幻想郷帰宅日記 第一四章(前編) |
第14章「修行!白玉桜での生活!(前編)」
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俺が幻想郷から死んで"あの世"なる場所へ来てから数時間・・・・
妖夢「はぁあああっ!面ッ!」
光助「ぎぇあ!」
白い小石が一面に広がる白玉桜の庭で、俺は妖夢さんからの一撃に耐えた。
頭上に鋭い衝撃が走る。
ついでに火花と今までの走馬灯も軽く。
あれからこの白玉桜の守衛・・・いや彼女曰くお庭番になるべく白玉桜のお庭番である彼女に指導を受けていたのだ。いや、受けさせられていた。
いきなりの地稽古(制限時間を設けずに試合をする事)にはちょっとした訳がある。
最初は竹刀を持たせてくれて、素振りやら基本動作やらを教えて貰っていたのだが・・・
光助『あ、自分剣道やってたんで、これ位はわかりますよ』
妖夢『何・・・?』
光助『あっ』
俺は迂闊にも、剣道経験者である事を滑らせてしまったのだ(得意げだったのがまずかったのか)。
自分の中の心境としては妖夢さんにいきなり庭に叩きつけられてしまった事と、初対面での粗野な物言いがあったからなのかもしれない。
この一言がいけなかったのかどうなのか、妖夢さんはいきなり向かい合って"地稽古だ"と言い始めたのだった。軽い準備体操の後、こんな事になってしまったのだが・・・
妖夢「一本だ!実戦なら死んでいたぞ!」
光助「ちょ、ちょっと待って下さい!防具無しですのに!無しですのに!」
妖夢「甘ったれるな!本当の敵は防具なぞは軽々と斬り捨てて掛ってくるぞ!」
一体どんな敵だというのだろうか。
防具斬り捨てるなんてとんだバケモノではないかい。
幻想郷なら居そうだが・・・・
それと・・・・当の妖夢さんはめっちゃ強い。
先程も軽く籠手を取ろうと軽く踏み出しただけで、面(いや最早顔面)を入れられてしまった。
"お庭番"だけあって、相当の手練れなのだろう。
妖夢「そんな事でこの白玉桜のお庭番が務まるか!構えろ!」
光助「へ、へぇ・・・」
妖夢「返事がなっとらんッ!」
光助「は、はいっ!?」
妖夢「どっちだッ!」
光助「あギャ!」
コントのようだが、洒落にならない鋭い一撃が頭に響く。
本当にコレはお庭番になる為の修行なのか・・・?
というか、俺はそもそも死んでいるし、幽々子様も"暫くはうちで預かる"と言っていたし普通に待たせて貰う事は出来ないのだろうか。
・・・しかし、いつ紫さんが来るかも分からないし、ここの人達(?)にお世話になる事にはなるので
何かしら彼らの為に働く事はやぶさかではないとは思うのだが。
光助「俺はその前に死ぬかも・・・・」
心も体も麻痺して既に死んでいるが。
妖夢「阿呆!隙だらけだ!」
光助「ちょっと待っ・・・!」
息を切らしながら上を向き呟く横に妖夢さんの振り下ろした竹刀が飛び込むのだった。
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妖夢「基本稽古は終わりだ・・・・早く来い」
光助「はぁはぁ・・・つ、次は何でしょ」
妖夢「これだ」
やっと終わった体罰の近い急な地稽古の後に、その手元の竹刀で突かれながら来た先・・・・
そこは、何とも長い廊下だった。
妖夢「ここを隅から隅まで雑巾がけだ!やれ!」
光助「ちょ、マジですか!?」
どう見ても200mぐらいは軽くあるだろう長い廊下を見渡して叫んだ。
こんな果てしない場所を雑巾がけなんてやった事ないし、第一終わるまで丸1日かかりそうではないか。
・・・・いや、死んでいるのなら日数など全く問題ないというのか。
光助「こんなの無理でよ!」
妖夢「やってもいないのに出来ないと抜かすなっ!やらんかーッ!」
光助「は、はいですし!!」
ヒス気味に手元の竹刀を振り下ろす妖夢さんに怒鳴られ、渋々と雑巾がけを開始したのだった。
早速、雑巾らしき木製のバケツに掛かった布を水に浸す。
見た所それ程特殊な雑巾でもなさそうだ・・・・って当たり前か。
やれやれと雑巾を絞っていると、隣に妖夢さんが来て、バケツに雑巾を突っ込んだ。
光助「あ、それ妖夢さんもやるんですか」
妖夢「当たり前だろう・・・貴様は来るまでは私がやっていた」
光助「それは凄いですね・・・」
妖夢「貴様もすぐ出来るようになるぞ」
光助「え・・・それはちょっと」
雑巾がけがうまくなったとて、有益な事はほぼ無いと思う。
現に俺は既に体力を使う学生ではなくなってしまったし、仕事っもデスクワークが基本となるだろう。
まぁ・・・健康の為に体力は必要という事だけは分かってはいるのだが。
光助「・・・・って早ッ!」
と、あれこれと考えている内に妖夢さんは遠くの方で雑巾をたたみ返していた。
あの距離を今の間に・・・・恐ろしいぞ。
妖夢「何を驚いている、毎日やれば慣れるだろから大丈夫だ」
光助「そ、そんなの・・・」
妖夢「のんびりしていると夕飯は抜きにするぞ」
光助「えっ!?」
何ですって!?
遠くから妖夢さんの声が聞こえた。
夕飯なんて・・・死んでから食べられるのか。
色々想像したが、言うからには必要なのだろう。
雑巾を素早く廊下の床に付けて体制を取った時に・・・・
幽々子「光助〜、がんばれ〜」
と、何とも呑気な声が奥の襖から聞こえた。
この館の主である幽々子だが、今は畳に腕を突いて寝ころんだ状態でこちらを面白そうに眺めている。
そうか、まぁ・・・ここのお嬢様扱いだもんな。
光助「は、はぁ〜い・・・・・・・う、うぉりゃああ〜!」
妖夢「早くせんか!」
幽々子「ふふふ」
返事を返し、足に力を入れた。
でも・・・夕飯抜きは何か嫌や!
なんとも情けない声をあげて、俺は廊下を四足でドタドタと走り始めた。
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光助「ッどぇえええ〜!・・・・はぁはぁ・・・!」
何とか雑巾がけの往復を終えた俺は廊下に倒れ込んだ。
一体何キロ駆け回ったのだろうか・・・廊下雑巾は流石にキツい。
こんなにもキツいものだったのかと再認識する。
光助「こんなん毎日やってたら死ぬでしょ・・・あ、生きてるかはははh」
自分が言った事に突っ込みを入れて笑う。
妖夢「起きんかっ!」
光助「は、はいですしっ!」
妖夢「独りで何を笑っているんだ全く・・・今度はこっちだ」
光助「は、はいはい・・・」
息を切らした俺を急かさんばかりに竹刀で突く妖夢さん。
光助「あ痛・・・い、いきますよ・・・・・今度はまさか反対側の廊下とかあるんですか?」
そんな事になったら死ぬ。
もう夕飯は抜きでもいいかもしれない。
妖夢「いや、廊下は一つだけだ、次は風呂掃除!」
光助「え・・・・は、はいぃ〜?!」
そ、そんな!
なんと彼女が言い出したのは、大掃除の定番、日本の和心である"風呂"の掃除だったのだ。
それこそ当に修行とは関係無いではないか。
光助「な、何で今風呂なんて掃除せねばらなんのですか!?」
というか、湯船は出た最後の人が洗っているのが一般家庭の常識では無いのだろうか。
いくら妖怪だからとはいえ、風呂場が付いた家に住んでいるのならば当たり前になるうだろう。
多分・・・・
妖夢「お前、これくらいも出来んのか?・・・・言っただろう、タダで居座らせる訳じゃないと・・・」
そんな反抗的(自分で言うのもなんだけど)な俺の意見に、妖夢さんは冷たく返す。
光助「うぅ・・・」
それもそうか。
それに、さっきの廊下雑巾駆けよりかは幾分かマシになった気がする。
風呂掃除なんて・・・平和ではないか。
妖夢「あと、洗い終わった後はお湯を入れておくように・・・幽々子様が入るからな、ちゃんとやっておけよ」
光助「りょ、了解です」
妖夢「うむ、私は夕飯の支度をしてくる・・・終わったら手伝うように」
光助「は、はい!」
うんうん、と頷きを繰り返した後に彼女は居間へと去っていった。
彼女が居なくなったのを見て、俺は風呂場の扉を開けて中を眺めた。
ささやかな抵抗という事で、心の奥で・・と彼女に向けて小さく舌を出した。
ガラガラガラ〜・・・・
光助「おぉお・・・意外と広いな」
そこには高級マンション辺りに付きそうな木製の大きな湯船が存在し、
なんと信じられない事に現代風な蛇口やシャンプー、リンスや石鹸も点在していた。
ここは一応"死者の国"だから最近死んだ人の文化でも入ってきているのだろうか・・・・
まぁあり得ない話ではないが。
光助「よっと・・・どれどれ」
俺は滑らない様に足元に気を付けながら、湯船へと向かった。
手元には妖夢さんから受け取ったスポンジと石鹸。
光助「よっし、じゃあちゃっちゃと始めるか!」
実は風呂掃除はそんなに嫌いではない。
大掃除でも何でも、何かを綺麗に洗うというのは俺の得意分野なのだから。
そして意気揚々とスポンジに石鹸を擦りつけ、浴槽を洗い始めた。
光助「うーん、割と綺麗になってるけどな・・・」
浴槽は少しだけ白み掛っているだけで、後はちゃんと綺麗になっていた。
まぁ一応は洗うけど。
光助「鬼軍曹の居ぬ間に風呂掃除〜・・・・っと」
浴槽の端にある蛇口を少し開けて、少し水を出しながら浴槽をゴシゴシと力を込めて洗う。
・・・・洗っている間に、色々な事が頭を過った。
あれからだいぶ歩いてここまで来たけど、色々あったな。
人食い妖怪のルーミアの襲撃のち案内してもらって紅魔館にお邪魔したり、
博霊神社に行こうとして地獄街道に出たり、死んでここに来たりと・・・・
波乱万丈だな、としみじみ感じる。
これドキュメンタリーが一本出来そうよ。
そんなこんな思っていると、磨いていた浴槽はもう十分に綺麗になった。
後はお湯を注ぐだけである。
俺は浴槽から出て、もう一方の蛇口を捻った。
暫くして"ズゴゴゴ・・・"という音と共に、熱いお湯が湧き出てくる。
ドドド・・・
光助「ふぅ・・・・あ、そういや、この蛇口からでるお湯は天然のものなんだろうか?」
まさか"あの世"に温泉が沸いてるなんて聞いた事もないが・・・どうなんだろう?
地獄のイメージとしては釜茹で地獄とかが強いから、無くはないのだろうか・・・いやこれは違うか。
湯船のちょっと下辺りな所までお湯が入ったので、俺は蛇口を逆側に捻ってお湯を止めた。
光助「これでよしっと・・・妖夢さんの手伝いに行くか」
カラカラカラ・・・
その時、唐突に扉が開く音がした。
妖夢さんが確認に来たのかな?なら浴槽はご覧の通り、完璧ですよ。
どや・・と風呂掃除で良い気になっている俺を見たら妖夢さんはまた竹刀を振り回すのだろうか・・・
謙虚に謙虚に・・・
幽々子「あ〜、急がないとご飯が冷めちゃうわ〜」
光助「え」
なんと、そこには一糸纏わぬ白玉桜の主の姿が・・・・
光助「ちょっ・・・・えっ」
幽々子「あら」
暫くの沈黙の後、火ぶたを切ったかのように彼女が悲鳴を上げた。
幽々子「いや〜ん!」
光助「い、いやーん!?って何でぇ!?」
ドドドドド・・・・
と、風呂場の更衣室の中から物凄い勢いで走ってくる音が・・・・
バァン!
妖夢「どどど、どうしました!?幽々子様ァア!?」
そこにはしゃもじとお茶碗を両手に持った、エプロン姿の妖夢さんが扉を開けてやってきた。
あっ・・・やべ
妖夢「き、貴様ァ〜・・・・」
光助「っぼぼ、僕は違いますよ!」
物凄い剣幕を浮かべた妖夢さんが此方を見ている。
これはアカンやつや。
何だか地獄街道の風呂場での事を思い出す。
妖夢「知れ者がぁああああああ!!」
光助「違ッ・・・・アイェエエエエエエエエ!!?」
幽々子「は〜・・・暖まる」
しゃもじを俺へと振りかざした妖夢さんを尻目に、幽々子様は浴槽へと身を沈めた。
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トントントン・・・・
台所に、まな板で野菜を切る音だけが響く。
幽々子様とのお風呂での出来ごとが済んで(ないけど)、俺は妖夢さんと夕飯の支度をしていた。
因みに風呂場磨きとお湯の補充は終わり、現在は幽々子様が入っている。
妖夢「初日から主の裸を見るとは貴様は全く・・・」
光助「いやだって、俺知らなかったんですもん・・・あんな早く入ってくるなんて」
妖夢「言い訳が口癖になる奴はロクな奴にならんぞ」
光助「いやしかし・・・」
まるで俺が一方的に悪いみたいになってしゃもじの洗礼を受けたが・・・
ここはちゃんと弁明をしたい。
妖夢「まぁ、私も言い忘れていたのだがな・・・次から気を付けてくれれば良い」
光助「は、はぁ」
あれ・・・意外とあっさりだな。
もっと意味もなくまくし立てられると思ったんだけど。
ちょっと彼女を勘違いしていたのかもしれない・・・
人参を小さく切り終わった俺は、さらに大根へと手を伸ばし切り始める。
そこで、ふと会話を持たせる為に妖夢さんへと話し掛けた。
光助「そういや、妖夢さんって毎日こんな事してるんですか?」
妖夢「まぁな、ここに来てからはずっと幽々子様の世話をしている」
光助「それは・・・大変そうっすね」
妖夢「いや、そうでもない・・・割と気に入っている」
それに、と妖夢さんは続けた。
妖夢「新しい同僚も来たしな、少しは楽しくなるさ」
と、此方に笑顔を向けてきた。
光助「・・・・」
妖夢「・・・な、なんだその顔は」
光助「いえ・・・・あの、妖夢さんが笑った所を初めて見た気がして・・・」
妖夢「なにを馬鹿なことを・・・」
照れたのか、彼女は顔をそっぽへと向けた。
あんなに鬼軍曹だった彼女が意外にも少女らしい一面を見せた事に俺は少しだけ嬉しくなった。
妖怪だろうが幽霊だろうが、笑ったり喜んだりする表情はこちらからしても嬉しい。
此方の笑顔に気付いたのか、妖夢さんは肘で俺の脇を軽く突いた。
妖夢「ゆ、幽々子様が出てくる前に早く済ませてしまうぞ・・・さっさと切れ!」
光助「はい!」
味噌汁の具材を手早く切りながら、俺と妖夢さんは夕飯の支度を急いだ。
-続く!-
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第14章目(前編)でございます。 白玉桜にて居候する事になった主人公は、この先どうなってしまうのか・・・ 考え中です |
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