超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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ーーーなぁ、ティシフォネ。お前にとって空ってどんな存在だ?

 

 

それは数年前の出来事。

あの事件により、空は自室に閉じこもり部屋に入ろうとするのなら例え従者であるポチであっても部屋に入れようとしなかった無理やり入ろうとすれば容赦なく攻撃してくるか、別次元に逃走するほどに精神的に肉体的にも疲労しきっていたころの話。

紅夜は少しやつれた顔つきで、その膝に縋りつく様に眠っている娘の頭を撫でながらぼそりと呟いた。

 

 

ーーー答え、られないか?

 

 

ティシフォネは沈黙する。

原初の概念の一部が具現化。世界を構成する元素とも言えるその力は、世界を自由に定める神座すら破壊し、世界を混沌させると言われるほどの絶対的力を保有する彼女は、狂気的とも言える程に信仰する主の問いに答えを見失っていた。

 

 

ーーー……そっか

 

 

愛しい娘の瞳に流れた涙を指で掬い、紅夜は遠い目で外の風景を見つめている。いつも騒がしい小蜂のような少女の声は聞こえない。命に別状はないという事だが、最も慕っていた親の現身に体中に乱暴を受けて、体中に残った傷は体も心も癒える事のない深い傷跡を残していた。

 

 

ーーー俺からすれば、お前は空の事まるで姉のように思っていたんじゃないか?

 

 

主の言葉にティシフォネの表情が歪んだ。

 

 

ーーーお前が荒れたのは空の”望み”を知ってしまったから。裏切られたとか思っているだろう?

 

主に隠し事は出来ないと頭を微かに下げた。

知らない事を教えてもらい、主の為にと空のように家事や料理などの教えを頂いた。女の子なんだから、そんな陳腐な理由で楽しく生きていく為に必要な知識を教えてもらった。空と主がお互いに大切に思いある仲を見て嫉妬狂いしてしまい迷惑を掛けても、呆れたため息で頭を撫でてくれたのは記憶に新しい。

 

 

ーーーなんか、悔しいな。俺達はあれだけあいつの事を思っていたのに、たった一人の少女が空をいい方向に変えた。空の”望み”を変えれるかもしれないと思うほどに。

 

 

立ってないで座れと言うように床を叩く主にティシフォネは静かに腰を下ろした。

 

 

ーーー俺の言葉はあいつに届かない。

 

 

決意を定めた声音で主はそう言った。ティシフォネは主が何をしようかと察することが出来た。

こう話している間にも夜天 空は限界に近づいているのだ。悔しい、出来るのなら主が空に抱いている思いも視線も奪いたいと思えるほどにその瞳は覚悟に燃えていた。

だからこそ、その真っ直ぐな思いに嫉妬してティシフォネは強引に主の唇を奪った。貪るように、縋るように、風吹けば倒れるか弱い乙女を見せた。しかし、主はそれを片手で強引に離して、子供の我儘を苦笑で返すように頭を少し強引に撫でた。空がティシフォネにプレゼントした黄金色の簪が落ちないように。

 

 

ーーーどんな手を使ってもあいつを進ませなきゃ、何も変わらない。俺はあいつに救われた。どうしようもない殺戮者になった俺を”一緒に遊ぼう”なんて、ガキの頃のくだらない約束を命を賭けて守ろうとした。そのおかげで俺は変われた。何もかもに絶望した俺が生きようって歩けるようになった。

 

恋しき愛しき主様。帰りを心よりお待ちしております。ティシフォネは二人の間に最初から自分が入り込む場所なんてなく、その場所を穢す事、奪える事も出来ない。でも、送り出す事は従者でも出来るはずだと、主に掛かった髪を宝石を扱うように退けて、今度は強引ではなく、愛する者への言葉が飾られた口づけ。

 

ーーーティシフォネ。

 

答えるように名前が呼ばれる。しかし長年望み続けてきた返しではなく、お姫様抱っこした主の娘を渡された。血の繋がっていない娘、主がただ可哀そうだとただそれだけで引き取った世界を敵に回すその災い、その小さな少女を引き取る。

 

ーーー何もかも元通りになったら、花畑でランチしような。

 

その後、主ーーー零崎 紅夜とデペアは共に行方不明となり、ティシフォネは旧神に操られ人形と化していた夜天空の奇襲を受けて次元と次元の狭間である虚数空間へと封印された。

一人残された零崎 空亡は彼らを探す為に旅に出た。その胸に日常を取り戻すという決意を宿して。

 

 

 

 

 

まず空がしたのはラステイションから離れることだった。怒りが思考を支配しようとさせるが、それを手足に流しティシフォネに向かって閃光の如き速さでパイルバンカーの一撃を決めようとするが、紅い刺突の刃はまるで霧を貫いたように感触はない。体を反転させガントレットで振り下ろされた魔鎌の一撃を防ぎつつ、そのままティシフォネの服を掴み一気に街から離れ、山脈地帯へとやってきた。

ティシフォネは勝利を確信した表情のまま、実際空は彼女に勝てるとは欠片の一つも想っていないそれでも、空には戦う理由があった。魔導書を広げ幾千の魔法同時に行使する。それは、世界終末を予感させる美しくも悍ましい光の乱舞のようで一瞬にして爆風と共に地形を変える。

血の様などす黒い魔力、底なしに魔力を生み出し続ける【永遠結晶エグザミアの欠片】を有している空がするのは酷く単純な事であった。

 

「吼えろ巨獣、世界を飲み込めーーージャガノートッッッ!!!」

 

展開された巨大な魔法陣から撃ちだされる弾丸が空を駆け、音を置き去りにする速さで加速するティシフォネを狙撃するが、確実に直撃する物だけを難なく切り裂く無力化させた。しかし、これは誘導操作可能の広範囲殲滅魔法攻撃。空の意志により弾丸は軌道を変え、ティシフォネに急接近し、ーーー爆発。青い空が一瞬にして暗黒に変える。

 

ーーーだが、その程度では終わらない。

 

「ブラッディダガー・ヘルヘイムシフトッ!」

 

星々の空に見える程の数えきれぬ幾千幾億の闇夜を彩る鮮血の刃、全てが純粋魔力の中に飲まれたティシフォネに撃ち込まれる。

 

「うあああああぁぁぁ!!!」

 

まだだ。そう訴える様に無限の力を行使する。

ーーー射線の物を焼滅させる星の輝きの如き砲撃が、稲妻を剣に変化させ対象に突き刺し体内で爆発させる攻撃が

、空にいくつもの極光花火を咲かせる。その一つ一つに世界が揺れ、大地が裂けていく。

被害を最低限に納めるために『封鎖領域ゲフェングニス・デア・マギー』を何重にも張り巡らせいるが、空自身の攻撃に何度も崩壊する。その都度に何度も貼り直している。

無限に生み出される永劫結晶『エグザミア』その欠片の限界が近づいても、一切の躊躇なく次の魔法の引き金を引く。

 

「世界終末の開戦に響け、終末の笛ーーーラグナロクッ!」

 

一層大きく展開された正三角形の魔法陣、各頂点上で発射される異なる効果を持つ三種の砲撃が地震の如き轟音と大地の断末魔を上げ、世界を一色に染め上げる。

 

「はぁ……はぁ……はぁ………」

 

ティシフォネの特性上、『((絶壊の審判者|デストロイヤー))』は全く役に立たない。

そして、自身が保有する特殊な能力がある聖剣魔剣も同じ理由で意味がない。

ダメージが期待できるのは限りなく純粋な力、彼女の前では特殊な力は紙くず動揺なのだ。

永劫結晶エグザミアを持っていたとしても、所詮は欠片で大量に消費してしまえばその無限に溢れる魔力が回復する時間を必要としてしまう。

既に星なら塵も残さず、銀河であるのなら微かに石屑が残っているかもしれいほどの常識外れの大火力の魔法の数々を放ちながら、被害がゲイムギョウ界に及ばないようにゲイムギョウ界を丸ごと包んだ強固な結界魔法を何重に張り巡らして、破壊と創造を何度も繰り返し、空の魔力にも底が見え始めていた。

 

「やった……わけが、ないッ!?」

 

核爆発でも起こしたキノコ雲の如き砂煙の中、未だに身動きしなかったティシフォネが動いたのを空は直ぐに感知した瞬間、体の半身の感覚がなくなり、次の瞬間には後方で自身の放った魔法を遥かに上回る破壊力が爆発した。

 

「ぐぅ……!?」

 

クレーターというレベルではなかった。そこには奈落・・ができていた。体を一瞬で元通りにするが、消滅させられた体を構成する因子は元通りにはならない。

何重にも張っていた『((封鎖領域|ゲフェングニス・デア・マギー))』はその一撃で完全に崩壊、直ぐにまた貼り直すが、その一瞬の隙に目の前に不気味に微笑みティシフォネの姿が。

 

「マスターに愛を貰い、マスターと肩を合わせ、マスターと共に笑いーーーマスターを傷付けた」

 

魄翼を形状変化させ、巨大な手となった魄翼をティシフォネに振り下ろすが鬱陶しそうに振るわれたその手に一瞬で吹き飛ばされ、蜘蛛のような指で空の顔が捕まえられる。金色の闇を映す瞳孔が空を捉えながら、お互いの吐息が感じる程まで近づいている。

 

「壊したということは無価値だったという事。無価値だったという事は貴方はマスターの想いを裏切ったという事。許さない、許さない、絶対にユルサナイ」

 

ティシフォネの腕に紫電が走った瞬間。

轟く雷鳴と共に空の体に黒き雷霆が突き刺さる。

 

「もう帰ってこない。あの人の温もりも笑顔も好きだった。−−−愛していた。なのに、なのに貴方はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

ーーー虐殺が始まった。

魄翼による幾度の防御行動も虚しく、ティシフォネは体中を殺しにかかる。

粉上になるまで潰して、血飛沫になるまで切り刻み、炭化になるまで焼き尽くし、原子レベルまで粉々にするために氷結させ、徹底的なまでに空の再生能力の要である因子を破壊尽くし、更に空の体の中にあった永劫結晶エグザミアの欠片を握りつぶす。

人であるのなら、痛みに発狂しながら死ぬ程の手加減した殺しのパレードに体中を痛みつけられても空は何一つ語る事はない。その行為がティシフォネの怒りを更に大きくする。

 

「お仲間様がいるでしょう?マスターを裏切って何食わぬ顔で作った絆があるのでしょう?……どうして助けを呼ばない。どうして、何も、叫ばない」

 

地面へと投げ捨てた。地震と錯覚するほどに強烈な轟音と共に血だらけの空を中心にクレーターが出来ていた。原型を保っていない肉と骨の塊となった手足が微かに蠢き、蜂の巣になり贓物が垂れ流れる胴体、半分ほど陥没した顔。完全に潰されていない方の右目だけを動かしティシフォネを見つめる。ちょうど太陽の影になって、その表情は分からない。

 

「言った……でしょ…これは、僕の罪、だ。……他人に、手、を助けて……もらうだ、なんて……冗談じゃない………」

「貴方は私の大事なマスターを傷付けた。私を傷付けずに、だから私は貴方を傷付けずに貴方の大事な人を傷付けるのです」

 

人の手として原型を取り戻しつつあった右手を踏みつぶす。ぐちゃと血と肉が混ざった身の毛のよだつ

音をたてる。それに空は何も反応を見せない。反応するほどの力を使うほどの余裕もない。

 

「……君に、全てを、殺戮されるぐらいならーーーー自分で、壊してしまおう」

「−−−ッ!?」

 

あれほど強固にゲイムギョウ界を守っていた『封鎖領域ゲフェングニス・デア・マギー』が解かれる。同時に『絶壊なる審判者デストロイヤー』が発動し周囲の土、空気、大地がまるごと存在しなかったように無に還る。咄嗟にティシフォネは自身の力でそれを封じた。

 

「君が世界を守る動作をするなんてね」

 

破壊され続ける無の中で空は立ち上がり、握りつぶされた永劫結晶エグザミアを全力稼働させ体を一瞬にして再生させた。

 

「正気ですのッ!?」

「僕が正気な訳ないでしょ」

 

右手のガントレットの爪を向きだし、ティシフォネの体を突き刺す。ほとんど肉体と言う概念を持たない彼女にとって一見その攻撃はほとんど無意味に近い。むしろ取り込まれる可能性すら生まれる愚者の行動。気が狂った様にしか見えないかもしれなかった。だが、ティシフォネにとって空の次の行動は予想がついた。

 

「エンシェントーーーマトリックスッ」

 

血塗れた天を裂くように伸びた槍。それは純然たるティシフォネの力によって構成された物。空の攻撃ほぼ全てに無力化、もしくは耐性があるティシフォネだったが、自分自身の元となるとまた話は違ってくる。風が波を造るように、風が波を無くしまう事があるように、いま空が掲げている魔槍は間違いなく、決定打を決める一撃に只ならない。

 

「ッッッッッ!!!!」

 

ーーーティシフォネに選択が迫られた。

空は、自分の体をも破壊尽くすつもりで『絶壊の審判者デストロイヤー』を行使している。自分の目的はゲイムギョウ界にいる空以外の絆を持つであろう物を苦しませ殺す事、ならばこの世界が滅んでしまった場合は自分の目的は達成できない。故にここで黙って空の一撃を浴びるか、それともこの世界を滅ぼしてまで、我が身を選ぶかーーー。

 

「遅い」

「−−−がぁぁぁ!?」

 

無慈悲に胸に突き刺される防御不能の魔槍、空へと投げ捨てられる。

同時に、ティシフォネが抑えていた『絶壊の審判者デストロイヤー』が解放され、空自身の破壊と共に世界の無へと誘う破壊が一気に広がり、その中で空はどこか安心したように、決断を決めたような凛々しい顔つきを見せ、『旧神の証エルダーサイン』が刻まれた左手を水平にしてその上に右手の爪を立てて置いた。その動作にティシフォネは嗚咽を吐きながら動揺を見せた。何故ならそれはありとられゆる世界を繋がった次元のその中央の近くに座っている空の【本体】を呼ぶ為の前動作だったからだ。

【本体】ーーーシステムUーD、無限連環機構、永劫結晶エグザミア。

ありとあらゆる神魔、怪物を人の肉体と魔力を蒐集しつづけ世界の中心に坐する史上最悪の邪神すら傷つかせた人が生み出した可能性の極地、狂気と殺戮の頂点。もし、あれが世界に【本体】が顕現した瞬間−−−この世界は一瞬で死ぬ・・。そんなことはさせまいと、魔槍を掴み無理やり体を切り裂いて退かそうとするが。

 

「ティシフォネ、僕は紅夜のように感覚で戦うようなチートじゃない」

「じゃあ、どうするか。相手を見て相手を知って相手を利用する」

「卑怯だと思ってもいいよ」

「君の恨みを買っては僕達が殺されて発散させて、うんそんなこと僕らの日常の一つだったじゃないか」

 

((何人もの空|・・・・・))がティシフォネの肢体を止めた。

そう、全てはこのためにあった。無駄に魔力を消費して相手の注意を引きつつ、結界に自身の分身を出して待機して、無様に殺され続け手が無い事を確信させ感情のままに近づき動揺を誘い隙を見せた所に、空の血肉で構成した分身たちを一点に集めてティシフォネの動揺を突き動きを止める為の策。

ティシフォネは直ぐに肢体にしがみ付いた空たちを引き剥がそうとするが、空気がまた重くなる。

 

 

「−−−あとは、よろしく【私】」

「ッッッ!!」

 

ティシフォネの絶叫が嗚咽と共に響いた。同時にティシフォネの後ろにあった何もない空間に亀裂が入り、この世の物とは思えない耳を劈く、精神を隅から隅まで犯す様な禍々しいその冒涜的な声音は空しか理解できない言語。亀裂の割れた闇から徐々に浮かぶ、それは何対ものしなやかな脚によって支えられた二枚目の貝殻。半ば開いたその貝殻から伸びたのは、先端にポリプ状の付属肢のついた、いくつかの節を持つ円筒状のものが何本か伸び出ていた。そして貝殻の造る闇の中には、知性を欠くような身の毛もよだつほどの、深く窪んだ緑眼を持ち、輝く黒髪を伸ばした造形らしき無機質な物を感じさせる美しい顔つきをした【私】は、答えるように手を振った。

 

「夜天、空……!」

「良報だよ。君の主は……うん、ちゃんと生きてる」

 

闇から飛び出した触腕により空たちと共に闇に沈んでいくティシフォネに最後の言葉を告げる。

 

「……あ、あああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

その絶叫は一体何のか、頬に流れるそれは主が生きているから嬉しいからか、目の前にいる空に踊らされていたことに対する憎しみなのか、だが必死に伸ばされたその手を空は同じく涙を流しながら掴む事はなかった。

 

 

 

 

「………ゴフッ」

 

静寂に包まれ瞬間、血の塊を吐き出し空はそのまま地面に倒れる。

 

「エグザミア……は、生きてるけど損傷重度……因子量……人型維持限界ギリギリ……魄翼解放、神縛枷鎖呪術式グレイプニール再構築……」

 

魄翼は姿を変え鎖となって空を再び縛りつけ、溶け込むように消えていく。同時に半暴走させていた『絶壊の審判者デストロイヤー』は機能を停止。周囲への無差別破壊が止まった。

見渡す限り周囲の環境は死の領域だった。ありとあらゆる生き物が死んでいる。植物も一瞬にして枯れ果て、死の風によって塵となって消滅する。大地には巨大な奈落や、

 

「……一体、何人死んだんだろう。数百万は、行き過ぎかな。数十万ぐらいだといいな……」

 

例えこの世界に召喚しなくても、一瞬でもこの世界の次元と【本体】に居座っている次元を繋げたのだ。直ぐに塞いだが、それでもあの人間を憎み嚇怒の念はこの世界に浸食して、人間を優先的に殺そうとするだろう。生きた物を憎み嫉妬する死霊のように。

 

「……少し、休んで……この地形を治さない……と」

 

自身の流した血沼の中で、空は静かに眠りについた。

雲一つもない青空、何事なかったように太陽は空を照らしていた。

説明
あと一か月か……(ポケモンルビー&サファイアのリメイク版どっちを買うか悩みながら)
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