青いチビの使い魔 28話
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 タバサSide

 

「さて、お嬢さま。どうやらチップがなくなってしまったようですが・・・・・・、これ以上お続けになるのなら、新たにチップを買っていただかなくては」

 

私の元からチップが全て無くなると、ギルモアはニヤニヤとした表情で言ってきた。

部屋でキキが気を利かせて席を外してもらい小さい頃によく遊び相手になってくれていた彼と話をした後、別の給仕が準備が出来たと呼びに来た。キキがギルモアはイカサマをしていると確信を持って言っていたので、私は色々な対策をして勝負に挑んだが、結果はご覧の有様である。

ギルモアが用意した個室ではなく厨房で勝負を始めたり、カードのシャッフルは私が行い、細々とチップを賭けて何度も勝負をし相手の挙動一切に注意を払ったりとしていたが、まったくイカサマを見破れずにいた。

そして、イカサマを暴けないままに大きな賭けの時だけま決っているかの様に私の手の一つ上の役で勝というパターンが続き、ついに私のチップが尽きてしまった。

 

「お嬢さま。チップへの交換はどういたしますか?」

 

もう資金は無い。私は首を振るしかなく、

 

「おやおや、それではゲームは続けられませんな。これにてお引取り、ということになりますが・・・・・・、お家のお名前で、掛け金をお借りになることもできますよ?」

 

ギリモアの問にさらに首を振る。今使っている名は偽名であるし、イカサマのしっぽすらも掴めてないのに掛け金を借りて負けたとなれば目も当てられない。そんなリスクの高い行為は出来ない。が、しかしこのままでは任務達成できないのも事実、私が考え込んでいると、

 

「・・・ふーむ。お嬢さま、こういうのはどうです? お金がないなら、服を賭けては」

 

ギルモアが提案してきた。にいつの間にか集まってきていた野次馬達がそれを聞いて各々騒ぎ立てる。資金が尽きてしまってる以上この提案を受けるしかない。私はそれに頷いた。互いに勝負続行を承諾し、ゲームを再開するが、

 

「おお、なかなかの手ですな。ですが、こちらの勝ちです」

 

4度目の勝負、ハラリッとギルモアの手札が並べられる。やはり私の手の一つ上の役。私は苦い表情をしながらも服を脱ぎ、ミューズ姿にまでなってしまった。これを取られたら次は下着一枚きり・・・。

 

「お嬢さま、お続けになりますかな?」

 

ギルモアの楽しげな声と表情に私は心の中が悔しさの気持ちでいっぱいになる。せっかくキキがイカサマは在ると教えてくれたのだ、必ず暴いてみせる。私はギルモアに頷き返し、勝負を続ける。

 

「では、次はそのミューズをお賭けになるということで・・・」

 

ギルモアが笑顔を貼り付けた表情で集めたカードを私に渡してくる。私はカードを受け取り丹念に切る。切っている間もカードや周囲に注意を払いイカサマを見極めようとするが上手く行かぬままにカードを配り終えてしまう。互いにカードを取ろうとした時、ギルモアの隣にいたトマが駆け寄ってきた。

 

「お嬢さま、お止めくださいませ。勝負事に熱くなっても、いいことなど何一つありません! このままでは、お嬢さまはいい物笑いのタネです! 私の知っているシャルロットお嬢さまなら・・・・・・」

 

彼がとても焦った表情でこれ以上は止めるようにと説得してきたが、それは出来ない。私は彼の言葉を無視して手元のカードを取ろうとすると

 

「そうだなぁ、そいつの言う通りだ。勝負ってのは心は熱く思考は冷たくってな。どんなに意地張っても勝てないもんは勝てないんだぞ?」

 

言葉と共にパサッと私の肩に布が掛った。それは執事服の上着であり、後ろを振り向くと其処にはキキが居た。いったいいつの間に。そう思っているのは私だけではなくギルモアや野次馬達もざわざわと騒ぎ立てる。が、キキは気にした様子も見せずにマイペースに話し始めた。

 

「皆さんお静かに、そんな細かいことはどうでもいいじゃないですか。そんなことより支配人さん、選手交代だ。ここからは俺が勝負させてもうらうぞ。もちろんちゃんと賭け金もある」

 

キキはギルモアを睨みつけながら懐から大量のチップを取り出し台の上に置いた。

 

「な? いいだろ」

 

キキの問にギルモアは多少悩む素振りをしたが、チラリとチップを見ると僅かに口角を上げた後すぐさ微笑を浮かべて

 

「まあ、いいでしょう。交代を認めましょう。ただし、賭けるチップを2倍にしてもらいますよ」

 

「ああ、構わない」

 

一種のペナルティの様な物です、とギルモアはニヤニヤとしながら言ってきた。キキはいつものヘラヘラした表情で頷くと早速席に着きカードを切り始める。

そして、カードを切り終えゲーム開始。キキがここまで自信満々と言う事はイカサマを見破ったにちがいない。私は期待してゲームの行方を見ていたのだが、1戦目、2戦目、そして3戦目とキキが勝つことは無かった。どころかキキは手札の役がなんだろうが知ったこっちゃ無いと言うように兎に角勝負をかけて行った。いったい何をしているの?私は不安を抱きながらもキキなら何とかできると信頼し、見守る。しかし……

 

「はっはっは。この勝負も私の勝ちですな。さてと・・・大口を叩いた割りにあっけなかったですな。チップも底をついてしまいましたが、どうなさいます?」

 

ギルモアのニヤニヤとした表情に私はどうするべきか考える。キキが失敗してしまった今、この任務をどうやってなしとげるか。私は恨みがましくキキを睨んだ。が、

 

「うーん。やっぱり勝てないよなぁ。まあ当たり前か、毎回俺の役の一つ上の役に手札を変身させてるんだからな」

 

と、まるで天気の話でもするかの様に言い切った。手札を変身させてる?入れ替えてるではなく?どういう意味なのだろう。私が疑問に思っていると、

 

「!? ……な、何のことだね? 負けたからといって言いがかりはよしてくれ」

 

一瞬だがギルモアが目を見開いた。が、すぐに表情を戻し何でも無かったかのように反論する。

 

「言いがかり?俺は本当の事を言ってだけだぞ」

 

「はっはっは、面白いご冗談を。いくらチップが無くなったとはいえそう言うのは感心しませんなぁ。それともこのカードを調べて見ますかな? ディテクトマジックでも自由にかけてくださって結構ですがいかがなさいます? まあ、何も出てこないとは思いますがね」

 

キキの言葉にギリモアは自信満々の表情で挑発するようにカードを差し出してくる。ギルモアの言う通り、私はあのカードから魔法の気配は感じなかった。でもキキは表情を変えずに

 

「ふーん、なら、見せてあげましょうかっと……。シルフィー!」

 

「はいなのねー!」

 

キキは声を上げてシルフィードの名前を呼んだ。すると野次馬の後ろの方から声が上がり、野次馬達が割れていくとそこには大きな檻籠を持った彼女が居た。そして、シルフィードがこちらに向かって歩いてきてテーブルの上に檻籠を乗せた。すると、

 

「な!? それは!」

 

ギルモアの表情が先ほどのニヤニヤ顔から一変、汗を流し驚愕と焦燥に彩られた。

 

「ほら、お前ら。子供は無事だから逃げていいぞ」

 

キキはそんなギルモアの事など無視をして何かに言葉をかけた。私は頭に?を浮かべているとシルフィードが檻籠開けて、中から動物を出した。すると今まで何でもなかったカードの束が突如として光出し、複数の動物になってしまった。それはシルフィードが檻籠から出した動物より一回り大きさであった。

 

「さて、これの説明は……出来そうにない顔してるねぇ。じゃあ変わりにシルフィ説明してやってくれ」

 

「了解なのね! この幻獣はエコーって言うのね! これは……」

 

シルフィードがエコーについて説明し始め、それにキキがギルモアのやってきたイカサマの説明を入れる。それを聞いた野次馬達の表情は驚愕に彩られ、次第に怒りの形相に変わっていく。

私もエコーの説明を聞き納得した。先住魔法は私たちの四系統の魔法とは別物であり、ディテクトマジックをいくら掛けたところで見破れるはずがないのだから。

 

 

 

 

 キキSide

 

「くそー!舐めやがって!」「俺たちを騙しやがったな!」「つるしあげろー!!」「捕まえろー!」

 

「ひっ、く、くそー!」

 

「ギルモア様こっちです! 早く!」

 

イカサマを知った野次馬達はギルモアを捕まるべく、鬼のような形相で一気に襲い掛かる。しかしトマがナイフを手に客達の前に出て足止めをした。客達もトマの実力を知っているのでその場でたたらを踏み止ってしまう。その瞬間トマは袖から袋を取り出しそれを破る。すると中に燐が仕込んで在ったらしく厨房は煙で満たされしまい客達はパニックに陥ってしまった。やれやれ。俺は近くに居るシルフィとタバサを抱きかかえ瞬身の術を使い外へと出る。

 

「きゅ、きゅい?」

 

「……!?」

 

いきなり厨房から外の景色になったことに2人は少し驚いたていたが状況を理解するとタバサは

 

「杖」

 

と、短く告げる。俺は厨房に行く前に回収しておいた杖を巻物から出しタバサに渡す。と、タイミングよく裏口から出てきたギルモア&トマと鉢合わせした。

 

「なっ! 貴様らいつの間に……どうやって!?」

 

「シレ銀行の鍵」

 

タバサはギルモアの言葉を無視して銀行の鍵を差し出せと暗に言った。ギルモアは俺たちが政府の役人だと知った瞬間、自分は貧しい人々に施しを……っと言った言い訳をしたが、シルフィがエコーから聞いた本当の事を言うと、真っ赤な顔になり懐から拳銃を取り出し、

 

「トマ! こいつらをどうにかしろ!」

 

と、叫びながら走り出した。トマはせつなげな表情をした後、通路を塞ぐように前に出る。おいおい、唯一の味方置いて逃げるなよ。俺は嘆息し、

 

「タバサ、捕まえてくる」

 

タバサにそう言い、壁を走りトマを抜く。トマはあまりの事に驚愕するも咄嗟に俺めがけてナイフを投擲するが、タバサが魔法でナイフを落とす。

 

「あなたの相手は私」

 

「くっ、お嬢さま」

 

2人の言い合いを背に俺はギルモアを追う。っつっても角を曲がった先で直ぐに追いついてしまった。ギルモアは追ってきた俺に対し何の躊躇もなく銃を撃つが弾が当たる事は無く。さらにやけくそになって銃を俺に投げつけてナイフを取り出し構えてタックルして来たが、軽く避けて首筋に一撃。ギルモアは糸の切れた人形の如く地面に倒れ付した。

……戻るのは少し待ったほうがいいかな? 俺は曲がり角から顔を出しタバサとトマの様子をうかがったら丁度終わったらしく、トマが倒れていた。

 

「話しは出来たか?」

 

俺はギルモアを持ち上げてタバサの所に戻り聞くと、タバサはコクリと頷いた。少し寂しそうな表情をしてるのは気のせいではないだろう。詳しいことは分らんが、まあ気にしても仕方ない。

その後はタバサが意識を失ったギルモアから鍵を見つけ出し、俺たちは小宮殿に出頭し報告を済ませて任務終了。出頭した際はアッシュが対応してきたが、その後ろの扉からイザベラがジッと睨んできていた。何あれ、ちょっと可愛い。

ギルモア達に関してはタバサの願いで、近くの宿にポイしてきた。暴徒と化した客に見つかったら大変だからと。

 

「しっかし、あいつら許せないのね!」

 

と、学院へとシルフィに乗って帰っていると、まあいつもの如くブーブーと文句を喋り始め俺も同じ様に相槌を適当に打ちながらも、ふとタバサを見た。タバサは何やらジッとカードを見ながら色々弄っていた。色々考えることでもあるんだろうか。まあいいや。

 

「あ、そういえば預かったお金はどうしたのね?」

 

「返した」

 

「きゅい!? なんてことしてるのね! それじゃあ美味しいお肉が食べられないのね! 約束を破るなんて最低なのね!」

 

シルフィがタバサの問に答えるとギャーギャーと騒ぎ出した。タバサは無言で懐から1枚の金貨を取り出し

 

「1エキューならある」

 

「なっ! それを早く言うのね! まったく意地が悪いチビ助だこと。だったら早くご飯食べに行くのねー!」

 

シルフィの態度にタバサは嘆息し、俺は苦笑いで遠くを見る。ちなみに、エコー探索中に金品諸々など色々拝借してきたことは秘密である。

 

 

説明
とりあえず、ギャンブルの任務終了です。
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コメント
ありがとうございます。更新は遅いかもしれませんが頑張ってみます。(だしィー)
お待ちしてました!!これからも頑張ってください。(咲実)
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