とある小さな教会の中

一刀「あぁ〜クソッ・・・・血が止まらない」

愚兄（ぐけい）を騙し殺しやがった堕天使に一矢報いようとしたらこの様だよ

目の前で刺されて血の海に沈んだ駄兄を助けようとしたら部下と思われるオッサン一人と女二人、そして駄兄を殺した堕天使に嬲り殺されている最中だ

幾ら数多の外史を旅して来た俺でも完全に丸腰の状態で堕天使四体を相手取るのは無茶だったのかね〜？

０７ＧＨＯＳＴをモデルに作った白い衣装はズタボロにされて切り口から紅く染まっている

改造した十字架の様な法具。『バクルス』もあの堕天使の腕を全力で吹き飛ばした時に柄の真ん中から真っ二つに折れちまった。やっぱり初心者練習用の甘い作りだったからな〜、俺の『ザイフォン』が許容量を超えてポッキリ逝った。せめて俺の専用かプロ用のバクルスを持って来ればよかった

さっきまで使えたザイフォンも今の俺の状態じゃぁ殆ど出やしねぇ

満身創痍のこの体じゃぁ人ならざるコイツ等に傷一つ付けられない・・・・か

堕天使「人間の分際でこの私の腕を吹き飛ばすなんて・・・・・万死に値する！！」バッ！

目の前で駄兄を殺した堕天使が何か叫んでいるが聞こえない。視界も少しずつ周りから暗くなって見え辛い

だが魔力感知で俺に死角は無い。俺を中心に十字を描く配置で堕天使四人が何か術の準備をしている

こりゃ詰んだな

０７ＧＨＯＳＴでは。人は産まれる前、天界の長の御許で己が人生を掛けた三つの願いを答え。その願いを叶えたものは再び長の御許に招かれ、新たに人へ生まれかわれると伝えられるが・・・・・この世界に長は存在しないし俺は三つの願いを一つも叶えられていない

俺がこの外史に来る前、このバクルスとザイフォンを長に教えを乞い。賜った時三つの願いを言った

家族（おふくろ、おやじ、愚兄）を護る

友達（親友を戦友）を護る

大好きな人を護りたい

どれ一つ叶わなかった。申し訳ありません長、異世界の神である貴方様に手ほどきされ。ザイフォンを・・・・・バクルスを賜ったにも関わらず。このような無様な姿をさらしてしまいました

誓を・・・願いを何一つ護れませんでした

堕天使「貴方の持つさっきの帯状に現れた文字の力にその変な形をした十字架。貴男が私達に下り、アザゼル様の研究の為にその身を捧げると言うなら生かしてあげるわ。如何かしら坊や？」

準備が整ったようだ、四方から研ぎ澄まされた魔力を感じる、愚兄に刺した槍と同じ物だろう。本気（マジ）で逆らえば確実に俺を殺す気だな

そしてコレがおそらく最後通告だろう、愚兄を騙し殺した堕天使どもに身を捧げるかこの場で消滅するか二つに一つ

俺は折れてしまったバクルスを杖代わりに膝をついて頭（こうべ）を垂れている状態から起き上がり

愚兄を殺した堕天使に言い放つ

一刀「寝言は寝て吐けクソ天使」

俺は目の前で槍を掲げる堕天使を真っ直ぐに睨み付けて罵倒する

俺の言葉をＮＯと受け取った四人の堕天使は槍に魔力を籠める

堕天使「そう・・・・なら死になさい」

堕天使が持つ槍が俺を目掛けて投擲される

正面の槍が胸の中心を貫き

後の槍は後頭部から腰まである三つ編みを根元から切り落とし。喉仏の少し下の位置から飛び出し

右の槍が両足の太腿（ふともも）を串刺し

左から来た槍は肺と心臓を纏めて穿った

刺されたヶ所から大量の命が溢れ倒れまいと地についた膝から血の水たまりが拡がって行く

こりゃ完璧に即死だ

あと一分もしない内に俺の心臓は止まるだろう

もう目も見えなくなって来た。この感覚も久しいな

・・・・・せめて最後にあの娘に会いたかった

・・・・・あの娘に看取られて逝きたかった

・・・・・あの娘を護りたかった

一刀「さようなら・・・・・セラ・・・・・大好きだよ」ピチャン・・・・・・・・・・

もう目は見えないが。大好きなあの娘のまぶしい笑顔は今でも見える

ごめんね？もうあの日の約束を守れそうに無いや

そして俺はこの日・・・死んだ

・・・始まる