零士「やぁ、おはよう月ちゃん。」

月「おはようございます東さん」

台所に行くと、東さんが座ってお茶を飲んでいました

零士「朝食作りかい？手伝うよ」

月「ありがとうございます」

東さんは『晋』の料理長を務めている事もあり、お料理の腕は一流です。

とても手際がよく、出来上がるお料理もとても美味しいのですが

零士「あつっ」←手が熱々の鍋に触れる

時々おっちょこちょいです

それから程なくして、朝ごはんができます。

今朝の献立は白米、お味噌汁、玉子焼き、魚の塩焼き、野菜炒めです。

そして恋さん用にベーコン、ソーセージ、ステーキも作りました

恋「お腹、減った」

お料理が出来上がると、恋さんが起きてきました。

恋さんはいつも、お料理が出来ると起きてきますけど、匂いにつられてくるのかな

咲夜「おはよう二人とも。お、ちょうどいい時にやってきたか？」

零士「おはよう咲ちゃん。みんな揃ったし、食べようか」

恋「♪」

詠「あーやばい。足がプルプルしてる気が…」

咲夜「だらしないぞ詠。月を見てみろ。あの後、ちゃんと仕事もするんだぞ」

詠「月やばい。月すごい。ホント尊敬するわ」

月「あ、あはは。それでは、いただきましょうか」

「いただきます！」

その後、私達は朝ごはんを食べつつ、楽しく談笑していました。

途中、東さんのお箸が折れたり、お茶碗が割れたりしていましたが、寿命だったのでしょうか？

零士「はぁ…今日、誰か暇な人はいるかい？」

咲夜「今日は月と城だ」

月「はい。華琳さんのところでお料理会をする予定で」

詠「僕は恋と悠里のとこに行くわ」

恋「……ん。子ども達と遊んでくる」

零士「残念。仕方ない、一人で買いに行くか」

東さんは割れたお茶碗と折れたお箸を見て呟いていました。

東さん曰く、こういった茶器も魔術で作れない事はないらしいんですが、

職人さんが作った物を使いたいとの事で毎回購入しているらしいです。

東さんのこだわりの一つですね

咲夜「さて、そろそろ行くか月」

月「はい」

それからしばらくして、私と咲夜さんは華琳さんのいるお城に向かいました。

その道中で…

八百屋「おー！司馬懿さんに月ちゃん！今日はどちらへ？」

咲夜「あぁ。ちょっと華琳に呼ばれてな」

月「お料理会なんです」

八百屋「かー！さすが『晋』さんだわ！また今度、寄らせてもらうよ！」

月「はい！待ってますね」

このように、道行く様々な人に声をかけられます。

この街に来てからは、本当にお知り合いが増えました

流琉「あ！咲夜さーん！月さーん！」

お城の前には、流琉ちゃんが待ってくれていました。

流琉ちゃんはこちらに気付き、大きく手を振っています

月「おはようございます流琉ちゃん」

咲夜「よう。待たせたな」

流琉「おはようございます！では、さっそく行きましょう。華琳様も待ってます！」

私たちはそのまま流琉ちゃんの誘導で城の厨房へ行きます。

そこには華琳さんが食材を確認している姿がありました

華琳「おはよう咲夜に月。こちらの準備はできているわ」

咲夜「おはよう。ずいぶんと気の早いこった」

月「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

華琳さんや流琉ちゃんは、東さんの故郷のお料理に大変興味を持っている様なので、

こちらでも調味料を持ってきました。

材料は何とかなっても、調味料だけは揃えられませんので

華琳「私は今日という日を待ち望んでいたのよ。時間が惜しいわ。

そしてせっかくだから、いろいろ作ってみたいのよね。

咲夜、ここの材料とそちらが用意した調味料で何種類作れるかしら？」

咲夜「そうだな……まぁ、量を少なくすれば、そこそこの種類は作れるな」

月「そうですね。材料は豊富ですが、こちらの調味料が足りません」

流琉「では、まずは調味料から習っていくのはどうでしょうか？」

華琳「そうね…咲夜、調味料を作るのに、最短でどれくらい必要かしら？」

咲夜「物によるな。半日で出来るものもあれば、日数を掛けて作らなきゃいけないものもある。

美味いものを目指すなら、なおさら時間はかけなきゃいけない。

零士の技術を使えば、幾分か短縮はできるんだがな」

月「それと、例えばこのケチャップにしても、

材料となるトマトが遠方で取り寄せている物なので、用意には時間がかかります」

華琳「ふむ、意外と手間がかかるのね。調味料は次回にまわしましょう。

それまでにこちらでも材料を集めておくわ」

流琉「うーん…では『晋』さん独自の調味料を使わないで作れる料理になると、

何がありますか？」

咲夜「まぁ、簡単な物なら作れるな。オムレツとかハンバーグとか」

月「では、何か簡単に作りつつ、今日一日で作れそうな調味料を作るのはどうでしょうか？」

華琳「それがいいわね。では、お願いするわ」

そして、咲夜さんと、僭越ながら私の指導で、お料理が始まりました

Talk Session 1　　　月と流琉

月「流琉ちゃん、次はこれを炒めます」

流琉「はい！」

流琉ちゃん、うちで働いている姿も見ていますが、

こうしてじっくり見るととても手際が良いのがわかります

流琉「できました！どうでしょうか？」

流琉ちゃんは不安気にできた料理を見せてくれました。その姿が、とても可愛らしいです

月「はい、見た目も味もばっちりです」

流琉「やった！」

ふふ、もし妹がいたら、こんな感じなのかな

流琉「月さんは、年の近いお姉さんみたいです」

月「そ、そうですか？」

流琉「はい！とても優しい、しっかりしたお姉さんです！」

月「へぅ…」

照れちゃいます…

Talk Session 2　　　月と華琳

月「へぅ、華琳さん凄いです」

華琳さんの手際も、流琉ちゃんに負けず劣らず見事です

華琳「あら、私から見れば、あなたの方が鮮やかに見えるのだけれど」

月「でも、華琳さんって、王としての仕事をしつつですよね。

私はお料理屋さんで働いているから、ある程度こなせますが」

華琳「そうね、もともと料理が好きというのもあるけれど、

何かをするのに妥協するなんて事は許せないのよ。

より完璧な物を目指す。それだけよ」

月「かっこいいです華琳さん」

こういう、華琳さんみたいな人は、素直に憧れてしまいます

華琳「ふむ、でも私は、実はあなたも凄い人物なのではと睨んでいるのだけれど」

月「え？」

私が、凄い？

華琳「あなた自身、気づいている様子はないけれど、あなたの持つ才能、

周りを惹きつける魅力、時折滲み出る気品さ。

どれも一級であるし、王としての素質も十分だわ」

………

月「そんな、買いかぶりすぎですよ」

華琳「……私はね、とある連合に不振な点をいくつも感じているのよ。黒幕の死体とか」

月「！！」

華琳さんは、気づいている？

華琳「ふふ、安心なさい。今さらどうこうする気はないわ。

ただ、やはり『晋』の面々は規格外だとわかったわ」

月「へぅ…」

華琳さんはかっこいいですが、やはり侮れないんだと思いました

Talk Session 3　　　月と咲夜

咲夜「ばれてたな」

月「だ、大丈夫でしょうか」

咲夜「あぁ、華琳なら問題ないだろう。

あいつはそういう事を理由に何かするようなヤツじゃない」

月「そう、ですか…」

それでも不安はありますけど。

私はどうなってもいいですが、詠ちゃんや恋さんに迷惑はかけたくない…

咲夜「月」

月「？？はい」

咲夜「お前も詠も恋も、私が守ってやる。だからそんな不安な顔するな。な？」

月「あ…」

そう言って咲夜さんは私の頭を撫でてくれました。

その手の暖かさが、不思議と心を落ち着けてくれました

月「……ふふ、咲夜さんも、かっこいいなぁ」

咲夜「ん？何か言ったか？」

月「いえ、なんでもありません」

私も、こんな女性になれるかな

夕が暮れる頃、楽しかったお料理会もそろそろお開きです

華琳「今日はとても参考になったわ。特に調味料の種類が増えた事は収穫ね。

これだけで料理の幅が広がるから」

月「それは良かったです」

流琉「でも、本当によかったんですか？

こういうのって、あまり教えちゃダメな気がするんですが」

咲夜「もちろん、販売目的なら教えてないさ。だが、お前ら2人は違うだろ？」

流琉「それはまぁ、そうですが」

月「ふふ、それに東さんはそんな事気にしませんよ」

華琳「まぁ、もう既に習ってしまったし、今さらの事ね。

それにこれは、あくまで私の趣味よ。

一応言っておくけど、これで稼ごうなんて考えていないわ」

咲夜「わかってるさ」

華琳「ふふ。今日はありがとう」

月・咲夜「………」

いま、珍しい単語が聞こえたような

華琳「な、なによ？二人して黙ってこっち見て」

咲夜「あぁいや、華琳が素直にお礼を言ったのが、なんか珍しくてな」

月「はい。少し信じられない気が」

華琳「あなた達ねぇ、私を何だと思っているのよ。私だってお礼くらい言うわよ」

私と咲夜さんは思わず笑ってしまいました。

華琳さんは少しムッとしていましたが、怒っている様子はありませんでした。

また一歩、仲良くなれた気がします

華琳「はぁ、それじゃあね二人とも。また時間ができたらお願いするわ」

流琉「今日はありがとうございました！」

咲夜「じゃあな二人とも。今度はうちでやろう」

月「お邪魔しました」

そして私達はお城を出ました。すると後ろから華琳さんが…

華琳「月、またいらっしゃい。あなたと私は、と、友なのだから」

と、少し照れたように言ってくれました

月「はい！」