真・恋姫†無双 外史 〜天の御遣い伝説(side呂布軍)〜 第十四回 番外編:虎牢関の戦い@・虎牢関を守る龍
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城外では、激しい怒号と武器のぶつかり合う金属音、馬の駆けまわる音などが重なり、ものすごい轟音となっている。

 

そんな中、虎牢関の本陣で董卓はただただ両手を胸の前に組み、仲間の無事を祈り続けていた。

 

 

 

賈駆「大丈夫よ、月。みんなそう簡単には死なないわ」

 

董卓「詠ちゃん・・・」

 

李儒「相手は烏合の衆、油断さえせーへんかったら、ウチら董卓軍の結束を破るのは無理です〜」

 

董卓「りっちゃん・・・」

 

 

 

そんな董卓の様子を見た賈駆と((李儒|りじゅ))は、董卓を励まそうと各々声をかけた。

 

 

 

董卓「ありがとう、詠ちゃん、りっちゃん」

 

 

 

二人の励ましを受け、一瞬微笑んだ董卓であったが、再び表情が曇ってしまった。

 

 

 

董卓「どうして、みんな戦争を起こそうとするの・・・黄巾の乱であんなに人々が苦しんでいるのを見ているはずなのに・・・

 

どうして・・・」

 

 

 

そいのように嘆いた董卓を、賈駆はギュッと抱きしめた。

 

 

 

賈駆「こんな乱れた世の中は間違ってる・・・だから、ボクたちがこの乱世を終わらせる・・・こんなところで死ぬわけには

 

いかないんだから・・・!」

 

 

 

董卓は賈駆に抱きしめられながら、ふと、とある人物の噂を思い出していた。

 

 

 

董卓「(・・・天の、御遣い様・・か・・・)」

 

 

 

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【司州、虎牢関、董卓軍本陣】

 

 

 

時は西暦191年春。天の御遣い・北郷一刀が、まだこの世界に舞い降りていない時代。呂布が下?で曹操に襲撃される7年前に遡る。

 

ここは司州洛陽の東部に建つ関所、その名も虎牢関。

 

そこでは現在、董卓軍が冀州の群雄、袁紹率いる反董卓連合軍の攻撃に備えていた。

 

そしてついに、その時がやって来た。一人の兵士が本陣内へと駆けこんでくる。

 

 

 

董兵1「申し上げます!連合軍の姿を捕えました!」

 

賈駆「ついに来たわね。みんな、ここが正念場よ!」

 

 

 

兵士の報告を聞き、黒っぽいひし形の軍師帽を整えながらこの場にいる者たちに檄を飛ばしたのは、

 

董卓の懐刀にして董卓軍の筆頭軍師、賈駆である。

 

 

 

張遼「よっしゃ、また強いヤツと戦える!」

 

 

 

戦いに極上の生きがいを感じている張遼は鼻息を荒くして自身の士気を高めた。

 

 

 

高順「霞、不謹慎ですよ」

 

 

 

一方高順は、そんな張遼をたしなめるように冷静に指摘する。

 

 

 

華雄「烏合の衆など、私が蹴散らしてくれるわ!」

 

 

 

張遼と同様に戦いに向けて己を鼓舞している、肩とお腹周りを大きく露出させ、太ももまで開けた深いスリットの女性は、

 

猛将にして良将として名を馳せ、董卓軍にこの人ありと、周りから恐れられている、董卓軍の都督、華雄である。

 

 

 

陳宮「恋殿がいるかぎり、何も心配する必要などありませんぞ」

 

呂布「・・・(コクッ)」

 

セキト「わんっ!」

 

 

 

両腕を組み、澄ました顔で陳宮は自信満々に述べ、呂布は静かにうなずいた。

 

そして呂布の膝の上を陣取っている、深紅のスカーフを首に巻いた、呂布の飼い犬であるセキトという名の茶色い小さな犬も、

 

一声鳴いて呂布に同調した。

 

 

 

賈駆「頼もしいのはいいけど、油断だけはしないでよね。袁紹に指揮する能力はなくても、連合軍に参加した各群雄はみんな曲者揃いよ」

 

 

 

董卓軍は、単独では他を圧倒するほどの大戦力なのだが、

 

今回袁紹の呼びかけに応じて集結した反董卓連合軍は、それをも上回るほどであった。

 

そこに加えて、董卓軍は現在追い詰められている状況であるのだが、董卓軍の士気は十分であった。

 

そんな中、賈駆がメガネを上げつつ、状況確認と今後の方針を述べる。

 

 

 

賈駆「とにかく配置について確認するからね。洛陽は((張譲|ちょうじょう))に占拠されてもう戻れないわ。ここ虎牢関は、北は黄河、周りは険しい崖

 

と防衛施設としては完璧だけど、援軍がいない今籠城しても意味はない。だから城外に陣を敷いて敵軍を蹴散らして戦場を混乱させ、

 

隙を見てまだ親董卓圏内の長安に落ち延びるわ」

 

 

 

董卓軍にとって、今回の戦いで別に勝つ必要はなかった。

 

そもそも、今回董卓軍が連合軍に攻められているのは、董卓軍を抱え、当時中央で専権を振るっていた、

 

宦官の集団、十常侍のリーダー格・張譲が働いた悪事を、全て董卓になすりつけたためである。

 

そして、その後張譲は董卓をトカゲのしっぽ切りの如く洛陽から追い出し、行き場を失った董卓軍は、

 

攻め来る連合軍の攻撃から逃れるため、急遽虎牢関に籠らざるを得ない状況であった。

 

そのため、とにかくこの危機的状況から脱し、落ち着ける場所で再起を図るというのが董卓軍の最終目的であった。

 

そうして賈駆は各々に指示を出していく。

 

 

 

賈駆「まず恋は正面の門を、ねねはそこから全体の指揮をお願い」

 

呂布「・・・(コクッ)」

陳宮「了解なのです」

 

 

 

呂布は静かにうなずき、陳宮は勢いよく左手を上げて答えた

 

 

 

賈駆「華雄と霞は左翼を、副官には((徐栄|じょえい))・((?萌|かくぼう))たちを連れて行ってちょうだい。ななは右翼をお願い。副官には((樊稠|はんちゅう))・臧覇たちを」

 

華雄「わかった!」

張遼「了解や!」

高順「了解です」

 

 

 

華雄は巨大な戦斧を床にドンと叩きつけながら、張遼は早く戦わせろと言わんばかりの表情をしながら、高順は落ち着いた表情で答えた。

 

 

 

賈駆「ボクと李儒、((李?|りかく))、((郭|かくし))は城内で月の護衛を」

 

李儒「はいです〜」

李?・郭「「この命に代えても!」」

 

 

 

董卓の知恵袋にして董卓軍の軍師、伝統的な軍師服に身を包んだ李儒は、ニコニコした表情で人差し指を立てつつ、

 

語尾を伸ばしながら緩く答え、そして董卓軍の中でも古参の猛将四人衆に数えられる内の2強、

 

三角錐型で縦長の兜をかぶった李?、額当てを巻いた郭は同時に力強く答えた。

 

一通り指示を出したのち、一息置いたところで、賈駆はより真剣な眼差しになって一言付け加えた。

 

しかしその一言は、この場の多くの人間にとって予想外の言葉であった。

 

 

 

賈駆「最後にみんなに言っておくことがあるわ。もし万が一、月が敵に討たれてしまったら、生き残っている人はとにかくすぐに長安に

 

落ち延びてほしいの。長安はまだ親董卓圏内だから、そこで生き残った人達で体制を整えて、再起を図るのよ」

 

 

 

それはこれから戦いに挑む軍の筆頭軍師としては、あまりにも弱気な発言であり、周りを動揺させた。

 

 

 

張遼「んなアホな!ウチらが抜かれるっちゅーんか!そんなんありえへん!」

 

華雄「張遼の言うとおりだ!それに主君を置いて逃げるなど考えられん!」

 

高順「・・・・・・」

 

 

 

しかしこの発言は決して弱気からくるものではなかった。筆頭軍師として、最悪の事態を常に想定しての保険。

 

 

 

賈駆「これはボクと月、ねねと李儒で話し合って出した結論よ。全滅するよりも、月の意志を受け継いでいる人に天下を治めてほしい。

 

これが月の願いよ」

 

 

張遼「せやかてそんなん・・・」

 

 

 

張遼は悲痛な声を上げたが、そんな張遼に対して、部屋の最奥に坐する董卓が、

 

かぶった帽子から垂れているベール越しに落ち着いた眼をのぞかせつつ、言葉を付け加えた。

 

 

 

董卓「勝手なことを言っているのは分かっています。将兵にとって主君を置いて逃げることがどれほど屈辱的なことなのかも。ですが、

 

霞さん。私はみんなの平和への思いを絶やさないでほしいのです。一人でも多く生き残ってこの乱世を終わらせてほしいのです。

 

ですから・・・」

 

 

華雄「董卓様・・・」

 

 

 

主君の痛切なる訴えかけに、華雄は言葉を詰まらせる。

 

 

 

陳宮「そういうことなので一応頭の隅に置いておいてほしいのです。まあですが、城内への侵入などありえませんが」

 

呂布「・・・誰も入れない」

 

セキト「わんわんっ!」

 

 

 

初めて発した呂布の短い言葉には、強い意志と絶対の自信がにじみ出ていた。

 

そしてその呂布の意志に反映するかのごとく、セキトもまた力強く二声鳴いた。

 

 

 

賈駆「あくまで万が一の話だから。もちろんこんな所で月を死なせるつもりはないわ。ボクたちも混乱に乗じて脱出するから。みんな

 

頼んだわよ!」

 

 

張遼「応ッ!まかしとき!」

 

華雄「敵の度肝を抜いてやろう!」

 

 

 

賈駆は最後にフォローを付け加えることで、士気がくじけそうになっていたのを修正した。この辺りはさすがと言うべきである。

 

そうして各々はそれぞれの配置へと移動していく。

 

 

 

董卓「みんな、死なないで下さいね・・・」

 

 

 

そうつぶやくと、董卓は胸の前で両手を組み、目を閉じて仲間の無事を祈った。

 

 

 

 

 

間もなく連合軍側から開戦を知らせる銅鑼の音が鳴り響いた。

 

 

 

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【司州、虎牢関正門前】

 

 

 

銅鑼の音が鳴り響いて間もなく、連合軍の部隊が虎牢関正門へと突っ込んできた。

 

先鋒隊は、黄檗色の劉旗を閃かせた((劉表|りゅうひょう))軍である。

 

 

 

劉表兵長「我ら劉表軍が一番乗りだぁぁぁっ!逆賊董卓を打ち取れぇぇぇっ!全兵突撃ぃぃぃっ!!」

 

劉表兵「おぉぉぉぉぉぉーーーーーっっ!!!」

 

 

 

劉表軍の兵長の号令に従い、兵士たちが大声を発しながら突っ込んでいく。

 

劉表軍の先鋒隊は約2000人。

 

しかし、ちょうど正門に到達しようとしたその時、二つの影が虎牢関に立ちはだかった。

 

 

 

劉表兵1「おい、門前に誰かいるぞ!」

 

劉表兵2「誰でもいい!董卓に味方する奴は全員打ち取れ!」

 

 

 

劉表軍は勢いそのままに、十数人もの兵士たちが先を競って二人に襲いかかった。

 

数の上での差は歴然であり、その振るわれた各々の武器によって、襲われた二人はなすすべなく、

 

串刺しにされ、切り刻まれ、ゴミのように踏み越えられていく。

 

 

 

 

 

―――普通の者であればそうなるはずであった。

 

 

 

 

 

しかし、二人のうちの一方が手に持った武器を一振りすると、襲いかかった兵士全員が吹き飛ばされ、辺り一面に血しぶきがとんだ。

 

 

 

劉表兵3「なんなんだこいつは!?何人もの仲間が一気の吹っ飛んだぞ!」

 

 

 

すると、武器を振るった人物が、その武器、方天画戟でドスンと地面をたたき、静かに言い放った。

 

 

 

呂布「・・・董卓軍第一師団師団長、呂奉先・・・目的・・・虎牢関に近づく敵の殲滅・・・」

 

 

 

そう言い放った呂布からは、常人とは明らかに違うオーラを放っていた。

 

そのプレッシャーを受け、最初に飛び込まなかった兵士たちが怯む。

 

 

 

劉表兵3「こいつがあの・・・」

 

 

 

呂布はそんな劉表軍を一瞥すると、もう一人の人物、陳宮に淡々と告げた。

 

 

 

呂布「・・・ちんきゅー」

 

陳宮「はいです!」

 

呂布「・・・旗を」

 

陳宮「了解なのです!」

 

 

 

すると陳宮は、手にしていた深紅の旗を高々と掲げた。

 

中央の一文字は “呂” 。

 

そして、続けざまに陳宮は明らかに動揺の色のうかがえる劉表軍に向かって高らかに叫んだ。

 

 

 

陳宮「遠からん者は音にも聞け!近くば寄って目にも見よーっ!蒼天に翻るは、血で染め抜いた深紅の呂旗! 天下にその名を響かせる、

 

董卓軍が一番槍!悪鬼はひれ伏し、鬼神も逃げる、飛将軍呂奉先が旗なり!天に唾する悪党どもよ!その目でとくと仰ぎ見るが良いの

 

です!」

 

 

呂布「・・・我が使命は羽虫の鏖殺・・・遠慮はいらない・・・かかってこい」

 

 

 

深紅の呂旗は、陽光に照らされて不気味なほど赤々と光っていた。劉表軍には先ほど以上に動揺が広がっていた。

 

 

 

劉表兵3「深紅の呂旗・・・!」

 

劉表兵4「3万の黄巾賊をたったの一人で葬った、飛将軍、呂奉先・・・!」

 

劉表兵5「その武はまさに天下無双と謳われる、人中の呂布・・・!」

 

 

 

このまま劉表軍は戦意喪失となりそうなほどの同様の広がりであったが、かろうじて兵長が兵士たちを鼓舞して隊の瓦解を防いだ。

 

 

 

劉表兵長「びびってんじゃねぇ!相手はたかが女のガキ二人だ!俺たちは何人いると思ってんだ!一気にかかれッ!」

 

 

 

数で言えば2000対2。正確には陳宮は戦闘に加わらないため2000対1である。

 

しかし、呂布がかつて30000もの黄巾賊を一人で屠ったとなれば、数字の話は全く意味を成さない。

 

 

 

劉表兵「応っ!!」

 

 

 

しかし、兵長に言われては退くに退けず、結局、劉表軍は呂布に対して無謀ともいえる特攻を続けるほかなかった。

 

 

 

呂布「・・・ちんきゅー、セキトを頼む」

 

陳宮「はいです!呂布殿、御武運を!」

 

 

 

呂布は頭の上に乗せていたセキトを陳宮に託して下がらせ、自身は戦闘態勢に入った。

 

 

 

劉表兵4「死ねぇぇぇぇっ!!」

 

 

 

劉表兵4は構えた槍で呂布の心臓を貫こうと突っ込んだ。

 

しかし、呂布はその攻撃を容易く躱し、自慢の愛戟、方天画戟を右下から左上へと振り上げ、必殺の一撃を劉表兵4の背中に叩きこんだ。

 

 

 

呂布「・・・お前が死ね」

 

劉表兵4「ぐはっ!」

 

 

 

死体となった仲間が豪快に目の前に飛んでき、再び劉表軍に戦慄が走る。

 

 

 

劉表兵3「ひいっ!」

 

劉表兵長「怯むな!一気呵成に攻めたてろ!このような逆賊の犬は、この蒼天の世にはいらねぇ!」

 

 

 

兵長は再び兵士を鼓舞するが、陳宮が呂布を侮辱する言葉を聞き流すわけがなかった。

 

 

 

陳宮「犬ですと?愚か者め!呂布殿は蒼天を駆ける龍ですぞ!」

 

セキト「がるる〜、わんわんっ!」

 

呂布「・・・蒼天は龍が駆ける場所。・・・しかして駆けるは羽虫にあらず・・・だから・・・・・・・羽虫は死ね」

 

劉表兵5「く、くそぉぉぉっ!」

 

 

 

呂布が一言一言語るごとに増すプレッシャーに耐えかね、半ば自棄になった兵が強引に槍で呂布の腹に風穴を開けようと突き出した。

 

 

 

呂布「・・・遅い」

 

劉表兵5「ぐは・・・!」

 

 

 

しかし、当然その槍が呂布に届くはずもない。呂布は槍を避けることもなく逆に方天画戟で劉表兵5の腹に風穴を開けた。

 

 

 

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気づいた時には、劉表軍は500にも満たない兵数にまで減っていた。

 

ここまでくれば、通常撤退すべきなのだが、兵長の突撃一辺倒な愚かな采配により、未だ呂布に対して無謀な特攻を続けていた。

 

劉表軍の精神状態はもはや擦り切れ寸前であり、未だ呂布と対峙しているのが不思議と思えるほどである。

 

 

 

劉表兵長「ええい、貴様ら何人やられれば済むんだ!攻めろ攻めろ!息つく暇も与え―――」

 

 

 

しかし、そこで兵長は言葉を失った。

 

いつの間にか自身の前で戦っていた兵たちは皆倒れており、目の前にいたのは、

 

幾人もの兵士たちの返り血で真っ赤に染まっている呂布の姿であった。

 

 

 

呂布「・・・お前は口だけか」

 

劉表兵長「へ?」

 

 

 

呂布の鋭い瞳に見据えられた兵長はまったく動くことができなかった。まさに捕食者と餌食。力の差は歴然であった。

 

 

 

呂布「・・・弱い奴は死ね」

 

劉表兵長「ひ―――」

 

 

 

呂布が軽々と薙ぎ払った一撃は、兵長に悲鳴を上げる間すら与えず首を刎ね飛ばした。

 

 

 

劉表兵3「ひぃ、勝てるわけがねえ・・・!」

 

 

 

兵長の死を口火に、戦意を喪失しつつも無理やりに戦場につなぎとめていた心の支えを失った残り500未満の劉表軍の兵士たちは、

 

次々に戦線を離脱し、ここに劉表軍の先鋒隊は瓦解した。

 

しかし、当然これで董卓軍の勝利となるわけではない。ただ先鋒隊を退けたにすぎないのだ。

 

そのことを知らしめるかのごとく、劉表軍の先鋒隊と入れ替わるように、新たな部隊が正門へと接近してきた。

 

 

 

陳宮「 “劉” の牙門旗?まさかもう劉表の本体が動いたですか?」

 

 

 

それでも呂布の反応は変わらない。相変わらず無表情のまま刺すような鋭い視線を前方の敵軍団に向けている。

 

そして次の瞬間、敵集団の中から、一人の影が、文字通り飛び出した来た。

 

 

 

??「覚悟、なのだ!」

 

 

 

その影は小柄な少女であったが、身の丈に明らかに不釣り合いな巨大な矛による奇襲は意外にも攻撃速度が速く、

 

呂布は完全に隙を突かれていた。

 

 

 

 

 

―――はずだった。

 

 

 

 

 

しかし・・・

 

 

 

 

 

呂布「・・・甘い」

 

 

 

一瞬反応が遅れたにもかかわらず、呂布は襲撃者の攻撃を涼しい顔で受け、弾き返した。

 

 

 

??「にゃー、もうちょいだったのに」

 

??「鈴々!一人で行くなとあれほど言っただろう!相手はあの呂布だぞ!」

 

 

 

呂布を仕留められずに残念がっている小柄な赤毛の襲撃者にようやく追いついた少女は、

 

艶やかな黒髪を靡かせながら声を荒げてたしなめた。

 

 

 

??「ごめんなのだ、愛紗」

 

??「あの人が呂布・・・」

 

 

 

さらに遅れて多くの兵士に囲まれながら到着した桃髪の少女が、呂布の放つプレッシャーに圧倒される。

 

彼女の周りにあるのは、新緑の牙門旗。一文字は “劉” 。その他にも “関” と “張” の旗印も見える。

 

 

 

呂布「・・・誰だ」

 

 

 

呂布は相手の放つ気が、今までの敵とは一味違うのを肌で感じ取り、何者なのかを尋ねた。

 

平時、呂布は敵に対して何の関心も持たないことからも、非常に珍しいケースである。

 

 

 

関羽「我が名は関羽! 字は雲長!弱き者を守るべく立ち上がった大徳が一の矛!」

 

張飛「鈴々の名は張飛!字は翼徳!張翼徳の蛇矛の一撃、受けられるなら受けてみよ、なのだ!」

 

劉備「私の名は劉備、字は玄徳。呂布さん、悪いけどここは通させてもらいます!」

 

 

 

三人の名乗りを聞き、陳宮がやや反応した。

 

 

 

陳宮「劉表ではなかったですか。しかし、劉備、関羽、張飛といえば、黄巾の乱のときに現れた最近売り出し中の新鋭ですな」

 

呂布「・・・董卓軍第一師団師団長、呂奉先・・・ここは誰も通さない」

 

 

 

呂布は名乗り終えると同時に戦闘態勢に入る。と同時に、禍々しいほどのプレッシャーが劉備軍を襲う。

 

 

 

呂布「・・・面倒だ・・・まとめてかかってこい」

 

関羽「桃香様、御下がりください。ここは私と鈴々が」

 

張飛「やるのだ!」

 

 

 

言い終わると同時に、関羽と張飛が同時に攻撃を開始した。

 

関羽が扱う得物は、八十二斤(約48kg)もの重量をほこる青龍偃月刀。

 

張飛が扱う得物は全長一丈八尺(約4.4m)もの巨大な蛇矛。

 

二人はそれら規格外の得物を軽々と扱いながら、息の合った見事な連携で呂布に襲いかかった。

 

しかしそれでも呂布は表情一つ変えることなく淡々と攻撃を受ける。

 

そして呂布への猛攻を続ける中、関羽が劉備に向かって叫んだ。

 

 

 

関羽「チッ、やはり一筋縄ではいかないか。桃香様!やはり正面突破は時間がかかりそうです!ですので桃香様は今の内に兵を連れて

 

迂回路を!呂布は我らが引きとどめます!」

 

 

陳宮「迂回路?」

 

 

 

当然陳宮はそれを聞き逃すはずもなく、 “迂回路” という不穏なキーワードに眉根を寄せた。

 

 

 

劉備「うん、わかった!愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、気を付けて!」

 

関羽「はっ!」

 

張飛「お姉ちゃんも気を付けてね!」

 

 

 

劉備はそう言うと、兵士を引き連れて正門から離脱しようとした。

 

しかし、それをみすみす見逃す陳宮ではなかった。

 

 

 

陳宮「何をたくらんでいるかは知らないですが、このまま易々と逃がすと思ってるですか!?魏続!宋憲!」

 

 

 

陳宮の呼びかけと共に、再び二つの影が虎牢関より現れ、劉備の前に立ちはだかった。

 

 

 

劉備「きゃっ!」

 

宋憲「はっ!おいおい、どこに行くんだねぇちゃん!?」

 

魏続「まさか、呂布殿の至高の武を見過ごすおつもりですか?」

 

 

 

まるで熊のような巨漢のマッチョマン、宋憲は無駄に大きな声で、

 

一方インテリじみたキツネ目の優男、魏続は片手を額に当て、やれやれといった芝居がかった身振りでそれぞれ劉備に尋ねた。

 

 

 

劉備兵1「何だこいつら!?」

 

劉備兵2「なんか変なのが出てきやがった!」

 

劉備兵長「落ち着くんらお前ら!劉備様をお守りすんべ!」

 

 

 

突然現れた敵に劉備軍は一瞬動揺したものの、すぐに主君を守るために戦闘態勢に入った。

 

そんな劉備軍を宋憲は面倒くさそうに一瞥した後、イライラした調子で大声で言い放った。

 

 

 

宋憲「はっ!なんだよ、男に用はねぇんだよ!」

 

 

 

一方魏続は、再び大げさな身振りで、宋憲の意見を否定してみせる。

 

 

 

魏続「違うでしょう宋憲、男であってもとりあえず拘束、ですよ」

 

宋憲「はっ!てめぇはそればっかだな魏続!だが縛るなら女の方がいいだろ!?」

 

魏続「ふふ、それもそうですね」

 

 

 

お互いの意見が一致すると、宋憲は不敵にニヤリと嗤い、魏続は細い目で終始不気味な笑顔を続けている。

 

そんな得体の知れない二人のやり取りに、劉備軍はただならぬ恐怖心にさいなまれていた。

 

 

 

劉備兵1「やっべえ・・・モノホンの変態だ・・・・・・」

 

劉備兵2「駄目だこいつら・・・早く何とかしないと」

 

 

 

そのように劉備軍は徐々に得体の知れない相手のペースに飲み込まれそうになるが、兵長がそんな弱気な兵士たちに喝を入れる。

 

 

 

劉備兵長「何をグダグダ騒いどる!敵を劉備様に近づけんな!所詮相手は呂布じゃねぇ!一気に片付けんべ!」

 

劉備兵「応っ!」

 

 

 

一度は崩れかけていた劉備軍も、相手が呂布でないということから、

 

さきの劉表軍ほど精神的に余裕がないわけではなく、すぐに二人にかかっていった。

 

劉備が率いている兵は1000程度。劉表軍先鋒隊の半数ほどであるが、それでも二人相手には十分すぎる兵力である。

 

さきの呂布がイレギュラーな存在であるだけで、この状況で劉備軍を止めることは通常なら不可能である。

 

 

 

 

 

―――しかし、

 

 

 

 

 

宋憲「はっ!まったく、舐められたもんだな!どこの田舎もんだ!?あ゛ァ!?」

 

劉備兵1・2「「ぐへァッッ!!」」

 

 

 

宋憲は手にした槍で最初に突っ込んできた兵士二人を一突きでまとめて仕留め、そのまま劉備の目の前に投げつけた。

 

 

 

劉備「―――っ!!」

 

魏続「ハァ・・・まったくです。どうやら彼らは、我ら八健将を知らないらしい」

 

 

 

八健将、つまりは呂布配下の猛将八人を指すものだが、

 

要するにこの二人の戦闘能力は、呂布には遠く及ばないにしても、雑兵相手に圧倒する程度の能力は有していたということである。

 

 

 

―――さらに・・・

 

 

 

魏続「さぁ皆さん、出番ですよ」

 

 

 

魏続の呼びかけに呼応して、ここら一帯に潜んでいた呂布軍の伏兵が飛び出し、一気に劉備軍を囲んでしまった。

 

数にして、約800弱。

 

 

 

劉備「伏兵・・・!!」

 

魏続「ハァ・・・まったく、あなた方は我々を少々侮りすぎですよ」

 

 

 

魏続の細い目の奥に映る眼光が、ギロリと鋭くも不気味な色を放っていた。

 

 

 

【第十四回 番外編:虎牢関の戦い@・虎牢関を守る龍 終】

 

 

 

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あとがき

 

 

第十四回終わりましたがいかがだったでしょうか?

 

さて今回から始まりました過去編ですが、実は元々恋の在野フェイズの時に使うため書き始めたものでした。

 

ですがいつの間にか分量が膨大になってしまい、結局使うことなく、

 

実際の在野フェイズでは恋視点の簡略版を載せるという形になり、お蔵入り状態でした。

 

そのまま無視してもよかったのですが、散々思わせぶりな回想を入れていたので、

 

(決して第二章投稿の間に合う見込みがなかったわけでは――げふんげふん)

 

番外編としてこのような形で出すことにしました。どうかお付き合いいただければと思います。

 

ちなみにオリキャラ紹介は番外編最終回でまとめてします。

 

 

あと、今回の番外編では、久しぶりにたくさん恋姫が登場するのですが、口調が非常に心配です。

 

(注:一応新規の方のために、stsは原作未プレイのなんちゃって恋姫ファンなのです)

 

なので、今後これはさすがにないわーってのがあればご指摘いただければありがたいです(特に華雄さんとか 汗)

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

3万人を一人でやるとか無双シリーズもびっくりな無双っぷり、、、笑

 

説明
どうもみなさんお久しぶりです!または初めまして!

今回から予告通り、番外編:虎牢関の戦いを投稿していきます。


前回コメント下さった方の意見を尊重しますと、意外と批判が少なくて安心したわけですが、

逆に期待される分、内容が、、、 汗

一応これではいかん、と色々加筆修正したつもりですが、余計にややこしくなってるかもです 汗


あと最初にお断りをば、、、当初一刀君がこの世界に来る以前はほぼ史実通りと宣言していましたが、

それは、一刀君が来る以前の話を書く予定がなかったためなので、色々他勢力の関係やらを調整していくと、

どうしても“ほぼ”の領域を逸脱して、オリジナルな感じにならざるを得なくなってしまいました。

どうかご了承下さい。



それでは我が拙稿の極み、とくと御覧あれ・・・



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コメント
>八健将カッケェwww 月の口調は基本?です、ます調だと思います 八健将は呂布sideのお話なので史実以上の実力が出てるかもです 笑 月ちゃんの口調は詠ちゃん以外には丁寧語ということでしょうか、、、ご指摘ありがとうございます!(sts)
きの様、ご指摘ありがとうございます。華雄さんは月ちゃんに対しては敬語ですか?一応プレイ動画聞いて勉強したつもりだったのですが、、、修正しておきます!(sts)
>兵長ダメ過ぎでしょ。あの愛紗が… 兵長は恋の一方的な強さを示すために少し大げさに雑魚キャラにしました。 桃香さんは演義重視でこのように。恋姫世界では考えられないですけど 笑(sts)
八健将カッケェwww 月の口調は基本?です、ます調だと思います^ ^(くつろぎすと)
かゆうまさんの月さん呼び捨てに違和感(きの)
兵長ダメ過ぎでしょ。あの愛紗が桃化を戦場に出すなんて・・・。これも史実どうりだからか(兎)
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