ゼロの使い魔 〜しんりゅう(神竜)となった男〜 第二十話「酒場、そして決闘」
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才人たち一行が泊まることにしたのは、ラ・ロシェールで一番上等な宿、“女神の杵”亭という宿である。

“女神の杵”亭は、貴族を相手にするだけあり、豪華なつくりになっている。

そして一階は酒場になっており、テーブルが床と同じ一枚岩からの削り出しで、ピカピカに磨き上げられている。

“桟橋”へ乗船の交渉に行っているワルドとルイズ以外の四人は、その酒場でくつろいでいた。

 

「タバサ、あの場所で何があったの?」

「・・・・・・怪しい男がいた」

「なんだって? その男が犯人なのかい?」

「・・・・・・分からない」

「本当に? 何か隠してるんじゃないの? ねぇ、教えてちょうだい」

 

タバサは、なおも食い下がるキュルケに成すがままになりながらも本に視線を戻した。

才人は話を訊いていて余計に分からなくなったので、話題を変えようと朝から思っていたことをギーシュに訊ねた。

 

「なぁ? 今更だけど、学園の木でいつも寝ていた竜でアルビオンまでいけばよかったんじゃね?」

「ふぅ・・・・・・。馬鹿かね君は・・・・・・。あの竜は、僕の愛しのモンモランシーの使い魔だぞ? どのように言って竜を借りればいいんだい? <これは一応極秘の任務なんだから>」

 

ギーシュは思いきりため息を吐くと、才人を見つめて答えた。

才人は“極秘の任務”と小声で言われて、少し釈然としない表情をしながら、『そういうもんか・・・・・・』と呟いて入り口を何気なく見つめた。

すると、“桟橋”に行っていた二人が帰ってきた。

ワルドは才人たちがいる席につくと、困ったように言った。

 

「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」

「急ぎの任務なのに・・・・・・」

 

ルイズは口を尖らせているが、才人は内心ではホッとしていた。

不謹慎でもあの時に少し休めたが、クタクタとまではいかないまでも、いつもよりは疲れている才人には、明日休めるのはありがたかった。

 

「あたしはアルビオンに行ったことないから分かんないけど、どうして明日は船が出ないの?」

 

タバサが何も答えないので、今度は才人たちの話しに乗ることにしたキュルケ。

そちらを向いて、ワルドが答えた。

 

「明日の夜は月が重なるだろう? “スヴェル”の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく」

 

才人はワルドの言葉を聞き流しながら、モンモランシーの使い魔であるシェンのことを考えていた。

最初に会った時に感じた、どこかで会ったことのある竜だなぁというのを、ギーシュに訊ねたときに思い出したからである。

 

(どこだっけなぁ〜。ここまで出てるんだけどなぁ・・・・・・)

「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋を取った」

 

ワルドは鍵束を机の上に置いた。

 

「キュルケとタバサ、ギーシュとサイトがそれぞれ相部屋。そして僕とルイズが同室だ」

 

才人はぎょっとして、シェンの事など頭からふっ飛んでワルドの方を向いた。

 

「婚約者だからな。当然だろう?」

「そんなダメよ! まだ、わたしたち結婚してるわけじゃないじゃない!」

 

才人は頷いた。

『それはいかん!』と心の中で怒鳴る。

しかし、ワルドは首を振り、ルイズを見つめた。

 

「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」

 

 

**********

 

(・・・・・・概ね原作通りで良かったわ。まぁ、才人が私の話をしだした時は冷や汗ものだったけれど)

 

才人たちがいる席から少し離れた席で、出されたブドウ酒を飲みつつ、ふぅと息を吐いた。

今、私は“モシャス”で黒いローブに身に纏う朱(28歳)に変身している。

“ドラゴラム”の人間姿をワルド子爵とタバサに見られているので、分が悪いからね。

 

(さて、才人たちが2階に行ったみたいだし、私も・・・・・・)

 

フードから顔を覗かせて、才人たちが2階に消えたことを確認し、モンモンのへそくりで支払って酒場を出る。

そして、しばらく街道を歩いていると複数の人たちが私の後をついてきている気配がしてきた。

 

(ふぅ。これってもしかしなくてもアレかしら?)

 

私の歩く速さに合わせるように一定の距離を保ちながらついてくる人たちの正体に思い当り、思わずため息が出てしまった。

 

(まぁ、ため息を吐いたところで、状況が好転するワケでもないわねぇ。ここはさっさと逃げることにしましょう)

 

ワザと人気がない路地を選んで曲がる。

その直後、“モシャス”を解除して神竜に戻り、“レムオル”の呪文を唱えた。

その場で様子を窺うと、数人の男たちが足早に現れた。

しかし、“襲うつもりでいた女”がいなくなったのに気付き、チッと舌打ちをして散り散りに暗闇へと消えていった。

それを見送った俺は、大欠伸をして才人たちが止まっている宿屋に戻った。

 

 

**********

 

「女を見失ったのかい?」

「女の方が一枚上手だったらしい。子分どもがすまねぇな。だが、明日はしっかりやるから安心してくれ」

 

ラ・ロシェールから少し離れたところにある小屋に、フーケと厳つい顔で毛むくじゃらの男がテーブルに向かい合わせで座って会話していた。

どうやら先程のシェンをつけていた数人の男たちは、この男の子分たちだったようだ。

 

「ふん。ちゃんとやってくれなくちゃ高い報酬を支払った意味がないんだよ。じゃ、明日はしっかりやりなよ」

「分かっている。こちらも一応これで飯を食っているからな」

 

ニヤける男を気持ち悪そうに一瞥し、フーケは小屋を出た。

 

(・・・・・・たく一体誰なんだい、クズ傭兵どもを殺したのは。余計な手間がかかってしまったじゃないか)

 

そして自分を誘った男がいるであろう場所へと向かいながら、フーケは眉間にしわを寄せた。

 

<怪しい女もでてくるし前途多難だよ、ホント。けど、明日は必ず成功させてやるわ。待っていな、ガキども>

 

ブツブツと呟きいて歩を早めたフーケの目には、復讐の炎がやどっていた。

 

 

**********

 

翌朝、目を覚ますと中庭にサイトとワルドが対峙しているのが見えた。

 

(ああ。才人がコテンパンにやられる場面か・・・・・・。ふむ。これで才人が成長するキッカケになるし、ここは何か不測の事態が起きた時だけ動くとしよう)

 

もっともらしく言い訳をしてみたが、ただ単に極力ワルドと関わり合いになりたくないというのが本音だったりする。

 

『昔・・・・・・、といっても君には分からんだろうが、かのフィリップ三世の治下には、ここでよく貴族が決闘したものさ』

『はぁ』

『古き良き時代、王がまだ力を持ち、貴族たちがそれに従った時代・・・・・・、貴族らしかった時代・・・・・・、名誉と誇りをかけて僕たち貴族は魔法を唱えあった。でも、実際はくだらないことで杖を抜きあったものさ。そう、例えばオンナの取り合ったりね』

(はぁ。見てるのもつまらないし、寝るか)

 

ワルドの講釈がつまらないため、寝ることにした俺は大欠伸をして目を閉じた。

 

どうせ結末は変わらんだろう。

もし何かがあれば気付くだろう・・・・・・多分な。

 

*****

 

『ワルド!?』

 

ルイズの大声で目を覚まし、中庭を見つめると案の定、地面に尻モチをついている才人がいたが、ある一か所だけ違ってる所があった。

 

『がは・・・・・・っ。わ、わたしとしたことが、なんたる失態だ・・・・・・』

『ワルド。大丈夫!?』

『な、なんとか・・・・・・ね。だが、ちょっと・・・・・・、危険な感じだ』

 

何故かうつ伏せで倒れているワルドがいた。

よく見るとワルドの背には一本の剣が刺さっていた。

 

これはどういうことだ・・・・・・?

 

『ははははっ!! この時を待っていたよ。あなたが一瞬だけ隙を見せるのをね!』

『誰っ!?』

 

その一本の剣を放ったであろう黒いローブの人物が現れた。その人物は((徐|おもむろ))にフードを取った。

俺はその顔に目を見開いて驚いた。

ルイズも同様に驚き、名前を叫んだ。

 

『ヴィリエ!? あ、あなた何でここに!?』

『ふん。子爵を殺すために決まってるじゃないか。僕を貶めた子爵をね』

『何を言ってるの!?』

 

ちっ。まずいな。

このままだとワルドが死んで、原作とはかなり変わってしまう。

ふぅ。仕方がない。助けるか・・・・・・。

 

『ふん。お前に言ったところで状況は変わらない。さぁ、そこをど―がはっ!?』

 

俺はこれ以上喋らせないよう尾を小僧の首に巻きつけて持ち上げる。

 

『が、は・・・・・・っ!? な、なん・・・・・・!?』

 

上手く喋れない小僧を空へと放り投げると同時に、“バシルーラ”の呪文で学園の入り口まで吹っ飛ばした。

この一連の行動は“レムオル”で姿を消していたので、小僧が独りでに飛びあがって彼方に飛んでいったとルイズ達は思ったはずだ。

 

『い、一体何が・・・・・・』

『ルイズ! 呆けてる場合か!』

『はっ! ワルド!』

 

呆けて小僧が飛んでいった方向を見つめていたルイズだったが、才人の怒鳴り声で我に返り、慌ててワルドに近寄った。

俺は“ダモーレ”でワルドのステータスを見つめた。

 

【名前】  表示OFF

【最大HP】表示OFF

【最大MP】表示OFF

【攻撃力】 表示OFF

【守備力】 表示OFF

【素早さ】 表示OFF

【賢さ】  表示OFF

【状態】

  HPが徐々に減少。あと数十分で絶命。

 

(少しやばいか・・・・・・。ふぅ。ワルド。今は助けてやるよ。これも世界のためだからな)

 

“ドラゴラム”で人間になった俺は、“レムオル”を解除すると、徐にルイズたちに近づいていった。

説明
死神のうっかりミスによって死亡した主人公。
その上司の死神からお詫びとして、『ゼロの使い魔』の世界に転生させてもらえることに・・・・・・。

第二十話、始まります。

※ワルドが大変な目にあっています。それでも良かったらお読みください。
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コメント
主人公の行動、何がしたいのか分かりません。以前に生前幼馴染がウェールズを助けたいって言ってたのに、原作通りに進行させようとしてるし、逆にルイズの不安を煽ってワルドに付かせようとしてるみたい(h:o)
>>飛鷲さん 泣くかもしれませんし、泣かないかもしれません。この事についてはいつか出るかも。(光闇雪)
モンモンのヘソクリって金欠モンモンが泣くぞ。(飛鷲)
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ゼロの使い魔 ドラクエ 呪文・特技 しんりゅう(神竜) テリー 

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