魔法少女リリカルなのはA's Another 第三話「それは、小さく強い願いなの」
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 母の帰りをいつもどおり待っていたあの日、母の働く研究所のほうから広がってきた光に彼女が包まれたその瞬間、何かがプツリと音を立てて切れるのを、彼女は聞いた。

 そして気がつけば、自分で自分の身体を上から見下ろすという、そんな奇妙な状態に陥っていた。何がどうなったのか、その時、まだ五歳でしかなかった彼女に理解など出来るはずもなく、ただ、おろおろと自分の身体だったそれの上をぐるぐると回ることしか出来なかった。

 そうしているうちに、彼女の母が大勢の人間を連れて戻ってきた。母は倒れている自分の身体を抱き上げ、必死になって自分の名を呼んでいる。彼女はそんな母の傍に寄り応えるのだが、母の耳には自分の声はまったく届いていない様子だった。

 そこでようやく、彼女は知った。

 

 自分は、アリシア・テスタロッサは死んでしまったのだ、ということを。

 

 しかし、そこから彼女にとって奇妙な体験が始まった。

 よく、母に読んでもらった本には、生き物が死ねば天国に行くことになると、そう書いてあった。しかし、彼女は何時まで経っても天国には行くことがなく、それどころか、そのままずっと、抜け殻となった自分の身体とともにあり続けたのだ。

 それは喜びであり、同時に苦痛の始まりでもあった。 

 たとえ言葉を交わすことは出来なくとも、触れ合うことは出来なくとも、大好きな母の傍に居続けられるそのことは、アリシアにとって十分幸せと思えることだった。けれど、母は死んだ自分をどうにかして生き返らせようとし、必死に研究を続けていくのだが、死者を蘇らせる方法など砂漠の中のあるかも分からないたった一粒の異なる砂粒を探し出すようなもの。

 そうして、母は不可能を可能にする方法を模索して行くうち、だんだんと、狂気にその瞳を曇らせていった。禁忌の技術にすら手を出し、世界から追われる身となり、無理がたたって身体を徐々に壊していく。

 

 それから、26年という年月が経ち、アリシアにとって、久方ぶりの喜ばしいことが起きた。

 

 母が手を染めていた違法な研究、その中にあったF計画というそれにより、母が自分の、アリシア・テスタロッサのクローンを創り出したのだ。

 

 『妹がほしい』

 

 そう、アリシアは生前、母にねだっていた。それが、思わぬ形とはいえ叶ったのである。だが、その喜びもつかの間だった。確かに、クローンとして生まれたその少女は、容姿も、生きていて成長していればなったであろう自分とそっくりな姿になり、記憶転写技術によって自分の記憶も受け継いだ。

 だが、それだけだった。

 その妹は、魔力資質も、利き腕も、性格も、まったく自分とは違って居た。それを知り、愕然とする母と、戸惑う妹の姿に、アリシアはこの時から、その願いを胸に抱くようになった。

 

 『生き返りたい。どんな形でもいいから、ママと、妹の傍に居たい』

 

 それから二年後。

 

 リニスという、かつて飼い猫だった山猫を基に母が生み出した使い魔によって、妹がめきめきと魔導師としての力をつけていくのを見守っていたアリシア。生き返りたい、そう願う気持ちはこの二年の間にさらに強いものとなっていた。

 そんなある日、妹の訓練を見つめていた彼女は、突然“何か”へと引き寄せられる感覚を覚えた。そしてそのすぐ後、彼女はあっという間にそこから遠ざかり始めた。

 

 『ママ――――――――!ふぇ―――――――――!』

 

 その手を必死に、遠く離れていく妹の姿へと伸ばしながら、彼女の意識は遥か彼方へと跳んだ。

 

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 「……ユーノ君、ジュエルシードはこっちだよね?」

 「うん、なのは。この先に間違いなく、ジュエルシードの反応がある」

 

 夜空を飛ぶ白い影。一見ドレスにも見えるその白い服を纏うその少女は、その手に機械仕掛けの杖のようなものを強く握り締め、肩に乗っている一匹のフェレットの言うその言葉に、改めて気を引き締めなおす。

 

 「……あの子、また来るかな?」

 「……だろうね」

 「……また、戦わないといけないのかな?」

 

 少女のその脳裏に浮かぶのは、これまでに二度ほどだけ顔をあわせた、黒衣を纏う金髪の少女の姿。

 

 「そう、だね。あの子も理由は分からないけど、ジュエルシードを狙っているし。……やっぱり、また話し合いたい?」

 「うん。……あの子、とっても強そうな目をしているけど、なんだかすごく寂しそうだったもの。……お話、聞かせてもらえたら、もしかしたら、お友達になれるかもしれないもの」

 「……そっか。っ!?なのは!ジュエルシードの反応、あそこだ!」

 

 フェレットの指差す方、二階建ての一軒家が建つそのすぐ傍を、少女もじっと見据える。そこに、少女の手の中の杖が、機械的な音声でそのことを告げるせりふを発する。

 

 『I was sure of reaction Jewel seed.(ジュエルシードの反応確認しました)』

 「うん、レイジングハート。ユーノ君、お願い」

 「分かったなのは。封時結界、展開!」

 

 中空に静止しした少女に促され、ユーノという名のフェレットが、思い切り両手を広げつつ“それ”を周囲一帯に展開する。通常空間から特定の空間を切りとり、術者が許可した者、魔力を持つ者以外には結界内で起こっていることの認識や内部への進入も出来なくする、ユーノが得意とする結界魔法、封時結界である。

 

 「ありがと、ユーノ君。行くよ、レイジングハート」

 『Alright, my master(了解です、マスター)』

 

 わずかな期間、まだ、共にあるようになってから短いながらも、すでになくてはならない相棒となっているその杖、『デバイス』であるレイジングハートのこたえを聞いて頷いた少女は、そこから一気に、目的のそれがある地点へと急降下をしていく。

 

 (……フェイトちゃん……来てるの?今度こそちゃんと、お話、させてくれる……かな?)

 

 そんな、たった二回だけ顔を合わせたことのある少女のことを思いつつ飛ぶ彼女だったが、そこに、誰もが予期していなかった事態が起きて居ようことを、彼女はすぐに知る。

 

 

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 「封時結界……あの時の使い魔のやつの魔法だね」

 「そうだね、アルフ。……やっぱり、あの子、来てるんだ」

 

 先の白い少女とはほぼ真反対の位置に、その二つの影は浮かんでいた。片方は、黒い衣装にマントを羽織る、金髪をツインテールにまとめた少女。もう片方は、短パン姿の女性で、頭に犬の耳のようなそれがあった。

 

 「……けど、なんかおかしいね、このあたり。あの使い魔の結界もあるんだけど、なんか、もうひとつ別な結界みたいなのが張ってある感じがする」

 「……そうなの、アルフ?……バルディッシュ?」

 『……Sense not、Sir(感知できません)』 

 「そう……バルディッシュは感じられないって」

 「……あたしの気のせいかな?まあいいや。じゃあフェイト」

 「うん、行こう。……ジュエルシード、一つでも多く集めて、母さんに届けないと……そうすればきっと……」

 「フェイト……」

 

 手の中の斧状のそれを改めて握りなおし、金髪の少女はその脳裏に、あの優しき日々を思い返す。そして意を決し、マントを翻して彼女もまた眼下へと一気に降下していく。

 

 (……あの子……名前、なんて言ってたっけ……とても、まっすぐな目をしていたな……でも)

 

 これまでにただの二回、会っただけのその白い少女は、同じそれを狙う自分に、まっすぐな言葉をぶつけてきた。興味がないとは言わない。けれど、自分は大好きな母に喜んでもらう、そして、あの頃の優しい母に戻ってもらうため、今は、あれを集めることだけに集中するんだと。

 そう、小さく生まれた迷いを振り払い、彼女は雷光のように空を飛ぶのであった。

 

 そしてそんな彼女もまた、そこに起きている事態を、そこに待っている出会いを、やはり、今はまだ知るすべを持たなかったのであった。

 

 

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 八神家における闇の書の目覚めとヴォルケンリッターの顕現から、すでに一週間という時間が経過していた。九郎の義母でありはやての主治医である幸恵に、ヴォルケンリッターの面々を、はやても知らなかった、海外に住む父方の親戚としての紹介も済ませ、とりあえず、はやてたちの身の回りは安穏とした時間が流れていた。

 そしてその日、八神家のリビングには現在、九郎とシグナム、ザフィーラ、そしてシャマルの四人だけの姿があった。はやてとヴィータは現在入浴中である。

 その間に、九郎はとある問いかけをシグナムたちにしていた。

 

 「……じゃあ、俺にもリンカーコア、あるんだ?」

 「ええ、間違いなくあるわ。湖の騎士シャマルのデバイス、このクラールヴィントの調べに間違いはないわ」

 

 そう。魔法というものがこの世に存在することを知った以上、九郎が自分も使ってみたいと思うのも、至極当然といえるだろう。それゆえ、魔力を集める器官であるところのリンカーコアが、自分にも存在するかどうかを、九郎はシャマルに調べてもらっていたわけである。

 

 「じゃあ、俺も魔法使いっていうか、魔導師になれるのかな?」

 「……まあ、なれないとは言わないけど、ただ、ね。その……九郎ちゃんの魔力量は……その」

 「……魔導師と呼べるほど、存在していないと?」

 「……ランクから言えば、EからFってところね。念話ぐらいなら問題なく使えるでしょうけど、それ以上となると、ちょっと」

 「……ほんとにほんとの最低限ってこと?」

 『……』

 

 静かに肯定の頷きをしてみせるシグナムたち。それを見た九郎は、脱力してソファにもたれかかり、大きなため息を一つ吐く。

 

 「そっかあ〜……残念だなあ……俺も空、飛んでみたかった」

 「まあ、魔法がまともに使えたとしても、お前に空戦の適正があったかどうかは分からんがな」

 「それに、やっぱりデバイスなしに魔法を使うのも厳しいわね。もちろんデバイスなしでも魔法は使えるけど」

 「有ると無いとではやはり効率が違う。詠唱の長いものや術式の複雑なものも、デバイスの補助があればかなり楽になる」

 「デバイス、ねえ。……シグナムのペンダントがそれなんだっけ?……俺のやつもそうだったらよかったのに」

 

 そう言いつつ、九郎はふところから、今は亡き実母の形見であるペンダントを取り出す。チェーンはよくある銀製のそれだが、その先端に着いているペンダントトップは少々変わっていた。

 

 「……珍しい形のトップですね。……でも」

 「……妙だな。これと同じ形のもの、どこかで見たような記憶が」

 

 それは、炎、氷、雷、それらを象徴した装飾が、中央の紫色の宝石を中心に円を描く、という意匠をしていた。九郎の手のひらに収まるサイズのそれを、四人がしげしげと眺めているその時、風呂場のほうから車椅子に乗ったはやてが、ヴィータにおされてリビングへと戻ってきた。

 

 「あー、いいお湯やった。ありがとなヴィータ、わたし重かったやろ?」

 「そんなことないってはやて。あ、牛乳飲むだろ?持ってくるよ」

 「うん、おおきにな。……で、九郎くんたちはなにしてるん?」

 「いやあ、大した事じゃあないんだけど、俺もでば」

 

 その時だった。

 

 《ギンッ!》

 

 『なッ?!』

 「え、え、え?これ、何?」

 「これは……結界、だと?」

 「まさか、管理局に我々の事が露見でも」

 「ちょっと待って、今クラールヴィントに……ッ」

 「おいヴィータ!これ、いったい何なんだよ?!」

 「これは多分、封時結界ってやつだ。魔力を持った者以外を遠ざけるための結界を、どっかの誰かが張りやがったんだ……!」

 「……あるわ。魔力反応が四つ……ううん、五つ。すぐ傍よ」

 「……どうする、シグナム」

 「……調べてみるほか有るまい。念のため、変身魔法は使っておいたほうがいいだろう。主はやては真咲と一緒に残っててください。シャマルとザフィーラは二人の護りを」

 「心得た」「分かったわ」

 「シグナム、ヴィータ、無理したらあかんで?」 

 

 そうして、シグナムとヴィータの二人が、シャマルに変身魔法によって姿を変え、家の外へと飛び出していく。そんな二人を心配そうに見送ったはやてと九郎。

 そして、誰も“それ”に気がつかなかった。

 九郎の首にかかったそのペンダントが、かすかな明滅を繰り返していたことに。そしてそれに、その“存在”が引き寄せられるようにして、八神家の庭へとふらふらと小さな身体を揺らして歩いてきていたことに。

 

 「……ま、ま……フェ……ト……」

 

 つづく

 

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 物語改変はしてません。

 

 ええ、してませんよ?

 

 ちょっと、オリジナルのエピソードというか、設定捏造しただけでww

 

 話の根幹は変えません。キャラはいじってもねw

 

 ついに、ありえなかった出会いを迎える、なのは&フェイトたちとシグナム&ヴィータ。

 

 ジュエルシードはどうなったのか?

 

 最後に出てきたその存在とは? 

  

 九郎のペンダントに秘められた秘密とは?

 

 それではまた次回にて。

   

 あでぃおすw

説明
狼印のりりかるss、第三話にてござい。

そしてやってしまった設定捏造w

ただの思いつきですが、こういう彼女もありじゃないかなーとw

では本編をどうぞ

追記:4p目、一部加筆しました。
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コメント
アリシア生還フラグですね、わかります。 これはアインスもアリシアも局に入るフラグでもあってww 六課に配属されたら戦力はもはやチートww(神余 雛)
↓おお、そうだった。なかなかその名前では出てこないから完全に忘れてたわww(kuorumu)
・・・・ありえなかった出会いを迎えている時点で改へ・・・・・・うわ、何をする!・・・・わぁぁぁぁぁぁ!(紅羽)
kuorumuさん<真咲は九郎の苗字ですよーw(狭乃 狼)
最後のシグナムのセリフの中に「真咲」っていう人が出て来たけど九郎かシャマルじゃないの? そんな人いたっけ?(kuorumu)
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