超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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風が窓の隙間を入り込むような感触と共に精神連結が強制的に解除され、同時に激流にも似た情報が一気に頭の中に流れ込む。精神操作した持ち主の思考感情を元に作り出したプログラムは朽ちた木枝のように折れている。既に木偶人形を操る糸は断たれ修復は不可能。

何が起きた。その言葉は内心に呟かれ、常人なら途端に襲い掛かった情報の波に頭を抱え転がるほどの激痛が襲いかかるが顔色一つ変えず米神が一つも揺るぐことはない。だがその内心は動揺が激しく渦巻いていた。

 

生命繊維と呼ばれるこの世界にはいない生物。見えないほどの細い糸状の寄生虫のような生き物であり、他の生物の精神電流を食料としている。問題と言えばその体内に大量の生命エネルギーを含んでおり、生物によるが体内に入り込んでしまえば、寄生された側がそのエネルギーに耐え切れず死ぬという事がある。生命繊維は宇宙彷徨う者であり、空が偶然見つけた物であり、その生命エネルギーに目を付け人工飼育場を作り暇があればその生命繊維を使って服を編んでいる。

 

 話しを戻して、人間ではなくある一種の集合体である空は生命繊維と精神接続所か、肉体接続すら可能で、生命繊維が感じた情報をダイレクトに情報管理触媒と繋ぐことで生命繊維で相手の脳を巧みに縛り、洗脳する精神仮縫いをした対象の五感と同化することが出来るのだ。それ故に空には全てが見えてしまった。鎖で縛りつけたはずの記憶がレイス・グレイブハードの声と姿を前にはあっさりと崩壊してしまった。

 

 希望と絶望が激しく火花を散らしながら交差した。目の前では中性的な顔つきをした神宮寺ケイとユニが再会を喜んでいたが、そんなことは耳にも届かない瞳に映らない。表面的には無表情に微かに影が差した程度の様子で、この場の誰もが空の異変に気づくことはない。

 そうしている間にも自己紹介を済ませ、本題に映るように空気を変えるためにわざとらしく咳をついたケイは静かに口を開く。

 

「プラネテューヌの女神候補生が来たという事は、ゲイムキャラの情報を聞きに来訪してきたということ……そうだよね?」

「はい、古のゲイムキャラはマジェコンヌから目を離す為に教祖のみに居場所を教えるように、といーすんさんから聞いていますけど」

「確かにこのラステイションのゲイムキャラから通達が送られてきたね。さて、申し訳ないのだけども君達の期待する情報を教えることは出来ないね」

 

 淡々と紙に書かれた文字を読むように聞かされる言葉にネプギア達は表情が疑問に歪む。

 

「……どういう事?」

「薄々気づいているだろうけど、いまゲイムギョウ界の支配者は変わろうとしている。モンスターという脅威を撃ち滅ぼす|守護女神《ハード》と人々に混乱と娯楽をまき散らす犯罪組織マジェコンヌ。確かに後者は厄介極まりない、言い方を変えればただのゴロツキの塊で、弱い者は強い者に入り込む様な実力主義組織」

「だ、だからこそマジェコンヌに対抗するために、お姉ちゃんを助けるために……」

「ビジネスにとって一番大切な要素はなんだと思う?」

 

 ネプギアの言葉を切り裂く様に呟かれた言葉が止まった。

 どうしてそこでビジネスという単語が出てくるのか理解できなく頭を傾げる二人に対して、アイエフは察した様に難しい顔をして空は目の前の結論を出してしまった真実に動揺をして、反応は薄い。謎に困った二人を付き合いの長い故にユニは助け船を出す。

 

「−−−『信用』よね」

「正解」

 

 呆れた様に怒っているように呟かれた言葉に一言、ケイは頷いた。

 

「どういう事ですか?」

「プラネテューヌ諜報部の所属のアイエフさんはご存じかも知れないが、僕はマジェコンヌの一部の者と取引している。対等にね」

 

 その場の空気が凍った。

 時間が止まったように、誰も口を開かず時計の音が何度か耳に届いたところで爆発した様にユニは修羅の如き表情でケイに掴みかかった。

 

「一瞬、私の耳が腐ったと思ったわよ……どういう事よ!?」

「ゲイムキャラの力、つまり加護が失われれば女神無きこの街はモンスターにとって格好の獲物だ。そしてマジェコンヌの一部の者は交通手段等に困った我々の為にモンスターを狩ってくれているのさ」

「そんな、そんなの……自分から降伏って言っているようなものじゃない!!」

「そうです!今からでも遅くはありません…!マジェコンヌとは手を切ってください!」

「いや、そこの教祖をしていることはある意味で最善の選択だよ」

 

 血相を変えるネプギア達を止めたのは先ほどまで黙っていた空。ケイに掴みかかっているユニを引き離したのはアイエフだ。

 

「まずは現状を把握しようか、女神無きこの街には当然の如く女神の守護の力は失う一方だ。その代わりをゲイムキャラが抑えているけど、それは大陸全体の安全を確保するほどの絶対的な力はない。そうなると貿易路や情報網等にダメージが受け、徐々に経済的に苦しくなる。それを打開する為にマジェコンヌを使う、そこの教祖が言った様に所詮ゴロツキの集まり、だけどゲイムギョウ界では一般化している組織を使えば国民の多数は納得するよ。ま、隠しているとは思うけどね」

「……あまり言いたくはないけど、現実的に考えれば凄く楽なのよね。下手にラステイションの軍を動かせば街の守護の手薄にもなるし、さっき私も知ったんだけどマジェコンヌの一部と取引しているという事は、少なくても明け渡したわけではない。そして、教祖が信用に値する者と取引しているのよね?」

「−−−レイス・グレイブハード、僕が取引している唯一の男さ」

 

 全員がその名前に緊張感が一気に高まった。

 

「彼はモンスター討伐を部下と共に良く引く受けてくれたよ。ゲイムキャラの力も流石に田舎の様な遠方だと届き辛くてね。女神不在の今までかなり助けになってくれた。あちらは組織としての運営費確保、こちらは国民の生活を守ることが出来る。いい関係だと思わないかい?」

「で、でも!そんなことをしたらマジェコンの流通は!?」

「勿論、その点はお互いに規制する相手と破る相手なのは変わりないさ」

 

 様は見えない場所なら売買していいということだ。だがそれは、女神をノワールを裏切る行動であることは明白であり、震える程に握りしめた拳が今にもケイに飛んでいきそうな導火線に火が付いたこの状況。女神の本来の役目である国民を守る事、それ自体は確かに行えている。時には敵すら媚を売らなければならない。それを分かっている上でそう判断して屈辱を飲んだこの選択、政治的に見れば明らかな敗北した国。だが、国民の生活を第一に考えればむしろ理想的だと言ってもいい。

 だが、所詮信用に値する人物は少数しかいないマジェコンヌメンバーとラステイションの教会との異物な関係。そこに切り込みを入れることは、実は簡単な事だ。漸く復活した空は正気に戻り、ひそっりと要点だけアイエフとコンパから聞くとネプギアとユニを呼んだ。

 

「女神の価値を今一度考えてね。二人とも」

「……え?」

「どういう意味よ?空」

「そのままだよ」

 

 指で頭をとんとんと叩くその仕草に不思議と幾分か落ち着いて考え始める。

 自分たちは女神であること。その強みは?

 ラステイションにおける状況をどうすれば改善できるのか。その方法は?

 どうしてマジェコンヌと手を結ばないといけない程まで追い詰められている。その理由は?

 

「……あ」

「………ねぇ、ケイ」

「なんだい」

 

 そして二人はとても簡単な事に気づいた。

 

「もしもの話を聞いてくれる?」

「−−−ああ、いいとも」

 

 嬉しさを隠すように、成長を喜ぶ優しげな瞳でケイは頷いた。

 

「私達は女神候補生。つまりシェアを回収することが出来る」

「ふむ、一般的常識だね」

「え、えーと。ラステイションの問題は増えているモンスター討伐、それを私達は補って」

「マジェコンヌとの関わらなくていいように事態を戻す。そうしていけばマジェコンヌを信用するより、私達を信用した方がコストは楽でしょ?」

「ふむ、しかし君達が欲しいのはゲイムキャラだ。そしてゲイムキャラの力が弱まればいくら君達がモンスターの数を減らしても結局状況は変わらない」

 

 ユニはネプギアと視線を合わせた。

 そしてネプギアは察した様に少しだけ寂しそうに頷いた。

 

「ケイ。貴方の目の前いるのはラステイションの女神候補生よ。少しぐらいゲイムキャラの力が弱った所で私が戻った時点で全てノープログレムよ」

「……ふむ、それでこの国を守れるのかい?」

「明日に全てを変えるなんて、無理は分かっているわ。ネプギアが国を回ってゲイムキャラを回収、その間に私はここでシェアを回復させて力を貯める。そして時が来ればギョウカイ墓場に乗り込む……どうこの華麗なシナリオ」

「分かっていると思うけど。それに僕が賛成するとでも?」

「お姉ちゃんを信用していた貴方だから、私も貴方に同じくらいにそれ以上に信用できるようにするわ」

 

 ケイは暫く黙った。

 明日から全ては元通りになる都合のいいことは無い。

 だが、このままだとマジェコンヌに世界を支配されるのも時間の問題。そうなれば今の様な生活は難しくなり、暴動や戦争などの混沌とした時代が続く可能性すらあり得る。マジェコンヌとしてはゲイムキャラは不要な存在として今まだ誠実したお付き合いをしてきたレイスもいつ牙を剥くか分からない。だからと言って、目の前の二人の女神候補生の危ない橋を国民の生活を抱えて共に歩き出すのもデメリットが大きすぎる。故に

 

「信用を勝ち取りたいのなら、まず依頼を受けてもらおう」

 

 あぁ、何度見ただろうとお決まりのイベントに目を細める空に対してケイは二枚の依頼書を取り出して机に置いた。

 

「宝玉と血晶、この二つを回収してほしい」

 

 その希少価値は極めて高い二つの素材に憤慨するアイエフも見慣れた様子で空は徐に青い空を見つめた。

 

「(もしレイスが彼ならば……、彼女がこの世界に来襲してくる。………このままただの協力者じゃダメかもしれない…な)」

 

 過去を思い出し、改めて自らの犯した愚かさに空は憂鬱にため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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mk2をやらないと思いながらずるずる伸びていく……。
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