカタツムリ食べたし。

 だが。 食文化の中に無いものをいきなり食べてみようと思うのに抵抗を感じて拒絶するのは仕方ないことであることも承知していただきたい。 生魚とかも海外じゃグロい気持ち悪いって話しだし。

 

 萃香とて霊夢に付き合って手近な雑草は一通り口にしたし、知らずに 鬼だから良かったものの毒草を口にして数日唸り通したこともある。 因みに毒草を口にしたのは霊夢が空腹でかなり切迫した際に、なにか食料をと近くの山で目に付いたものを試しに食べてみたことに因る。 自身も空腹で判断能力が落ちていたのだ。 あぁなんとも献身的。

 だがいくらなんでもナメクジやカタツムリを食べる気にはならない。 長く生きてきたが発想すら無かった。 鬼にだって見た目的な好き嫌いはあるのだ。

 

 ではどうするか。 それなりに肉っぽくてバラすのに手間が掛からなくて、ナメクジやカタツムリよりは抵抗無く食材として見られるもの。

 

 

 「じゃあ  カエルなら…… どう?」

 

 

 …………、霊夢が発した提案が、これだった。 

 

 

 「    あぁ……

 

   カエルなら  まだいいかも……」

 

 萃香もぼんやりとした頭で肯定するがそれはそれでどうなんだろうか。 まぁカエルも食材として使われることは使われることも確かだけど。

 

 ただし、

 

 「唐揚げ……」「つみれ汁……」「雑草炒め……」「煮物……」 「踊り食い は無いわね……」「それは無いよ…… 火ぐらい通さないと……」

 

 空腹でおかしなことになっている二人の思考イメージにあるように、アマガエルを丸ごとそのまま料理するのはいただけない。 二つ以上の意味で。 通常は食用のカエルの脚を使うものである。

 カラッと揚がった狐色の衣が付いた丸ごとのカエルが皿の上に盛られてたり、体の破片 水かきの付いた手や模様が見て取れる皮膚が混じった荒いつみれが入った椀物や、数匹が一本の串に刺さっている焼き鳥ならぬ焼き蛙とか 目が白くなったカエルが鍋の中で煮汁の風呂に浸かって野菜類と共に湯気を上げている様は  あまり想像したくない。

 

 思い出すんだ萃香、確かに萃香もカエルを食べたことはあるだろう。 だが丸焼きにした結果はらわたが不味くて、それ以来食べるにしても肉付きのいい脚部分だけした食べたことは無いだろう。 可食部分の多いウシガエルの脚しか食料として見てこなかっただろう。

 

 けどそんな記憶は空腹による思考の鈍りによって彼方に暈けている。 先人曰く、窮すれば鈍する。

 

 

 「チルノに冷凍保存させよう かしら……」

 

 

 霊夢はポツリと実用的にして戦慄の独白を漏らして、しばらく降りしきりの雨を眺めた。

 

 

 

 

 岩の色に体色が変わり始めたアマガエル。

 

 頭に紫陽花からの雨粒が落ち、彼は小さく『ケロロッ』と鳴いた。

 

 

 

 

 

 「う? このお煎餅ちょっと湿気て ……はっ!? 今なんかヤな感じしたんだけど!?」

 「? どうした、諏訪子?」

 

 同時刻、洩守神社内の卓袱台でお茶受けに煎餅を齧っていた諏訪子が虫の報せにびくっと反応して、対面の神奈子が『?』といった表情を向けた。

 

 

 

 

 

 この後、チルノがカエルを氷結乱獲してそれを博麗神社にお菓子と引き換えに持ち込むようになるかどうかは

 

 

 私こと作者のあずかり知るところではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ・ついでにもう一話・

 

 

 

 

 ・スキマ式ロケパン

 

 

 

 

 冬も間近なとある日、八雲 紫の屋敷内。

 

 「こうして、 それで……、」

 スキマ妖怪の八雲 紫。 なにやら畳の上に立って、曲げた肘を後ろに引いた拳打の体勢を取っています。 傍らでは火鉢で真っ赤に熾った炭がパチッと小さく音を立てた。

 

 そして、

 

 「ろけっと ぱ〜〜んちっ!!」

 

 ……ろけっと のところで手に力を込めて、ぱ〜〜んちっ!! の掛け声と共に拳を前に突き出した。

 突き出した拳は勢いそのままに手首から分離して、ロケットパンチの名の通りに前のほうへ『ばひゅんっ!』と飛んでいった。

 

 要は自分の手首にスキマを二つ展開し、手のほうのスキマを前方へと移動させたのである。

 一体何をいい年してやってんだと問いたくなるが。 どうやら外の世界でロケットパンチの知識を仕入れたらしく、だからって理由にもならないが今こうして能力を用いて再現しているのであった。

 

 「くっ ふふふっ なぁんちゃって。 でもこれ一発芸としてはいいかもしれな」

 「紫様なにやってるんですか。」

 

 そこへ声が乱入。 斜め後ろの存在に気付いていなかったらしく、驚いた猫のように『ビックゥッ』と小さく飛び上がった。 はずみでスキマが解除され、拳は所定の手首の先に戻った。

 

 「きゃあ藍に橙いつからそこに!?」

 

 呆れた顔の八雲 藍、煌く目の橙が開いた襖の向こうに立っていた。

 

 「どれだけ夢中になってたんですか 手が飛んでいったところからですよ。 ほら森近殿に灯油渡しに行くのでしょう。

  それと絶対すべるので行った先でするとかやめて下さいね。」

 「紫様っ 橙はかっこいいとおもいますよっ!」

 「ほら橙が同じようにしてくれって言い出すんですからぁ」

 「だっ て その 面白いじゃないのっ」

 

 冬眠が近いせいか本当に素で気付いていなかったようで。

 

 実に珍しく、頬を染めながら弁明になっていない弁明をする紫だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ・あとがき・

 

 

 

 ………………カエルなら いける かなぁ……

 

 

 やぁ。 梅雨を満喫 出来ないかな、カエルの脚の唐揚げとかならいけるんじゃないかなって考えてる華狼です。

 あぁ 別に実生活で困窮した末に狩猟生活とか始めたわけじゃないんでそこんとこよろしく。 まぁ小さい頃に家の鍵忘れて入れなくなって、誰も帰ってこないまま日が暮れてお腹空いた末に家の周りに生えてたヨモギを摘んで齧ったことはあるけれど。 不味かったなあれは。

 でも虫は無理だ。 イナゴとかザザ虫とかでっかい芋虫とかぁぁぁぁぁああああああああああ!! 怖気が走る!! 動画見てるだけで気分が急転直下だった!!

 

 

 ところで梅雨を楽しむってのはどうやったらできるのか。 せいぜい四季を体感する ぐらいしか出来なさそうな。

 縁側に座って紫陽花の咲く雨煙に霞む風景と 絶え間なく大地を叩く雨の音を前にして、涼しげな見た目の和菓子でも口にすればいいんだろうか。 おぉ これは中々良いんじゃないかな。

 

 そして湿気を肌で感じる と。 ……や これは要らないか。 でもそれもまた梅雨の特徴だしな。 あえて感じるのも一興なのかも。

 

 

 それと冬ってのと大工の都都逸で思い出した。

 

 『人の身斬るに刃は要らぬ 寒風一陣吹けばいい』ってのが持ち都都逸。

 

 身を斬るような寒さ ってのを都都逸にしたもの。 実際あかぎれとか起こすしね。

 

 

 とまぁこんなところで今回はおしまい。

 早く他のも出してしまいたいんだけどね。 なんやかんやで出来ないのが現状なのよ。 要は単純に細かいところが詰められない文章構成能力の荒さが主な理由なんだけどさ?

 

 では。 次出すのは同時進行のフランの話が早いかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
 生存報告を兼ねて季節の短話を一つ。

 梅雨は日本の風物詩だし雨の風景は嫌いじゃ無いけど洗濯が出来なくていかん。 あと蛙うるさい。
 今回のはそんな気持ちを込めた話 なわけないでしょ。
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東方 東方project 博麗霊夢 伊吹萃香 八雲一家 梅雨の日グルメ 冬の日一発芸 

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