管理者からの御遣い 魏√ 6 |
春蘭「押せ!押せい!押し切れぇい!」
季衣「春蘭さま!敵、撤退していきます!」
春蘭「なに、もうか!?」
季衣「はぁ・・・・見ての通りです」
春蘭「ちっ」
季衣「追撃はどうしましょう?」
春蘭「そうだな、必要とも思えんが・・・・・・まあいい。隊列を揃えた後、一応出しておけ」
季衣「はい!」
春蘭「相手はだたの町人。殺さず、追い払うだけにせよ」
季衣「はい」
春蘭「やれやれ・・・・我々は、蜘蛛の子を散らすために訓練をしている訳ではないのだぞ・・・・」
秋蘭「姉者、こちらも片付いたぞ」
一刀「季衣、お疲れ様」
季衣「兄ちゃん」
春蘭「おお、秋蘭。どうだった?」
秋蘭「桂花の言うとおりだ。これを・・・・・」
春蘭「やはり黄色い布か・・・・・。こちらもだ」
季衣「何なんですかね、これ?兄ちゃんは分かる?」
一刀「・・・・いや、分からん」
春蘭「ふむ・・・・」
季衣「むー・・・・・」
春蘭「うーん・・・・・」
季衣「うぅー・・・・・」
一刀「二人とも・・・・・分からんなら、考えるな」
春蘭「・・・・・そ、そうか。・・・・まぁ、それは桂花や華琳様に任せるとするか」
季衣「はーい!」
春蘭「追撃部隊が戻ったら撤退するぞ!帰ったらすぐ、華琳様に報告だ!」
秋蘭「判った。なら此方の隊も撤収を始めておこう」
春蘭「・・・・・というわけです」
華琳「そう・・・・・やはり、黄色い布が」
その日の朝議も、暴徒達の鎮圧から戻った一刀たちの報告から始まる。
秋蘭「こちらも暴徒達も同じ布を持っておりました」
此処最近になって増えていく、黄色い布を付けた暴徒達。
彼らは、予兆も無く現れ暴れる。
華琳「桂花。そちらはどうだった?」
桂花「は。面識のある諸侯に連絡を取ってみたものの・・・・何処も陳留と同じく、黄色い布を身に付けた暴徒の対応に手を焼いているようです」
華琳「ここと・・・・・ここ、それからこちらのです」
桂花は広げられた地図の上に丸石を置いていく。
桂花「それと、一団の首領の名は張角というらしいですが・・・・・正体は不明だそうです」
華琳「正体不明?」
桂花「捕らえた賊を尋問しても、誰一人とて口を割らなかったとか・・・・・」
春蘭「・・・・・ふむ。剣を振り上げれば逃げ回るくせに、そこだけは口を割らぬのか。」
一刀「それは、春蘭の気迫にやられれば誰だって逃げる。・・・・・それにしても、厄介だな。黄巾党は」
秋蘭「知っているのか?一刀」
一刀「知らんよ。そう呼んでいるだけだ」
華琳「そう・・・・。黄巾党という名は貰っておきましょう。それで皆、他に新しい情報は無いの?」
秋蘭「はい。これ以上は何も・・・・・」
春蘭「こちらも何も・・・・」
華琳「ならば、まずは情報収集ね。その張角という人物の正体も確かめないと・・・・・・」
そんな中、慌てて入ってきた一人の兵士。
一刀「どうした」
兵士「はっ!南西の村にて、新たな暴徒が発生したと報告がありました。また黄色い布をつけている模様!」
そう、言い終わったときには、桂花を含めた皆の表情が真剣なものに変わった。
華琳「休む暇もないわね。・・・・・さて、情報源が早速現れたわけだけれど。今度は誰が言ってくれるのかしら?」
季衣「はいっ!ボクが行きます!」
華琳「季衣・・・・ね」
手を上げた季衣に、華琳はそれ以上言葉をかけることなく見つめていた。
春蘭「・・・・・季衣。お前は最近、働き過ぎだぞ。ここしばらくは休んではいないだろう」
季衣「だって春蘭さま!せっかくボクの村みたい困っている村を、たくさん助けられるようになったんですよ・・・・・!」
春蘭「華琳様・・・・・。この件は、私が」
季衣「どうしてですか、春蘭さまっ!ボク、全然疲れ・・・・・・っ」
季衣の言葉は、それ以上続くことは無かった。
秋蘭「一刀!?」
春蘭「一刀!貴様っ!」
一刀「季衣自身の為だ・・・・・。本人は気が付いていないが、かなり疲れが溜まっている。こうでもしなきゃ、討伐にでも行こうとしただろう」
華琳「ありがとう、一刀」
一刀「季衣は、部屋に連れて行く」
一刀は、季衣を肩に担ぎ玉座を後にする。
桂花「桂花、編成を決めなさい」
桂花「御意。・・・・・では、秋蘭。今回の件、あなたが言って頂戴」
春蘭「なにっ!この流れだと、どう考えても私だろう!どうして秋蘭が出てくる!」
桂花「今回の出動は、戦闘よりも情報収集が大切よ。あなたに出来るの?」
春蘭「ぐっ・・・・・・」
華琳「決まりね。秋蘭。くれぐれも情報収集は入念にしなさい」
秋蘭「は。ではすぐに兵を集め、出立致します」
季衣「・・・・・・」
一刀「目が覚めたか・・・・・」
季衣「兄ちゃん・・・・」
一刀は、城壁の上で秋蘭たちを見送るため、城壁の上に上がっていた。
季衣は静かに、一刀の隣に腰を下ろす。
一刀「どうかしたか」
季衣「ボク、全然疲れてなんかいないのに・・・・・」
一刀「目に見えない疲れもあるのだぞ」
季衣「目に見えない疲れ?」
一刀「まぁ、判らんならいい。今は、正体を突き止めるに専念だな。武を振るっても張角の正体は見つけられない」
季衣「兄ちゃん・・・・・」
一刀「休めるときは休んでおけ。うちには季衣以外にも武官がいる、自分だけが背負っても迷惑だぞ。たまには、上司に頼ることだな」
季衣「うん・・・・・」
城壁の上に飛び乗った季衣は、歌を歌い始める。
一刀「歌か・・・・・誰の歌だ」
季衣「確か・・・・張角」
一刀「なに・・・・華琳に報告だな」
討伐に戻ったのは、その日の晩近くだった。
いつものことなら朝議だったはずだが、今回はすぐに報告会が開かれた。
華琳「・・・・・間違いないのね」
秋蘭「確かに今日行った村でも、三人組みの女の旅芸人が立ち寄ったという情報がありました。恐らくは、季衣の見た者と同一人物でしょう」
季衣「はい。ボクが見た旅芸人さんも、三人組でした」
桂花「季衣の報告を受けて、黄巾の蜂起があった陳留周辺のいくつかの村にも兵を向かわせたところ・・・・・・大半の村で目撃例がありました」
華琳「その旅芸人の張角という娘が、黄巾党の首領で間違いないようね」
一刀「これで、決定だな」
華琳「正体が分かっただけでも前進ではあるけど・・・・・。可能なら、張角の目的が知れたいわね」
一刀「目的か・・・・歌い手と言うくらいなんだから、大陸一でも目指しているんじゃないか」
桂花「何?それ」
一刀「何って、大陸の形は様々ということだ」
華琳「確かそうね・・・・・夕方、都から軍令が届いたわ。早急に黄巾の賊徒を平定せよ、とね」
一刀「遅いな」
華琳「えぇ」
そう、幾らなんでも遅すぎ。これだけの大騒ぎになった後に出す命令ではなかった。
一刀「都も潮時だな」
華琳「よく分かっているようね。まぁ、大規模な戦力を動かせるわけだけれど」
華琳の言うように小規模は動かせたものの、大規模までは行かなかった。
春蘭「華琳様っ!」
華琳「どうしたの」
春蘭「それが・・・・また例の黄巾の連中が現れたと。それも、今までに無い規模だそうです」
華琳「・・・・・そう。一歩遅かったわけね。春蘭、兵の準備は終っているの?」
春蘭「申し訳ありません。最後の物資搬入が、明日の払暁になるそうで・・・・・既に兵には休息を取らせています」
華琳「間が悪かったわね・・・・・。恐らく連中は、いくつかの暴徒が寄り集まっているのでしょう。今までのようには行かないわよ」
一刀「なるほど・・・・・集まろうとする意志か、又は、集めようとする意志が働いているようだな」
秋蘭「一つ二つの集団が集ったのならただの偶然に過ぎんが、それが数十の集団なら話は別」
春蘭「集めた奴・・・・・・指揮官がいる、ということか」
秋蘭「そうだ。仮にいなかったとしても・・・・・それだけの能力を持つ奴は、集団に一人二人はいるものだ。そいつが必ず指揮官に祭り上げられる」
華琳「秋蘭の言うとおり。万全の状態で当たりたくはあるけれど、時間が無いわね」
季衣「華琳さま・・・・」
華琳「・・・・・・」
一刀「・・・・・・」
華琳「・・・・・春蘭。すぐに出せる部隊はある?」
春蘭「はっ。当直の隊と、最終確認をさせている隊はまだ残っているはずですが・・・・・」
華琳「季衣。それらを率いて、先行部隊といてすぐに出発しなさい」
季衣「はい!」
華琳「それから、補佐として秋蘭と一刀をつけるわ」
季衣「え・・・・・?」
華琳「秋蘭にはここ数日無理をさせているから、指揮官は任せたくないの。いいわね?季衣」
季衣「あっ、は、はい・・・・。秋蘭さま、兄ちゃん、よろしくお願いします」
秋蘭「うむ。よろしく頼むぞ、季衣」
一刀「あぁ」
華琳「ただし撤退の判断は秋蘭に任せるから、季衣はそれに必ず従うこと。すぐに本隊も追いつくわ」
秋蘭「御意」
季衣「わかりました」
華琳「桂花は後発部隊の再編成を。明日の朝来る荷物は待っていられないわ。春蘭はすぐに取りに行って、出立できるようにしなさい」
春蘭・桂花「御意!」
華琳「今回の本隊は私が率います。以上解散!」
皆、準備のために慌しく準備を急いでいく。
春蘭「急げ、急げ!急いで先遣隊に合流するぞ!」
華琳「そんなに急がせては、戦う前に疲れてしまうわよ、春蘭」
春蘭「う、うー・・・・・華琳さまぁ、私だけでも先遣隊に合流してもダメですか?」
華琳「ダメよ。目と鼻の先ならまだしも、今の距離でこれ以上、分けても効果は薄いわ」
桂花「華琳様。秋蘭から報告の早馬が届きました」
華琳「報告しなさい」
桂花「敵部隊と接触したそうです。張角らしき人物は確認してないよいですが、予想通り敵は組織化されており、並みの盗賊より手強いだろうとのこと。・・・・・余力を残して接触して欲しいそうよ、春蘭」
春蘭「うぅぅ・・・」
華琳「数の方は?」
桂花「夜間のため、詳細は不明。ただ、先遣隊よりは確実に多いため、攻撃はせずに、防衛に徹するそうです」
華琳「そう。さすが秋蘭、賢明な判断ね」
話の途中で、一騎が華琳に近づく。
兵士「曹操様ー。曹操様ー。」
春蘭「あれ?お前は、先遣隊の」
兵士「はっ!許緒先遣隊、敵軍と接触!戦闘に突入しました!」
華琳「・・・・・状況は!」
兵士「数と勢いに押され、お味方に不利!街に篭もって防御に徹していますが、状況は芳しくありません!至急、援軍を求むとのこと!」
華琳「総員、全速前進!追いつけない者は置いていく!」
春蘭「総員、駆け足!駆け足ぃっ!」
華琳「あなたは殿について、脱落した兵を回収しながら付いて来なさい。以降、本隊と合流するまで、遊撃部隊として指揮を任せます。」
兵士「はっ!」
季衣「秋蘭さまっ!西側の大通り、三つ目の防柵まで破られました!」
秋蘭「・・・・・ふむ、防柵はあと二つか。どのくらい保ちそうだ?李典」
李典「せやなぁ・・・・・。応急で作ったもんやし、あと一刻、持つかどうかって所やないかな?」
一刀「・・・・・・微妙だな。間に合うかどうか瀬戸際っていったところか・・・・・」
楽進「しかし、夏侯淵さまがいなければ、我々だけはここまで耐えることは出来ませんでした」
秋蘭「それは我々も同じ事だ。貴公ら義勇軍がいなければ、連中の数に押されていたところだ」
楽進「いえ、それも夏侯淵さまの指揮があってのこと。いざとなれば、自分が討って出て・・・・・・」
一刀「此処は死地ではない」
楽進「・・・・・・っ!」
一刀「お前、残されたものの気持ち考えたことあるか?」
楽進「・・・・・・え?」
一刀「辛いぞ。いつも隣にいたのに突然居なくなるんだからな」
李典「・・・・・せやせや。突っ込んで犬死にしても、誰も褒めてくれへんよ」
楽進「・・・・・うむむ」
一刀「死に場所を選ぶのは大いに結構だが、この戦いは、まだ死ぬべき場所ではない」
楽進「・・・・・肝に銘じておきます」
干禁「夏侯淵さまぁー!東側の防壁が破られたの。向こうの防壁は、あと一つしかないの!」
李典「・・・・・・あかん。東側の最後の防壁って、材料が足りひんかったからかなり脆いで。すぐに破られてしまう」
秋蘭「仕方ない。西側は防御部隊に任せ、残る全員で東の侵入を押しとどえるしかない」
楽進「先陣は私が切ります。私の火力を集中させれば、相手の出鼻を挫けるはずです!」
一刀「"はず"では駄目だ・・・・・・先陣を切ると言うなら・・・・"やってみせます"と、言え」
楽進「・・・・・はい!」
季衣「秋蘭さま。ボク達も・・・・・」
秋蘭「あぁ。・・・・・・皆、ここが正念場だ。力を尽くし、何とかしても生き残るぞ!」
干禁「わかったの!」
李典「おう!死んでたまるかいな」
楽進「報告です!街の外で大きな砂煙!大部隊の行軍のようです!」
一刀「華琳達が来たのだろうか?」
秋蘭「それとも・・・・・・敵か」
一刀たちは、大きな砂煙を見つめ、旗印を確認する。
楽進「お味方です!旗印は曹と夏侯!曹操様と夏侯惇様です!」
春蘭「鳴らせ鳴らせ!街の中にいる秋蘭たちに、我らの到着を知らせるのだ!」
桂花「敵数の報告入りました!敵数、およそ三千!われら本隊の敵ではありません!」
華琳「部隊の展開は!」
桂花「完了しています!いつでもご命令を!」
華琳「さて、中の秋蘭はちゃんと気付いてくれたかしら・・・・・・?」
春蘭「華琳様!街の中から、矢が放たれました!旗印は夏侯。秋蘭です!」
華琳「さすがね。なら、こちらが率先して動くわよ!秋蘭たちは呼応して動いてくれるでしょう! 」
桂花「後々、敵の本隊と戦わなければなりません。ここは迅速に処理するべきかと」
華琳「判ったわ・・・・・・春蘭!」
春蘭「はっ!苦戦している同胞を助け、寄り集まった烏合の衆を叩き潰すぞ!総員、全力で突撃せよ!」
春蘭「待たせたな、秋蘭」
秋蘭「姉者・・・・」
華琳「遅くなったわね・・・・よく持ち堪えてくれた!一刀も良くやったわね」
一刀「気にするな、それよりも今は目の前の敵だ!」
華琳「えぇ」
黄巾「ちっ・・・・・・あと一歩だってのに」
春蘭「覚悟しろ!我らが来たからにはこれ以上好き勝手はさせん!」
黄巾「怯むな!援軍諸共、叩き潰してやれ!」
華琳達が援軍として来たからというもの、戦力は格段に此方に傾き優勢になっていた。
黄巾「くっ・・・・強すぎる・・・・・増援を出せ!街の部隊も繰り出すんだ!」
一刀「甘いな・・・・ふっ」
黄巾「ぎゃあああぁぁぁぁ」
春蘭「やるな!一刀・・・・・・はぁぁぁぁ!!」
春蘭たちが来たことにより、勢いは増すに増し黄巾党は壊滅していった。
黄巾党を殲滅した後、季衣の助言も加わり大梁義勇軍は、華琳の参加に加わった。
三人は一刀の下に付けられ、以後大梁義勇軍の一部は黄飛隊として動くことになった。
三人は参加に加わると同時に、自分達の真名を預けた。
勿論、一刀もその中に加わっていた。
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