Reunion #2: My Fair Lady |
「あ”?????・・・・・」
と、だらし無い声を上げ、カフェで氷無しのアイスコーヒーを飲んでいる俺。やっと泣き止んだ静香と一緒にテーブルを挟んで彼女の口から溢れる言葉を全て受け止める事に専念した。ここに来るまで色々あったらしい。逃走車両さながらの運転を遠征用のマイクロバスで行ったり、ハンヴィーを運転して<奴ら>と名付けた感染者を何十体も轢殺したり、俺達のメゾネットで銃やらクロスボウを拝借したり。
「・・・・と言う事なの。」
「お前も中々大変だったみたいだな。無事で良かったよ。」
「えへへ?、コレとコレのお陰!」
静香は首から下げているペンダントトップを見せた。大学の卒業祝いに俺が内緒で買ってやった物だ。シンプルなシルバーだが、紋章は百合の花、フルール・ド・リス。更にもう一方の手には財布にテープで貼り付けた写真。無理矢理くっつけた感じがあるが、本人は全く気にしていない。写真は合計で三枚。一枚目は俺とのツーショット、二枚目はリカとの、三枚目は俺を中心に三人全員が肩を組んで笑っている写真だった。
「まだ持ってたのか。ま、俺もリカもそれぞれ持ってるけどな。」
俺も首から下げているドッグタグに歯車型のリングを二つ通したペンダントを着替えたシャツの下から引っ張りだす。写真も財布にしっかりと入っている事を見せた。
「リカと圭吾のお陰でここまでやれたんだよ?」
俺は何も言わずに静香の手を握って笑みを浮かべた。
「???と言う事。」
「何か、凄いですね・・・・・・映画でしか見ない様な事ばっかり・・・・」
「あそこで静香に袖を掴まれてるウチの副隊長が規格外なだけさ。」
リカと田島はと言うと、別のテーブルで静香と一緒にここまで生き延びて来た連中にここへ来るまでの冒険をかいつまんで話したり、情報を交換していた。百合子さんから貰った資料に記載されていた藤美学園の生徒達だ。話を聞いているのは、(染めているかどうかは知らんが)ピンクの髪をツインテールにして眼鏡をかけた鋭い目付きの高城沙耶、さっき非常口で刀を突き付けて来た毒島冴子、そして触覚みたいにアホ毛が二本ある宮本麗。後は垂れ耳の子犬とそいつとじゃれ合っている小学生位のガキ。
「ワゥ!」
「あ、こらジーク!!」
突如ガキとじゃれ合っていたジークと名付けられた犬が静香が寝ているベッドの上に飛び乗り、静香の顔を思いっきり嘗め回した。
「うわひゃあぁあああ?!」
間抜けな悲鳴を上げた静香。驚きの余り、勢い余って椅子から転げ落ちそうになった所で、
「おっと。」
空いた手を膝裏に突っ込んで引っ張り上げ、膝の上に乗せた。
「もう離さねえぞ。」
ナチュラルに手を腰に巻き付けて彼女を引き寄せると、体を更に密着させた。
「圭吾・・・・」
率直に言おう。リカが先に引いた所為で少し、というか、全然物足りなかった。なので、初っ端から思いっきりディープでやった。静香もよっぽど欲求不満だったらしく、逆らうどころかむしろ積極的だった。まあ、俺よりも『お預け期間』が長かったから仕方無いと言えば仕方無いが。五分程経っただろうか。離れた時には静香の唇から俺の唇に唾液の糸が引いていた。
「ふぅ・・・・・悪い。落ち着いたか?」
「ん・・・・もう、馬鹿ぁ・・・・」
上気した顔を枕に埋め、目だけを晒して俺を上目遣いで睨み付ける。
「そんな顔が恐いと本気で思ってるのか?お前はホント怒るのには向いてない人間だ。後は、そこの馬鹿犬だ。」
静香の顔を思いっきり唾液で汚しやがった駄犬を睨み付けた。
「クゥゥン・・・・・」
殴らないで、許してくれ、とでも言いた気に腹這いになり、凄まじい勢いでぶんぶん振っていた尻尾も後ろ足の間に隠してしまう。
「もう、ジークってば・・・・ごめんなさい・・・・」
「まあ、次は気を付けてくれ。」
ジークを抱き上げてガキが申し訳無さそうに俺を見て離れて行った。立ち上がってリカ達が座っているテーブルへと椅子を引っ張って行って再び腰を下ろす。
「静香をここまで守ってくれて本当にありがとう。いや、ありがとうじゃ済まないわね、これは。連絡が途絶えてからずっと気掛かりだったから・・・・」
「俺からも、改めて礼を言わせてくれ。」
「現状で医療の専門知識を持つ人を見殺しにするなんてマイナスにしかならないし、何より養護の先生だから気心が知れた仲だったのよ。それよりも、何で私達の名前を知ってるの?」
疑り深い奴だ。まあ、気持ちは分かるが。流石はあの一心会の武闘派夫婦の娘だ。目元は父親、鼻梁や耳の形、スタイルは母親譲りだ。ほんと、良く似る物だな、親子って。
「ここに来る途中で、一心会の生き残りに遭遇したのよ。ちょっと話し合いをしたら直ぐに了承してくれたわ。沙耶ちゃんの両親は無事。と言っても、避難民の殆どと部下も何割かを失ったらしいの。餞別にグレネード各種を貰ったわ。」
リカが百合子さんから貰った資料の一部を高城に見せた。念の為という事もあるのか、ページの一枚に総帥と百合子さん両方の署名が万年筆で丁寧に書かれていた。流石、抜け目無い。
「後、伝言も預かってるわ。壮一郎さんみたいに良い男を見つけなさいってさ。」
高城は涙腺が緩み始めたのを悟られたくないのか、背を向けた。
「それより、男二人が見当たらないんだが。」
俺の言葉に、田島もあ、そう言えば、と言う顔を見せる。
「たしか、えー・・・・小室孝、平野コータだっけ?」
「はい。あのお婆さんの為に近くの診療所から血液パックとかを取りに行ってます。」
毒島が掛け布団の下で苦しそうにしている老婆の方を頭でクイッと示した。
「なるほど、あたしの銃をパクったの、そいつらか。全部無事なんでしょうね?」
おー、怒ってる怒ってる。リカお姉様が怒ってらっしゃる。まあ、分からなくもないが。俺も他人に私物を触られるのは嫌だし。特に銃だったら恐らく威嚇射撃位はしてるかもしれん。
「あ、そ、それなら大丈夫です!『安全な場所』に隠してありますんで・・・」
麗は慌ててバタバタと手を前に突き出して振る。そして声のトーンを落として続けた。
「SATって事は、他にも武器、持って来てますよね?」
俺達の大きな『荷物』に気付いたのだろう。まあ、あれだけの黒くてデカいダッフルバッグなら、まあ目立つわな。
「ええ。あるわ。大き過ぎて目立つから持って来なかったけど、トラックの中にも重火器はあるの。ミサイルよ。凄いでしょ?」
リカは悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。コイツも俺と同じぐらい武器には詳しいからな。まあ、俺の方が一番詳しくてリカがそれに便乗して俺から情報を得ているんだが。
「なあ、ここには俺達が来る前にお前ら以外に生き残りはいたのか?」
「はい、一応。大体、七、いや八人かな?」
「八人・・・・俺達も加えたら二十人近くになる。まあ、幸いと言うべきか、色々と物資は潤沢にある。ここに来てからどうするつもりだったんだ?」
「暫くはここに逗留しようかと思います。ですが・・・・」
なるほど。
「いや、良い。皆まで言うな。大体分かった。」
俺達以外の生き残りの方が一番の問題になるか。コイツらと違って明確な目的を持たず、只安全な場所に偶然集まった市民の集まりでしかない。警察だと示してもいい結果が得られるとは思えない。この事は既に空港で実証済みだ。コーヒーの残りを飲み干すと、非常口のドアが開く音がした。
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祝!!五十話到達!!これからもよろしくお願いします! | ||
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