【一刀の】望みたくない外史02
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────これはなんだ?これは誰だ?

 

 

 

一刀の頭に浮かぶのはこの言葉。

 

桂花「…兄様?どうされたんですか?」

 

桂花は言う。

 

『兄様』と。

 

彼の知る限り、一刀のことを『兄様』と呼ぶ人物は一人しかいない。

 

 

──そう、流琉だ。

 

 

季衣が一刀を兄貴分とし、『兄ちゃん』と呼んでいるので、流琉もそれに倣い『兄様』と呼ぶこととなった。

 

季衣と流琉は分かる。まだ、親が恋しく、また兄を欲しがる気持ちも分かる。

 

だが、桂花はどうだろうか。

 

桂花は華琳に恋慕の情、延いては『絶対服従』を誓っている。

 

だが、北郷一刀──いや、男に対して『絶対忌避』とも言うべき態度をとる。

 

ましてや、北郷一刀は華琳に愛されし男。桂花はそれを認めていない。華琳が男を愛するなど、ある筈がない、と。

 

だが、分かっているのだ。それは、願望だということに。

 

寵愛を受ける身としては、認めることはできない。だからこそ、彼を嫌う。

 

ここでもう一度聞こう。今の桂花はどうだろうか。

 

今の桂花は、一刀を避けぬ一人の『女の子』。

 

そう、一刀に接近し、顔を見上げてくる無防備な、『女の子』。

 

城の……いや、この国の誰が想像できようか、彼女の今の態度を。

 

誰も想像できないだろう。

 

──そう、一人、『天の御使い』と称される北郷一刀以外は。

 

天の知識を持つ彼ならば分かるかも知れないのだ。

 

──彼女の身に何が起こっているのかを…。

 

 

桂花「もう!兄様!聞いてますか!」

 

頬を膨らまし、彼女はさらに詰め寄る。

 

一刀「!!……あ、ああ!聞いてるよ!うん、聞いてる!」

 

おそらく違うだろう。正確には『聞こえていた』。『声』ではなく、『音』として。

 

一刀は今の状況により混乱し、放心していたから…

 

桂花の問により、今、彼は正気に戻った。だが、落ち着いている訳ではない。

 

今の彼は、桂花を今すぐにでも寝台へと手を引き、押し倒し、『彼女を貪りたい』。そう考えている。

 

ろくな考えではないだろう。

 

しかしだ。普段の彼女と今の彼女とのギャップを見て、そう考えるのを止められる男がいるだろうか?

 

 

 

 

──────否、無理だ。

 

彼も男だ。止められる筈がない。

 

それでも行動に移さないのは、女の子を思いやる男としての優しさだろう。

 

この優しさが『魏の種馬』と称され、女性に慕われる所以か。

 

 

だが、このままではいけない。まずは聞かなくてはならない。

 

──彼女の態度の理由を。

 

一刀「な、なあ。ちょっと聞いてもいいか?」

 

桂花「はい?」

 

返事をした彼女の碧眼の大きな瞳が、一刀の姿を映す。

 

その姿に理性を失いかねる。

 

計算された行動ではない。だが、彼女は何度、一刀を狂いかけさせたことだろう。

 

 

それでも彼は耐える。問うために。

 

一刀「…っ。えっとなぁ…。なんで兄様なのかな…?」

 

そう問うた瞬間、一刀を映した碧眼の瞳に怯え。顔には疑問。

 

桂花「……え。あ…。駄目…ですか?」

 

彼に拒否されたと思ったのだろう。瞳の中だけだった怯えは、全身へと変わる。

 

その彼女の姿に一刀は罪悪感を覚える。そのような彼女を見たことがないものだから、余計に。

 

だからこそ────

 

一刀「い、いや!ダメじゃない!全然ダメじゃない!むしろ、嬉しいよ!」

 

本来不必要な、種馬としての最後の言葉が、自然と出てくる。

 

桂花「本当ですか!?ありがとうございます!兄様♪」

 

パァ♪ と、擬音まで聞こえてきそうな、とびっきりの笑顔。

 

 

ガクッ!

 

 

これは、擬音ではない。実際の音。一刀の膝が崩れる音。

 

桂花「兄様!?」

 

一刀「…ふふっ」

 

桂花は驚く。

 

そして一刀は片膝をつきながら笑う。なぜか?

 

理由は三つだ。

 

一つ目は桂花の笑顔にやられたため。二つ目は今の自分の姿。三つ目はこの状況の過酷さにだ。

 

一人の女の子の笑顔で膝をつくなど、生涯で一度もない。だからこそ、滑稽で自嘲する。

 

もう一つの過酷さと何か?─────それはもちろん桂花の態度。

 

彼女を抱いたことは過去に一度。しかも、華琳の命によって。

 

華琳の命令ではなく、一刀が自分の意思で桂花を「抱きたい」といっても、桂花は了承しないだろう。

 

それは分かっている。

 

だが、それなのに今の彼女の態度。

 

今すぐに抱きしめたい。しかし、それは出来ない。女の子の嫌がることはしたくない。

 

これでは生殺しだ。

 

目の前の女の子は天使のような笑顔をしているのに、この場は地獄だ。辛すぎる。むしろ彼女は悪魔かもしれない。

 

地獄に、天使で悪魔な女のコ。この矛盾に耐えなければならない。だからこの過酷さに彼は笑う。

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だが、桂花はそれに気づかない。だからこそ追い打ちをかける。

 

桂花「に、兄様!?だ、大丈夫ですか!?どこか、具合でも悪いのですか?ど、どうしよう!あ!熱があるのかも…」

 

そう言って、彼女は自分の額を一刀の額に合わせる。

 

一刀「!!!!!!!!!」

 

一刀は驚く。顔の近さに。すぐ目の前にある唇に。

 

桂花「んー。熱はないみたい…。ねえ、兄様?どこか痛いんで…ひゃあ!」

 

一刀はたまらず抱きしめた。

 

一刀「な、なあ…。」

 

桂花「は、はい!?なんですか!?」

 

桂花は焦る。急に抱きしめられればそうだろう。顔を真っ赤にしている。だが、抵抗はしない。声を上げるわけでも、突き飛ばしたりもしない。

 

一刀「きょ、今日の夜さ、部屋に来てくれないか?」

 

桂花「へ…?へ、へう!?そ、それって、あの、つまり…」

 

一刀「うん。そういうこと…」

 

桂花「はう!」

 

桂花は驚きで奇声をあげる。

 

一刀は、断れるだろうと思っている。それでも聞いたのは、彼女を抱きたいという気持ちが強いから。

 

そして、彼女の返答は一刀が予想出来ない言葉だった。

 

桂花「……わ、わかりました……」

 

一刀「やっぱりそうだよな…って、え!?いいの!?」

 

一刀はまた驚く。彼女の言葉があり得なかったから。

 

桂花「な、なんで驚くんですか!」

 

一刀「い、いや、断られると思ってたからさ…」

 

桂花「断りませんよ!私が断るわけないじゃないですか…私だって…兄様が……好き……なんですから…」

 

今の台詞は普段の一刀ならば聞こえないだろう。そう、いつもなら、このような発言が『都合よく』聞こえない一刀ならば、今の『好き』は聞こえない。

 

だが、今は桂花を抱きしめている。顔はすぐそばにある。桂花の口も耳のすぐそばだ。

 

そして、彼女の顔が真っ赤なのもよく分かる。

 

一刀「そ、そっか。俺も大好きだよ…」

 

桂花「兄様…」

 

そのまま彼は、桂花を真正面に見据え、どちらからともなくキスをする。

 

桂花「ん……」

 

一刀「……ん」

 

触れるだけのキス。

 

しばらくして二人は顔を離す。どちらも顔が赤い。

 

一刀「えっと、ごめんな。俺、今日警備隊の仕事があるんだ。もっとキスしたら、もう抑えがきかなさそうなんだ…」

 

桂花「もう、兄様卑怯ですよぅ…。そんな言い方されたら私だって耐えきれませんよぉ…」

 

桂花はもじもじと両手の指を絡ませ、悶える。

 

一刀「っ!ご、ごめんな!とにかく、夜まで我慢しような?」

 

その姿にまた焦る。そして、今日非番で無かったことに憎しみを覚えた。

 

桂花「は、はい…。我慢します…。じゃあ、私も仕事があるので失礼しますね…」

 

彼女は少し残念そうだが、仕事だからしょうがない、といった感じで踵を返す。

 

一刀「あ……うん。楽しみにしているよ」

 

一刀は少し寂しく思ったが、すぐに笑顔で返す。

 

その一刀の言葉を聞いて、また桂花は俯きながら顔を真っ赤にし、返事をする。

 

桂花「はい…。わ、私も楽しみにしてます…」

 

そういって、小走りに部屋を出ていく桂花。

 

一刀「なんなんだあの桂花は…。可愛過ぎるだろ……。ん?ていうか…」

 

桂花の態度に呆けつつも、あることに気づく

 

一刀「このまま、夜までおあずけかよ!また、生殺し!?……あー、地獄を上乗せしちまった!」

 

どうしよう、と一刀は呟く。

 

だが、彼はまだ知らない。いや、気付いていないというべきか。

 

先程までの地獄は変化を遂げ、また別の地獄がまっていることに………。

 

 

 

 

 

完?

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あとがき

 

いや、このナレーター口調疲れるんですけど。

勢いで書いてあそこまで支援をいただけるとは思いませんでした。

だから、がんばって書いてみました。

 

で、会話が少ないという罠。

失敗だったかもとか思わなくもないです。

これは難しい!

 

最後に一言

 

 

 

 

 

パト○ッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。 何だかとても眠いんだ ...

説明
続いちゃいましたよ…。
勢いでやっただけなのに…。

どうしよう…。

声の脳内補完は絶対ですよ!!!!!!

誤字等がありましたら、ご指摘願いします。

[追記]再演外史と書き方が違うのは仕様です;

前話⇒http://www.tinami.com/view/62937
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コメント
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(グサッ)・・・・・・・・・・・・(スターダスト)
わかる・・・わかるぞ一刀、(乱)
わかる…わかるぞ一kタナ(乱)
桂花(心は流琉)の攻撃「兄さまーーー」ぐはっ一刀に会心の一撃www(ブックマン)
寝てはいけませんよ?!その先はこっちの世界ではないですよ?!(りばーす)
パト○ッシュが眠ったから僕の番なんだよ…。ではなくwここまで支援が多いとは思わなかったので頑張ります。あと、流琉は本気できます。覚悟してくださいw桂花はまだ気づきませんよ。流琉が終わってからです。あと、takayさん。桂花の萌えはまだだ!まだ終わらんよ!(つよし)
中身が流琉でも見た目が桂花じゃあ萌えれないよーwww(takay)
続きだ、続きを(マーサ)
ふ・・・・一刀よく我慢した・・・w さて、流流の姿をした桂花がいつ気づいてどうなるかに期待です。 @いやいやいやいやw寝たり放置したり勝手に逝ったりしたら皆で弄りますぞ?w(Poussiere)
いやヤヴァイってマジで…。桂花がデレると、とてつもない破壊力がある事が解った。これを目の前でやられて耐えた一刀君には英国紳士もビックリだよ…。『一刀君は変態じゃないよ。仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ…。』(ぬこ)
GッJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ!!!!!ナイス!!この場合は桂花かわいいよ桂花と言うべきなのか流琉かわいいよ流琉と言うべきなのか・・・(ソウ)
逝くなら書いてから逝って〜〜!!ww(ルーデル)
逝くな〜〜〜、頑張れ〜〜〜!あと流琉に嬲られる一刀期待(クォーツ)
続きキタ〜〜!!一刀はやっぱり種馬だね(´・ω・`)いやいやいやwまだ寝ちゃ駄目ですよw続きお願いしますw(混沌)
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