魔法少女リリカルなのはA's Another 第五話「それは、大切なお友達、なの」
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 「……(びっくり)」

 

 目を覚ましたら巨人の国にいた、とは、彼女がその時思ったことである。

 

 「あ、よかった、やっと目ぇ覚めたみたいやな」

 「……え……エ……え?!」

 「あー、っと。多分、自分のおかれてる状況が分かってないんだろうけど、とりあえず、名前、言える?」

 「……その……わたし……あり……あ、り……あ、れ?」

 「……どうやら、主はやてと九郎の予想が当たったようだ」

 「……名前、それ以上出てこんの?」

 「……ん」

 

 今の自分の状況はさておき、とりあえずは九郎の問いかけに答えようと、少女は己の名をその口にしようとしたのであるが、『あり』……の後が、一切出てこなかった。さらには自分がどこの誰で、どうして今の状況になったのか、他の記憶も一切その脳裏に再生されなかった。

 つまり、『記憶喪失』、というやつである。

 

 「……まさかほんまに、こないにベタな展開やとはなあ。……まあとりあえず、や。九郎くん、例のモノをこの子に」

 「あいよ。……よっこらしょ、と」

 「っ!?……なに、これ?」

 

 はやてに促された九郎がおもむろにテーブルの上へと置いたもの。それは、いわゆるドールハウス、という、人形用の家だった。さらに。

 

 「あとはこいつ、と。……恥ずかしかった……まさか女の子用のおもちゃを自分で買う日がこようとは……ヴィータが一緒に来てくれててほんと、助かった」

  

 要するに、妖精を庭で保護して一夜の明けた後、九郎がはやてに頼まれ、その彼女の服の調達に、ヴィータとともに以前行った玩具屋へと行き、買ってきたというわけである。

 

 「……服……?」

 「そや。まずはなんにしても、女の子は着るものにこだわらなあかん」

 「……さすがに下着までは、このサイズは売ってなかったけど……」

 「それは後で、私が作るでええよ。採寸はもうしてあるしな」

 「……あ、そっか、つまり、皆さんが大きいんじゃなくて、私が縮んじゃって……って、ええ?!ど、どうしてわたし、こんな、ちっちゃい体になって……?!」

 「『ちっちゃい体に』……?お前、何か覚えていることがあるのか?」

 「え?……あれ?そういえば何でそんな事を思ったんだろ……?」

 「……どうやら、完全な記憶喪失、というわけではなさそうですね。他には何か出てこない?」

 「……まま……」

 「まま?……おかあさん、っちゅうこと?」

 「ん。……うろおぼえ、だけど、そんな風に、誰かを呼んでいたような気がする……」

 

 かすかに脳裏に浮かびかける光景、それを少女は何とか精細な言葉にしようとするが、やはり、鮮明なそれは思い描けることなく、「こういった一時的な記憶障害というのは、時間が経てば回復する可能性が高いです。ですから、むりせず気長に行くべきでしょうね」というシャマルの言葉で、少女の正体についての言及は一時保留ということになった。

 

 「あ、けどこれだけは決めておかんと」

 「何を?」

 「もちろん、この子の名前や。あり…だけやとなんか可愛らしゅうないし」

 「なるほど。……じゃあ、『アリス』ってのは?」

 「……安直すぎへん?」

 「ありす……?」

 「ああ。『不思議の国のアリス』って童話がこの国にはあってね。そこから即連想したんだけど……いやなら他の名前を」

 

 ふるふると。九郎の台詞に首を振り、「アリス……かわいい名前です。ありがとう、お兄さん」と、ようやく、目覚めて始めての笑顔を見せた少女、アリスであった。

 

 

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 あくる日。

 

 「……にしても、なんやうらやましいなあ」

 「アリスのこと?」

 「そや。……あんなちっこいのに、もうちゃんと魔法が使えるっちゅうやもん。強大な力、っちゅうのには興味ないけど、わたしもやっぱ魔法少女には憧れるもん」

 

 そう。あの後、アリスの体をさらに検査したシャマルの調べで、アリスはやはりユニゾンデバイスであり、当然のようにリンカーコアをその体内に保有していた。その魔力量はかなりのものであるそうで、ランクでいえばAAランクに相当するとのこと。さらに、彼女は雷属性の魔力変換資質も有しているらしい。

 ただし、まだリンカーコアそのものが不安定な状態らしく、現状ではBランク魔導師程度の魔力しか扱えないだろうとのこと。しかし、それでも魔法が使えることには違いがなく、現在、アリスはシャマルの手ほどきによって、魔法に関する基礎的なレクチャーを受けている。

 

 「……アリスの力を借りたら、家の電気代、節約出来へんかな?」

 「あのな……」

 「冗談やて。まあなんにしても、や。アリスは当面、うちで面倒見るしかないな」

 「まあそうだよな。融合騎というかユニゾンデバイスというか、さすがにこの世界で妖精さんの捜索願なんて出てるわけないし、俺もかあさんになんていったらいいやら……ってことになるし」

 「その点うちならシグナムたちもおるしな。まあさすがに外出させるわけにはいかへんから、しばらくは不自由にさせるやろうけど」

 「シャマルさんいわく、もう少し魔法を使えるようになったら、人間サイズになるための魔法もあるってことらしいし。それまではアリスには我慢してもらおう。……あ、ごめんはやて、おれちょっとトイレ行ってくる」

 「了解や。あ、ならついでにジュースもよろしゅう」

 「了解姫様」

 

 足早に、それでも周りに迷惑をかけないよう、九郎は一人席を外す。なお、現在二人は海鳴市の公立図書館に来ている。そろって本好きな二人は、こうしてしょっちゅう、この図書館に本を借りに来たりしている。

 

 「……んー。この本もちょお読み飽きてきたなあ。……他の探してこよかな?」

 

 そう一人で呟き、はやては図書館の本棚の列を何気なしに見て回る。

 

 「んーっと。あれも読んだし、こっちもこの間借りたし……あ」

  

 そしてふと彼女の気を引くタイトルの本が一冊、少し上のほうに段に陳列されているのを発見。腕を何とか伸ばし、それを取ろうとするのだが。

 

 「……もうちょい……うー、やっぱ九郎君が戻ってくるまで待ったほうがええかな……?」

 

 と、さすがに車椅子に座ったままでは届かないその高さに、はやてが一旦あきらめかけたところへ、す、っと。その本へと伸びる腕があった。

 

 「あ、九郎くん?ありがと、早かったやん……」

 「やあ、この本で良かったのかな、はやて?(にかっ)」

 「……」

 

 その手の主がトイレから戻った九郎かと思い、はやては喜びの笑みで振り返ったのだが、そこに居たのは世にも珍しい銀色の髪をした青い瞳の少年。白い歯を見せ、にこりと微笑むその彼を見た瞬間のはやての心中はというと。

 

 「(……しもた〜……こいつ、おったんかいな……あー、今日は厄日や……)……あ、ありがとうな、えと、((堂崎|どうざき))くん」

 「やだなあはやてってば。僕と君の仲ジャマイカ。気軽に((竜峰|りゅうほう))って呼んでくれよ」

 

 誰が見ても直ぐ分かる愛想笑い。それを、口元を引きつらせつつはやてが返したのは、この図書館で良く会う二人の人物のうちの一人、堂崎竜峰という。

 

 「……私のこと、名前で呼ぶのは止めてっていうたやんか」 

 「またまた、そんな照れ隠しなんかしなくたっていいじゃないか。この、恥ずかしがり屋さん」

 「ちょっ?!せやから人の頭をなでるんは……っ!」

 

 とにかく、ことあるごとに人の頭をなでようとしてくる、この堂崎竜峰という少年を、正直はやては苦手を通り越して嫌いである。はやての友人である、とある少女いわく、基本、人当たりはいいらしいし、勉強もスポーツも万能で、一般的な女子にはかなりモテルとのこと。

 けれど、その友人の少女や、そのまた友人の少女たちに対してのみしか、この少年は興味がないらしく、「なのはもアリサもすずかもはやてもみんな俺の嫁!」と、公言してはばからないと言う。

 さらにいえば、どうやって知ったのか、出会ったそのときすでに、名も名乗っても居ないのに、彼ははやての名前を知っていた。理由は一応聞いたが、「生まれる前から知っていたのさ、キラッ」という答えが返ってきたときは、はやてはあきれてあいた口が塞がらなかった。

 

 「またまたそんな風に照れなくてもいいじゃないか〜。ま、そこもまたかわいいぜはやて。にかっ」

 「……ほんと、相変わらずこの男は……それに、自分、がっこはどないしたん?」

 「今日は土曜日!だから無問題!」

 「……せやった……うっかりしてたわ……」

 

 アリスのことなど、昨日は色々起きすぎていて、曜日のことをすっかり忘れていた自分の失態にうなだれるはやて。そこに。

 

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 「……はやて〜?どこ行った〜?」

 「あ、九郎くん!こっちやこっち!」

 

 トイレに行っていた九郎が、はやてのことを探しながら彼女らのほうへと歩いてくる。その彼の姿を確認した途端、はやては助かったと喜色の色を顔に浮かべ。堂崎少年の方はあからさまな敵意をむき出しにして九郎を睨み付ける。

 

 「む。出たな、僕のはやてにちょっかい出すモブ野郎!」

 「……居たのか、この勘違いの(自称)オリ主の痛男」

 「誰が痛男だ!それに(自称)じゃない!僕こそ!神の手によって生まれた、この世界の正真正銘のオリ主!堂崎竜峰だ!」

 

 自分は一度死んで、そして神の手によってこの世界に生まれ変わってきた、この世界の本当の主人公だ。というのが、彼、堂崎竜峰のいつもの口癖であり、だからこそ、会ったこともないはずのはやての名前を、始めから知っているんだ、とのことである。

 もっとも、当然誰も、彼の言うことを本気にはしていない。

 確かに、はやてのことに関していえば確かにそれならと説明もつくが、やはり、それだけでは今ひとつ真実味にかけ、さらにいえば、彼が持つ前世の知識とやらも相当曖昧であるため、妄想、虚言として扱われているのが現実である。

 

 「あー、はいはい。いつもの妄想乙。ほらはやて、馬鹿と一緒に居ると馬鹿がうつる。あっちに月村が居たから、いこうぜ」

 「あ、すずかちゃんおったん?」

 「ああ、それに今日は珍しく、高町もバニングスも一緒だった」

 「なのはちゃんとアリサちゃんもか〜。あ、ほんならな堂崎くん、私ら行くでこれでな」

 「じゃな、(自称)オリ主」

 「だから一々カッコ自称ってつけるなモブ!今日こそ決着を(がしっ)……え?」

 

 と、その場からはやての車椅子を押しつつ立ち去ろうとした九郎に、竜峰はさらに食って掛かろうとするのだが、その彼の肩を背後から掴む腕が。そこにいたのは、この図書館の司書の人。

 

 「……またお前か。図書館では静かに、と。あれほど言っているのにまだお説教が足りないみたいだな?ちょっとこっち来なさい」

 「あ、ちょ、ま、待って?!だから僕は……っ!」

 

 抵抗むなしくずるずると、くるたびになんだかんだと騒ぎを起こすため目をつけられていた彼は、この図書館でも一番恰幅の良いその司書に、別室へと“ドナ○ナ”よろしく引きずられていくのであった。

 

 

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 「あ、すずかちゃん、アリサちゃん、なのはちゃん、久しぶりやー」

 「はやてちゃん」

 「やっほ、久しぶり、はやて」

 「一ヶ月ぶり、くらいだっけ?はやてちゃん、元気?」

 「まあこんな足やけどな。元気は元気やでなのはちゃん」

 

 司書に引っ張れて行く竜峰を一切見向きもせず、九郎とはやては図書館の読書スペースへと戻ってきた。その二人を元気良く迎えたのは三人の少女。

 黒髪の長髪をした少々気の弱そうな、月村すずか。

 金髪でとても快活そうな少女、アリサ・バニングス。

 ツインテールにした栗色の髪の朗らかな笑顔をした、高町なのは。

 上記三人とも、九郎が普段通う聖祥付属小学校の三年生で、学校こそ休学中だが、はやてと同級の少女たち。知り合ったのは、この図書館で偶然九郎とはやてがすずかと出会い、その後、学校で九郎がすずかとばったり出くわしたとき、アリサとなのはもその場にいて、九郎がはやてにアリサとなのはを紹介、五人は友人となった。

 それからはこうしてたまに、五人はこの図書館で一堂に会し、勉強会などをしている。まあ、その時は大体、どこから嗅ぎ付けてくるのか竜峰もその場に現れ、九郎に喧嘩をふっかけては返り討ちにあい、そして先ほどのように司書に引っ張られていく、というのが毎度のパターンともなっているが。

 

 「で?あの馬鹿はいつもどおり?」

 「ああ、例の司書さんに連れてかれた」

 「多分また三時間は離してもらえんやろな」

 「……ちょとだけ、可哀想かも」

 「駄目よなのは!あいつにちょっとでも同情しようものなら、『それはもうプロポーズと受け取っていいんだね?!愛してるよなのはー!』……とかいいながら抱きついてくるわよ?!」

 「にゃっ?!そ、それは困るのっ!」

 

 かっこいいけどなれなれし過ぎて嫌。それが、はやて同様なのは、アリサ、すずかの三人にも共通した、竜峰に対する率直な感情である。

 

 「まああいつのことは置いておいて、だ。高町……図書館に動物持ち込むと怒られるぞ?」

 「あ、ユーノ君のことなら大丈夫なの。ちゃんと、司書さんに大人しくさせておきますからって、許してもらったの。ユーノ君もちゃんとわかってるから大丈夫。ね、ユーノ君」

 『きゅう〜』

 

 なのはの肩の上に居る一匹のその動物、見た目からたぶんフェレットなのだろう、が、なのはの声にちいさくうなずいて見せてみた。

 

 「ユーノ君、いうんか。はじめまして、やな。私ははやてや。よろしゅう」

 「俺は九郎。よろしくな、ユーノ……って、オス…でいいのかな?」

 『きゅ』

 「すごいよね、ユーノ君。ちゃんと人間の言葉がわかってるんだもの。今度の温泉旅行にも連れて行くんだよねなのはちゃん」

 「うん。お父さんたちも良いって言ってくれたし。(あ、ユーノ君は温泉、入ったことあるのかな?)」

 『きゅきゅっ(……温泉かあ〜……ミッドとかにもあったけど、でも地球のそれは雰囲気がまるで違うみたいだし、僕も楽しみだよなのは)』

 「……」

 「……九郎くん?どないしたん?なんか鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してるで?」

 「え?あ、いや、なんでもないよはやて。……まさか、ね」

 

 空耳。

 そうだとその場では思うことにした、九郎の脳内に直接聞こえたその声。それが確かに、“なのは”と“ユーノ”が行った、“念話”、だったと彼が確信を得るのは、これからもう少し先のことになる。

 

 つづく

 

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 前回の後書きでも書きましたが。

 

 踏み台って必要よね(オイw

 

 というわけで、もう一人のオリキャラ、堂崎竜峰くん、登場です。さすがにオッドアイにはしませんでしたが、銀髪くらいなら珍しくてもそれほど居ても不思議はなかろう、と。

 

 で、彼の自称するように、本当によくあるテンプレ転生者かどうかは、作中でいずれ明らかになります。

 

 まあ少なくとも、本当に踏み台だけで終わらせる気はないし、ある意味おいしいキャラにはする気です。

 

 そしてさらに、もうこの時点で、はやてたちはなのはやアリサと顔見知りになってますw

 

 これがどの程度お話に影響するかは、今後の展開をお待ちくださいwww

 

 で、融合騎に生まれ変わったアリシアことアリスですが、原作での生前の彼女は魔法資質、ほとんど持ち合わせては居ませんでしたが、生まれ変わった“理由”によって、かなり高い魔力資質を持っています。フェイト同様雷属性の変換資質も持ってますので、いずれは・・・・・・くすw

 

 さて次回は温泉!

 

 そしてひとつネタばれをすると、九郎の魔力覚醒、その一端の伏線回!・・・・・・の、予定w

 

 では今回はこの辺で。

 

 ちゃおw 

説明
はい、狼印のリリカルss、五話でございw

だから原s(ry

ではお話をどうぞww
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コメント
あり…あり…( ゚д゚)ハッ!アリストテレスか!?(スネーク)
狼先生 orz 恋姫がみたいです(T^T)(夜桜)
踏み台どころかその辺に落ちている枯れ葉程度の薄さしか感じない自称オリ主ww あれだよね、よくssに出てくるこういう踏み台転生者ってなんで「みんなは俺の嫁!」とか叫ぶんだろね。そんなこと黙ってて、手伝って優しくしてあげれば原作キャラの誰かしら一人ぐらいは好きになってくれるだろうに。(kuorumu)
狼師匠、竜峰君の噛ませ犬っぷりが、読んでて何か(テンプレ乙)と、思えたのですが気のせいでしょうか?(^_^;)。(黒鉄 刃)
アリシアちゃんはオリ主くんではなく九郎くんとのユニゾン希望ww オリ主くんも性格矯正さえしちゃえば、カッコいい男の子になれるはずなんですけどねーww(神余 雛)
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