義輝記 星霜の章 その十九 |
【 (注)登場人物は全員男 の件 】
? 徐州 下? 晋軍陣営内 にて ?
兵より連絡を受けて、怒りの形相で命令を放つ!
韓馥「後方より攻めて来るは……不埒な麗羽か! それに、黄河を渡河してこの陣営に攻め寄せるのなら……渡らせる前に潰せぇぇぇぇ!!」
晋兵「駄目です! 我等の隊が、かなり小隊に分けて分散したため、呼び戻すのに、刻が掛かり……既に渡河した部隊が、邪魔をしないように援護してております!!」
しかし、返ってきた返答は不定。 しかも韓馥の出した提案の為で………。
韓馥「おのれぇ! おのれぇ!! どうして儂の周りには、こうも役立たずが多いのだぁ!!! えぇい! 邪魔だ! 邪魔だぁ!!!」
自分の前で跪き報告する兵を、物のように蹴り飛ばし……念者衆や若衆の傍に行く。 手元には、例の『おにぎり』を持っている!
韓馥「お主達に命じよう! 儂の事を慕うのなら、コイツを食べて敵を打ち破れ!! 愛しの儂からの命令じゃ!! よもや断る真似なぞしまいがなぁ!」
絶対に断る事は無いと考えて、目の前に『おにぎり』を差し出す韓馥!
念衆者「─────そないなモン! 要りませんどすえ!」パシィ!
韓馥からの差し出した手を跳ね除ける念者衆!
韓馥「何をするんや! この恩知らずめがぁ!!」
念者衆「あんたは……ウチの事をどう思われとるのか知りません! どすが……このような危険な物を利用してまで、戦うなど考えておりません!
あたしは………このまんまで、貴方を守りたいと思うて!!」
涙目で語る念者衆に……さも……心配しているような振りを見せて迫る韓馥!
韓馥「馬鹿な事を申さんな! 主等が死なさんように配慮を!?」
念者衆「男の肉体ではなく、女の心で守りたいだけ……。 それに、あたし達で……あの食べ物の効果を調べ、自分の負担を減らそうとする臆病で慢心な考えに付き合うなんて……もう嫌ぁやぁぁ!」
今まで、何人かの兵が犠牲になった実験。 犠牲になった兵を見殺しにしても、愛する男を信じたかったが………遂に自分までにも手を伸ばすのか!?
しかも、可愛い妹分?達まで手に掛けようとする行為に、嫌気が走る!!
韓馥「ふんっ! 気付きおったか! だが……無理やりにでも喰わせてやる───『ドォォンッ!』グフッ───!?」
若衆「姉はん! 早ぉう逃げてぇ!!」
念者衆「貴女達も────早く来なさい!!」
強制的に食べさせる所を、何人かの若衆が体当たりして、韓馥を突き飛ばす!
その隙に……薄幸なる『男娼』達が逃走する!!
韓馥「────グオォォ! 追えぇ! 迎撃しながら捕まえろ!! 無理ならば殺しても構わん!! 逃せば……残った貴様達が試してやるぅわぁ!!」
晋兵「ぎょ──御意ぃぃ!!」ダァ!
約百人程の追討兵が掛かり、更なる苦虫を潰したような顔で、椅子に座ると指令を命じていた!
◆◇◆
【 爆弾発言 の件 】
? 洛陽 宮廷内 表門 にて ?
月「ただいま………戻りましたぁ──アップッ!」
宮廷に戻ってきた月達が、門より入ると『神速の速さ』で抱きつかれて、豊満な胸に顔が当たる!? その横より『天下に轟く武人』が月の頭を嬉しそうに撫でた。
霞「月えぇぇ───っ! ようやったぁ! ようやったなぁ!!」
恋「月…………偉い!」ナデナデ
月「えっ? えっ!?」
ねね「詠より早馬が来ておりましたぞぉ! 西涼の功勲第一と言うではありませんか! 君主自ら敵総大将を討ち取るなぞ、なかなかございませんぞ!?」
詠「連絡は入っていたようね。 それから、益州、交州も………無事鎮圧したと報告を受けているわ!」
霞達の熱烈な歓迎を受けて……目を白黒する月。 丁寧に情報説明するねね。その様子を見て……ニヤリと笑う詠。
そして、詠の後ろより三人の武人が現れて、一緒に入り込む!
??「戦勝祝の酒も……トーゼン出来てるんだろう!? 霞!」
霞「当たり前やないやろか! 白菊の姐はん、奮発したモン、用意してまんねんよって!」
??「あたしさぁ! 酒より食いもんの方が、良いんだけどな!?」
??「たんぽぽもぉ─────!!」
ねね「恋殿とねねが吟味した山海の珍味ですぞ!? 不味いなんてほざきましたら《ちんきゅうとるねーどキック》が炸裂決定ですな!」
洛陽に帰還したのは月達だけでなく、馬寿成一族も含まれていた。
★☆☆
? 宮廷内 別室 にて ?
今、慰労会と言うささやかな宴会が始まっていた。
主催兼主役の月は、皇帝陛下の急な呼び出しで出掛け、恋も丁度動物達の世話をする刻限のため、後ろ髪を惹かれる思いを全体に漂わせながら猫屋敷へ………。 華雄は当然……護衛で月と一緒に向かった。
霞「どうやった!? 鮮卑、羌、南匈奴の奴らが百万の軍勢で来たでと聞いてるけど……? 何ぞ姐はん………物足りまへん顔してねんよ?」
白菊「……今回は西涼に、百万の強者で来るって、聞いてたんだがなぁ……何時も以上に歯応えが無い連中で、勝負に勝ったという感触がねぇ〜んだよ?」
翠「あたしもだぁ! 敵を少し攪乱して、その後すぐに将と対決で『はい終わり!』でよぉう!? 手応えなかったもんだから憤懣がぁ!」ガツガツ!!
蒲公英「だって〜二人共脳k……じゃなくて名のある武人だも〜ん! 今回……たんぽぽ的には楽だったよ! 匈奴や羌賊等が馬を使わずに戦うのなんて、初めてだったから、凄〜く驚いたぁ!!!」
詠「颯馬の見解でね……相手の長所を潰す策を使ったのよ!」
白菊「ほぅ!? ───例の『天の御遣いの軍師』か?」
詠「颯馬曰わく『 鮮卑、羌、南匈奴の共通の強みは、騎馬を巧みに操る戦闘術! それなら、その長所を奪いましょう! 』と………」
白菊「へぇ〜? なかなか面白い事考えるじゃないかぁ!? それで、詠は……どう思ったんだい?」
詠「ボクは、白菊達の騎馬戦術を知っていたから反対したのよ! 騎馬戦に障害物は禁物! 騎馬が足を取られれば……死活問題に繋がるから。 …そうしたら大丈夫だからって……こう言って……詳細に説明してくれたわ……」
『 障害物を一石三鳥で使いますから、馬寿成様が攻める頃には……無くなっているでしょうね。 片付けられていますから 』って……
それを聞いて……白菊が目を細める。
白菊「敵の長所を潰して、あたしらの長所を生かすねぇ〜!」
詠「具体的には、こんな提案だったわよ!!」
白菊の剣呑な様子を気付かずに……詠が自慢げに説明をする!
ーーーーー
@ 布の滑り台と地面の凍結で、竹槍が地面を滑り匈奴兵達に打撃を与える! 《『飛滑竹槍の計』による打撃 》
A 竹槍が残り、尚且つ地面が滑りやすいため、騎馬で攻めるのは不可。 竹槍や遺体を回収。 《 敵、騎馬攻撃選択を取り消し 障害物除去 》
B 敵、再度攻撃! 攻撃は日が当たり氷が溶ける頃を狙うため、滑り台に使用した布を外し、氷結場所をさらけ出して、敵を混乱に陥れる! 《 布に寄る氷解の遅延工作、敵の攻撃妨害工作 》
C敵、撤収間近に忍びを紛れ込ませ、敵陣営の馬を暴れさせ、混乱を状態を作り出し、そこを馬寿成様に攻撃して貰う! 更に、陣営内にある竹槍を燃やし音で混乱を齎す。 《 混乱に寄る士気低下、疑心暗鬼誘発 》
詠「だ、だけど……ボクだって軍師だから! だから、補完できるところは、補完したのよ! 敵の再攻撃のところで!!」
B 詠の策『氷結地縛の計』……匈奴達の履く靴が、獣の革を加工した物だと知っていたため、颯馬に提案! 弓兵を多くして損害を強いる事にする! 更に、攻めて来る匈奴に向かい、水をかけて寒さで妨害する事を献策する!
ーーーーー
翠「一つの策だってすげぇのに、その策が連動していくなんて……あたしの頭じゃ付いて行けないぜぇ───!?」
蒲公英「たんぽぽも、悪戯する時に考えるよ……。 だけどねぇ、複数になると相手の思惑が二つあるから、対応する時は倍以上時間が掛かちゃうのに! どうして、複数の罠が連続で発生できるの!?」
詠「それは、『附和雷同』的な要素があって──」
白菊「うむっ! 決めた! 決めたぞぉ!!」
霞「何が決めたんや!? 姐はん!!」
白菊「『天の御遣いの軍師』を馬一族の婿に迎えよう!!」
『はあああぁぁぁぁ────!?』
この瞬間、白菊を除く最大音声の『斉唱』が、宮廷内に響き渡ったそうな。
◆◇◆
【 大戦前の静けさ の件 】
? 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて ?
小太郎「颯馬様! 御報告ですぅ!! 晋軍が官渡を出て、此方に向かっています! 兵数約三十万! 到着が明後日になるかと───!!」
翌朝、鶏洛山付近で軍義を初めて一刻も経たぬうちに、晋軍が此方に向かったとの報を貰う! 董卓軍が八万……相手は約四倍だな。
辺りの地形を一通り見渡して、持久戦に相応しい場所を決め、直ぐに命令を発した! これぐらいの差なら、撃破は可能だ!
俺は、目の前に集まっている将に、命令を出した!!
ーーーーー
颯馬「光秀、信長は鶏洛山の中腹に陣地を構築!」
光秀「はいっ!」
信長「ふっ! 任せるがいい!」
ーーー
颯馬「姉さんと一存は、土嚢作りの監督! 一存は運搬にも、力を発揮すれば助かるな! 丁度、愛紗も見ているし………」
愛紗「へっ!?」
一存「よおっしぃ!! いいとこ見せる機会、正に到来だぜぇ!! 鬼十河の力は、戦だけじゃない事───見せてやる!!!」
長慶「任されよう!」
ーーーー
颯馬「左近、鹿介殿は、兵の指揮と陣地の左右に囲いを準備して貰いたい! 連れてきた牛を入れておきたいから!」
左近「ふふっ! 何やら企んでいる顔だな! 任されてやる!」
鹿介「───必ず!」
ーーー
颯馬「凪と愛紗は、大将と軍師の護衛!」
凪「お任せ!」
愛紗「………………はいっ!」
ーーー
颯馬「明命、亞莎! 二人には………策の実行を命じたい! そして、実行後、すぐに雪蓮の下に帰還するんだ!!」
『はいっ! …………って、えええっっっ!!』
颯馬「あっ! 孫呉には居ないはずだから……官渡の鳥巣辺りに居るから、其方に向かって───」
明命「待って下さいっ!! 何故! 私達だけ外されるのです!?」
亞莎「私達の力が足りなくて────『 違う 』──じゃあ何故!?」
颯馬「二人には、援軍の要請をお願いしたいのさ! 今の俺達の仲間で、大陸の地形が分かるのは……四人! そのうち、凪と愛紗は別の用事を頼んだ! だから、二人に役目を頼みたい!!」
亞莎「それでは、私達の力不足で離脱させられる訳ではなく!」
颯馬「………うん! 雪蓮に状況報告を伝えて来てくれるように……と!」
亞莎「は、はいっ!」
明命「でも、それなら、私と風魔様で行えば……確実に早く連絡も!」
その時、小太郎の目がギロッと明命を見つめ、ボソッと呟く。
小太郎「────余計な事を言わないのが、長生きの秘訣ですよ?」
明命「すっ、すいません!!」
結構小声なんだが、明命には聞こえていたようで、涙目で謝っていた。
颯馬「小太郎は、別の罠を仕掛けて貰うんだ! 天の国の罠をね……!」
そう言って、小太郎の頭を優しく撫でる颯馬だった。
◆◇◆
【 オトメ救出戦 の件 】
? 徐州 下? 曹操軍陣営付近川岸 にて ?
義弘「渡河できた者達は、すぐに前方に行き隊列を整えて、敵の攻撃に備えて! 異変があれば、直ぐに私に連絡するように──────!」
曹兵「た、大変であります! 前方より美少女と化け物達が晋軍に襲われて……? いや、討伐されて………? えーと、戦闘中です!!」
義弘「何でよりによっても……面倒な異変が来るのよっ!?」
星「むっ!? もしや『筋骨隆々の男が女装したような者と、私のような美少女が、一緒に晋軍に襲われている』と言う判断でいいのか!?」
曹兵「はっ! 見事な御明察、その通りで御座います!」
歳久「………サラッと自画自賛をしていたようですが、それは、まぁさて置いて……。 星は、その者達を知っているのですか?」
星「───すまん! 先に援護に向かう! 事情は後だ!!!」ダッ!
歳久「はぁ……全く……仕方ありません。 私も弓兵百人連れて援護に向かいます! ひろねぇは人数が集まり次第、隊を二つに分けて進撃して下さい!」
春蘭「では、私が一方を率いる! その方が敵の駆逐も早かろう!」
義弘「へぇ〜? 結構やるわねぇ! 武力一辺倒の将だと思っていたのに!」
春蘭「ふんっ! 華琳様は元は敵だろうが、自分の懐に入る者は大切に扱う立派な方だぞ! 私だって……助けられる者が居れば、助けてやりたい! それだけだ!!」
『……………………………』
春蘭「な、なんだぁ! その沈黙はぁ!! な、何か言えぇぇ!!」
歳久「別にありませんよ! おやっ? 人数が揃いましね!! それでは、お願いします! 終わりましたら道雪殿達を援護しつつ、晋軍を叩きますので───!」
義弘「了解! 行くよ──! 皆!!」
春蘭「待てぇ!! 私も行く! 全軍、駆け足!!」
歳久「………春蘭。 貴女は私達の知る三国志『夏侯元譲』で間違いないのですね。 本当に………不思議な世界です!」
★☆☆
念者衆「てええぇぇいいぃぃ!」
美麗なチャイナドレスのような物を着用し、一丈(約2b)の棍を振り回す!
晋兵「ボゴォォ!」バキッ!
晋兵「アベラァ────!」ブワッ!
晋兵「う………ウップッ!!」チラリ!
あまりの振りの速さで、人の目には止まらないため、何人かが吹き飛ばされる! 中には、スリットから見える魅力溢れる太股に、寒気(決して歓喜ではない。読みはカンキだけど……)した者も……少なくない。
追ってきたのが、若衆寄りだからってあるけど………。
他の若衆も剣や槍を持って抵抗するが、多勢に無勢。 逃走側二十人、追手側百人! 完全に包囲もされ、何人かの若衆が人質に取られ、身動きが完全に出来なくなった。 諦めて連れて行かれるしか無い……と観念した時。
星「大将が大将なら………兵も兵………!」
春蘭「卑怯者共がああぁぁぁぁ!!」
晋兵「グゲエェェ────!!」
晋兵「グワァァァ!!」
念者衆『─────!?』
若衆『あ───────っ!?』
突如乱入する槍遣いと大剣遣い!! 人質を取る晋兵達を倒すと、若衆を仲間の下へ突き飛ばし、群がる晋兵達へ入り込む!!
歳久「…………鏃を外した矢を二十放ちなさい! 射てぇ!!」
晋兵「て、敵襲だぁ!! む、迎え討つぞ!!」
晋兵「弓兵が居る! ここは一時退却『 逃がすかぁ! 馬鹿者共!! 』ギャアアアア─────!!」
大陸で名の馳せる武人が二人暴れ回り、尚且つ矢を射かけられている中、目的が果たせられ無ければ戻るしかない!!
されど、背を向けば大剣遣いの将に、怒声を伴った攻撃を浴びせられる!
そして、最後には─────!
義弘「私を忘れるなぁ!! 全軍───突撃ぃ!!!」
『うおおぉぉぉ────!!』
────こうして、念者衆と若衆は曹孟徳の庇護下に入った!
◆◇◆
【 第二回爆弾発言 の件 】
? 洛陽 宮廷内奥 金糸私室 にて ?
金糸「…………………」
銀糸「月……! 西涼の反乱鎮圧、大儀であったと……皇帝陛下より御言葉である!」
月「はっ!」
金糸の私室に呼ばれた月は、皇帝陛下である金糸より礼を賜る。 あくまで内密な事であり、正式な儀式は一日掛かるらしい。
そのため、友人でもある月の働きを祝いたいとの意向で、ささやかな儀式を開いた訳である。
銀糸「華雄! 人払いを頼む! 但し、お主は残ってくれ!」
華雄「御意!」
内密な儀式とはいえ、侍女等数人の傍仕えがいるため、外に出て貰う。 出入り口で、華雄が仁王立ちになり、侵入者が入らないよう警備に付いた。
銀糸「月よ……。 貴女は、今回の反乱を何と思う? 正直に申して貰いたい。 今、この部屋の中は……御姉様や華雄、そして月だけ。 どんな苦言でもいい。 思った事を…………話してはくれないか?」
月は……ジッと伏せていたが、決意を定めて顔を挙げる。
月「臣、董卓『すまん、すまん! 普通でいい。 友として聞きたいのだ!』はぁ……では、お話し致します。 今回の件ですが…………」
月は、最後に勝敗を付けた、南匈奴左賢王『劉宣』の事を話す。
最後の対峙した際、月の顔を見て驚愕の顔を浮かべた後、双眼より滂沱の涙を……何筋も落とした。 年の頃、七十近い老英傑が───?
そして、馬に乗り月に突撃してきたのだ。弓を射れる状態にしてある体勢の中で………。 降伏を拒否してまで、自殺同然の行為を何故行ったのか……分からなかった。
後に、白菊より『劉宣』は、元は漢王朝の臣だと知り……唖然とする!
そして経緯を調べて分かったのは、張譲の謀で南匈奴へ送られた事。 当時の皇后が董太后だった事。 そして、漢王朝の持つ………腐敗の根深さ!!
月「私は、漢王朝を、皇帝陛下を、友達を見捨てる気など一切ありません! しかし、あまりにも………『漢王朝』のしてきた罪の多さに……私は……どうすればいいか……分からないのです!!」
金糸と銀糸は……双方顔を見合わせ頷く。
二人の考えも同じだった。 自分達の生まれる前の事だから、当然知らない!
しかし、皇帝と言う位を継承したからには、その責務も同時に継承される。 関係無いからでは済まされない。 何故なら、その責務の最終責任者は『皇帝』と言う位だったのだから。
銀糸「私達も考えた………。 漢王朝、既に枯れ果てた古木に、民や国を守る力は無い! 誰か、力ある者に『皇帝』の座を明け渡す。 禅譲をしようと思っているのだ!」
月「しかし、そのような……力がある人物が………」
銀糸「居るであろう! 目の前に!」
月「えっ!? ええぇぇぇ──────っ!?」
銀糸の目線は、自分を見ていた事に気付き……盛大に驚く月。
銀糸「天の御遣い達に慕われる月なら、間違いないと思うのだが───!」
金糸「コクコク!」
月「わ、わわわっ、私では無理ですぅ! 辞退しますぅぅ!!!」
銀糸「皇帝の命は絶対よ!」ビシィ!
月「こ、この中では──私事ですぅ! だから無効なんですよ!!」
★★☆
『ハァ〜! ハァ〜! ハァァ〜〜!!』
一刻後(約二時間)、双方で荒く息をしながら溜め息を吐く二人の姿が。
銀糸「ハァハァ……本当に月ったら強情ね。 詠が嘆くだけあるわ!」
月「だ、誰だって……禅譲する……なんて言われば、お断りします!!」
銀糸「………誰も……月みたいな人なら……良いんだけどね。ハァ───!」
銀糸が深〜い溜め息を吐き出すと、金糸が前に進み出て月の手を取り、申し付けた。
金糸「月……有願事! 金糸銀糸統率兵戦場行! 我皆是知苦願!!」
(月……お願い! 私達も兵を率いて戦場へ行きたい! 皆の苦労を知りたいの!)
手を取られた事もそうだが、皇帝直々に『お願い』をされたため、緊張感で固まる月。 普段でも、そう喋るのは銀糸ばかりなのだから、余計である。
銀糸「皇帝陛下からの命令ですよ! これは、私達の総意! 華雄にも頼み、了解を得ています! だから……董卓軍総帥の董卓に下すの! 『最後の戦に、錦の御旗を立て皇軍と明かし、晋を討て!』…………と」
月「に、錦の御旗? とは………?」
華雄「颯馬達の天の国では、皇帝陛下が味方に参加した場合に棚引く、我々の牙門旗と同じだそうです。 漢王朝が我々の正式な後ろ盾して下されば、士気は鰻登りに上がりましょう!
月様! どうか、皇帝陛下方の御参加……許可を願います!!」
華雄の言に考える事があったようで、目を閉じ一瞬考えたのち、真剣な趣で金糸に尋ねる!
月「陛下……! 一つ……御質問を!」
金糸「コクコク!」
月「戦場は……遊技場みたいな所ではありません! 生死が別れる苦界の場、贅沢は一切無し、兵と同じ生活をし、苦難を共にし勝負を挑む場所です!」
金糸、銀糸『………………………』
月「今回の戦いは、大陸の存亡が掛かっている重大な戦い! ですから……万が一の時、陛下を見捨てても勝利を得る為、動く事があるかも知れません! その覚悟は────御座いますか!?」
華雄「──────!?」
金糸「是!」(はいっ!)
銀糸「皇帝とそれに連なる血筋を、甘く見られては困る! 私達は何回も確認し合い、それなりに訓練も行ってきた。 この日の為にな! だから、私も参戦させて貰う! おっと、勿論──私も是だ!」
二人の意見を聞き……思いっきり溜め息を吐く月。
月「はぁ〜! 皇帝陛下も銀糸様も頑固ですよ! 絶対──私より!!」
銀糸「何を言うか! 月の方が頑固だ!!」
金糸「月友達我々関連、似友達当然!」
(月の友達である私達が、友達に似るのは当然だもの!)
華雄「恐れ多いですが……陛下の性格を受け継いだとも………」
金糸「非此不! 遭遇前朕、詠曰性格同様!」
(それは違うわ! 私に会う前から、あの性格って詠が言ってたし!)
華雄「はっ………ははははっ」
華雄が苦笑したその時、宮廷内に声が響き渡った!
『はあああぁぁぁぁ────!?』
陛下達は『ビクッ!』と動いたが………月だけ『ピクッ!』と違う擬音が響き、青筋が浮かんでいたそうな。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
三連休の内に作ってしまうつもりが……忙しくて諦めました。
夜も忙しくなる為(お祭りの準備)、仕事の昼休みに完成させました。
誤字脱字も一通り確認しましたが、ありましたら教えて下さい。
説明 | ||
義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。 | ||
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コメント | ||
月『華雄お姉様ぁ……月ぇ、もぉ我慢出来ないのぉ』 華雄『フッ! 可愛い子猫ちゃんが私を誘うか?』 風「普通に行うなら誰でも出来ますよー? ですから……こういう展開もアリアリですかねー!」(いた) 華雄「わ……私は……その………」 月「そんな破廉恥な事、華雄さんが考える訳がありません! 華雄さんに失礼です!」 華雄「くっ………」(いた) naku様 再コメントありがとうございます! 朱里「はわっ! 新しい世界が開拓できそうだよ! 雛里ちゃん!!」 雛里「……目上の人からのデレ要素が入った八○一……! ツンを入れると深みが増すかも……」(いた) 華雄さん自身は月一筋ですが……成り行きで……。 まぁ、陛下達にも気に入られて、順調にお仕事こなしております。(いた) 禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 一部驚喜している者もいますが、何とかなるかと。 月達なら何とか出来るではないかと思いますが……一朝一夕では難しいですからね。(いた) なんだか華雄姐さんが国のトップに巻き込まれる苦労人になりそうな予感がするな、一応年長者のポジションですしね(禁玉⇒金球) ふむつまりガチムチとBLな衆道の方々が今現在支配下にいる訳ですが華琳さんは大丈夫なのでしょうか?実利をひいては客観的な損得勘定が出来るし平気かw。禅譲か、、道は険しいでしょうが異民族ともぶつかり語り合った彼女ならば差別主義大好きな劉氏よりマシに為りそうな気もする、始皇帝ばりの能力を期待せずにいられない(禁玉⇒金球) 華雄も少しは……出番を増やさないと……ねねにも。 久秀達も出さなければいけないのですが……何故かオトメばかり。 早く対決に移りたいのですが………。(いた) naku様 コメントありがとうございます! 『馬脚を現す』と申しますので、中身は馬で宜しいかと。性格は狼以上ですが……。 夜の相手は三人で行う可能性もありえます。一族の婿ですからね。 曹兵ですので美少女の基準は華琳並み!? (いた) Jack Tlam様 再コメントありがとうございます! 颯馬を気にいっている者は、魔王に小覇王、虎、龍、鬼、剣聖と一筋縄で行かない者ばかり。 これが于吉の策でした………とすれば、何人か信じるかも!?(いた) 西涼の狼……いやあ獰猛ですね。そりゃあ、親心から出た発言ではあるんでしょうけど、颯馬はもう決まった相手がいる日ノ本の民ですよ?無理だろ〜……やめておいたほうが良い。下手したら双方にとって極めて望ましくないことになる可能性が。色んな意味で。(Jack Tlam) mokiti1976-2010 様 コメントありがとうございます! 嘆くだけではなく、喧嘩を売りそうな方も何人か………。(いた) 颯馬を馬一族の婿に…きっとまた余計なのが増えたと嘆く方々が多いのではないかと。(mokiti1976-2010) Jack Tlam様 コメントありがとうございます! 月の立場は……どんどん重たくなっていきます。 こうなるなんて、月も作者も思ってみませんでした! それでも、作品で世に出した限りは幸せを祈りたいのが作者の親心です。 終わりも幾つか考えているのですが……納得が。 (いた) 禅譲、か……確かに、漢王朝は最早回復不可能な状態にあることは周知の事実。断ったとはいえ、月は今後も重い立場に置かれそうですね……彼女は悲恋で終わってしまいそうだが、それは異世界漂流記における恋物語の結末としては妥当。未来に向かって進める悲恋なら、いいけど……ハッピーエンドにする方が難しくなってませんか?(Jack Tlam) |
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