真恋姫無双幻夢伝 小ネタ7『華雄の真名』
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   真恋姫無双 幻夢伝 小ネタ7 『華雄の真名』

 

 

 官渡から帰ってきた彼らには、再び平穏な日々が訪れていた。

 ある日、みぞれ交じりの寒い雨が降り、屋内で華雄と真桜は将棋を指していた。同じ部屋の中では、霞は自分の防具を余念なく手入れをし、恋は暖炉の前でウトウトと舟をこぎ、凪は沙和からファッションについて熱心な指導を受けていた。

 雨が窓に当たる音がする。こんな天気では外に出ることはおっくうであり、彼女たちは部屋の中で暇を持て余していた。

 

「ま、まった」

「またですか。これで10回目ですやん」

 

 と言いながらも、真桜は手を戻してあげる。相変わらず華雄の腕前は酷いもので、平手では真桜に勝ちようもなかった。

 

「華雄姐さん、やっぱり駒を落とした(ハンデをつけた)方が」

「だめだ!それでは私のメンツが立たん」

「そんなことをいいましても……」

 

 ここで真桜はあることに引っかかった。

 

「そういえば、華雄姐さんの真名ってなんですか?」

 

 華雄は盤面から目を真桜へとずらす。その言葉に反応した他の人たちも集まってきた。

 

「確かに、もうそろそろ教えてもらってもいいと思うの」

「ウチも知らんで」

「えっ!霞さまもですか!?」

「恋も……知りたい」

 

 囲んでくる五人に対して、華雄は申し訳なさそうに伝える。

 

「悪いが、教えることは出来ない」

「えー!そんなにうちらのことが信頼できないんですか?」

「いや、そうではなくてな」

「私が未熟だから……」

「だから、その」

「洛陽におった頃は、一緒に寝たこともあったやん!」

「えっ!本当なの、ですか?!」

「聞け!!」

 

 口々に騒ぎ立てるやつらに一喝した後、華雄はやっと落ち着いて事情を説明した。

 

「これは華家の家訓で、家族だけにしか話せないことになっている」

「家族だけですか?」

「いや、家族ぐらい深い仲という意味だ。家族以外には生涯で五人程度までにしか教えてはいけないことになっている」

「それは何とも、難儀な家訓やな」

「まあな。それに、その教えた者も二人きりの時にしか、私の真名を口にしてはいけないのだが……」

 

 と、ここで華雄は再び盤面に視線を向けた。どうやら良い手が見つかったらしく駒を持ちながら、無意識のうちにこう口走る。

 

「それだというのにあいつはまったく、この前も言いかけおって……」

 

 パンッ。駒が差される。その瞬間、華雄は自分が今、何をしゃべったか気が付いた。

 

「あっ」

 

 と口にもらしたきり、その駒から指を放せなくなった。

 窓が急に開いたように、部屋の空気が凍りつく。一人だけ理解できていない恋が、体を震わせた。彼女以外がさっきの発言をゆっくりとかみ砕いていた。

 沈黙。

 しばらくして、真桜が口火を切った。

 

「“あいつ”って、誰ですか?」

「………」

「隊長のこと?」

「………」

「“家族ぐらい深い仲”?」

「………」

 

 三羽烏が低い声で尋ねてくる。華雄はようやく駒から指を放したが、その顔はうつむいたまま何も語らない。

 止めを刺すように、霞が単刀直入に聞いてみる。

 

「あんた、抱かれた?」

「………」

 

 何も言わない彼女は雄弁であった。4人はすくりと立つと、黙って部屋を出て行った。

 残された恋は、首を傾げる。

 

「みんな……どうしたの……?」

「………」

 

 いまだに盤面を眺める“ふり”をする華雄は、急に頭が痛くなってきた。

 

 

 

 

 

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 政務室は静かなものである。

 詠は文章をしかめ面で読み進め、横で手伝う月は小さな手でカリカリと竹簡を削っている。その中で、音を立てながらものすごいスピードで仕事を進めているのは、音々音であった。早く終わらせて、恋の元に行きたい気迫が体から見えている。

 仕事に飽きたアキラは、そんな光景を眺めていた。ふと天井を見上げる。目を瞑り、外の雨音に耳を澄ませる。このまま眠ってしまいそうだ。

 そんな部屋の空気を破ったのは、ドタドタと部屋に入ってくる足音だった。アキラが目を開ける前に、彼はグイッと胸ぐらをつかまれる感覚によって、一気に眠気を吹き飛ばされた。

 開いた目の前では、胸ぐらをつかむ霞と、三羽烏がこちらを睨みつけていた。

 

「アキラ!ウチらも抱かんかい!」

「え゛っ!」

 

 霞の言葉に、仕事をしていた他の3人までこちらを向いた。三羽烏も続く。

 

「隊長!この前、部下は抱かないって言ってたやんか!」

「ひどいよ!うそつきー!」

「華雄さまと同じように、わ、わたしたちも!」

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 黙って聞いていた文官3人も反応する。小さく呟くのだった。

 

「アキラさん……」

「せーよく魔人です」

「最低ね」

 

 そうこうしている内に、部屋に入ってきた4人はアキラの両脇を抱えて運ぼうとしていた。

 

「お、おい!なにを!」

「「「「問答無用!!」」」」

 

 有無を言わさずに、アキラは部屋から連れ出されていった。それと入れ替わるように、恋が部屋に入ってくる。

 

「……どうしたの?」

「はあ、バカばっかり」

 

 詠が盛大なため息をつく。恋はまた首を傾げた。

 結局この夜、アキラは、自分の部屋に戻ってこなかったという。

 

説明
またドタバタ劇です。
次の話から新しい章を始めます。
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 三羽烏 華雄 オリ主 幻夢伝 恋姫†無双 

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