ガールズ&パンツァー 隻眼の戦車長 |
プロローグ
大洗町の山岳地帯・・・・・・
太陽の光が照りつける中、段々になっている岩の上に、三人の人影が居た。
「・・・・・・」
うつ伏せなって両肘を地面に着ける者・・・・・・『如月翔』は手にしている双眼鏡を覗いていた。
距離は離れているが、履帯の軋む音と振動が僅かに伝わってきて、双眼鏡の先には戦車六輌が綺麗な隊列を組んで走行している。
「『マチルダ』四輌に『チャーチル』及び『エクセルシアー』を一輌ずつ確認」
「さすが、綺麗な隊列を組んでいますね」
と、如月の左側に仲間である『秋山優花理』が同じく双眼鏡を覗いている。
「うん。あれだけ速度を合わせて隊列を乱さずに動けるなんて、凄い」
秋山の反対側に居る『西住みほ』も双眼鏡を覗いている。
「あぁ。さすがは強豪校と言われるだけはある」
如月は双眼鏡を下ろして眼帯をしていない右目で西住を見る。
「こちらの徹甲弾だと、正面装甲は抜けませんね」
「マチルダは問題無いだろうが、他二輌は五式では少し厳しい所はある」
「・・・・そこは戦術と腕、かな?」
「はい!」
「うむ」
如月達はすぐさま立ち上がると、西住と秋山は近くに待機している戦車に乗り込み、私はその戦車の近くに待機している深緑色の大型の戦車をよじ登り、砲塔の天板にあるキューポラのハッチを開けて中に入る。
ブロロロロロッ!!!
と、如月が戦車に乗り込むと、近くで西住達の戦車のエンジンが唸る。
「そろそろですね」
「あぁ」
如月は車長席に座ると、首元に咽喉マイクを取り付けて手を当てる。
「『早瀬』。エンジン始動。音は出来るだけ立てずに進め」
「はい!」
右前の操縦席に居る『早瀬(はやせ)昴(すばる)』は右横の機器のイグニッションを入れると、ブロロロロッ!!と大きな音と共に如月達が乗る戦車・・・・・・『五式中戦車チリ』の車内に振動が伝わると、左のレバーを引いてアクセルを踏み、ゆっくりと右側の転輪と履帯が動き出し、その車体を左側の履帯を中心に方向転換する。
近くでは同じく学園の戦車たちが動き出していた。
・・・・とは言うものも、一両を除くとその戦車たちがあまりにも奇抜だった。
一輌は五式と同じ旧日本陸軍の『八九式中戦車甲型』で、車体と砲塔の側面にデカデカと『バレー部復活!』と描かれ、車体の至る箇所にバレーボール絵が施されていた。
次にドイツの『三号突撃砲F型』で、赤と黄色、白の派手なカラーリングに、旗が四本立っている。
次はアメリカの『M3リー』で、カラーリングはド派手なピンク単色だった。
次はドイツの『38t』であり、眩しいほどの金色一色だった。
そして最後にV突と同じドイツで、西住達が乗る『W号戦車D型』である。
これだけ最初に見つけた時のままだ。
「『坂本』。副砲に徹甲弾を装填しろ」
「了解です!」
如月は砲弾ラックより砲弾を取り出すと、砲弾を装弾機と呼ばれるトレーに乗せて砲尾のスイッチを押すと、砲弾は装弾機に動かされて戦車砲に装填される。
車体左側にいる『坂本(さかもと)鈴(りん)』は副砲の尾栓を開けて砲弾を砲弾ラックより取り出して副砲に装填し、尾栓を閉める。
「『鈴野』。砲撃準備だ」
「了解」
私の左側に居る『鈴野(すずの)詩乃(しの)』はいつでも砲撃が出来るようにスコープを覗き、砲身の上げ下げをするハンドルを掴む。
『各チームに通達します!』
Aチームの西住より無線で通信が入る。
『今回の敵は、イギリスの歩兵戦車です!あれは装甲が厚く、100メートル以内に接近しないとこちらの砲撃は効きません!特に38tと八九式はもっと接近しないと通じるか通じないかの瀬戸際です。
ですが向こうは、こちらに比べて足が遅いので、そこを突きます!
作戦通り各チームは丘陵地を登り切る手前で待機!Aチームが囮となり、相手車両をおびき出します!』
『了解〜!頑張ってね、隊長ー』
『こちら一年。わっかりました!』
「副隊長如月、了解」
それぞれ無線で伝わって返事をすると、如月の乗る五式を含め、W号以外は左の道に入る。
「・・・・・・」
如月はキューポラハッチを開けて立ち上がり、上半身を外に出して崖の向こうを走っていくW号を見る。
(西住・・・うまくやれよ)
それからして車内に戻ってハッチを閉め、五式を所定の位置まで移動させるように指示を出す。
説明 | ||
『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。 戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。 |
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