本編補足
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焔花

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C1 忠告

C2 恨み

C3 入城

C4 会見

C5 殿

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C1 忠告

 

ゼムド王国ムライト城。玉座の間。玉座の前に立つゼムド王国王太后のルーインと王のヴィクトリー。傍らには侍女。彼らの前に跪く武人のアリガージュ・イオリンに学者のロンリ、農務官でマインドレイクのサヅキに女医務官でアラウネのイヴァラノ。玉座の方を向き、祈りを捧げるゼムド王国摂政で王太后のルーイン。続くヴィクトリー。

 

ルーイン『ついにこの日がやってきた!』

 

立ち上がるルーイン。

 

ルーイン『我が一族を殺した憎きセレノイアよ!思い知るがいい!!』

 

ルーインは跪く一同の方を向く。続くヴィクトリー。

 

ルーイン『明朝、ラドラック山岳城を取る!』

 

顔を上げ、顔を見合わす一同。

 

ロンリ『ラドラック山岳城を?…正気ですか?』

 

頷き、口角を上げるルーイン。

 

ルーイン『カルデハイフン殿より書状が届いておる。我々に寝返る準備があると。セレノイアはシェプストのオクレパメラを支援する為に、ラドラック山岳城の精鋭達を向かわせている。無論、ラドラック山岳城には現在カルデハイフン殿とその麾下の兵が入城している。』

ロンリ『真ですか!?』

 

頷くルーイン。

 

ルーイン『間違いない。カルデハイフン殿から直接この書簡を頂いたのだからな。』

 

立ち上がるサヅキ

 

サヅキ『王太后様。しかしながら、シェプストのメガンホテプ陣営を実質率いているアーは度胸だけの男と聞きます。セレノイアにとって最も手放したくない最重要拠点ラドラック山岳城の精鋭を援軍にあてるなど…。』

 

眉を顰め、サヅキを見た後、眼をそらすルーイン。

 

ルーイン『カルデハイフン殿が議会でそう仕向けた。無論、オクレパメラへの援助期間が終わるまでだが…。そこで…。』

 

ルーインはヴィクトリーを見た後、アリガージュとロンリの方を向く。

 

ルーイン『アリガージュとロンリよ。我がゼムドの兵100万を与える。ヴィクトリー王と共に今夜、ラドラック山岳城に入城せよ!』

 

頭を下げるアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『はっ!』

 

ルーインを見つめるロンリ。ロンリを見下ろすルーイン。

 

ルーイン『どうしたのだ?ロンリ?』

 

ロンリはルーインの眼を見つめた後、頭を下げる。

 

ロンリ『い、いえ。何でも…。』

 

一歩前に出るサヅキ。

 

サヅキ『お待ちください!王太后様!』

 

眉を顰めてサヅキを見るルーイン。

 

ルーイン『何だ?葉っぱ!』

 

一礼するサヅキ。

 

サヅキ『時期尚早です!』

 

眼を見開くルーイン。

 

ルーイン『何だと!』

 

一歩前に出るサヅキ。

 

サヅキ『恐れながら、ウカツ殿とドエム殿はロメンのポンポコウス帝とガバリヌス帝との交渉の為、不在。ザイドガード殿とココノオ・ヅッカー殿はロズマール帝国への抑え、その他の士官も政務の為出払ってしまっております。我が国は大規模募兵で各地より烏合の衆が集まってきておりますが、周辺諸国の政情不安定の為に訓練が間に合っておりません。せめてウカツ殿かドエム殿が戻るまで、それが叶わぬなら、ザイドガード殿かココノオ・ヅッカー殿のどちらかを呼び戻すべきです!』

 

眼を細めるルーイン。

 

ルーイン『時は急く。ダークエルフや元男娼など呼び戻す時間もウカツやドエムを待つ時間も無い!今、行わなくていつやるのか!』

 

一歩前に出るサヅキ。

 

サヅキ『今…。』

 

サヅキを見下ろすルーイン。

 

サヅキ『すぐご再考ください!それに既に闇部衆は我々と袂を分かち、我が国の諜報能力は低下しております。ここはセレノイアに潜入させているラット、サナからの情報を待つべきです。』

 

サヅキを睨み付けるルーイン。

 

ルーイン『葉っぱ!お前は我々に親身にして下さったカルデハイフン殿を疑うというのか!』

 

ルーインを見つめるサヅキ。

 

サヅキ『いえ、そうではありません!慎重なセレノイア議員達がカルデハイフン殿の案に乗ること事態妙。何やら企んでいるのかもしれません。』

 

ルーインは蟀谷に血管を浮き出させる。

 

ルーイン『黙れ!黙れ!黙れ!貴様はカルデハイフン殿を侮辱するのか!』

 

ルーインは侍女の方を向く。

 

ルーイン『あれを持て!』

 

首を傾げる侍女。

 

侍女『あれ?…ですか。』

ルーイン『そう、あれよあれ。シーン皇国からの花に使うあれ。』

侍女『ああ。』

 

侍女は頷いて走り去っていく。

 

ルーイン『我が国の臣下として雇ってやっているというのに、口から出るのは国政の批判と国家の恩人への侮辱か!これだから亜人獣人は!ああ汚らわしい!』

 

ヴィクトリーを見るルーイン。

 

ルーイン『だいたいお前がこういった者達を雇い入れるからいけないのですよ!ゼムドはれっきとした人間国家!動物園、植物園、花鳥園、水族館、ファンタジー館にした覚えはありません!そもそもこういった者達が主体とするセレノイアに我が血族を奪われたのですよ!もっと王としての自覚を…。』

 

ルーインに駆け寄る侍女。

 

侍女『ええっと。これのことですよね。』

 

ルーインに剣山を渡す。剣山を持ち、掲げるルーイン。

 

ルーイン『これよ。これ。シーン皇国では花を飾るのに使うんでしょ。ちょうどいいわ。』

 

ルーインはサヅキの傍による。手を伸ばすヴィクトリー。

 

ヴィクトリー『お母様?何を??』

サヅキ『王太后様??』

 

ルーインはサヅキの尻に剣山を突き刺す。

 

サヅキ『ひっ!うっ!!』

 

尻を押さえて崩れるサヅキ。

 

ルーイン『おっほほほほほほ!こう使うのよ!』

 

剣山を抜くルーイン。サヅキに駆け寄るヴィクトリー。

 

ヴィクトリー『サ、サヅキ。大丈夫?』

 

サヅキを足蹴にするルーイン。

 

ルーイン『恥知らずな葉っぱにはちょうどいい滑稽な姿。おほほほほほほ。』

 

ルーインは玉座に戻る。サヅキの尻を撫でるヴィクトリー。イヴァラノがサヅキに寄る。玉座に座るルーイン。

 

ルーイン『出立は深夜。今より準備を急げ!』

 

ルーインを見つめる一同。

 

C1 忠告 END

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C2 恨み

 

ムライト城玉座の間。玉座の前に立つヴィクトリーとルーイン。ルーインはヴィクトリーを見下ろす。

 

ルーイン『ヴィクトリー。』

 

ため息をつくルーイン。

 

ルーイン『…お前は何で分かってくれないの。』

ヴィクトリー『お母様…。』

ルーイン『亜人獣人の国家に一族を殺されたのよ。それにもかかわらず、彼らは咎められなかった。なのに、お前は何で…。』

 

崩れて両手で目を覆うルーイン。

 

ルーイン『亜人獣人達と仲良くするの?あんな奴らと!』

 

ルーインの両手から涙がこぼれる。

 

ヴィクトリー『お母様。僕は獣人亜人も手を取り合っていけると思います。きっとセレノイアだって。』

ルーイン『何を言っているの!セレノイアは滅ぼすしかないの!皆殺しにするしかないの!』

 

後ずさるヴィクトリー。ルーインはヴィクトリーを見つめる。

 

ルーイン『ヴィクトリー…お前しかいないの。私にはお前しかいないの!』

 

ルーインを抱きしめるヴィクトリー。

 

 

ムライト城医務室。室名札を見上げた後、医務室に入るヴィクトリー。カーテンに映る尻をつきだすサヅキのシルエット。イヴァラノのシルエットが映り、サヅキの尻に消毒をかけている。

 

ヴィクトリー『僕だ。入るよ。』

サヅキ『痛!ああん!…えっ!へ、陛下!!』

 

カーテンの前に立つヴィクトリー。

 

サヅキ『は、あ…こ、こんなところ陛下に見られるなんて!あぁ…。』

 

ヴィクトリーはサヅキ達の方へ背を向けて医務室のベットの上に座る。

 

ヴィクトリー『サヅキ。ごめんね。』

 

ヴィクトリーの方を向くサヅキ。

 

サヅキ『陛下。何をおっしゃいます。』

 

下を向くヴィクトリー。

 

ヴィクトリー『お母様はセレノイアの事となると見境がつかなくなってしまうの。』

サヅキ『陛下…。』

ヴィクトリー『お前に酷い事をしてしまったけど、お母様を許してあげて。』

 

立ち上がるサヅキ。

 

イヴァラノ『ちょっとサヅキ。まだ…。』

 

尻を手で押さえるサヅキ。

 

サヅキ『それは私も分かっております。しかし、今回のセレノイアの動きは妙。カルデハイフン殿は信頼に足る人物ですが…。』

 

カーテンから出てヴィクトリーの傍らに寄るサヅキ。ヴィクトリーはサヅキを見上げる。ヴィクトリーを見つめるサヅキ。

 

サヅキ『陛下。くれぐれもお気を付けを。』

 

頷くヴィクトリー。

 

C2 恨み END

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C3 入城

 

深夜、ラドラック山道を通るゼムド王国クーメ級機動城塞多数。先頭のクーメ・ロード級機動城塞艦橋。玉座に座るヴィクトリー。両隣にはロングボウ・ソードを装備するアリガージュ・イオリンとロンリ。

 

アリガージュ・イオリン『兵達の様子はどうか?』

 

ゼムド王国オペレーター女Aはアリガージュ・イオリンの方を向く。

 

ゼムド王国オペレーター女A『…格納庫でたむろし、騒いでいるということ。こちらも再三注意はしておりますが…。』

 

舌打ちするアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『…私語も慎めぬのか。』

ロンリ『…やはり、彼らの民度は低い。兵はあれど将は少なしですか…。』

 

前方に見えるラドラック山岳城。ヴィクトリーは上体を前に出す。

 

 

セレノイア王国ラドラック山岳城。城門の前に止まるゼムド王国の機動城塞群。降り立つ、ヴィクトリーにアリガージュ・イオリン、ロンリ。城門が開き、現れるセレノイア王国議員カルデハイフン。隣には元ラドラック山岳城城主コクシ配下でカルデハイフンのボディガードを務めるギラスがいる。一礼するカルデハイフン。ヴィクトリー達を見つめるギラス。

 

カルデハイフン『ようこそおいで下さいました。』

 

カルデハイフンの麾下の兵Aが大旗を振り、ラドラック山岳城内に入って行くゼムド王国の機動城塞群。

 

カルデハイフン『どうぞこちらへ。』

 

頷くヴィクトリー。カルデハイフンは腰に手を当てて歩いていく。

 

カルデハイフン『もうかれこれ何年ぶりですかな。王子…いや、王。』

ヴィクトリー『5年位になりますか。』

 

顎に手を当てるカルデハイフン。

 

カルデハイフン『ほう。もう、その位に…。』

 

カルデハイフンはヴィクトリーの方を見る。

 

カルデハイフン『しばらく見ないうちに随分と大きく立派になられましたな。』

 

顔を赤らめて下を向くヴィクトリー。ラドラック山岳城の中庭を抜ける一同。

 

カルデハイフン『さて…。』

 

ラドラック山岳城の修復された本丸を見上げるカルデハイフンと見つめるギラス。

 

カルデハイフン『今回、我々はこの城と共に陛下に寝返ります。確実にセレノイアは我々に対して宣戦布告をしてくるでしょう。』

 

頷くヴィクトリー。

 

カルデハイフン『しかし、セレノイアの周辺はゴブの獣魔帝国僭称を始め、シェプストの乱…言えばきりのないほどゼムド王国よりも不安定な政情が続いております。それに比べ、ゼムド王国は国境を接するポンポコウスとガバリヌスに対し、和議を申し入れた。これで背後を脅かす敵はロズマールのみ。』

 

ヴィクトリーの方を向くカルデハイフン。

 

カルデハイフン『ご安心ください。セレノイア等、恐れるに足りませぬ!』

 

ラドラック山岳城、本丸。カルデハイフンは立ち止まり、ヴィクトリーを見つめる。

 

カルデハイフン『さて、陛下。ゼムド王国にこれより尽力する我々の為に、また、我々の士気を上げるために兵たちの前で会見を開いていただきたい。』

 

カルデハイフンを見つめ、喉を鳴らすヴィクトリー。彼は頷く。

 

ヴィクトリー『分かった。』

 

頷くカルデハイフン。ラドラック山岳城本丸にに入るカルデハイフンとギラス、続くヴィクトリーにアリガージュ・イオリン及びロンリ。

 

C3 入城 END

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C4 会見

 

ラドラック山岳城本丸天守御殿に並ぶカルデハイフン麾下の上級将校たち。上座に置かれた玉座に向かうヴィクトリー、続くアリガージュ・イオリンにロンリ及びカルデハイフンにギラス。ヴィクトリーは玉座に腰かけ、カルデハイフン麾下の上級将校たちを見つめる。玉座の右側にアリガージュ・イオリン。左側にはロンリ、及びカルデハイフンにギラス。

 

ヴィクトリー『この度は…。』

 

刀を抜くギラス。

 

ギラス『コクシ様の仇ぃいいいやぁ!』

 

ギラスはヴィクトリーに切りかかる。唖然とする一同。アリガージュ・イオリンがロングボウソードのソードになっている節の部分でギラスを切り伏せる。血がヴィクトリー、ロンリ、カルデハイフンにアリガージュ・イオリンの顔にかかる。床に血でそめるギラスの死体を見て青ざめるヴィクトリー。腰を抜かすロンリ。

 

ヴィクトリー『ひっ!』

 

アリガージュ・イオリンはカルデハイフンに詰め寄る。

 

アリガージュ・イオリン『カルデハイフン殿これはいったいどういうことだ!』

 

カルデハイフンは両手を前に出して首を横に振る。

 

カルデハイフン『し、知らん。』

アリガージュ・イオリン『知らぬとは言わせぬ!貴殿の配下が我が王を襲ったのだろうが!』

 

青ざめ、後ずさりするカルデハイフン。

 

カルデハイフン『そ、そのようなことを言われても…。し、知らん!知らんものは知らん!』

 

ヴィクトリーは顔を手で触った後、掌を見る。

 

ヴィクトリー『…血。あ…ああ。ああああああああ!』

 

頭を押さえるヴィクトリー。砲撃音が鳴り響く。周りを見回す一同。立ち止まるアリガージュ・イオリン。窓を開けるカルデハイフン麾下の上級将校達。ラドラック山脈を取り囲むセレノイア王国ラドラック山岳城城主アマヌザックの旗印。目を見開く一同。

 

カルデハイフン『こ、これはいったいどういうことだ!なぜアマヌザックがここに居る!!』

 

機械音。銃撃音。砲撃音。悲鳴。

 

炎上するゼムド王国のクーメ級起動城塞群。クーメ・ロード級起動城塞の艦橋を踏みつぶす、ラドラック山岳城城主アマヌザックのマントを靡かせたパラディン・ヴェルクーク級人型機構。アマヌザック機のコックピットのハッチが開き、腰に手を当てて出てくるセレノイア王国ラドラック山岳城城主でオーガーのアマヌザック、隣に現れる軍師でハシビロコウ人のグハクがアマヌザックに耳打ちする。天守御殿に駆けこんで来るカルデハイフン麾下の兵B。

 

カルデハイフン麾下の兵B『カルデハイフン様!大変でございます!ア、アマヌザックが急襲してきました!既に二の丸が落とされました!』

 

眼を見開くカルデハイフン。

 

カルデハイフン『何だと!馬鹿な!奴はアー討伐に向かったはず!』

 

アリガージュ・イオリンはソード状の節をカルデハイフンの首筋に突き立てる。

 

アリガージュ・イオリン『カルデハイフン殿!貴殿、我々を陥れたか!』

 

頭に手を当てるカルデハイフン。

 

カルデハイフン『ち、違う。こんな筈では…こんな…。』

アマヌザックの声『我が居城がゼムドに占拠されておるわ!カルデハイフン殿は無事か確かめい!』

 

カルデハイフンは顔を上げ、眼を見開く。砲撃音。揺れる天守。ひるむアリガージュ・イオリン。アリガージュ・イオリンの前から逃げるカルデハイフン。

 

カルデハイフン『討て!討て!』

 

カルデハイフン麾下の兵の周りを駆け、ヴィクトリーを指さすカルデハイフン。

 

カルデハイフン『ゼムドの王を討てば、我らの謀反も消え、手柄が残る!討て討て討て討てーーーーーーい!!』

 

カルデハイフンを睨むアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『カルデハイフン、きっさまぁ!』

 

ロングボウソードから魔力弓を放つアリガージュ・イオリン。魔力弓はカルデハイフンの背を貫く。

 

カルデハイフン『ぐぎゃ!』

 

海老反りに飛び上がる、アリガージュ・イオリンはカルデハイフンの背に駆け寄りロングボウソードのソード状の節の部分で首をはねる。勢いよく飛ぶカルデハイフンの首。胴体から鮮血がほとばしり、天守御殿を血で包む。唖然とするカルデハイフン麾下の上級将校達。アリガージュ・イオリンはヴィクトリーとロンリの傍らへ駆け寄り、ヴィクトリーを抱っこし、ロンリをおんぶする。ヴィクトリーを見つめるアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『陛下!しっかりつかまっていて下さい!』

 

ロンリに目くばせするアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『ロンリ、お前もだ。』

 

頷くヴィクトリーとロンリ。扉の破壊される音。

 

元コクシ配下の兵Aの声『コクシ様の仇はどこだ!ゼムドの王はどこだ!』

元コクシ配下の兵Bの声『ここに来ているはずだ!探せ探せ!仇を討て!』

 

立ち上がり、剣を抜くカルデハイフン麾下の上級将校達は一斉にアリガージュ・イオリンに切りかかって行く。カルデハイフン麾下の上級将校Aの剣をかわし、胴を斬り、カルデハイフン麾下の上級将校Bを切り伏せるアリガージュ・イオリン。アリガージュ・イオリンの周りを囲み、ハンドガンを向けるカルデハイフン麾下の上級将校たち。アリガージュ・イオリンはロングボウソードを振り回し、彼らのハンドガンを持つ手を切断する。腕を抑え倒れる何人かのカルデハイフン麾下の上級将校たち。天守御殿の扉を蹴り破るアマヌザック配下でオルトロスのガディオン。

 

ガディオン『ここかぁ!』

 

カディオンとアリガージュ・イオリンの目が合う。

 

ガディオン『貴様!ゼムドのアリガージュ!おのれ!』

 

眉を顰めるアリガージュ。ガディオンは剣を振り上げる。

 

ガディオン『何だその顔は!覚えていないとは言わせないぞ!貴様!トッツ川の決闘で横槍を入れて兄のクデールを殺したことを!』

 

アリガージュはロングボウソードから魔力弓を放つ。

 

ガディオン『兄のかた…。』

 

ガディオンの眉間を打ち抜く魔力弓。眉間から血を流しながら倒れるガデイオン。ガデイオンの死体を踏みつぶして、なだれ込む元コクシ配下の兵士達。息切れし、舌打ちするアリガージュ・イオリン。

 

元コクシ配下の兵士C『いたぞ!ゼムドの王だ!』

元コクシ配下の兵士D『このちっこいのがそうか!』

元コクシ配下の兵士A『コクシ様の敵だ!』

 

ヴィクトリー達に一斉に切りかかる元コクシ配下の兵士達。アリガージュは元コクシ配下の兵士Aと元コクシ配下の兵士Bを切り捨てながら、後ろに跳躍する。彼らを追いかける元コクシ配下の兵士達。アリガージュ・イオリンは窓ににより、下を見た後、ヴィクトリーとロンリの方を向く。迫る元コクシ配下の兵士達。

 

アリガージュ・イオリン『行きます。』

 

ヴィクトリーを抱っこし、ロンリをおんぶしたアリガージュ・イオリンは天守御殿の窓から飛び降り、屋根を伝って逃げて行く。窓からヴィクトリー達を血走った目で見つめる元コクシ配下の兵士達。彼らは乗り捨てられたヴェルクーク級人型機構に乗り込み、去って行く。

 

C4 会見 END

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C5 殿

 

ラドラック山道を駆ける人型機構。コックピットの内部。ヴィクトリーとロンリ。操縦冠を付けたアリガージュ・イオリンが居る。

 

ロンリ『こ、国内には事態を打診しておきました。』

 

機械音。

 

砂煙が巻き起こる。後ろを向くロンリ。元コクシ配下の兵士達のヴェルクーク級人型機構の大部隊が駆けてくる。

 

ロンリ『ひっ、お、追いつかれます!』

アリガージュ・イオリン『分かっている。』

 

アリガージュ・イオリンはコックピットのハッチを開け、振り返ってステップをしながら、ロングボウソードから魔力弓を放ち、先頭に居る元コクシ配下の兵士のヴェルクーク級人型機構数十機のコックピットを貫く。倒れる数十機の元コクシ配下の兵士のヴェルクーク級人型機構、足を取られる後続の元コクシ配下の兵士のヴェルクーク級人型機構。駆けていくアリガージュ・イオリンの乗るヴェルクーク級人型機構。左右の森林から現れる元コクシ配下の兵士のヴェルクーク級人型機構。舌打ちするアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『きりがない!』

 

砲撃音。

 

眼を見開くアリガージュ・イオリンとヴィクトリーにロンリ。前方に砂煙が起こり、吹き飛ばされる元コクシ配下の兵士のヴェルクーク級人型機構。立ち止まるアリガージュ・イオリン機。正面に見えるゼムド王国クーメ級機動城塞。艦橋正面に乗るサヅキの乗るヴェルクーク人型機構。アリガージュ・イオリン機の通信モニターが開かれる。モニターに映るサヅキ。

 

サヅキ『陛下!アリガージュ殿にロンリ殿もご無事でしたか!』

 

ヴィクトリーはモニターを見つめる。

 

ヴィクトリー『サヅキ!サヅキ!うわあああん。』

 

泣き出すヴィクトリー。後ろを向くアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『ともかく追手が迫っている話は後だ!』

 

横を向くサヅキ。

 

サヅキ『…あれはアマヌザック軍、それにあの旗印はクーマン・ベアードにジョセフか!』

 

眼を見開くアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『何!セレノイアの名だたる精鋭が!』

 

舌打ちするアリガージュ・イオリン。サヅキはヴィクトリーの方を向く。

 

サヅキ『ここは私に任せてお逃げください!』

アリガージュ・イオリン『サヅキ、お前…。』

 

頷くサヅキ。顔を上げるヴィクトリー。

 

ヴィクトリー『サヅキ。』

 

ヴィクトリーに向けて微笑むサヅキ。

 

サヅキ『大丈夫です。私も適当なところで切り上げて逃げますよ。』

 

クーメ級機動城塞の格納庫のハッチが開き、砂煙を上げて駆け出てくるゼムド王国のヴェルクーク級人型機構。サヅキはヴィクトリーを見つめる。

 

サヅキ『陛下。御武運を!』

 

切れるモニター。クーメ級機動城塞の横を駆けていくアリガージュ・イオリン機。

 

 

ゼムド王国領内へ駆けて入り込むアリガージュ・イオリン機。体を操縦席に勢いよくもたれさせ、息を吐く汗まみれのアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『ここまでくれば…はぁ、安心です。』

 

息を切らすアリガージュ・イオリン。立ち上がるヴィクトリー。

 

ヴィクトリー『サヅキ、サヅキはどうなっているの?』

 

ヴィクトリーは通信機器のボタンを押す。眼を見開くアリガージュ・イオリン。

 

アリガージュ・イオリン『あっ!』

 

モニターに映る頭から血を流したサヅキ。

 

アマヌザックの声『貴殿は劣勢の中良く戦われた。もう無駄な抵抗は止め、降伏せよ!既に僚機は全滅、機動城塞も破壊された!』

サヅキ『何を言うか!ここで引けば、我が主君は弑逆される!』

 

コックピットの機器のボタンを押し、火炎放射器を取りだすサヅキ。モニターに寄るヴィクトリー。

 

ヴィクトリー『サヅキ!サヅキ!僕だよ!!聞こえないの!!』

 

火炎放射器の引き金を引き、コックピットから出ていくサヅキ。

 

サヅキ『ゼムド王国万歳!我が主君に栄光あれ!!』

 

炎の音。銃撃音。

 

全身が火だるまになり、コックピットに転げ込むサヅキ。

 

サヅキ『…ヴィクトリー…様。ば…ばんざい。』』

 

両手を上げるサヅキ。ヴィクトリーはモニターの画面を見つめた後、崩れ落ちる。

 

C5 殿 END

 

END

 

 

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
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R-18グロテスク 悪魔騎兵伝(仮) 

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