「スキャンモード作動。画像に映っている人物を特定してみるわね」

その直後、イシスの眼から瞳を模した映像が消えたかと思うと、ホログラム・アイ全体が緑色に発光する。

光は点滅を繰り返し、画像の情報を次々に読み取っていく。

読み取られた情報はイシスのサブコンピュータに送られ、ここで分析が行われるのだ。

そして、イシスに記録されていたデータベースと画像の男たちとの特徴が一致し、ある二人の人物が浮かび上がった。

「人物特定完了。ホログラム・アイをプロジェクタモードに切り替えます。ミランシャさん、部屋を暗くしてちょうだい」

「え、ええ」

すると今度はイシスのホログラム・アイが青白く光り、空中に映像を映し出した。

「…ロバート・ウィルキンソン、アライグマ形ファンガー。およびグレン・ストックトン、トリケラトプス形レプター。ともに生物学者。臨床医学研究者…」

と、淡々とした口調でプロフィールを読み上げているイシスに、ミライが声を上げる。

「あっ！この人たち、今朝のニュースに出てましたよね！！」

イシスは、映像を投影している都合で振り向くことはできなかったが、それでもなおイシスの質問に答える。

「ええ。先日からこの二人は行方がわからなくなっているはずよ。でも先ほどの画像には彼らの姿があった…不自然だと思わない？」

「確かに、辻褄が合いませんよね…」

「イシスさん」

「なぁに、ソウ君」

考え込む二人に、ソウがふいに質問を投げかける。

「…本人たちが何者かに誘拐され、そいつらがロバートさんたちに成りすまして犯行に及んだ…とは考えられないでしょうか」

「ええ。その可能性も強いでしょうね。ミンスターさんやクオン隊長、ミウさんたちもその線が強いのではと思って捜査しているとの事よ…ミランシャさん、もう電気つけていただいて大丈夫よ」

そこまで言い切るとイシスはホログラム・アイを通常モードに切り替える。

空中に投影されていた映像と同時に両眼をまぶしく覆い尽くしていた青白い光が消え、真っ白になった眼に再び、マリンブルーの『瞳』が映し出された。

「…とにかくいずれにしても、確たる証拠がない限り動くことはできない。でも安心して。我々プラネットポリスもあらゆる可能性を探っています。必ず解決してみせますよ」

「わかったわ。引き続き捜査をお願いするわね」

ミランシャとイシスは、ともに敬礼した。