真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第三十七話
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「ううっ…もう嫌や、何故ワイがこんな扱いなん?」

 

「どうしたんです、及川の兄貴?何かあったんですかい?」

 

 此処は洛陽でも中心街から少し離れた所にある所謂『場末の酒場』という所である。

 

 場末とはいえ、主人の料理の腕前とこだわりの酒の種類の多さと安さで常に繁盛し

 

 ている為、及川と文聘は情報収集(噂話の収集)の為に結構此処を訪れるのだが、

 

 この日の及川の様子は少し違っていた。彼はあまり酒は飲まない(未成年だという

 

 思いもあるようだが)のだが、この日に限ってかなりの量を飲み、その勢いもある

 

 のか、ずっと冒頭の言葉を言っていたのである。そんな何時もの様子と違う及川に

 

 文聘も少々心配になっていたのである。

 

「もしかしてまた地和ちゃんと喧嘩したとかですか?」

 

「ふん、誰があんな、ま○板娘と喧嘩なんかするかいな」

 

「だって何時も…『あれは話し合いや!』…はぁ、そうですか。なら一体何があった

 

 んです?俺にも言えないような事ですか?」

 

「…今日な、孫策はんが陛下に挨拶に来とったやろ?」

 

「はぁ、確か孫策様は陛下から正式に揚州の州牧に任じられて袁術様から独立を果た

 

 したんですよね?今日のはそれのお礼って聞いてますけど、それが何か?」

 

「ワイはその時、たまたま城におってそれを見たんやけど、孫策はんの連れの中にな、

 

 それはそれは立派なお尻の娘がおって、ついついそれに眼がいってもうてたら、い

 

 きなり甘寧はんに『お前如きがジロジロ見るな』ってマジに殺されそうになったん

 

 や。なあ、男やったらそないな立派なお尻はどうしても見てまうよな?」

 

 

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「はぁ、その方のがどれだけ立派な尻だったかは分かりませんが、それは男の性って

 

 もんじゃないですかねぇ?」

 

「そうやろ!それをワイがどれだけ説明しても甘寧はんは全然分かってくれへんねん!

 

 しかもそれだけやない!ワイにはそないな対応なのに、かずピーの前では借りてき

 

 た猫みたいにおとなしゅうなってしもうて…絶対かずピーだってあの娘の尻を見と

 

 ったはずなのに!何故こうもあからさまに対応が違うんや!かずピーとワイの何が

 

 違ういうねん!!」

 

 さすがに将軍職にある人に斬りかかったら外交問題に発展しかねないからではない

 

 かと文聘は思ったのだが、今の及川の剣幕の前ではそれを言い出す事も出来ずただ

 

 苦笑いを浮かべていただけであった。

 

「話は聞かせてもらったぞ、及川君!」

 

「おわっ!?誰かと思うたら、李厳はんやないですか。どうしたんです?」

 

「いやね、オジサンはこういう所で飲む方が気が楽だからさ、たまに来るんだよね。

 

 そうしたら及川君の嘆きが聞こえて来たから、是非此処は力になってあげようでは

 

 ないかと思った次第さ」

 

 そこに突然現れた李厳がハイテンションでそうまくし立てる。どうやら彼もかなり

 

 できあがった状態のようだ。

 

「だから及川君、すぐに行こうではないか!文聘君も是非!」

 

「行くって何処にです?」

 

「行けば分かるさ!!」

 

 

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「…って、此処って色街ですがな!?」

 

「そうだよ、此処なら幾らお尻を眺めても触っても自由さ!!」

 

「李厳様、それは払う物を払った人だけの事では…?」

 

「文聘君、それだけの事をするのだから当然の代価だよ、それは!いいかい、女性に

 

 そういう事をしていいのは惚れさせるか代価を払うかだ!ちなみに、今君達は女性

 

 を惚れさせる事は出来るかね?」

 

 李厳の言葉に二人は首を横に振る。

 

「なら後は代価を払うのみさ。タダはダメなんだよ、タダはね」

 

 そしてその勢いのまま三人は一軒の妓館へと入っていったのであった。

 

(一応此処で説明だけをしておくと、命を始め女性陣は全員、女性をモノ扱いしかね

 

 ない色街については廃止するべきと主張していたのだが、一刀がそこに住む女性達

 

 は自分の仕事に誇りを持ってやっているという話をした結果、城外の一区画に全て

 

 移す事で存続する事になったのである。しかしそれまで行われていた人身売買によ

 

 ってほぼ強制的にそこに送られる事については完全廃止となっている。色街にいる

 

 女性・そこで働く者達・色街の仕事を女性に紹介する仕事に従事する者は全て国に

 

 よる登録制となり、もしそれに反する行為や人間がいた場合、例外無く極刑に処せ

 

 られる事となっているのである。さらに一刀の知識により、性交によって発生する

 

 病気についても広められ、衛生環境についても大幅に改善しているのであった。さ

 

 らに言うと、及川の発案でもあるが、女性専用の色街つまり現代でいう所のホ○ト

 

 クラブみたいな所も造られて、そこに集められた美少年を目当てに行く女性達の姿

 

 もあるようである)

 

 

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「がっはっはっはっは!ええで、ええで!此処か、此処がええんか?」

 

「いや〜ん、及川様ったらお上手です事♪」

 

 入ってから半刻後、三人の周りにはそれぞれ女性が侍り酒宴となっていたのである

 

 が、既に及川の理性は完全に吹き飛んでいたのであった。

 

 当然、相手の女性もプロなので男を喜ばせる方法については熟知している為、及川

 

 が何かする度に自分も喜んで見せたりしている。

 

「どうだい、及川君。最高だろ?」

 

「はい、さすがは李厳はんですわ!なあ、文聘はん?」

 

 及川は文聘にも賛同を求めようとしたが、既に文聘は相手の女性と床に入ってしま

 

 い此処にはいなかったのであった。

 

「何や、文聘はんも気の早い事やな〜」

 

「さあ、及川様。私達もそ・ろ・そ・ろ…」

 

 及川の相手の女性はそう言いながら及川の脇の下を指で扇情的な仕種でなぞる。

 

「はひっ!?そうやな、そないに言うのなら…李厳はん、お先に」

 

「ああ、楽しんできたまえよ、及川君」

 

 そして及川はそのまま床へ向かうのであった。

 

(かずピー、遂にワイも大人の階段を登るで!!明日からはニュー及川や、生まれ変

 

 わったワイを見て腰抜かすなよ!)

 

 

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「及川の様子がおかしい?」

 

 珍しく朝早くにやってきた人和が(通常の報告は大体夕刻位が多い)開口一番、俺

 

 に告げたのはそれであった。

 

「はい、とはいっても世話役の仕事の方は一通りちゃんとやってはいるのですが…」

 

 仕事はやってるのに様子がおかしい?別に普段からちゃんと仕事はやっているはず

 

 だよな…。

 

「どうおかしいんだ?」

 

「どう…と言うのもなかなか難しいのですが、何かこう…前に比べると仕事に対する

 

 情熱が感じられないというか、事務的という感じがするんです。それに…最近ちぃ

 

 姉さんともほとんど喧嘩しなくなりましたし」

 

 …喧嘩しないのは良い事のような気がするが?俺の顔にそう書いてあるように見え

 

 たのか、人和が言葉を続ける。

 

「何時ものあれは喧嘩とはいえ、あくまでも仕事に関するお互いの情熱のぶつかり合

 

 いのような所がありました。でも最近はちぃ姉さんが何を言っても『それでええん

 

 ちゃうか?』みたいな返事ばかりでして…そのせいか、ちぃ姉さんの機嫌も何だか

 

 良くないんです。及川さんの話をしようとするとますます機嫌が悪くなる一方で…」

 

 おや、意外に地和も及川の事を気にしていたんだな…しかし、及川自身の事もある

 

 が地和の機嫌が悪くなるのもよろしくないな。

 

「分かった。及川の事はこっちでも調べてみる。すまないが地和の方は何とか機嫌を

 

 取っておいてくれ」

 

「…分かりました、よろしくお願いします」

 

 

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「それで俺に聞いて来たんですか?」

 

 翌日、俺は文聘さんを呼び出し昨日の人和の話をする。

 

「ああ、三姉妹と俺を除けば文聘さんが一番及川との接点が多いからね」

 

「はぁ…しかし及川の兄貴の様子が変わる切欠ねぇ…まさか」

 

「何か知ってるのか!?」

 

「いえ、その、何と申せば良いのか…」

 

 文聘さんはそうしどろもどろに話すばかりであった。しかもその視線は何だか女性

 

 陣の方に向けられているような気が…ふむ。

 

「皆、すまないが人払いだ。此処は俺と文聘さんの二人にしてくれ」

 

 俺がそう言うと、皆が部屋から出て行く。

 

「さて、これで少しは話してくれるかな?」

 

「はぁ、実は…」

 

 ・・・・・・・

 

「色街に?」

 

「それが原因かどうかは分かりませんが…様子がおかしくなった頃合いから考えると

 

 もしかしたらそれなんじゃないかと」

 

 つまり及川は色街の女の人の誰かに入れあげて、他の事がおろそかになっていると

 

 いう事か?しかし本当にそうか確証がいるな。

 

「文聘さん、申し訳ないけど少し調べてもらえないかな?本当は個人の自由時間の使

 

 い方については口出しを避けるべき話なのだろうけど…このままで良いのかどうか

 

 判断する必要がある」

 

「分かりました…つきましては、あの…」

 

「少ないかもしれないが、これは軍資金だ。よろしく頼んだよ」

 

 俺はそう言って銭の入った袋を渡すと、文聘さんはそれを押し頂いて部屋を後にし

 

 たのであった。

 

 

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 それから数日後。

 

「やはりそうでした」

 

 文聘さんからもたらされたのは予想通りの情報だった。

 

 つまり、及川が最初に文聘さん・李厳さんと一緒に行った妓館で床を共にした人に

 

 入れあげて、すっかり通い詰めているという話だ。

 

 まあ、及川も仕事時間外に行っている以上、本来ならば注意するべき話では無いの

 

 だが…一度話はしてみるか。

 

 ・・・・・・・

 

「呼んだか、かずピー」

 

「ああ、すまなかったな…って、及川!何だ、そのやつれようは!」

 

「うん?そんなにやつれとるかな?むしろ引き締まった顔になった言われてるけどな」

 

 誰に…って聞くまでもないか。

 

「及川、何だか最近随分遊んでるみたいだな?しかもその費用に少しでも多く回す為

 

 に朝食や昼食をあまり食べてないって聞いてるけど?」

 

「ああ、かずピーの所にも話は行ってたんか。ふふ〜ん、どうや?大人の階段を登っ

 

 たニュー及川の魅力は?」

 

 ニュー及川って…俺の眼にはただのやつれた顔をした男の姿にしか見えないのだが。

 

「及川…別にそういう所に行くなとは言わないけど、ちゃんと仕事と食事はしてから

 

 にしろ。今のままじゃ体を壊すだけだぞ」

 

「おや〜、かずピーは大人になったワイに嫉妬しとるんか?」

 

「及川…今はそういう話をしてるんじゃなくてだな『ともかく、ワイはこれで。今日

 

 も首を長うして待っててくれてるもんでな』…って、おい!及川、話はまだ…ダメ

 

 だ、全然話を聞いてないし」

 

 さて、どうしたものか…。

 

 

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 それから数日後。

 

「及川が倒れた?」

 

「はい、仕事が終わった直後に。ただうわ言で『今日も行かな…ワイが彼女を救うん

 

 や』とかばかり繰り返して…」

 

 輝里からもたらされたのは及川が倒れて華佗の下へ担ぎ込まれたという報告だった。

 

「とりあえずは及川の様子を見に行ってくる」

 

 ・・・・・・・

 

「華佗、どうなんだ及川の容体は?」

 

「ああ、特に病気というわけじゃないから大丈夫だ」

 

「病気じゃない?」

 

「過度の過労…特に精力が著しく減退している上に、あまりまともに食事をしていな

 

 いのが重なったようだな」

 

 食事をしていない?おかしい…及川への給金を考えれば食費が無いなどという事は

 

 無いはずだが。

 

「及川の兄貴が倒れたって本当ですかい!?…って、北郷様!」

 

「文聘さんか、ご覧の通りだよ。華佗の診察じゃ過労と食事の不足という事だけど…」

 

「えっ!?…それじゃ、まさか」

 

「何か知ってるのか?」

 

「え、その、ええっと…何と申したら良いのか」

 

「はっきり言え、これは命令だ。もし今後及川のこれが続くようなら、それは仕事に

 

 支障をきたす事になるからな」

 

「はぁ…実は」

 

 

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「なるほど…そういう事か」

 

 文聘さんからの話を要約すると、つまり及川は妓館で馴染みになった例の女性に収

 

 入のほとんどを貢いでいるという事だった。本当かどうかは知らないが、その女性

 

 は死んだ両親の借金の返済の為に色街に身を投じ、その返済にはまだ多額の金が必

 

 要だからという事らしい。

 

「正直、及川本人が本気で恋愛をしているのであれば特に口出しするつもりも無かっ

 

 たけど…文聘さん、少しその女性の事を調べて欲しい。悪いがこれは命令だ」

 

「了解しました。では早速」

 

 ・・・・・・・

 

「かずピー、何処に連れて行くんや!?ワイはこれから行く所が…」

 

「良いから来い」

 

 数日後、ようやく容体が回復した及川を俺はある場所へ連れて行く。

 

「此処は…料理屋?でも随分寂れてるけど…」

 

「こっちだ」

 

 俺は及川をその店の裏手に連れて行く。

 

「だから一体こんなとこに何が…」

 

「中から聞こえて来る声に聞き覚えは無いか?」

 

 俺にそう言われ中から聞こえて来る声に耳を傾けた及川が、それを聞いた瞬間に固

 

 まる。その内容はというと…。

 

 

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「おほっ、こりゃ今回も随分たんまりと貰って来たじゃないか」

 

「ふふ、あたしの魅力にかかればこの位ちょちょいのちょいだよ」

 

「ははっ、違ぇねぇ。こんな魅力的な体でちょっと優しくされりゃ大概の男はころっ

 

 といっちまうわなぁ」

 

「そんな事言わないでおくれよ…本当は嫌々なんだからさぁ。何が悲しくて、あんな

 

 しょぼい坊やに腰振らなきゃならないのかって思ってるんだから」

 

「でも金は持ってるんだろ?」

 

「ええ、どうやら結構お偉いさんみたいだし、とことん吸い尽くしてやるさね」

 

 話をしていたのは及川が懇意になっていた女性とこの寂れた料理屋の主人である。

 

 その後で聞こえてきたのは、女性の喘ぎ声であった。

 

 ・・・・・・・

 

「だそうだぞ、及川」

 

 俺はそう声をかけるが…及川は呆然と立ち尽くしていただけであった。俺はそれに

 

 構わず続ける。

 

「悪いが少し調べさせてもらった。どうやらあの女は前に幽州でも同じような事をし

 

 てそれがばれてこっちに逃げてきたらしい。男の方はその頃からの…いわばヒモみ

 

 たいなものだな。一応料理屋なんかやってるけど、ご覧の通りの寂れぶりだ」

 

 それを聞いていた及川の肩は後ろからでも分かる位に震えていたが、突然顔をあげ

 

 るとあろう事か料理屋の入り口の方に走って行き、扉を乱暴に開ける。

 

 

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「何だ、てめぇは!?」

 

「えっ…まさか、あんた…」

 

「もしかして、こいつが?」

 

 突然の乱入者が及川であった事を知った二人は衣服の乱れもそのままに凍り付いた

 

 ように動かなくなる。

 

「な、何だっていうのよ!?こっちだって商売だ、あんただって楽しんでたじゃない

 

 のさ!」

 

 女の方は開き直ったようにそうまくし立てるが、及川はじっと彼女を見つめたまま

 

 動かない。そして、懐から出した財布を彼女に向かって投げつける。

 

「何、一体何だって…『それで終いや』…えっ?」

 

「それ持って何処へでも行け。もうあんさんとはこれっきりや。確かにあんさんの言

 

 う通り楽しかったわ。じゃあな」

 

 及川はそう言うと振り返りもせずにその場を立ち去る。

 

 そして残った二人はただ呆然とそれを見送るだけであった。

 

 やれやれ、かっこつけたのは良いけど、顔中が涙でクシャクシャじゃないか。

 

 俺はそう思いながら後を追ったが…あれ、あそこにいるのって、やっぱり後をつけ

 

 てきてたのは彼女だったのか。

 

 

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「何泣いてるのよ、バカマネージャー」

 

「なっ、地和?何でこんな所に?」

 

「た、たまたまよ、た・ま・た・ま!」

 

 後で人和に聞いた話では地和は地和なりに及川の事を調べたらしく、あの女の事を

 

 知らせようとした所で俺が及川を連れだすのを見てこっそり後を追っていたとの事

 

 だったのだが。

 

「な、泣いてなんかいるか、ボケ!これはちょっとそこの池にハマっただけや!」

 

「へぇ、随分器用なハマり方ね…顔だけなんて。いっそその芸を披露すればウケるん

 

 じゃない?」

 

「うっさいわ!そもそもワイに喧嘩でも売りにきたんか!?」

 

「はぁっ!?そんな暇あるわけ無いでしょ、明後日からライブだっていうのに!だか

 

 ら早く戻るわよ」

 

 地和はそう言って及川の腕を掴み走り出す。

 

「お、おい、待てって…」

 

「待てないわよ、今度のライブはあんたが発案したあれを使うんだから!だからさっ

 

 さと戻って準備、準備!」

 

 そのまま二人は走り去っていった。

 

 やれやれ、どうやら俺の出番は無さそうだ。

 

 

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「という事があってね。文聘さんに聞いたらそもそも誘ったのは李厳さんだって聞い

 

 たもので」

 

 次の日、俺は李厳さんを執務室に呼び出し、経緯を説明する。

 

「それは悪い事をしてしまったようだね。俺はただ息抜きになればと思ってね…一応

 

 ああいうのには深入りするなとは言ったんだけど。程々に相手するのが一番だとね」

 

「李厳さん…あなただってその境地に至るまで失敗とかあったんじゃないんですか?」

 

「そう言われると返す言葉も無いな」

 

「だったら分かってたでしょうに…」

 

「俺は思うに、男は一回位ああいう失敗をした方が成長するものなのだよ。きっとこ

 

 の経験は及川君の今後に良い影響を及ぼすと思うよ。どうだい、北郷様も一回?」

 

 懲りない人だな、この人も…。

 

「お断りします」

 

「君だって女遊びの一つや二つした方が…『一体、一刀に何をさせるというのです?』

 

 …ひっ!?」

 

 気が付くと、李厳さんの首筋に剣が当てられていた。その主は夢だった。

 

「李厳殿、もう一度聞きます。あなたは一刀を何に誘っているのですか?」

 

 夢は笑顔でそう聞いていたが、その背中にまるで毘沙○天か不○明王でも見えるか

 

 の如くの闘気を発していたりする。

 

「いえ、その…」

 

「それとも何も誘って無かったという事でよろしいのですか?」

 

「う、うん、そう、そうなんだ。何も誘って無かったんだよ。そうだ、急ぎの用事を

 

 思い出したから俺はこれで!」

 

 李厳さんは脱兎の勢いで部屋を後にしていた。

 

 

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「まったく…よりにもよって一刀に…そもそもそういう事を一刀がするのなら別にそ

 

 んな所に行かなくたって私が…」

 

「何をブツブツ言ってるんだ?」

 

「な、何でも無いわ、何でも、ね!」

 

 そう?まあ、本人が何も無いってなら別に…。

 

「ところで夢は何しに来たんだ?」

 

「一刀…忘れたとは言わせないわよ?」

 

「えっ?…ああ、そういえば、午後から買い物に付き合うって約束…だったよね?」

 

「何故疑問系なのかが引っかかるけど…その通りです!だから行くわよ」

 

 夢はそう言うなり俺の腕に自分の腕を絡めてそのまま俺を引っ張る。

 

「そんなに引っ張らなくても大丈夫だから…おお〜い、夢ってばぁ!」

 

 ・・・・・・・

 

「やれやれ、どうやら北郷様に女遊びは必要無いようだな。そもそも彼を誘ったら俺

 

 の命の保証が無さそうだし」

 

 李厳はそう呟きながら肩をすくめていたのであった。

 

                                    続く。 

 

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 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は及川の童貞からの卒業、そして受難の巻でした。

   

 彼のこれからに幸あらん事を…という所です。

 

 あと、地和とはフラグかどうかは…未定という事で。

 

 次回は拠点第二回…実は話はこのまま続きます。

 

 そう、夢とのデートをお送りします!果たしてデート

 

 だけで終わるのかどうか…お楽しみに。

 

 

 それでは次回、第三十八話でお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 及川と懇意になっていたあの女性はしばらくして

 

    洛陽からいなくなったとの噂がちらほらと…。

 

 

 

 

 

説明

 お待たせしました!

 それでは拠点第三部の第一回目です。

 今回の登場人物は及川・文聘・李厳と

 男キャラが多いですので。しかし決し

 て八百一的な展開ではありませんが。

 それではご覧ください。
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コメント
七詩名様、ありがとうございます。そうですか…私はどちらかというと○S美○の○島の声で再生されます。あれ?同じ人だったっけ?(mokiti1976-2010)
及川の声がどうしても某フカヒレで再生されますねw(七詩名)
D8様、再びありがとうございます。確かに原作で一刀も各ルートでかなり理不尽な目にあってたりしますしね…さらに少々男キャラが女性に優しくし過ぎたのが重なったのかもですね。(mokiti1976-2010)
追加。男キャラが女性に対して優しすぎというのもあるかもですな。そしてつけあがる。以降無限ループと。(D8)
実際原作から恋姫は本気で女尊男卑。戦国時代+王が女であるなら当然なのかも。今回の思春でアウトなら多分全ての国での重鎮が幾人か追放ものに。そういうものだと割り切るのが一番かと。(D8)
タケル様、再びありがとうございます。確かに及川の扱いについては少々行き過ぎた部分があったかもしれません。女に…特に原作キャラに甘くしてしまったのは私の考えの甘さかもしれません。(mokiti1976-2010)
Jack Tlam様、三度ありがとうございます。確かに思春の行動についてはかなり問題になるでしょうね…でも実は及川もそれを訴えてないという話も。作中では酒の勢いで言っていただけです。今後はちゃんとその辺も考えていきますので。(mokiti1976-2010)
(続き)そして…確かに結果的に女性に甘い世界になってしまってはいますね…今後は少し考えなければなりませんね。(mokiti1976-2010)
naku様、再びありがとうございます。確かに表向きはそれほどではありません。別に一刀との引き立てで貶めているつもりも無いのですが…結果ひどい事になってますね。(mokiti1976-2010)
陸奥守様、ありがとうございます。及川は一刀の部下という形です。思春と同じ陪臣同士という事になります。それを差し引いても…罰せられるべき部分はあるのですが、それについては今後は考えておきます。(mokiti1976-2010)
失礼な事どころか本気で殺されそうになったって及川言ってましたしねぇ。及川のこの扱いは「酷い扱いをしてこその及川」みたいに思ってる人も少なからずいるのも関係あると思います。女に甘い世界に関しては原作がエロゲーだという時点でそういうものだと諦めるしかないのかもしれません。(タケル)
情報に携わる人間は得てして地位が低いものですが、実質的な位はかなり高くてもおかしくはありません。表立っての功績はないにせよ、裏での功績はかなりのものですから、それに見合った発言力や地位があって当然です。思春に礼を期待する方が無理かもしれませんけど、これはあまりに礼を失しているのでは。(Jack Tlam)
朝廷のそれなりに重要な仕事をしている及川にお前ごときって失礼な事言った思春は罰せられるべきと思うんだけどね。ここって直臣と陪臣の差はどうなっているのかな。(陸奥守)
神木ヒカリ様、再びありがとうございます。まあ、同族相憐れむという意味では確かに。そして…空様をチェンジするなんて確かに無理でしょうね。「いいえ」を選択したら『はぁ〜?良く聞こえなかったな』とか言われて延々とループしそうですね。(mokiti1976-2010)
いや〜、不憫な人同士気が合いそうです。 空様をチェンジですか?「はい」を選択すると「いいえ」を選択するまで無限ループです。(神木ヒカリ)
yoshiyuki様、ありがとうございます。まあ、一刀は既にお偉い様になってしまいましたし。魏のそのお二人は…どうしましょうかね?そして…あの方の出番はとりあえずありませんので。(mokiti1976-2010)
禁玉⇒金球様、ありがとうございます。確かに悪意満載になってしまいましたね…しかも一刀と及川の扱いの差もひどすぎでしたし。あと、あの女は色々な圧力がかかり洛陽を出て行ってしまったという話だったり…。(mokiti1976-2010)
summon様、ありがとうございます。彼も色々な意味で大人の階段を上ったという事でしょうか。夢とのデートの行方もお楽しみに。(mokiti1976-2010)
きまお様、ありがとうございます。いえいえ、きっと何時か彼にも幸せが来る日があるかと…多分(エ。(mokiti1976-2010)
神木ヒカリ様、ありがとうございます。普通に空様いそうだから怖いですね…間違いなくチェンジは出来ないでしょうし。及川と白蓮…意外な組み合わせですね。(mokiti1976-2010)
思春の矛先が、一刀に行かず及川に行きました。春蘭と桂花はどちらに向くのか。 色街の話題が出たのは、アノ踊り子ご降臨のフラグなのか?(yoshiyuki)
及川君の不憫な日々なんて風に見えないキツイ話でした、女も野放しは拙いのではと。不快感と不信感抱いて仕事すんのは大変だよね及川君。(禁玉⇒金球)
賊上りがよくぞ言った甘寧さん、今回は甘寧、李厳、一刀、命、女、から醸された人間の持つ悪意と上から目線が満載でしたね。男女間の縺れに非介入という所でしょうがもし一刀が被害者または男が騙せば御上が動く、では及川なら気にも留めない、一刀と及川の扱いの格差が目立つ依怙贔屓ブラック企業の表裏にも似た悍ましさが生んだ事変にみえた。(禁玉⇒金球)
真相を知ってもぐっとこらえた及川さんは、一歩成長できたということですかね。次回の夢とのデート、楽しみにしていますね!(summon)
アホに幸せ?以前にも書いた気がしますが、あのアホは種馬さんが花畑(なんの?)の中にいるのをハンカチを噛み締めつつ「きーーーーっ!」と悔しがっているのがお似合いさ!(え(きまお)
一刀がそういう店に行ったら、なぜか空様が居る。 なんて冗談はおいて、及川には白蓮さんとかが合いそう。(神木ヒカリ)
カズマ様、ありがとうございます。及川にも今後幸せが来るようには考えていますので…うまくいくか自信はありませんが。(mokiti1976-2010)
観珪様、ありがとうございます。今後彼女が手を握り続けるのか、新たな女性が手を握るのか…及川の今後にもご注目ください。(mokiti1976-2010)
白黒様、ありがとうございます。何時の世もそういう男がいるのは変わりないという事ですね。そして、命達はやはりそこまでの事を理解しきれていない部分があるので、簡単に廃止と言えるのかもしれません。(mokiti1976-2010)
M.N.F様、ありがとうございます。確かにそっちの方に向かいつつありますが…果たして?(mokiti1976-2010)
タケル様、ありがとうございます。ご不快に思われた事については申し訳ないですが、今後彼にも良い事があるようには考えていますので、ご容赦の程を。(mokiti1976-2010)
さすらいのハリマエ様、ありがとうございます。まあ、そんな感じの物位いいんじゃないかという話ですね。そして…二人はもう本気出していくのではないかと。(mokiti1976-2010)
たっつー様、ありがとうございます。まあ、その可能性は大きいですね。そして二度と一刀の前でそっち方面の話は出来なくなるという…おお、怖い。(mokiti1976-2010)
naku様、ありがとうございます。たまには及川も愚痴位言わないとやってられないのは確かですね。それと…確かに女性ばかりでは書けない事を今回は混ぜてみました。ある意味変態紳士的な李厳さんの活躍はまだまだ続く!?(mokiti1976-2010)
殴って退場様、ありがとうございます。及川に幸あらん事を祈っておいてください。そして…夢だけでなく、皆が権力を以て無き物にする事は間違いないですね。(mokiti1976-2010)
D8様、ありがとうございます。及川が今後どうなっていくのかはお楽しみにという事で。それと…一刀がそういう所に行った事がばれたらそれこそ強権発動で廃止に追い込まれかねませんので無いですね。(mokiti1976-2010)
いた様、ありがとうございます。私は怖い系の話はあまり好きではないですもので…ある意味今回の話も怖い系ですけどね。(mokiti1976-2010)
カノン様、ありがとうございます。その立派なお尻の方の出番はまたその内にという事で。何せ今まで矢面に立ってなかったですし。それと及川は…多分きっと良い事あるさ(適当)。(mokiti1976-2010)
Jack Tlam様、再びありがとうございます。確かに今作は前作以上に一刀の周りの女性陣が恐ろしい状況に…果たして、勇気ある新たな女性は加わるのか?(mokiti1976-2010)
nao様、ありがとうございます。彼の今後に幸あらん事をお祈り下さいませ。(mokiti1976-2010)
一丸様、ありがとうございます。まあ、確かに彼は報われないキャラですしね…果たして今後どうなっていくのか、それは私にも分からない(エ。(mokiti1976-2010)
ジン様、ありがとうございます。果たして夢と一線を越えるのか…それは次回をお楽しみに。そして、地和と及川の仲の発展についてはまだ未定ですので。(mokiti1976-2010)
>D8 さん オリ主物全否定ですね・・・。まぁそれはともかく及川可哀想すぎる。地和いい女だなぁ。個人的には及川は幸せになってほしいです。(カズマ )
ちぃちゃんマジいい女! 及川少年は彼女の手を離したら、女縁なくなるんじゃなかろうか……(神余 雛)
哀れ及川・・・いつの時代も女で身を崩す男はいなくならんわけですな。色町も誇り以前に雇用とかの現実的な問題で廃止は難しい気もしますがどうなんでしょ?(白黒)
流れは既に『及川×地和』()(M.N.F.)
及川の扱いが酷すぎるような気がします。出てくるたびにこんな扱いだといっそ登場させない方がいいんじゃないかって思ってしまいます。(タケル)
キャバクラとかホストとかそういうのあったよね、あともうそろそろ双子の皇帝様は積極的になったほうがよくね?(黄昏☆ハリマエ)
及川頑張れ、きっといい事があるさw。あと一刀がそんな店に行ったら、夢が権限を使って翌日にはその店を潰しているだろうなww。(殴って退場)
一刀さんがそういうところに行くとなったとたんに多くの阿修羅が爆誕するでしょうな。そしてヒロインの猛アタックが始まってすぐさまハーレムが完成すると。(D8)
及川と地和とのフラグ?当然のごとく却下です。彼は徹底的に報われないことで輝くのです!!恋姫のヒロインは皆一刀とくっつくことで初めて魅力が出ると思っているので。最低でも一丸さんの意見でお願いします!!(D8)
てっきり『牡丹灯籠』等の怪談物を想像していました。 そうですか、美人局に近い物でしたか。 次回もお待ちしております!(いた)
ふと気になったんですが及川の言う『立派なお尻の娘』さんの出番は、いつになるんでしょうか?呉ルートじゃないからおかしくは無いですが独立した段階でもロクに出て来ないんですが......甘寧、周泰も登場してるのに『彼女』は今回も台詞どころか名前すら出て来ませんでしたが?及川は少しぐらいは報われても良い気が......(カノン)
…よく考えると、一刀のことになるとス○ンドを出現させそうな娘が多いですよね…前作は朱里だけだったと思いますけど…これでどことも知れぬ外野から女性が一刀に向かって来たら、毘○門天だ、不動○王だ、史実董卓だ(?)が立て続けに出そうで、別の意味で怖いですよ…。(Jack Tlam)
及川が少し可哀想になった;;頑張れ及川!(nao)
あれですよ。及川は女の子とくっついちゃだめなんですよ。くっついたら面白くないんですよwwもし、くっつくならエピローグ的で一般女性とくっついて幸せに暮らすとかが合うんですよ!!ww・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
おお!これは夢が最初に一線を超えるってことなのかな^^是非とも超えてほしいですね^^ そして今回のことで及川と地和との仲が少しだけ発展した感じですかね?あとは地和が及川に対する感情を理解すればめでたくゴールインかな? 次回の更新も楽しみに待っているので頑張ってください応援してます。(ジン)
走る地軸様、ありがとうございます。まあ、彼もこの世界に来て色々お疲れの所を少々付け込まれたという感じでしょうか。(mokiti1976-2010)
Jack Tlam様、ありがとうございます。はい、ありがちな話です。地和は意外と気のつく娘です。果たしてこれから及川に対しどうしていくのか…。そして果たして夢は一番乗りを果たせるのか…次回を待て!(mokiti1976-2010)
及川ェというか、春恋の及川から考えるにこの展開に違和感があるような無いような(走る地軸)
ほう…その発想は無かったぜ。しかしまあ、ありがちかな…。地和は良くも悪くも世間慣れしていますし、根っこの部分ではかなり相手に気を遣ってたりしますよね。我儘を通すにも、相手のことを知らなければならないから、彼女なりに及川を気に掛けるというのはわかる話です。そして夢、いいぞそのまま一番乗りを果たせ!(Jack Tlam)
kazo様、ありがとうございます。李厳さんが読破していたかどうかは知りませんが…私はブック○フでの単行本の立ち読みで(オイ。(mokiti1976-2010)
李厳様・・・あなた「海王記」を全巻読破してますね!おれにはわかる!「惚れさせるか〜」のくだりで!(kazo)
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真・恋姫†無双    及川 

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