ヒーローインタビュー |
◇
八月八日 十八時
故人邸宅にて。
◇
編集の都合上、筆者の声は書き起こしていない。
予めご承知頂きたい。
戦争なんて、まともでは居られないさ。
まともな奴は真っ先に死ぬのさ。まともな奴から死んでいくんだ。
棺桶みたいな世界で、窮屈なのにな、必死で生き延びようとしてんだ。
「普通」なんて、あそこにはねーけど、普通はみんな助け合うさ。普通はな。
だけど本当に淵に立ったときは、殆どの奴が蹴落とし合うさ。
醜いとかじゃねーよ。そんなもんなんだ。
違う奴も居るぜ?
そいつらが最初に死ぬ。単純だろ。篩(ふるい)に掛けられたクズばかりが生き残んのさ。
じゃあまともじゃねー奴が生き残る、か?
そんな訳ねーだろ、そいつらも死ぬさ。実際死んだよ大勢。
まともな奴も、まともじゃない奴も、みんな死んだ。
じゃあ誰が生き残る、か?
簡単だろ、そんなの。
戦いに行かなかった奴さ。逃げた奴だ。
甘っちょろいヒロイズムで生死が分かれるような世の中じゃないってことだよ。
俺みたいに、死ぬところへ行って帰ってくる輩も居るけどな。
なんでだろうな。
運が良いとか、そういうんじゃねーんだ。まだヒロイズム抜けてないな?
グズグズになった屍体を踏み越えていくのが運のいい奴だと思うか?
生き延びても結局、棺桶みたいな世界なんだ。
最初っからそういう世界なんじゃないかって、思った事もあったよ。虫みたいな感じ。
見下すなよ?見下すってことは、お前、まだ自分が特別だと思ってるってことだからな。
生まれてから死ぬまで、死んだあとも、別に俺たちも虫も変わりはないさ。
ええと、なんだっけ。
ああ、何で生き残んのかって話。
ま、わかんね。わりーけど。
運じゃねーのは確かだよ。実感がある。生き残った奴も死んだ奴も不幸だ。性質が違うだけだ。
もっとこう、絶対的で、でかい何かなんだ。生き死にを分けたのは。
あんただって生き残ってんだぜ。
俺に聞かなくても。
あんたなんで生きてんだ?
自分が戦争を生き残った原因なんてよ、考えてもコレって思えるもの、ないだろ?
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