真・恋姫†無双 裏√SG 第6話 |
呉に到着し、人見知りだった甘述こと季春に最初の一歩を踏み込ませた次の日、
私は呉の訓練所へとやってきた
蓮鏡「あら?」
結構早起きしたため、一番乗りで来ただろうと思っていたが、どうやら先客がいたようだ。
茶髪ショートの少女と黒髪ロングの少女が既に訓練所にいた。しかも彼女達、踊っている
別に音楽が流れているわけでも、ましてや彼女達が歌っているわけでもない。
なのに彼女達の舞を見ていると、不思議と音楽が聞こえる気がする。
とても楽しそうで、とても優雅で、彼女達が舞う姿をとても美しいと思った
やがて彼女達はゆっくりと動きを止める。どうやら終わったようだ。
私はそれを確認してから、彼女達に声をかけることにした
蓮鏡「お見事だったわ、亞真〈あーじぇん〉、閃命〈しゃんめい〉」
亞真・閃命「蓮鏡様!」
呂jと周邵あらため、亞真と閃命。それぞれ亞莎さんと明命さんの娘だ。
もともと親同士の仲が良かったのもあるが、生まれた日も近いこともあり、
この二人は常に二人一組で行動している。
やはり二人とも、亞莎さんと明命さんにそっくりである
亞真「蓮鏡様、今朝はお早いですね」
亞真はとても眩しい笑顔を向けてくる。
あの亞莎さんの娘とは思えないくらい人と積極的に話してくる。
季春とは対極に位置するような子だ
蓮鏡「えぇ。お食事処勤務だと、必然的に早起きになってしまうのよ。
それに、早起きすると得をするみたいだし。おかげで朝から良いものを見れたわ」
閃命「あ、あはは。見ていらしていたのですね…」
閃命は恥ずかしいところを見られたと言ったような、少し照れた笑みを見せてくれた。
閃命と明命さんは似ている。ほとんど生き写しのようなものだ。
強いて違いを挙げるとすれば、閃命の方が多少発育が良いところだ
蓮鏡「別に恥ずかしがる事はないわ。あれは確か、父様達の国の舞よね?
日本舞踊?よさこい?だったかしら?」
私は先ほど見た舞を思い出しながら言った。
本場の日本舞踊を見たことがあるわけじゃないが、
確かうちの兄貴が同じような舞をやっていたはずだ。
兄貴は一時期、日本舞踊にハマっていたからなぁ
亞真「よくご存知ですね!って、士希様の妹君なのですから、当たり前ですよね」
蓮鏡「と言うと、やっぱりうちの兄貴から?」
閃命「はい。父上から聞きかじった知識と、
士希様が実際に舞っていただいたものを元に、私達なりに工夫して踊っています」
ほー、それであれとは凄いわね。ほとんどオリジナルだから、踊りやすいのかしら?
亞真「蓮鏡様もご一緒にどうですか?とても楽しいですよ!」
亞真に誘われ、私は少し思案する。
確かに、とても楽しそうに見えたし、私も兄貴に少しだけ教えてもらったことがある。
朝の訓練前の準備運動にはちょうど良いかしら
蓮鏡「そうね。では、ご教授願おうかしら。まずはどうするの?」
閃命「はい!まずは腕を伸ばして…」
それから亞真、閃命の指導のもと、日本舞踊の稽古が始まった。
やってみて、なかなか難しい事に気付いた。動きは覚えたがどこかぎこちない。
亞真や閃命のような、とても滑らかな、流れるような動作が出来ない。舞って奥深いわね
蓮鏡「!!」
踊りながら、私は妙案を閃いてしまった。
これ、あの人見知りにも教える事は出来ないかしら
しばらくしてから、母様と父様、雷蓮と季春、そして…
「ほう?あの蓮鏡が舞っておる」
大きな胸をゆさゆさと揺らしながらやって来た女性が一人
蓮鏡「なによ彩〈あや〉!私が舞っていたらおかしい?」
この女性は黄柄あらため彩。祭さんの娘で、孫呉の次世代の中では一番の年長者。
と言っても、兄貴と同い年の16歳だが
彩「別におかしいとは思わんさ。ただ、まだまだぎこちないがな」
蓮鏡「へぇ、なら彩は、流麗に踊れるのかしら?」
彩「無論だな。私を舐めるでない」
彩は舞の構えを取り、舞始める。確かに上手い。上手いのだが…
蓮鏡「私と変わらないじゃない」
彩「なんだと!?」
とても流麗とは言えなかった
零士「日本舞踊かぁ。またずいぶんと風流なものを踊るね」
雪蓮「私はみんな上手いと思うけどなぁ」
雷蓮「ふわぁ…眠たい」
季春「はぁ…訓練をしないのでしょうか?」
んー?季春ちゃんが何やらつまらなさそうね!そんな季春ちゃんにはサプライズよ!
蓮鏡「ねぇ母様、父様!今日の訓練は日本舞踊に出来ないかしら?」
零士・雪蓮「はい?」
二人は呆気にとられた表情だった。そんな二人は放って、私は手招きで雷蓮を呼ぶ。
雷蓮はあくびをしながら近づいてきた
雷蓮「なんだった?」
私は雷蓮、母様、父様と円陣を組んだ
蓮鏡「季春の人見知りを直そうキャンペーン!」
私は小声で叫ぶように言った。それに対して母様と父様は苦笑い、
雷蓮だけは既にいろいろ思案し始め、ニヤッと笑っていた
雷蓮「なるほどなるほど。それで日本舞踊を訓練に…
蓮鏡、私に任せてくれれば、良いステージを作れるわよ!」
蓮鏡「話が早くて助かるわ!さすが兄弟!」
雷蓮「女だけどね」
零士「えっと、どういう事かな?」
雪蓮「説明しなさい、蓮鏡」
私は計画していることを二人に話し始める。
母様はワクワクと楽しそうに、父様はやはり苦笑いだった
雪蓮「ふーん…いいんじゃないかしら?おもし……季春のためにもなるわ」
零士「僕は別に良いんだけど、これを蓮華ちゃんと冥琳ちゃんに何と報告すれば良いのか…」
蓮鏡「そこは私に任せてちょうだい。多分、なんとかなるわ」
そのためには、この後あの二人にも会いに行かなければならない
零士「うーん………いや、待てよ。それなら……
よし。じゃあ今日の訓練は日本舞踊にしよう。
僕も特別出来るわけじゃないが、知らない事もないからね」
話がまとまり、私達は円陣を解く。
ニヤニヤする私と雷蓮と母様、至って真剣な表情の父様、
わけがわからない様子の季春、亞真、閃命、そして彩。
ふっふっふ!覚悟しなさい、季春!あなたのその性格、矯正してやる!
零士「えー、本日の訓練は、私東零士と…」
雪蓮「雪蓮が担当するわ!よろしくね!」
『よろしくお願いします!』
孫呉の次世代達は元気よく挨拶した
零士「それで、訓練内容なんだけど…今日は日本舞踊をしようと思います」
季春「………はい?」
呆気に取られる季春を無視して、父様はなおも真剣な表情で話し続ける
零士「疑問に思うものもいるだろうが、日本舞踊と武術は共通している部分がある。
日本舞踊のあの舞う動きは、僕がよく使う合気術に似ているんだ。
流れに任せるって言うのかな」
ちょっと無理矢理臭いわね。
父様も自分で言ってて、これはきついと自覚しているのだろう。冷や汗を流している
彩「普通の合気術の訓練ではいかんのですか?」
彩の言うことは正論だった
零士「ほ、ほら、どうせなら楽しみながらの方がいいでしょ?」
疑いの眼差しを向ける彩と季春。だがその傍ら、亞真と閃命だけは目を輝かせていた
亞真「舞を武に…その発想はありませんでした」
閃命「確かに、あの動きを活用すれば、敵の攻撃を受け流す事も可能…さすが東様です」
季春「そ、そういうものなのか?」
零士「あぁ…うん…そうだね」
父様は目を逸らしていった。良心が痛いって言ってそうな顔ね
雪蓮「ぷっ…ひどい理由ね…」
母様笑っちゃダメ
零士「じゃ、じゃあ、早速やろうか。まずは………」
季春「………?」
季春は疑問を持ちつつも、しっかりと稽古に励んでいた。
もともと疑わない性格なのか、それとも真面目なのか。
季春には悪いけど、これも季春のためなのよね
朝稽古を終えた私は、朝食を食べずにある部屋へと向かっていた。
この時間なら、きっと勉強部屋にいるはずだ
蓮鏡「清琳〈せいりん〉、温〈おん〉、いるわよね?」
私は部屋の戸を叩き、返事を待たずに開けた。中には二人の女性が本を読んでいた
清琳「蓮鏡…せめて返事をしてから開けろ」
この子は周循、真命は清琳。あの冥琳さんの娘だ。
冥琳さん譲りの頭のキレと、何事にも動じない胆力。まさに出来る女性だ
温「わぁ!蓮鏡さぁん!朝からどうかしましたか?」
こちらは陸延、真命は温。穏さんの娘で、かなりの巨乳娘。
遺伝なのか、親に似て知的好奇心がハンパない子だ
蓮鏡「あれ?温が本読んでるのに、結構まともね」
この子は確か、本とか読むと、興奮していろいろヤバイ事になるのだが…」
清琳「そういう訓練をしているからな。とりあえず、本程度では興奮しなくなった」
温「はぁい!もう暴走はしません」
へぇ、やるわね清琳
清琳「まぁ、未来の話となると、途端に暴走し始めるがな。
だから、零士様にはお会いできないのだよ」
だから昨日、会食にいなかったのね
清琳「それで、お前は何をしに来たのだ?まさか、朝食に誘いに来たとか言わないよな?」
蓮鏡「さすが清琳。私の事は何でもお見通しかしら?」
清琳「ふん、お前の顔を見ればわかる」
温「相変わらずお二人は、とても仲良しですね」
私と清琳は親友のような間柄だ。
年も近く、また母親同士も仲が良い事もあり、不思議と打ち解けた
蓮鏡「じゃあ早速なんだけど…ちょっとイベントを立ち上げて欲しいのよ」
私がそう言うと、清琳は思いため息を吐いた。すごく呆れているわね
清琳「一応聞くが、いったい何のイベントで、何が目的なんだ?」
蓮鏡「イベントは舞踊大会!目的は、季春の人見知り改善よ」
清琳は呆れた顔のまま思案しているようだった。そして目を細め、私を見てくる
清琳「はぁ…季春のアレは私達もどうかと思うが、
だからと言ってそれだけでイベントを開くのは無理だ。予算を考えろ」
ふむ、まぁ正論よね
蓮鏡「別に季春のためだけじゃないわよ。舞踊大会は一般参加にして、
優勝団体には金一封でも与えればいい。民に娯楽を与えることも、上の勤めでしょ?
最近そういったことしてないんだし、ここらでちょっとどうかしら?」
温「確かに、最近そういう娯楽はしていませんでしたねー」
清琳「しかし…」
清琳なら、このイベントのもう一つの意味をわかっていないわけはない。
なら、ここでそのカードを切ろう
蓮鏡「徐福」
清琳「!?」
ほぉら、釣れた。さぁ、ここからはどれだけ話を合わせられるかね
蓮鏡「こんな重要人物がノコノコ出てくるイベント、徐福はどう思うかしらね」
清琳「チッ!『晋』の連中はたちが悪い。どこまで聞いている?」
清琳ったら怖い顔…
蓮鏡「あら、そんなによ?
私が聞いたのは、徐福が何やら良からぬ動きを見せていることだけ。
徐福は、国を動かしている人間を良く思っていないみたいね」
温「ふぅん…つまり蓮鏡さんは、季春さん達を餌にするつもりですか?」
温は優しそうな顔をしているが、目は笑っていない。私を見定めているようだ
蓮鏡「虎穴に入らずんば虎子を得ずよ。ある程度のリスクは考えなければいけない」
清琳「季春達ならまだ良い。あいつらが簡単にやられるわけがないからな。
だが、民を危険に晒すのはどうかと思う」
蓮鏡「あら?それを考えられないほど、清琳は頭が悪かったかしら?」
清琳「……私の一存では決められないぞ?」
蓮鏡「今頃、雷蓮も動いてるはずよ」
温「本当にたちが悪いですねー。なんですか、その根回しの良さ」
清琳「はぁ…お前と雷蓮様が絡むと、ろくでもないことばかりだ」
蓮鏡「嫌いじゃないくせにー」
清琳はさらにため息を吐いたが、この表情を見ればわかる。
清琳はもう、いろいろ考えてくれている
蓮鏡「じゃあ、後は任せたわよ。私もうお腹ペコペコなの。それじゃあねー!」
清琳「あ、おい!」
私はサッと部屋を出た。
危ない危ない。あれ以上はボロが出そうだった。
徐福が本当に上層部に対して何かを思っているとは。
雷蓮が動いてくれてるといいな。
イベントの保全等は、清琳に任せれば大丈夫だろう。
無責任じゃないかって?私は意見を出したまでよ。それを実行しろなんて言ってないわ。
決定権なんて、私にはないんだし
蓮鏡「まぁでも、あの様子なら、やってくれそうね」
清琳は呆れながらも、しっかりと話を聞き、吟味しているようだった。
ということは、清琳的にも思うところはあったのだろう
蓮鏡「んー!お腹空いたー!まずはご飯ね!」
さぁ、次は季春のところね!
私は食堂へとやって来た。そこには先ほど訓練したメンツのほか、祭さんもいた
祭「ん?おう蓮鏡!なにやら面白い事を考えておるようじゃの」
祭さんはとても楽しそうだった。どうやら既に雷蓮に聞いていたのだろう
蓮鏡「おはようございます、祭さん!えぇ、きっと祭さんも退屈しませんよ」
祭「ほう?いったい何をするつもりじゃ?」
ふむ、ちょうどいい。季春もいることだし、話してしまおう
蓮鏡「実は、ここにいる次世代孫呉ガールズで、舞踊大会に出場するのよ!」
季春「………は?」
この場にいるものの反応は様々だった。
ニヤニヤとする雷蓮と祭さん、目を輝かせる亞真と閃命、そして思考が停止した季春。
うん、いい顔ね季春!
亞真「舞踊大会…閃命!とうとう私たちの時代が来ました!」
閃命「猛特訓しましょう!」
雷蓮「母様たちには既に話してあるわ。オーケーが出るかはわからないけどね」
祭「ふむ、舞踊大会か。わしももう少し若ければのう」
蓮鏡「あら、祭さんはまだお若いと思いますよ」
彩「あまり母をおだてんでくれ。本気にしてしまう…」
私たちは季春そっちのけで話を進める。
みんなノリノリねー。踊り…西洋風に言えばダンスだったかしら?
どうせやるなら、かっこよく決めたいわよねぇ
季春「ちょっと待って下さい!なんですかその大会は!?
百歩譲って開催するのは構いません!しかしなぜ私まで出なければいけないのですか!?
人まで踊るなど、む、無理だ!!」
季春はわたわたと慌てふためいていた。顔なんて耳まで真っ赤だ
蓮鏡「季春…あなた忘れたのかしら?あなたのその人見知り、どうにかするんでしょ」
季春「む…そ、それは…しかし!だからといってこれはいきなり過ぎでは?」
蓮鏡「そう?これくらい普通だと思うけど」
季春「蓮鏡様の普通と一緒にしないでください!あなたの普通に常識は通じないんですから!」
それはひどくないかしら
祭「季春、わしは出た方が良いと思うぞ。お主の人見知りは少し重度じゃ。
そんなんでは、戦場で使い物にならんぞ。お主は将来の呉を引っ張る存在じゃ。
人前で立つこともこの先多くなる。今のうちに慣れておいて損はないぞ」
良い人が味方についてくれた。
長らく呉を護ってきた先輩の言葉なら、季春も従わざるを得ないはずだ
季春「うっ…うーん…うーん………」
めちゃくちゃ悩んでいるわね
雷蓮「そんなに嫌なら、別にでなくてもいいわよ。
その代り、季春がつけている日記、公開朗読しちゃうから」
なにそれ超みたい
季春「なぜ日記の存在を!?いやしかし、あれは確か絶対にわからない場所に…」
雷蓮「2番目、4番目、1番目、5番目、3番目…」
季春「!!?クッ……」
雷蓮の意味不明な言葉に、季春はみるみる顔を青くしていった。
どうやら雷蓮は日記のありかを知っているようだ
雷蓮「さぁ、これで季春も出場してくれるわ」
季春「鬼…」
蓮鏡「鬼はうちの咲希姉だけよ。さぁみんな!大会に向けて特訓するわよ!!」
『おーーー!!』
季春「はぁ…」
こうして、季春の人見知りを直そうキャンペーンは、
舞踊大会出場という荒療治を使い、進行していくのであった。
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こんにちは! Second Generations 孫紹伝其二 孫呉は一刀君の頑張りにより、子だくさんで大変… |
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呉は子沢山ですが、魏蜀はどうなのか気になりますね(ohatiyo) | ||
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