魔導師シャ・ノワール 消えない傷偏 第三十六話 悪夢 |
久しぶりの更新ですが前半の話がシリアス&グロ表現がありますので苦手な方は真ん中くらいまでスクロールでスキップしたほうがいいかもしれません。作者が作者なのでグロ表現?と思われる駄文になっている可能性も否定できませんが....。
目の前に広がる無限の闇。
一切の光りを通さないとばかりに漆黒が広がっている。
不思議と一定の範囲だけは視界として捉えられる。
それもその筈、自らが立つ地面には真紅の血の沼が広がっていた。
少しでも足を動かせば足を取られそうなほどだ。
実際、足を少し踏みしめるだけで足首まで沈んでしまった。
その血の沼から何かが湧き出てくる。
ずるりと沼の血が粘土のように張り付いた人型。
それがゆっくりと沼から這い出てくる真紅の泥人形達。
「グベァァァ・・・」
「ングゥゥゥン・・・」
苦しいのか、それとも雄叫びを上げているかわからないがゆっくりと沼から這い出た個体は立ち上がり。
または這ってこちらにゆっくりと近づいてくる。
俺が身を守る物と言えば右手に握られていたガンブレードとして展開済みのクローシュのみ。
「クローシュ」
『・・・・』
遅い敵なら魔法で吹き飛ばせばいいはずだが。クローシュが反応しない。
さらに言えばバリアジャケットも展開されておらず。
服装は、いつの日か大分昔に、それも溝鼠のように生きていた頃に纏っていたかのような薄汚いマントを身に纏っていただけ。その下はすぐにでも破れて服としての機能を失いそうなボロ布だけ....
「はぁ・・・久しいなお前ら」
右手に握っているクローシュの刀身が小刻みに震える。
「ああ、全く・・・」
赤い沼の地面に視線を下げ。空いている左手の指で顔の頬と口の皮膚を後ろに引っ張り無理に作った微笑をつくる。
「思い出しちまったじゃねぇか・・・」
俯いたことで前に垂れた髪を後ろへと左手で掻き揚げる。
「俺の十字架(罪)を」
そう言っている間にも泥人形はすぐ目の前に近づいていた。
俺は視線も合わせずに泥人形の首を撥ね。両椀を飛ばし。両膝を刈り取った。
だが、それでも地に臥した泥人形は切断された部位が泡立っては。元の姿へと戻っていた。
「やっぱり効かないか・・・」
そう呟いた瞬間に前後左右、四方に迫っていた4体の泥人形の腕、足、頭、胴を切りつけて。
周囲に迫っている泥人形の位置を確認して
比較的、空いた空間へと泥人形を踏み台にしてジャンプする。
「うっ!?」
だが、次の瞬間には人肌のように生暖かい感触が広がり。自分の膝まで沼に嵌っていた。
「くそっ!久しぶりで忘れてた!」
飛行魔法もその他の移動補助の魔法も使えない状況で。
踏む締めただけで軽く足が沈む地形でジャンプなど唯の自殺行為だった。
それにこの血沼は底なし沼だ。道具も魔法も無く脱出など不可能だ。
動けない俺をあざ笑うかのように目の前に一体の泥人形が現れる。
それをクローシュで横なぎに掃うが。体も満足に動かせずに振るった剣は足さえも切り飛ばせず途中で止まってしまう。
その事をまるで気にしないかのように両腕を俺の首に飛ばし。そのまま両手で締め上げ始める。
「んぐっうう!」
呼吸が上手く出来ずに苦しい声を上げるが何の意味は無い。
さらに泥人形が倒れこむようにそのまま俺を押し倒し。相手の足に刺さっていたクローシュも右手から離れてしまう。
そして、血の沼へと頭から押し込まれ沼の中へと沈められていく。
沼の中では、息が苦しくて、両手の親指で押し込むように俺の喉が潰され。
血の沼に目が焼かれ。思わず叫ぼうとした口に入った血はとても気持ち悪く、鉄の味が広がった。
それでも奴らは止まらない.....。
さらに合流した他の泥人形が池に沈んでいる俺の四肢に取りつき始め。
右手は、指を一本一本曲げ折られ....左手は、爪をゆっくりと剥がされる....
右足は、足の先から噛み千切られ始め....左足はゆっくりと捻じ切られていいく....
さらに組み付いた泥人形に手刀による突きで腹が割かれ。腹の中にある内蔵を一つ一つ握りつぶされていく....
とても痛く....とても辛い.....それでも俺は死ぬことも無く意識を失うことも無い。
なぜなならこれは.....悪夢。
俺が殺したであろう人達の幻影。唯の夢。
殺しても死なない無敵の敵。魔法も使えず動き辛い地形。逃げることの出来ない地獄...
ゆっくりと流れる拷問の時間。夢という割りにリアルな痛み。
怪我などはこれまでに受けてきた物に二乗三乗以上に全身の神経が擦り切れるかのような激痛が体を支配する。
だが、久しぶりに見た悪夢は変わっていた。
「□■...ん..□」
誰か..が読んで...る?
「ノワ・・・くん」
誰?誰が?
痛みに麻痺してきたもう視覚すらない痛覚のみが支配する血沼の中で誰かに呼ばれていた。
「ノワールくんッ!!」
はっきりと聞こえた少女の声に瞳を開けた。
目の前には俺に跨り、今にも泣きそうなほどに涙を溜めた高町なのはの姿が映っていた....
「なの・・・は?」
「大丈夫?」
「あ、ああ・・・」
返事を返しながらそのまま体を起こして、ベットの上で俺の上に跨っていたなのはは、動こうとせず。
俺の体を跨ぐように膝を曲げて座り直し。腰の辺りで密着したまま、俺の体の上から動こうとしない。
「どうしたの?すごく魘されてたけど....」
「別に....」
《ぎゅ・・・》
そう俺が呟いた次の瞬間には体が抱きしめられており。なのはの胸に抱かれていた。
「嘘つかないで!あんな魘されかた普通じゃないよッ」
「そう、だな」
エングレイブに居た頃では多い時は、週に何度も見ていた悪夢。
あれが夢で、科学的に言えばPTSD(心的外傷)ということは理解している。
だが、自分ではどうにも出来ない。それにどうとしようとも思わない。
それが俺の罪だというのなら受け入れよう。
「これは俺の罪だ・・・。悪いな、睡眠を妨げて」
「辛いなら言ってよ!苦しいなら助けを求めてよ!」
「なのは?」
抱きしめられたままに顔を上げると。なのはが泣いていた。
「ノワールくんが悲しかったらなのはも悲しいよ!」
こいつは・・・。
「なのは・・・」
名前を呼びながらなのはを抱きしめてベッドへと横になる。
ゆっくりとそのままなのはの頭を撫でる。
「ノワールくん?」
「今日はもう眠れそうに無いから、なのはだけでも寝てくれ。」
「でも」
「いいから。明日も学校があるだろ?俺は平気だから。なのはを抱きしめてるだけで落ち着いて夜を越せそうだ。それに」
「う、うん?」
「ありがとう。なのはのお蔭で悪夢から抜け出せた。俺はお前に十分、救われてるんだ」
「うん...でも辛かったら言ってね?」
「ああ...」
ベッドに横になったまま、ゆっくりとした時間が流れていく。
柔らかな、なのはの髪を指で透く。次第になのはの寝息が聞こえ始め。
それから俺はなのはを起こさないようにベッドから抜け出し。足音を立てないように部屋を出た。
向かった先は高町家のバスルームで。脱衣所で着ていた寝巻きをその場で脱ぎ捨て。
バスルームの壁に手を付いて熱いシャワーを頭から浴びる。
自身の長い黒髪から雫が零れ落ち。熱を帯び始めた体からゆっくりと湯気が上がり始める。
熱された湯が俺の体に染み付いた汗を流していく。
そんな時、突然バスルームの扉が開かれ後ろから入ってきた人物に抱きしめられた。
「マスターッ!」
「なんの用だ?」
衣服もそのままに抱きついているアリス。無論、シャワーのお湯がアリスにもかかり。
すぐにずぶ濡れとなっていたが。そんなこともお構い無しに俺のことを抱きしめている。
「う...マス...ター」
「ああ、そうか。今の俺とお前は精神リンクが繋がっていたな。悪かったな嫌な気分にさせて」
使い魔と主には精神リンクという厄介なシステムがある。
主の気持ちを少量ながら使い間に伝えるシステムだ。
これにより効率的に主と使い魔が連携を取ることができる。
その反面、主の精神がもろい場合。使い魔にも影響が出てくる。
「違い...ます....そんな....こと...」
「うん。そんなこと思ってるはず無いか。それに精神リンクがあるなら分かるだろ?」
「....はい」
悪夢に魘されてとてもじゃないが寝れるような精神状態ではない。それはアリスも同様だったろう。
だが、あの夢からなのはに救われて。今の俺の心はとても穏やかだ。
当事者ではない使い魔のアリスからしてみれば。二つの感情が心の内で騒いでいて。
悲しくも嬉しくもあるに違いない。
「ほら、もう泣くんじゃない。せっかくの美人が台無しだ」
「ますた〜」
その後、少ししてから落ち着いたアリスと共に、なのはの部屋で一緒にベッドに入った。
流石に人間形態のアリスを入れた3人で一つのベッドは狭すぎるので。
猫形態のアリスを俺が抱き寄せて横になる。
そして、窓から日が差すころになって俺は眠りに付いたのだった....
アリスside
私は忘れていました....
マスターであるノワールの闇を....
傭兵団の中ではノワールが魘される出来事は皆知っていて。
そのせいもあって主に女性の団員のベッドに彼を拉致していました。
単に一緒に寝たいという方も多かったですが・・・。
それは兎も角として、最近は魘されることもまったく無かったのでしょう。
忘れていられたのはこの高町家の人々のお蔭。それになのはさんの力が大きいのでしょうね。
精神リンクで始めて味わう目の前が真っ暗になるような不安と絶望感。
そして、母の胸に抱かれているかのような安心感。
その二つの気持ちに二重の重なった対極の気持ちから涙があふれ。
一人静かにシャワーを浴びていたマスターを後ろから思わず抱きしめてしまったのです。
結局、心配をして駆けつけた私は逆にマスターの手を煩わせることになりました。反省です。
その後は、猫の姿でマスターと同じベッドで眠りに付き。
朝方私の目が覚めると共にマスターが交代で眠りに付かれました。
マスターの長い黒髪はこのところ安定した環境のお蔭か癖毛や枝毛も減りつつ。
艶やかな子供らしい綺麗な髪になりつつあります。
そんな髪をしたマスターの頭に前足で撫でながら考えます。
「やはり私が話すべきなのでしょうね」
マスターのPTSDを高町家の皆様へ。
昨日の騒ぎでなのはは気づいているだろうし。あの時間にシャワーを浴びていることから
士郎様や恭冶様ならなにか気にされているでしょう。疲れたように眠っているマスターを見れば
なにかあったか疑われるでしょう。
「いろいろありましたが。もうここはマスターの暮らしていた世界じゃないんです。忘れてもいいんですよ」
そう、そのまま安らかな夢の中で過去のことなんて忘れてほしい。そう、私は望むのです....
アリス(リニス)さんのような使い魔がほしい。家の猫が変身しないかなぁ〜などと思っている今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか? え?更新が遅い?もう10月だぞって?
申し訳ありません。スランプに陥っていたため。現在、投稿などまったく考えていない他作品の二次創作のほうが執筆が進んでました。その一つの作品に至っては昔からチビチビと書き連ねていた結果10万字ほどになっててびっくりしました。原作の時系列なども勝手に解釈、想像して書いているので書きやすいというのもあるのでしょうが。
それはさて置き、この話はASに突入する話の前にどうしても入れて置きたかった話で。
プロット呑みで決めていた話なので書き溜めなどもしていなかったので執筆スピードが全然進みませんでした。悪いときは一行書いて行き詰まっていたり....orz
さてさてそんな分けですが次回は、10月内で投稿できると思います。さらにその後のAS編に入れば続けて投稿できそうです。ストックが大分溜まってるので。
※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!
※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。
※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。
説明 | ||
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。 | ||
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コメント | ||
おおぅ…!待ってたよ…!!!ノワールたん!!(ゼロフィール) 待ってました!!(アサシン) |
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