ゼロの使い魔 〜しんりゅう(神竜)となった男〜 第二十三話「襲撃、そして乱入」 |
その夜・・・・・・。
才人を除くギーシュ達は、一階の酒場で酒を飲んで騒ぎまくっている。
明日はいよいよアルビオンに渡る日。
その決起集会という建前で盛り上がっていた。
またワルドが大ケガから動けるまでに回復したこともあって、それを祝う意味もあった。
才人はただ一人、部屋に残ってベットでふて寝をしていた。
酒場の騒ぎが聞こえているワケではないが、掛布団を頭までかぶっていた。
コンコン
そんな中、部屋のドアを叩く音がした。
『サイト?』
「・・・・・・なんだ?」
ドア越しからルイズの声が聞こえたため、起き上がってドアを見つめる。
『入ってもいいかしら?』
「・・・・・・ご勝手に」
ぶっきらぼうに才人が言うと、再び布団を頭までかぶった。
その数秒後、ドアが開く音がした。
「・・・・・・・・・・・・何をやってるの?」
「・・・・・・・・・・・・」
そうルイズに問われても何も答えない才人。
「あなた、私の使い魔でしょ。私を守るのが役目なんだから、そばにいないさいよ」
「・・・・・・あのワルドに、守ってもらえばいいだろ? ケガは治ったみたいだし」
「何を言ってるの? そんな早く治るワケないじゃない。まさか負けたことをまだ気にしているの?」
「・・・・・・・・・・・・」
才人は何も言わない。
ルイズは呆れた声で言った。
「くよくよしちゃって、みっともない。それではラ・ヴァリエールの名前に傷がつくわ」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・分かったわ。いいわよ。あなたの好きにすればいいわ。ワルドに守ってもらうから」
「・・・・・・・・・・・・」
ルイズに何を言われても、才人は決してルイズを見ることも、ルイズに反論することもしない。
そんな態度にルイズは頭にきてしまった。
「まだ本調子じゃないとしても、あの人はあんたなんかよりも強いし、頼りがいがあるから、きっと安心ね。今、決心したわ。わたし、ワルドと結婚するわ」
一瞬、ビクッとなった才人だったが、それでも何も言わなかった。
「ワルドと結婚するわ」
もう一度、ルイズは繰り返した。
しかし、才人は何も言わない。布団をかぶってルイズを見ようともしない。
(ベットに忍び込んできたくせに!)
プライドを著しく傷つけられたルイズは、完全に頭にきてしまった。
「あんたなんか一生、そこで寝てなさい!!」
そう叫んで、ルイズは歩き出そうとした。
ズシン!! ズシン!!
その時、外から地響きがする。
動きがを止めたルイズと布団からガバッと起き上がった才人が、ベランダに出た。
そこには月明かりをバックに岩でできた巨大なゴーレムが立っていた。
ゴーレムの肩に誰かが座っている。
その人物は長い髪を、風にたなびかせていた。
「「フーケ!」」
息ぴったりに怒鳴る二人。
「感激だわ。覚えててくれたのね」
「お前は牢屋に入っていたはずだ!」
才人はルイズを背で守りながら、フーケを睨みつけた。
「親切な人がいてね。わたしみたいな美人はもっと世の中のために役に立たなくてはいけないと言って、出してくれたのよ」
フーケは隣に立っている黒いマントを着た貴族に顔を向けた。
才人は少しずつ後ずさりながら、貴族を見る。
「・・・・・・おせっかいなヤツがいるもんだな。で、何しにきやがった」
「素敵なバカンスをありがとうって、お礼を言いにきたんじゃないの!」
フーケが、目を吊り上げて狂的な笑みを浮かべた瞬間、巨大ゴーレムの拳がうなって、ベランダの手すりを粉々に破壊してしまった。
才人はとっさにルイズを庇うと、部屋の中においていたデルフリンガーを握る。
「土がなくても、ゴーレムは作れるのよ。安心しちゃダメ!」
「誰も安心してねぇよ!」
ルイズの手をつかみ、駆け出す。
部屋を抜け、一階へと階段を駆け下りた。
しかし、そこも修羅場と化していた・・・・・・。
**********
「やれやれ。随分と派手におっぱじめるもんだな」
向かいの建物の屋上から、フーケと白仮面を見下ろす。
宿屋では、盗賊らしき男たちが暴れていた。
その中に、昨日俺をつけていた連中も混じっていた。
「なるほどね。あれはフーケの差し金か」
あの時は、乱暴目的でつけているのかと思ったが、どうやら違うらしい。
まぁ、それはどうでもいいことだな。
問題はギーシュが怪我をしていないかどうかだ。
ギーシュに何かあると、モンモンに怒られてしまう。
ドン!
その時、1階の酒場から派手な爆発音が聞こえ、盗賊たちの数人が炎に巻かれた。
直後、勝手口からワルド、ルイズ、才人の三人が出てくるのが見えた。
人間の姿でも、((夜目遠目|よめとおめ))が利くため、三人が((桟橋|さんばし))へ向かったのがよく見える。
先頭を行くワルドは怪我をしたことなど((微塵|みじん))も感じられない動きをしていた。
くさっても魔法衛士隊の隊長殿と言ったところか。
「さてと、ワルドの自作自演の舞台は整ったようだし、ギーシュたちを助けるとしよう。じじぃに頼まれたしな」
白仮面がルイズ達の後を追っていくのを確認した俺は、その場から飛び降りて、“ドラゴラム”の呪文を解除した。
『ええいもう! ホント使えない連中ね!! どいてなさい!』
上空に飛び上がって、“レムオル”の呪文も解除する。
フーケの怒鳴り声とともに、ズシン!と地響きを立てて動き出したゴーレムを見つめる。
拳を振り上げて、それを宿屋の入り口に叩きつけようとするゴーレム。
そのタイミングで素早く尾を動かし、腕に巻きついた。
**********
酒場の中から、キュルケとタバサは炎をあやつって、外の盗賊たちを散々に苦しめていた。
「おっほっほ! おほ! 見た? 分かった? あたしの炎の威力を! 火傷したくなかったら、おうちに帰りなさいよね!」
キュルケは勝ち誇って、笑い声をあげる。
「よし、僕の出(なんでアンタがそこにいるんだい!?)え?」
今までいいところが全くなかったギーシュは、炎のすき間から浮き足立った敵目がけて、“ワルキューレ”を突っ込ませようとした。
しかし、フーケの叫び声が聞こえてきたため、動きを止めてしまった。
『りゅ、竜だと!?』
『か、頭! 聞いてねぇぞ!!』
『俺も聞いてねぇよ! ちっ! 逃げるぞ、お前ら!!』
『『『『『へ、へい!!』』』』』
盗賊たちの叫び声と逃げる足音が、酒場にいた三人に聞こえてきた。
「・・・・・・!!」
「あっ! ちょっとタバサ!?」
「どうしたんだい!?」
何かに気付いたタバサが、入り口付近の炎とギーシュの“ワルキューレ”を魔法で消し去り、外に飛び出した。
その行動に驚いた二人だったが、何かあると思ってその後に続いた。
「・・・・・・・・・・・・」
タバサはゴーレムの足元から上を見上げている。
「「え・・・・・・」」
つられて二人が上を見上げると、目が点になってしまった。
三人の目線の先には、月明かりをバックに巨大ゴーレムの振り上げた腕に巻き付いた竜がいた。
その竜は・・・、そこにいないはずのモンモランシーの使い魔であるシェンであった。
「あれはモンモランシーの・・・・・・」
≪無事でなによりだ。三人とも≫
ギーシュの呟きに、シェンはギロッと三人をみつめた。
「ちょっと! わたしを無視しないでよ! どうしてアンタまでいるのって聞いているのよ!」
≪うるさい小娘だ。お前が知る必要がないことを訊くな≫
「なんですって!?」
フーケはゴーレムの左腕を動かし、右腕に巻きついているシェンを捕まえようとする。
しかし、シェンが右腕を解放することで、それを避けたため左腕は空を切る。
目を吊り上げてシェンを睨みつけるフーケ。
「・・・・・・今のうち」
タバサは、フーケがシェンに気をとられているスキに、他の二人を促してこの場を離脱する。
「これからどうするの? ギーシュ」
「どうして僕に話を振るのか分からないが、もちろん桟橋へ向かうつもりだ」
「でも、もう船はでちゃってると思うけれど?」
桟橋へ向かう道を進みながら、キュルケはギーシュに問いかける。
タバサは、後ろを向いてシェンを見つめて、器用に二人と並走している。
「タバサも、そう思うでしょ?」
「・・・・・・今からだと間に合わない」
キュルケに問われ、タバサはくるりと前を向いて答えた。
「僕だけでも向かうぞ! 姫殿下とモンモランシーのために!」
「なんで、あの子が出てくるのよ?」
「あの竜は、きっとモンモランシーが僕のために向かわせたに違いないんだ!」
その自信たっぷりの発言に呆れた顔をするキュルケ。
『あの子はアンタがここにいることを知ってるのかしら?』とも思ったが、口には足さずに肩をすくめて、タバサを見つめた。
「あたし達も、向かう?」
「・・・・・・・・・・・・(コクリ)」
タバサは黙って頷くと、シルフィードを呼んだ。
数分後、やってきたシルフィードはタバサとキュルケを乗せると、そのまま飛び立った。
ギーシュをおいて・・・・・・。
「ちょっと君たち!?」
説明 | ||
死神のうっかりミスによって死亡した主人公。 その上司の死神からお詫びとして、『ゼロの使い魔』の世界に転生させてもらえることに・・・・・・。 第二十三話、始まります。 |
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