【恋姫二次創作】死神の毒 楽園へ |
今回は番外編みたいなもんです。
あまり集中せず書きました。
「ここが、あの人の言っていた何でも望みが叶う国なのか…」
男は船の上で呟く。
この男、もともとはただの農夫だった。
漢王朝の衰退による賊の増加のせいで、男の村は襲われ、嫁と子供は男の目の前で無惨に殺された。
男は何もできずに呆然と立ち尽くす。
目の前には、体のどこかに黄色い布を身に着ける男たち。
足元には、つい先ほどまで笑顔を男に向けていた街の人たちの死骸。
幸運か不運かは分からないが、男は黄色い布を偶然にも身に着けていたため賊に仲間と思われて、賊の本拠地へと連れていかれ、そのままずるずると賊の中で出世を果たした。
自分が『大将』と呼ばれるようになった時も、あの光景を忘れることは一度もなかった。
しかし男が賊になり、流されるままに襲った村の光景は何一つとして覚えていなかった。
「おらの罪を消して欲しい…。あの時に帰りたい…。」
男は船の上でそう呟く。
先ほどとは違い、男の顔は涙や鼻水でぐちゃぐちゃになる。
南蛮から出航した船は目標とする土地へと向かい続ける。
目標の土地は見えてはいるが、まだしばらく時間がかかるのは船乗りでなくともわかる。
男は一人で静かに呟いた。
「ありがとうございました。おらもこの国でまた頑張ってきます。」
「おう、まぁ頑張れよ!!きっとこの国で幸せが手に入るぜ。」
男は南蛮の船乗りに感謝を言う。
以前の男ならば船乗りに感謝など言わなかっただろうが、今の男は希望に満ち溢れている。
もう目前まで自分の幸せが迫っているのだから。
「ここから少し行くと門番が居るから、そいつにさっきのを見せれば五王様に会えるぜ。まぁ、装様がいないから四王だけどな。んじゃ、俺らはまだ仕事があるから。」
船乗りはニカッと男に微笑み、船に飛び乗るとすぐに船は出航した。
男は船乗りの船が少し遠くに行くまで見送っていた。
男は懐の木簡を確認して、足早に船乗りが指差した方へと進んでいく。
「もうすぐ会えるぞ…待ってろよ。」
少し微笑み、まるで誰かに伝えようとしているように喋る。
男は少し息が上がる。
「あ、あれか!!」
男は遠くに小さく見える門に大声を上げる。
男は更に急いで門に近づく。
その門はとても巨大で、扉には雲や植物に牛や人間、そして竹林のような物の装飾が施されていて、神々しく見える。
その脇には小さな小屋と軽そうな鎧を身にまとった門番が二人ほど槍を持って立っていた。
「そのお前、止まれ。」
身長が高いほうの門番が男に向かって言う。
身長が小さいほうの門番は門の中央に立つ。
「ど、どうぞ!!」
男は若干緊張して、懐の木簡を門番に渡す。
木簡を受け取った方の長身の門番は見る見るうちに顔が蒼くなる。
「お、おい。これって本物か?」
長身の門番は、門の中央に立つ身長の低い門番に木簡を渡す。
「ん?えっ、これは……本物みたいだな。」
「お、俺急いで四王様に伝えてくる!!」
「わかった。俺は城まで案内する。」
「おう、頼んだ。」
長身の門番は門をすぐに開け、中へと走って行った。
背の低い門番は男に木簡を返す。
「あんたには四王様にいったん会ってもらうから、まず城へ向かおうか。」
門番は男を連れて、門の中に入る。
「うおぉっ。」
男は思わず、声を上げてしまった。
目の前にあったのは、今までの寂れた活気のない街ではなく、まるで昔の男がいた村のように賑やかであり、街の人間一人一人の目には希望が見える。
「驚いただろ、装様が来る前はこんなんじゃなかったんだぜ。」
男の後ろには門を閉じ、太い木の棒で外から門を開かないようにしている、門番が居た。
門番は男の横まで来ると話を続けた。
「どれもこれも装様のおかげさ。装様が来るまでこの国は荒れに荒れて、内乱が起こり放題で、人が簡単に死んでしまう国だったのさ。」
門番は歩きだし、男はそれについて行く。
街はいろいろな人がいて、幸せそうな顔をしている。
「あんた、大陸の方から来たんだろ?いったいどこの国から来たんだい?羅馬(ろうま)や比律賓(ふぃりぴん)、蘇聯(そびえと)なら聞いたことがあるんだがな。いろいろな国から人間が来るからもっと知ってみたいんだよ。」
門番は指で自分の知っている地名の名を上げて、数を数える。
「まぁ、漢かな?相当荒れて、国がバラバラになりかけているが。」
男がそう言うと、門番は驚く。
するとそこにはまた門があった。
先ほどのよりは小さいが、装飾はより細かくなっていて門番も何十人と居る。
門番はそこの門番に目線を少し向け、そこの門番の一人が頷く。
そして門番は先ほどより少々小さい扉を開き、またすすんで行く。
中には民家はなく、緑の芝生と松の木、そして少し離れたところには薔薇園があった。
男は松の木も薔薇も知らないわけで、すこし緊張してくる。
「あんた、装様の生まれと一緒の国から来たのか!この国じゃあ自慢できるぞ!」
門番がすごい人物を見るような目で男を見るため、男は少々照れる。
「お、そろそろ着くぞ。四王様の前では無礼のないようにな。」
目の前にはとてつもなく大きい城があった。
漢王朝ではまず無いような作りで、男にとっては非常に新鮮味があった。
門番は鉄でできた、城の扉を重そうに開ける。
「んむむ、ふぅ。体を鍛えていてもやっぱりこの扉は重い。」
門番は城の中に入っていく。
「右側によってな。中央は五王様達しか歩いてはいけないからな。」
男は門番の後ろをしっかりついて行く。
しばらく歩くと、長身の門番が扉の前に居た。
その扉には『面』と大きく書かれている。
男が周りの扉を見渡すと、他に『熱』『緑』『車』『串』と一つに一つ書かれた、四つの扉がある。
「ほら、四王様はもうこの中に居るから行ってきな。」
先ほど案内をしてくれた門番は、微笑んで男の背中をポンと叩く。
男が『面』の扉を開くとそこには半円の円卓があり、直線側に五つの席、そして入口側の曲線に一つ席があった。
直線側の席は四つほど埋まっていて、中央の席は空いている。
左から順に、白い髪の落ち着いた雰囲気の男性、赤色の髪で背の低いやんちゃそうな少女、一つ空白で、黒髪で水晶に手をかざす凛とした女性、最後に黒髪で背が低いが目つきがキリッとしている少女が座っている。
「シシッ、まああんちゃんよ、そこに座れや。」
赤髪のやんちゃそうな女が曲線側の席を指差す。
男は言われるままに席に着く。
「あ、そういえば伝言があるんです。」
男は装との会話を思い出す。
「まぁ、聞きましょう。くだらないことなら、今すぐ大陸に行って装を生け捕りにしましょう。」
凛とした女はスッと目つきを鋭くして男を見る。
まるで左隣の黒髪の背の低い女と姉妹のように似る。
「えっと…、確か『もうすぐ、始められる。』って……」
すると四人はまるで悪魔のような微笑みを一瞬するが、すぐに元に戻す。
「ふむ、それは誠でございましょうな?」
一番左の男が低い声で訊く。
「あぁ、間違いないはずだが。」
男は先ほどの微笑みのせいで少々脅えている。
「まぁまぁ、みなさん、自己紹介もせずに本題の深いところまで話すのは良くないと思うです。」
一番右の少女が四人に向けて言う。
すると一番右の男性が頷く。
「うむ、確かに相手のことも知らずに本題に入るなど、紳士のすることではありませんでしたな。失礼した。私は安康(あんこう)と申す。以後お見知りおきを。」
すると今度はその左隣の赤髪の少女が言う。
「シシシッ、あたいは允恭(いんぎょう)だよ。気を付けな安康は見た目とは裏腹に、無茶苦茶変態だからな。」
「むむ、誰が変態ですかな!!」
「シシシシッ、おめぇだよ。いっつもおめぇの妹や姉にいやらしい目線を向けてんじゃねぇか。」
「ぐむっ、いやらしいなど…ただの愛情表現ですなっ!!」
水晶に手をかざす女性は二人のやり取りに怒る。
「いい加減にしなさい。まったく…私は反正(はんぜい)よ。一応、多遅比瑞歯別尊(たじひのみずはわけのみこと)という名前があるけど反正でいいわ。」
その後、自己紹介を提案した少女が緊張しつつ言う。
「ぼ、僕の名前は雄略(ゆうりゃく)っていいますです。あ、あまり他人は好きではないので、話しかけないでくれるとありがたいです。」
四人の自己紹介が終わると男が自己紹介をする。
「おらの名前は程遠志(ていえんし)っていいます。」
程遠志は自信なさげに言う。
「まず、木簡を見せてもらっていいかしら?」
反正は手を程遠志の方へと伸ばす。
「ど、どうぞ。」
程遠志は木簡を懐から取り出し、反正に渡す。
反正は木簡を開き、細部まで細かく見る。
「ふむふむ、どうやら本物のようね。」
すると允恭は机をバンと叩き立ち上がる。
「シシシシシッ、じゃあつまり、何かを得ようとこの国へ来たわけか!」
男はその言葉にピクリと反応する。
「お、おらの殺された嫁や子供と会えるって聞いて……」
その言葉を聞いた安康は顎に手を当てる。
「ふむ、ならば楽園をお望みであるな。」
「え〜、あたいんとこじゃないのかよ。」
允恭は「なんだよ〜」といって円卓に突っ伏す。
「ら、楽園?」
「ふむ、それを説明するにはこの国について少々説明いたしますかな。」
安康は説明を始める。
「うむ、まずこの国には五人の王がいますな。
この場に居る四人に含め、装様で五王と呼ばれておりますな。
国民はどれかの王の下につき、命令に従わなければなりませんな。
王の下に着くことを集団住民といいますな。
王にもよりますが、基本的に命令は犯罪や人殺しを抑制するための物でありますな。
戦争などに向かうときは希望する者のみでありますから無理に出ろとは言いませんな。
しかし、命令を破った者には王からの罰がありますから覚えておいてほしいでありますな。
その罰は王によってバラバラで、厳しいものですが、そのおかげで街は平和で居られるんですなぁ。
そして、王によって所属している集団住民の呼ばれ方が違うんですな。
まず、私の集団住民『輪』ですな。
繋がりを大切にしているのですな!」
安康は顎髭をいじり、程遠志の方をちらりと見る。
「んで、あたいの集団住民が『貫』だ。命令を忠実に守って正義を貫くんだぜ。」
允恭は腕を組みエッヘンとする。
「私の集団住民は『温』です。人の心の温かさを大切にしています。」
反正は水晶玉をいじる。
「ぼ、僕の集団住民は『豊』ですっ。基本的に農作業や森林に関することが好きな方が多いです。」
雄略は手を上下にぶんぶんと振る。
「そして装様の集団住民が『楽園』でありますな。霊力や気といった不思議な力を使う者が装様の部下に居て、死者をも蘇らせれるんですな。現在一番多い集団住民ですな。」
安康はさらに続ける。
「まぁ、どれを選ぶかは程遠志殿しだいですな。決めてからも別に変えられますので、そんなに悩む必要はないんですなぁ。」
四人が必死に自分の集団住民を紹介する中、程遠志は今は一択しか考えていなかった。
「でも……おらはやっぱり、『楽園』でお願いします。」
四人は程遠志の強い決心を見て頷く。
「ならまず、『楽園』の人たちに挨拶ね。」
「私、今日は仕事が終わってますので連れて行ってあげるです。」
「シシッ、いつになく積極的じゃねぇか。」
「程遠志さんを見ていたら僕も明るくなったです。だから今日だけ頑張るです。」
「ふむ、じゃぁ雄略に頼みますかな。」
「分かったです!ささっ行こうですっ!」
程遠志と雄略は部屋を出ていく。
「あれは、惚れたね。」
「シシッ、惚れてるぜ。」
「うむ、惚れてますな。」
三人は頷く。
「ふむ、しかし雄略も意外とちょろいのですな。」
「シシッ、あれじゃあ、あと何日持つかわかんないぜ?やっぱあたいが殺した方がよかったんじゃね―の?」
「変わらないわね、その殺したくなるとシが増えるクセ。」
「増えると言っても、あの程度じゃまだ殺さないぜ。」
「うむ、本気の時なら百回は言いますからな。」
「シシシシシシシシシシシシシシシシッ、安康程度の奴に癖を知られて殺したくなったぜ。」
「ふん、勝手に言っておきなさいな。」
「それより、さっさと『罰』とやらを今日の分、終わらすわよ。」
「ふむ、めんどくさそうに言うのに、いつも反正殿は楽しんでますからな。」
「勝手に言っときなさい。」
「シシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシッ、あたいは自分の分さっさと済ませてくるぜ。早く部屋を完成させたいんでな。」
「ふむ、では私も行きますかな。」
「じゃぁ、解散ね。私もさっさと済ませてくるわ。」
どうも作者のペぺぺです。
今回の番外編の罰の部分についてですが……
書いてみると四人分全て結構エグくなってしまって、グロが無理な人にはきついのではないかな?と思いました。
作者も気持ちが悪くなりました。
それで、罰を投稿するかですが……
今、悩んでいます。
お気に入りのみでも良いのですが……
消されたりしないかが心配です。
ですから皆様の意見を訊いてみたいです。
コメントよろしくお願いします。
説明 | ||
死神の毒の番外編みたいなものです。 番外編なのでいつもよりだめな出来かもしれません。 本編のほうがのほほんという感じなので、番外編がドきつくなることもあります。 それでも良ければどうぞ。 |
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サーセンww でも予防線張らないと、必要かどうかわからない番外編書くのが自分の中できついんで(ぺぺぺ) >>あまり集中せず書きました。 そーいう予防線張らなくていいから(匿名希望) |
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