無表情と無邪気と無我夢中10-1 |
【無表情と無邪気と無我夢中10-1】
ユーノです。
なのはがリニスの魔力講座を受けてから翌日。
テスタロッサ家にて緊急会議が始まった。
なのはは学校に行ってるから今は僕とレイジングハートを交えている。
内容は昨日の戦闘のこと。
ナナがジュエルシードモンスターを撃破してジュエルシードを封印しようとした矢先だった。
「よし、ジュエルシード封印!」
さすがだ。
魔力運用の効率が良くて戦い方も上手い。
余裕のある戦い方をしているとも言える。
今までのなのはの魔力量に任せた戦い方とは違って、消費量を少なくしながら効率よく勝利を収めている。
実を言うとなのはも経験は無いはずだけど、戦いのセンスというものがあった故に勝利を収めてきていた。
プラスして、レイジングハートがなのはの戦闘経験の無さをカバーするためなのかわからないけど、通常より余計に魔力を注いで威力を上げている気がする。
一方ナナは使う魔法での一つ一つ消費量が段違いだし、戦闘もセンス云々のレベルじゃない。
なのはが天才と表現できるなら、ナナは超天才と言える。
彼女と初めて会ったあの時、本格的な戦いだったら完全に負けていたのかも。
そんなことを考えていた所為もあってか、僕は乱入者の襲撃に気付いたのはもう攻撃されてからだった。
「え!?」
「もう一つ!?」
『ナナ!?』
「くっ!」
さっきのジュエルシード反応とは違う。
―――この反応は、あの時の。
死角から放たれてきた魔力弾がナナを襲う。
明らかに不意打ちだったけど、ナナはそれを避ける弾くでなんとか直撃を免れる。
だけど同時に援護に回ろうとしていたアルフさんがバインドに拘束されて身動きが取れなくなってしまった。
「アルフ!―――誰だ!?」
そこにいたのは。
「なのは……いや違う」
デバイスは槍に近い形でバリアジャケットは細部が違うけど、全体がなのはのスタイルに似ていて。
おそらくなのはが成長したらこうなるんじゃないかってくらい、顔立ちも似ていた。
「それ、渡してもらえないかな」
「……理由聞いても?」
「必要だから」
「!?」
問答無用で撃ってきた!?
それっていうのは今確保したジュエルシードのことだろうか。
動けないアルフさんの代わりに援護に入ろうとして―――
『ユーノはそこに隠れてて!』
『どうしてナナ!?』
―――ナナに止められてしまった。
『僕はきっと負ける。殺されはしないだろうけど、僕の持ってるジュエルシードは奪われる。そうなってもなのはが集めた奴が無事なら次がある!』
僕は、なのはが集めてレイジングハートに収納してあるジュエルシードを守らなきゃならない。
心苦しいけど耐えなきゃ。
こういう戦闘はこういう選択をしなければならない時もあるんだ。
『少しでも多くのデータ採取、よろしく!』
『……わかった』
「バルディッシュ!!」
ナナはなんとか捌けているけど、あんなに誘導弾を操るなんてただ者じゃない。
あの人からジュエルシードの反応があるから、それを使っているのは間違い無い。
確かに、それなら勝てない。
「グアッ!!」
一発、直射弾がナナに当たった。
あの苦しみよう。
きっと魔力弾の魔力密度が高くて重い一撃だったんだ。
「ブリッツアクション!!」
ナナは高速機動魔法を使ってあの人との距離を詰めていく。
あ!
バインドで拘束された。
「設置型!?しかもいつの間に……」
「はい、終わり」
そのままなのはのディバインバスターに似ていてかつ威力の高い巨大な魔力砲が、身動き一つとれないナナを襲う。
『ナナぁ!!!』
テスタロッサ宅に戻った僕たちは早速報告とデータの整理をし始める。
あの後気絶して落ちたナナにあの人が近付いてジュエルシードを取ろうとしたら、バルディッシュが収納していたそれを全部出して。
そしたらあの人はアルフのバインドを解いてジュエルシードを奪って去っていった。
この会議はあの人の正体と狙いはなんなのかと対抗策についてだ。
アリシアやフェイトが交互に表に出て意見を出し、リニスやアルフも話を進めていく。
でも僕は違うことを考えていた。
あの人が現れた時に感じたジュエルシード反応。
僕は一度、間近で感じたことがあったんだ。
なのはの家の中で反応があったけど僕は部屋から出られなくて。
窓から出られることに気が付いた時には、その反応は収まっていた。
大きい反応は一瞬だけだったからなのはには言わなかったけど。
思えばそれはなのはの隣の部屋、双子のお姉さんが寝込んでいた部屋からだったんだ。
で、いまお姉さんは意識不明で入院している。
あの人が何かした可能性は否定できない。
「―――ノ、ユーノ!」
「え?」
「聞いていたのですか?記録していた映像を見せて下さいと言っているのです」
「あ、ごめんなさい。レイジングハート」
『OK』
なのはなの。
昨日、講義を終えてジュエルシードの所に行った三人が帰ってくる前に私は一足先にリニスさんに送ってもらう形でタクシーで家に帰っていて。
戦闘後、ジュエルシードを集めているイレギュラーな人物が現れてナナちゃんが負けたと報告があったのはそれからだった。
気にしないで、気絶しただけだから心配しないでと。
そう言われたけど、それは無理なの。
そんな気持ちのまま私は今、おうかちゃんのお見舞いに来ています。
未だに目を覚まさないおうかちゃん。
もし、ジュエルシードが手元にあったら私は迷わず願ってしまいそうなの。
おうかちゃんが目を覚ましますようにって。
『……なのは』
「ユーノ君?」
ユーノ君から念話です。
昨日の戦闘の件と作戦会議で今日この時間はまだフェイトちゃんの家にいるはず。
ジュエルシード反応があったのかもしれないと思い身構えるけど、それは杞憂に終わる。
『ごめん。僕、君に言わなくちゃいけないことがあったんだ……』
「……何?」
ユーノ君の様子がいつもの感じじゃなかったからだ。
悲痛な面持ちの声をしていたから、何かあったのかとおもって。
少し怖かった。
ゆっくりと、丁寧に告げられる。
『――――――』
「……嘘……」
おうかちゃんが意識不明になった日、おうかちゃんの寝てる部屋からジュエルシード反応があった?
じゃあおうかちゃんの意識が戻らないのって。
「……どうして」
『え?』
「どうしてすぐ教えてくれなかったの!?」
ここが病院だということを忘れて大きい声を私は出していた。
もしそのイレギュラーさんがおうかちゃんが寝たままの原因を作ったジュエルシードを使っているなら早く封印しなきゃ。
『落ち着いてなのは!その相手はナナも手を出せなかった程に強いんだ。今戦っても……』
「でもやらなきゃわからないの!」
『だからこそ、勝てる確率は少しでも上げておかないとならない。次は負けるわけにはいかないんだよ』
「でも、おうかちゃん……」
わからない。
ぐしゃぐしゃになる。
私の感情、ユーノ君の言っている意味、現在の状況。
おうかちゃんをあんな目にしてナナちゃんをやっつけた人を倒さないと―――いや倒してもおうかちゃんが目を覚ますとは限らない。
でも、でも、でも!
私はまだ何か言おうとしていたユーノ君との念話を強制的に中断した。
そして眠ってるおうかちゃんに語りかける。
「私、頑張るから」
焦っているかもしれない。
でも自分の出来ること精一杯やらないと、私は後悔する。
「絶対、おうかちゃんを助けてあげるから」
だからリニスさんに魔法のこと教えてもらって、ナナちゃんと一緒に訓練して。
「大丈夫だから、待っててね」
一つずつ自分がやるべきことを整理していく。
まずは家で昨日教わった魔力制御の練習。
学校終わったらフェイトちゃん家行って特訓を頼み込んで。
私、強くなる。
私より魔法を用いた戦いの経験があるナナちゃんが負けたってことは、今までみたいな戦い方じゃ勝てないんだ。
そして、強くなっても私一人じゃダメ。
ナナちゃん、リニスさん、アルフさん、ユーノ君。
みんな頑張ってる。
力を合わせて、ユーノ君の言っていた次のために私は少しでも力をつけておきたい。
やるんだ、やらなきゃいけないんだ、私が、私だから!
おうかちゃんのために。
それから数日が経った。
「アンタ、目ぇ血走ってるけどどうしたの?」
今日は学校が無いからナナちゃん達と魔法特訓するために、フラフラしながらもそっちに向かっていたんだけど。
「ま、いいとこで会ったわ。アンタに聞かなきゃいけないことがあるし」
途中であらしちゃんに捕まっちゃったの。
無視して去ろうとしたら。
「逃がさないわよ。おうかが目覚める前にハッキリさせなきゃいけないことがあるの。アンタ達姉妹のためにね」
…………邪魔。
でも酷い言葉を投げかけてまで追い払うとかそんなことはしたくないから、ここは素直に付いていきつつも適当に流して特訓の場所に急ぐの。
私は念話で少し遅れることを告げてあらしちゃんについていった。
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10話目です。 だだいま編集&加筆に苦戦中なのでとりあえず前編をうp。 もう少し読み手さんを深く引き込ませる予定だったのに、難しいもんです |
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