真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第127話「外史」 |
真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第127話「外史」
張暗の屋敷に赤斗たちが乗り込んでから一週間がたった。
成都には呉・魏・蜀の主だった面々が集まった。
貂蝉から司馬懿の事を聴くのなら、桃香が蓮華や華琳たちも一緒にと言いだした為だ。
―――玉座の間―――
赤斗「それじゃあ、貂蝉。説明してくれ。お前が知っている事を全部ね」
貂蝉「そうね。……まず始めにみんなに言っておくわね。私も王允ちゃんもこの世界の住人じゃないの。ううん。住人じゃないというより、この世界に居るはずの住人の名を借りて、この世界に存在するように作られたって言った方が正解ね」
鈴々「にゃ? どういう事なのだ?」
朱里「この世界の住人じゃないって言い方……それは他の世界があるって事ですか?」
貂蝉「そういうこと♪ 例えば……そうね。赤斗ちゃんの居た世界とかね」
星「ああ、なるほど。天という世界とのこと」
愛紗「ふむ……それなら納得出来る。天の世界と我らの居る世界。その二つがあるという事だな」
雪蓮「私たちは行った事あるもんね♪」
貂蝉「残念。世界は二つとは限らないの。他にも様々な世界があるの。私たちはそれを外史と呼んでいるわ」
赤斗「外史。そういえば初めて会った時にも、そんなこと言ってたな。あの時は、こっちの世界に戻る事に必死で、あまり気に留めなかったけど。確か外史って、正式に採用されていない歴史の事だよな」
貂蝉「定義としてはそうね。けれどそういう意味じゃないの。……まぁそれはおいおい説明しましょう」
赤斗「…………」
貂蝉「とにかく。赤斗ちゃんの居た世界、そしてこの世界、更に他の世界……そういった世界の事を外史と言っているんだけど、もう一つ、外史と対を為す概念である正史というものがあるの。つまり、大まかに言うと世界には正史と外史、二つの種類があるってこと」
蓮華「正史と……外史」
貂蝉「正史と外史。……正史というのは現実の世界。人が居て生活しているけど、世界は一つだし、世界を繋ぐ道なんて絶対に発生しない」
赤斗(なるほど……この世界と繋がった僕が居た世界は外史なのか)
貂蝉「魔法もないし、竜なんて生き物もいない。だけどそこに住む人々はそんなものは存在しないって言い切れる、物語を作り、そして見る側の世界。存在し、その、存在が存在するという抽象的で、普遍的な概念に充ち満ちた世界のことよ」
明命「うぅ……難しすぎてよくわかりません」
貂蝉「簡単に言うと、現実にはいくつもの種類があるってこと。今、この外史で一つの物語の主人公として、赤斗ちゃんが捉えてる現実世界。そしてそんな赤斗ちゃんを眺めている人たちが居る、正史の現実世界っていうね」
藍里「……ならば外史とは?」
貂蝉「外史というのは、正史の中で発生した想念によって観念的に作られた世界のこと。簡単に言うと、正史の中で誰かが何らかの物語を作ったとしましょう」
赤斗「作るとは、小説や漫画を書いたりするようなことか?」
貂蝉「そうよ。その作られた世界が、まず一つ目の外史となるの。そして、その物語を面白いと思い、その物語を支持する人たちが、その物語についてあれこれと考え続ける……つまりその物語に想念を寄せるのね。その想念によって違う外史が生まれるの」
火蓮「…………」
貂蝉「例えば……そうね。赤斗ちゃんなら分かると思うけれど、三国志の世界があるでしょう? 武将たちが皆、男性として描かれている三国志のこと」
赤斗「こことは真逆の三国志の世界のことだな」
貂蝉「そう。そしてその物語を見て、その世界を好きになった人が考えるの。曹操と夏候惇は愛し合っている仲なのかも……」
春蘭「あたり前だ! 私は華琳様を愛しているに決まっているではないかっ!」
華琳「春蘭。話の腰を折らないでちょうだい」
春蘭「ですが華琳様…」
華琳「二度、言わせる気?」
春蘭「す、すみません」
華琳「悪かったわね。話を続けてちょうだい」
貂蝉「周瑜と孫策の仲の良さは、実は裏では……。そういう想念が、正史とは違う次元で外史という、人々の想念に沿った世界を作ってしまうの。……形而上的な世界をね」
嶺上「けいじじょうてき?」
赤斗「形をもっていないものとか、目に見えないものとか、そういう意味だったかな」
貂蝉「物語の登場人物が、本当は自分たちと同じように生きていて、その世界で生活している。色々な想いを抱えて行動している……そんな世界を観念的に作り出してしまうってこと。その世界に住む曹操は、もしかしたら夏候惇のことが大嫌いかもしれない」
春蘭「そ、そんなっ!! そんなバカな!!」
貂蝉「だけど、その世界と似た世界では、曹操は夏候惇のことが大好きかもしれない」
春蘭「ほっ」
貂蝉「正史より生まれたそれら一つ一つの想念が、一個の抽象的で観念的な、いわゆる形而上的な世界を作り上げるの。そういう正史で作られた一つの物語から、枝分かれして広がっていく世界のことを外史と定義しているのよ。私たちはね」
赤斗「世界は一つの大木のようなものか……」
貂蝉「だけどその世界は脆弱で儚いもの。……基盤となる物語が人々に忘れ去られると、その外史は消えてなくなってしまう。人々の記憶から消失すれば、想念もなくなり、外史のある世界を支えられなくなって、その外史は消え去ってしまう」
赤斗「何だと……」
貂蝉「もしくは人々が違う物語に興味を持ち、今まで支持していた物語を忘れてしまって、その世界の存在が成立しなくなる。……ってね」
火蓮「…………」
貂蝉「その外史の一つ一つを潰そうとする、もしくは定型としての形を与えて観念的に正史とリンクさせ、その概念を固定する。それが私たち神仙とか英傑とか、そういう名前を持たされた者の役目なのよ。この外史では、という注釈付きでね……」
赤斗「じゃあ、司馬懿は何なんだ? 前にお前は言ったじゃないか、司馬懿は外史が滅ぼしているって。司馬懿は一体何者なんだ?」
貂蝉「仲達ちゃんは私たちのような剪定者ではないのよ。彼は全くのイレギュラーな存在。本来なら外史の一登場人物だったはずの存在。だけど、いつだか彼は気づいてしまった。他の外史の存在を……」
赤斗「気がついた?」
貂蝉「仲達ちゃんがどうやって外史の存在に気が付いたかは分からないわ。でも、仲達ちゃんは元居た世界の龍脈の力を全て手に入れた。そして、他の外史への道を開いては、そこの龍脈の力を奪っては滅ぼしてきたの」
桃香「何の為に司馬懿さんはそんなことをするんですか?」
貂蝉「さあ。わからないわ。力をつけて何かを企んでいるのは確かなんだけどねぇ」
鴉「教えてやろうか」
冥琳「お前は…」
凪「いつの間に?」
突然、玉座の間に現れた鴉に一同が驚く。
火蓮「貴様ぁ、いい度胸だな。私の前にノコノコと現れるとはな」
赤斗「火蓮さん。気持ちは分かりますけど、ここは落ち着いて下さい」
鴉「おやおや? 君はあんまり驚いていないんだね 」
赤斗「なんとなく来るんじゃないかと思っていたよ」
鴉「へー。そうかい」
雪蓮「ひさしぶりね♪ わざわざ捕まりにきたの? それとも、また誰かを暗殺しようと企んでいるのかしら?」
鴉「おいおい、そんなに殺気立つなよ。俺は仲達からの伝言を伝えにきただけさ」
華琳「仲達からの伝言ですって?」
鴉「ああ。どうする聞くかい?聞かないかい?」
桃香「も、もちろん聞きますよ! 蓮華さん、華琳さんそうですよね?」
蓮華「ああ、もちろんだとも」
華琳「そうね。さあ、早く話してちょうだいな」
鴉「はいはい。わかったよ」
鴉は胸元から一通の手紙を取り出した。
鴉「それじゃ読むぞ。『皆さま、お元気でしょうか? お陰様でこの世界の龍脈もほぼ手中に収める事が出来ました。寂しいとは思うのですが、そろそろこの世界の終焉も近付きつつあります。次に月が真円を描く時こそが、この世界の終焉です。せいぜい足掻いてみて下さい。司馬仲達』…だってよ」
雪蓮「随分とふざけた手紙ね」
愛紗「我らをバカにするつもりか!?」
鴉「おいおい、俺に怒るなよ。これ書いたのは仲達だぞ」
藍里「月が真円を描く時……満月の日」
雛里「あわわ。次の満月といったら…」
穏「次の満月は確か…二十日後ですね〜」
桃香「そ、それじゃあ、あと二十日で世界が終わっちゃうって事ですか!?」
鴉「まあ、そういう事になるな」
華琳「仲達は今どこにいるの? 答えなさい!」
赤斗「泰山だな」
鴉「正解。そうか氷雨が喋ったんだな」
赤斗「まあね」
火蓮「ちょっと待て。氷雨は水関で恋に斬られて死んだんだぞ」
赤斗「……そのように聞いていたんですけどね」
星「確かにあやつは恋に討たれたはず。私も桃香様たちも目の前で見ていたのだ。それは間違いない」
鴉「別に驚くこともないさ。今の仲達なら死人を蘇らせるのもわけないさ。限定的だがな」
一同「………………」
赤斗「おい鴉。さっき言ったよな? 司馬懿が何を企んでいるのか教えるって」
鴉「ああ、言ったぞ。やっぱり知りたいか?」
赤斗「当然だな。司馬懿は龍脈の力を奪って何をする気なんだ?」
鴉「ふーーん♪ どうしようかな〜。やっぱり教えるの止め様かな〜」
冥琳「もったいぶらずに早く話したらどうなんだ?」
鴉「おお。愛しの美周郎♪」
わざとらしく鴉は冥琳の方に振り向く。
鴉「しょうがない。教えてやるか。……仲達の目的、それは自分が“神”そのものになる事さ」
つづく
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未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、ご容赦ください。 | ||
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