冷たい。

意識が戻り始め、最初にうかんだことだ。

そしてそれはやがて、苦しいへと変わっていった。

【一刀】「・・・・！！！！！！」

完全に戻ると同時に今の状態を強制的に思い知らされる。

呼吸できず、自分が今どういう体勢でいるのかすらわからない。

手を振り回しても何をつかむでもなく、空を切る。

いや、感触はあった。

手を振るたびに指の間、腕の周りにうまれるなにか。

空気とは比べ物にならないほどの抵抗感。

・・・・水だ。

俺は今水の中にいる。

【一刀】「ぼぼ・・・ぼおべｒ！！？・・」

必死に空気を探す。

とにかく上を目指す。

おぼれたときにどこかを目指してもがくなど、危険極まりない行為だが、

混乱した頭でそれを理解するほどの余裕がなかった

【一刀】「がは・・・ぷあ！・・・・・ぶはぁ！！」

ようやく頭が水面にでた。

どうやらそれほど深いわけではなかったらしい。

空気を手に入れたことで余裕もうまれたか、

周りを見ることができた。

森・・・の中の川のようだ。

さすがに木々に囲まれていては場所まで特定することはできないが。

だが、確信した。

ここは・・俺の世界ではない。

俺の望んだ世界かはわからない。

それでもどこかで信じきっていた。

俺は・・・帰ってきたんだと。

川から上がり、ふとめまいがした。

よろめく体を立て直す。

【一刀】「ここは・・・・。」

あの時は夜だった。

今は・・・すくなくとも日中。

だが見間違えるはずが無い。

ここだけは。

信じていたものが事実へと変わる。

希望が現実へと昇華する。

俺の・・・最後の場所

すべての戦いの後

最愛の人と訪れた、

そして別れた場所。

目線を上げる。

空が遠く感じた。

【一刀】「しかし・・・水の中にでるとはね・・・。」

せっかく戻ってきたというのに、べったりと体に張り付いた服のせいで

感動も半減だ・・・。

【？？】「まったく、ずいぶんとひどい格好で帰ってきたものね。」

完全に不意打ちだった。

【一刀】「・・・・・・。」

何が起きているのかわからなかった。

ようやく帰ってきたことを理解できたところなんだ。

そんな状態で、こんな事おもいつくわけがない。

いや、すぐに会いたかった。会いたいと思っていた。

【一刀】「相変わらず、かわいいね。」

混乱する頭を必死で整理し、発した言葉がそれだった。

【？？】「そんな当然の事より、先に言うことがあるんじゃなくて？」

おもわず笑ってしまいそうになるのを必死でこらえて、言うべき言葉を口にする。

ー・・・・ただいま。華琳ー