バンドを組んだぜ!10!!(完)
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 楽器やメイクの準備に慌ただしくみんな動いている。

 衣装の着付けも全員終わり、楽屋の控え室を出た。

「おいピックどこだピック!!」

「あろまちゃん、また女装かよ〜」

「えっ、あ、ほんとだ」

「うっせーパンクだパンク」

「ロックは女装って70年代からだったかなあ」

 舞台の演目も終わり始め、メンバーは舞台袖に集合する。

 司会が流ちょうな話ぶりで、進行していき、ついにエレキギター同好会の出番になり、名前が呼ばれる。

 部員二人は初めての会場に飲まれて息をのんで動けない

 するとそこに、MSSPの面々が二人に声を掛けに来た。

「リラックスリラックス!」

「うーす」

「うっし」

「全世界のみんなに最高の演奏をぶつけてやろーぜ!!」

 きらびやかなスポットライトに照らされた舞台へと、メンバーは足を踏み入れた。

 講堂の舞台に設置された各人のポジションに、打ち合わせどおりそれぞれ立つ。

 ここまでは、打ち合わせどおりだ。

 楽器の最終チェックをしている間に、FBときっくんがMCをする予定だ。

 二人は、ポジションである舞台の中心に立ち、司会の持ったマイクを受け取ると、青年がそのマイクを奪い取るように持ち、音声が入っているかマイクを叩いて確認し、ああ、マイクOK?という言葉を言うと、

『すぽおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!』

 きーん、と講堂が響くが、彼らのファン、ソウルメイト達がきゃあああと、声を上げる。

 青年がその反応にニカッと笑いかけると、ますます黄色い悲鳴が上がった。

『えー今日は、二年もすっぽかしていた学園祭のステージに、ようやく立てることになりました!イエーイ!!』

 緑色のトカゲの腕の部分から、素手を出して、

 ピース!と青年が会場に向けてポーズを取ると、司会から二本目のマイクを受け取っていたサングラスの青年が話し始める。

『と、いうのも、私どもMSSPの活動がここ数年活発になりましたせいで!本来ならば学園祭以外でも顔を出さなくてはいけなかったのですが!怠けてしまいましてすいませんでしたっ!!』

 「そんなこと無いよー!」と、会場から声援が聞こえてくる。

 ソウルメイトの一人の声だ。

『ありがとう!MSSPの活動が主体なのは皆さんご存知のとおりです!でも、一学生として、最高の思い出であるエレキギター同好会の学園祭の舞台でバンドをやる!という事も今後は活動の一環として励みたいと思ってまーす!応援よろしくね!!あ、あろまOK?』

 サングラスの青年がぶんぶんと腕を振る。

 言い終わると、マイクをメガネの青年に渡した。

『お前ら、エレキギター同好会が死にそうなんだから、ギターの練習めんどくせーとか言ってないで入ってやれよー。今ならきっくんのギター教室付だぜ?』

 ひらひらとピンクのスカートを翻し、お姫様のようなお辞儀のポーズを取る。

 きゃあああ、と声援が聞こえる中、「入部します!」という明らかに男性のものの野太い声が聞こえた。

『ただし、ちょうスパルタでーす!!ヤリサーじゃない!ちょう硬派!実力派ギターサークルだよーん!!』

『てめー下品な事言ってんじゃねー!!』

 脇で、サングラスの青年とパーカーの青年が笑い始める。

『ほい、eoheoh!』

 青年が、ギターのチューニングチェックのためにパーカーの青年にマイクを渡した。

『え、俺あんまりMCとか得意じゃねーんだけどな〜…えっと、今日の衣装は皆で作りました。ルイージです。どうですか?』

 かわいい、似合う、などきゃあきゃあという声が客席から聞こえる。

 今日の衣装のマリオブラザーズは、既存の服を改造したものや、元々MSSPが所持していた衣装をそのまま使用したものだが、部員二人の人数分は当然無いので、練習の片手間に部室でそれぞれ布を縫ったり、貼り付けたりしたものだ。

 その服を翻し、青年が部員二人に近づいて、それぞれのギターの音階を確認し始めた。

 女性部員は高音、男性部員は低音、そして青年のギターが主旋律だ。

 ギターは音階で分けても、同じ音階のギターをコーラスのように合わせて弾くことも出来るが、いかんせんまだまだ未熟な部員二人は、青年のギターと見事なコーラスを奏でる自信は無かったので、オーソドックスに音階別にギターをそれぞれパートに分けてもらった。

 その分、各人のソロギターパートが少しだけあることになってしまった。

 青年ほどの長さではないが、部員二人には緊張する瞬間だ。

 それぞれのチューニングを確認し、三人でニヤッと笑うと、青年がメンバーに向けてGOサインを出した。

『おー、じゅんびOKみたいだな、マイク返すぜ』

『あ、本当?』

 二人が、マイクを司会へ返却すると、各人のポジションに着席し、サングラスの青年の合図を待つ。

 サングラスの青年が、シンセサイザーのチューニングを終えた合図をメンバーに送り「1.2・3・」と言うと、曲が始まった。

 イントロは、青年のソロギターから始まり、そこにメガネの青年のベース、リズムのドラム、高音のシンセサイザが盛り上げる。そこに部員二人のギターが混じり、前日ようやく調整が終わったと言う初音ミクの歌声が始まる。

 ボーカロイドの音声にギターとベースの音が絡まり、演奏中でも曲の合間でも歓声が止むことはなかった。

 初めに女性部員のソロパートが来た。

 アコースティックギター独特の弾き方で、爪弾くようにギターを奏でるパフォーマンスパートだ。イエローハートのミニギターが、そのミニギターらしからぬパフォーマンスを魅せる。

 観客は沸きあがる。

 女性部員は、自分のパートが終わり、ホッと息をつき、次の旋律を弾いた。

 MSSPの面々も、そのパフォーマンスと盛り上げるように、楽曲を沸かせる。

 そして、男性部員のソロパートになった。

 スタンダードで、基本に忠実な硬い演奏だが、低音の渋みが際立つ。

 そこへシンセサイザーのハイトーンが合わさり、リズムを刻む。

 観客が自分たちの演奏を静かに聴いてくれたことで、メンバーはようやくリラックスして演奏できるようになった。

 この日エレキギター同好会が行なった最初のライブで、誰もが緊張していたのだ。

 そして、メインの主旋律を奏でる青年のソロパート

 速弾きは文字通り「速く弾く」ものだと思われがちだが実はちがう。指が速く動かす事で速く弾けるわけではないのだ。実は、速弾きのできる人とできない人の違いは、「あること」を知っているかどうかだけなのだったりする。楽譜とピッキングとフレーズを理解すること。スウィープは「音を分離させる」という意識を持つこと。6連でも4発を意識すること。

 速弾きができるということは、音楽の基礎ができているということ以外にはありえない。

 なんとなくギターを弾くことの出来る天才には、その理論を説明することが難しく、人に教えることなんて出来ないだろう。センスという言葉は曖昧で、もしかしたら必要なことなのかもしれないが、教材の課題曲を弾くレベルならはっきり言って必要ない。

 速弾き、むしろ 「ギターを上手に弾く 」ぐらいならセンスなどカケラも必要なかったりするのだ。

 そもそも、ビートルズも、HIDEも、ギターの演奏自体はそんなに絶賛されていない。

 センスが本当に必要なのは、作曲やアレンジのセンスだけだろう。

 あとはパフォーマンスの腕次第だ。

 ボーカロイドの電子音とギター音が絡み合う。

 青年のギターソロが終わると、部員二人に合図をして、舞台中央に集まり、ギターを並んで弾く。

 メンバーの演奏が全てのハーモニーとなるサビの部分だ。

 ボーカロイドの姿は見えないから、演奏者の動きに注目が集まる。

 ドラムはクルクルとスティックを回し軽快なリズムを刻み、ベースが低音をカバーしている。

 シンセサイザーはコーラスのようになり、トリオのギターがかき鳴らされる。

 そして、曲が終盤になり、スポットライトの光が止まった。

 

 

 

 全ての楽曲が終わり、ライトを浴びて挨拶をする

 終わった・・・やりきったのだ。

 MSSPのメンバーと顔を合わせようと部員二人が振り返ると、緑色のトカゲのしっぽを振り回しながら、青年が二人に抱きついてきて、人目もはばからず

 ぶちゅーっと、女性部員の頬にキスをした。

「ひぇっ?!」

 間をおかず、今度は男性部員の頬にも、ぶちゅーっと音がしそうな位キスをした。

「ひえぇっ?!」

 部員二人は顔を真っ赤にして青年を見ると、青年はウィンクをして答える。

 そして、ギターをまた抱えなおすと、メンバー全員に合図して

 アンコール曲を開始した。

 

 

 

 

 

 

                               おわり。

説明
アンケート結果が出ましたので、完結分完成しました!!
衣装はマリオです。
青春乙女向け二次少女小説を書くのは初めてでしたが、ちょー楽しかったです!!
みんないい夏休みを!!!!
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タグ
小説 学園 青春 MSSP ライトノベル 大学生 

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