寂しがりやな覇王と御使いの兄24話
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韓遂の命令が下り、張遼の包囲を完成させていた手下八部の6人の将達

その包囲に参加せず、別地域を受け持っていた程銀、成宜にも包囲に加わるように指示が言い渡された

 

伝令「・・・・との指令です」

 

程銀「殿に委細承知とお伝えくだされ」

 

伝令「っは!ご武運を!」

 

自軍の大将である韓遂の命を受諾した事に安堵した伝令はすぐに本陣へと帰還する

本来であれば他の将達が包囲する戦場に向かうべきなのだが、程銀はその場から動こうとしなかった

 

程銀「韓遂様はどうなさってしまったのだ……このような私利私欲に塗れた戦など…なんの義もないではないか!」

 

成宜「程銀よ、それは言わぬほうがよいぞ」

 

仕える主への批判とも呼べる叫びに警鐘を鳴らしたのは、程銀と同じく手下八部の1人である成宜であった

 

程銀「む、成宜か。お主も殿からの命を聞いたであろう、張遼を捕らに行かなくていいのか?」

 

成宜「それはお主もであろう程銀よ。それにわしら以外の旗本が動いておるのならば、わしらが動かなくても戦況が傾く事はない。それにわしらの仕事は後方支援じゃ」

 

開戦前に程銀、成宜が言い渡された役割は後方待機の予備兵力扱い、補給や怪我人の手当てなどが主な任務であり、割り振られた兵の数は微々たるもの。いくら戦況は優勢とはいえ、戦場に赴いて包囲の一角を形勢出来るような兵力ではなかった

 

程銀「成宜よ、最近殿の様子がおかしいと思わぬか」

 

成宜「それはわしも思っておった、恐らく馬騰とのいざこざが原因かもしれんな」

 

成宜の言ういざこざは韓遂が天水に攻め入る半年前の出来事である、その内容は涼州を度々脅かしている天敵・五胡を滅ぼすべく、一時敵対関係を封印し涼州騎馬軍団を率いて五胡を滅ぼすという案を韓遂が発案したのだ

 

それに対し、西涼の雄・馬騰が反対の意見を出したのだ。馬騰とて五胡の侵攻には頭を悩ませており、韓遂の意見は魅力的な提案だった。しかし、自分達を幾度と無く攻撃し野望の塊である韓遂に信を置くことが出来ず、結局会談は破談に終った

 

韓遂は馬騰と手を組み、五胡を平らげた後に馬騰を討つ算段を目論んでいたのだが、馬騰に警戒され計画が頓挫した、ならば天水を平らげ国力を増強して馬騰を討つ。口では涼州の平和の為と声を出しつつも、自分が涼州の支配者になる事しか考えてないのだ

 

成宜「計画が頓挫した時、殿はわしに馬騰への恨みをもらしておったから間違いなかろう」

 

程銀「その腹いせに天水を奪い、五胡が再度西涼に攻め込んだら呼応し、馬騰殿を討つ…そんな所であろうか」

 

成宜「おそらく・・・」

 

手下八部の将で侯選、張横、李堪、馬玩、梁興、楊秋は主である韓遂に絶対の忠誠を誓っているが、成宜と程銀は韓遂に仕えているものの、その思考はどちらかと言うと馬騰側・・・民を護り、民と共に生きる思考の武人であった。そんな性分のせいか、主君である韓遂に度々諫言する姿が目撃されていたりする

 

程銀「それが本当だとするならば、この戦わしは戦う気など起きんぞ!天水の董卓殿は人格者で善政を引いておられる。民も安らかに過ごしていると聞く・・・そんな天水の民からすれば、わしらは平穏な生活を脅かすただの侵略者だ」

 

成宜「しかし・・・今更わしらが離脱しようが戦況はかわらぬ。我等の手勢は少数、下手に天水軍に味方をすればわしらが全滅に追い込まれるぞ」

 

なんとか天水軍に味方したい・・・

しかし、自分達が今出来る手段は限られている

成宜と程銀はなんとか知恵を出そうと頭を捻っていると、前方からただならぬ覇気を感じた

 

程銀「成宜よあそこを見てみよ!誰かくるぞ!」

 

成宜「おぉ・・まだ距離があるというのに、背筋が凍りつくほどの覇気…ただ者ではない」

 

2人はやってくる者が誰なのか

 

天水軍の味方なのか、自分達の味方なのか

 

その答えを知る前に、来襲者が誰なのか気がついた

 

程銀「あの武器はまさか・・・黄龍偃月刀!?まさか!幽州の黒山賊全滅をはじめ、各地でいくつもの噂が飛び交っている呂玲綺か!?」

 

成宜「なんと!あの呂玲綺がなぜ・・・」

 

黒山賊の壊滅、山越軍の撃破など、話題の中心としていつも名があがるのは呂玲綺の名

一刀は目立たないように行動しているつもりでも、武名はこの涼州にも伝わっていた

そんな今最も有名な男がなぜこの涼州に…困惑している2人だが、呂珂の背後を護る女性の存在にも気がついた

 

成宜「艶やかな黒髪に凛とした出で立ち、そしてあの武器の形は・・・汝南で鬼神の如く暴れまわった関羽ではないか!」

 

呂珂玲綺に関羽雲長

 

万夫不当と噂される豪傑が真っ直ぐ自分達に向かって歩いてくる

呂珂と関羽がどちら側の味方なのか・・・その事を理解した程銀と成宜は、徐々に近づいてくる呂珂達を見て恐怖で顔が歪み、体の震えを抑えるのが精一杯だった

 

成宜「あの2人と戦ったところで、我は全滅だろう…どうだ程銀よ、ダメ元で呂珂殿対話を求め、呂珂殿が認めてくれるのならば軍門に降る」

 

程銀「しかし・・・殿に恩を感じいる、不服だからといって簡単に主を見捨てるのは不忠ではないだろうか」

 

成宜「いまの韓遂様に我らの言葉は通じない。わしらの目的は民の平穏、今のままだとわしらまで目的を見失いただの盗賊紛いの軍に落ちる・・・わしは武人としての心は失いたくはない。呂珂殿が我等を許さないと言うのならば、自分の首を差し出す代わりに、兵士たちの助命を申し出るまでよ」

 

成宜の覚悟は程銀の心に深く突き刺さり、自分達の不忠よりも大切な事があるのだと思い出す事が出来た

韓遂を止める事が出来ず、民の平穏を脅かしてしまったのならば、その平穏を再び取り戻すために・・・主君である韓遂に反旗を翻す、程銀と成宜の覚悟は固まった

 

程銀「このまま戦っても無駄に血を流すだけ・・・ならば・・・呂珂殿と話し、助力を申し出てみよう」

 

 

程銀と成宜は自分達の兵達に呂珂の軍門に降る事、それを受け入れてもらえなければ自分達の命と引き換えに兵士達の助命嘆願をすると伝える

この場に居る者達は普段から成宜と程銀の世話になっている者が多く、2人が決めた事ならば従うと理解を示してくれた

兵士達の反発がなかったことに安堵した2人は呂珂、関羽の下へと歩みだす

 

 

 

 

 

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戦場に到着した一刀と愛紗は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる

劣勢に追い込まれているが、なんとか踏ん張っている。そんな予想をしていたのが、状況は予想以上に悪かった

 

一刀「完全に張遼軍は囲まれているか・・・」

 

愛紗「一刀様、ここは早く助けにいきましょう」

 

愛紗はすぐに張遼軍を救うべく動こうとするが一刀に静止させられる

なぜ静止させられたのか不思議に思った愛紗だが、一刀が向いている方に顔を向けてみるとその理由が把握出来た。敵将と思える二人組みが武器を携帯せずにこちらに向かって来ているのだ

 

愛紗「歩いてくる方向からしますと・・・包囲に加わらず、後方で待機している軍の将でしょうか」

 

一刀「恐らくな、丸腰なところを見ると、俺達と話しをするのが目的だろう。一応警戒だけはしておいてくれ」

 

一刀の言葉に無言で頷き敵将が眼前まで迫ると、一刀の一歩前に立ちはだかり敵将を威圧する

威圧を受けた2将は一瞬怯むが、気持ちを強く持ち直し、一刀に向かって話を切り出す

 

成宜「呂玲綺殿とお見受けする、わしは韓遂軍、手下八部の1人で名を成宜、こちらに控えるのは程銀と申す。無礼と勝手は承知ですが、我等の話しに耳を傾けては頂けないだろうか」

 

 

手下八部・・・韓遂軍の将で、武勇に秀でた8人の将を讃えた呼び方だと思い出すと同時に、なぜ韓遂軍の主力である成宜と成宜がなんの目的でやって来たのか、それを聞き出すべく対話に応じた

 

一刀「韓遂軍でも指折りの実力者であるお前達がなぜ俺達の前に姿を現した、話しがあるなら言ってみよ」

 

成宜「疑問はもっともにございます。率直に申し上げます、我ら2名は呂珂殿の軍門に下りたく恥を承知で参りました」

 

変化球を入れず、ズバっと本題を口にした成宜達を見て、一刀は若干呆気に取られた

自分達に話しがあるのは察していたが、多少話すのを渋るだろうと身構えたいた一刀からすれば、直球で攻めてきた事が驚きであった

 

一刀「なに・・・?理由を申してみよ」

 

成宜「馬騰殿とは以前から度々小さな争いを繰り広げていましたが、共通する外敵・五胡の侵略時には力を合わせ五胡の軍勢を防ぎ涼州の民を護っていました。しかし……」

 

程銀「最近韓遂様と馬騰様が五胡に対しての方針の違いから韓遂様が反発、天水を奪い領地とし涼州に五胡が攻め入ったときに呼応し、馬騰軍を攻め滅ぼす計画を立てています」

 

愛紗「そのようなことで挙兵し、天水の地に攻め入ったのか!この戦に大義など存在しないではないか!」

 

幼い時に両親を無くし、黒山賊の横行で最愛の兄を失った愛紗にとって、逆恨みな理由で兵を興した韓遂に憤りを隠せず、声を荒らげ成宜達を糾弾する

 

糾弾された成宜と程銀は愛紗の叫びが天水の民の叫びだと思え、自分達の罪がどれぐらい大きなものなのか…それを再認識していた

 

成宜「関羽殿の言う通りにございます。我々2人の信念はは民の安寧と平穏・・・それを自ら破ってしまった…暴走を始めた主・韓遂様を止められなかったのは我等の責任」

 

程銀「我等がこうしてのうのうと生きているのが罪と申されるのならば、この場で首を刎ねられても文句はありません。しかし、我等に従う兵達の命だけはお許し願いたい。そして、首を刎ねるのは戦が終るまで待っていただきたい、天水の民を救う仕事を成し遂げてから刎ねられとうございます」

 

成宜と程銀は額を地面に擦り付けながら、一刀に挽回する機会が欲しいと嘆願する

それは口から出任せなどでは無く、覚悟を決めた武人としての願いだと理解出来た

 

一刀「ひとつだけ聞く、民のためならば……今まで仕えてた韓遂を討てるか?」

 

程銀「それがご命令とならば」

 

成宜「民の平穏を脅かす暴君と化した韓遂を討ち取ってみせます」

 

2人の返答を聞き、一刀の腹は決まった

今だに平伏する2人に一刀は言葉を投げかける

 

一刀「ならば程銀!成宜!俺の指示が有り次第、汝ら手勢を率いて包囲している韓遂軍の後方から襲い掛かれ!将を討つのが目的では無い、張遼軍を救い出すのが目的だ。足を止めずに戦場を撹乱せよ!ただし、犬死だけは許さん、必ず生きて俺の下へ姿を現せ」

 

程銀・成宜「御意!」

 

一刀「愛紗!」

 

愛紗「ハ!」

 

一刀「韓遂の本隊と戦闘している華雄を救い出し、そのまま韓遂本陣に突っ込め!遠慮はいらん、愛紗の武勇をこの地で示せ!」

 

愛紗「御意!」

 

一刀から士気を注がれた程銀、成宜は必ずや期待に応えてみせると、高ぶる気持ちを抑えつつ自軍の下へ走り出す

 

一刀「それと、これを持っていてもらえないかな?」

 

愛紗「これは・・・よろしいのですか?」

 

一刀「構わない。張遼とは…仮面無しで会いたいんだ」

 

一刀が愛紗に手渡したのは……自らの生存がばれないように、寝る時以外は付けていた変装用の仮面だった。正体がバレるかも知れない危険を冒しても、張遼・・・霞とは素顔で対面を果たしたかった

 

一刀を慕う1人として、一刀に思われている張遼に嫉妬しつつも、主の意向を汲み取り仮面を受け取る

 

愛紗「わかりました、大切にお預かりいたします。ご武運を」

 

仮面を受け取り一刀に一礼をした後、韓遂本隊に攻撃され窮地に落ちている華雄軍を助けるべく乱戦に飛び込む

 

一刀は飛び込んでいった愛紗とは反対側・・・手下八部の将達から攻撃されている張遼軍に向け一歩、また一歩踏み出す。

 

 

 

張遼と戦いを繰り広げている手下八部の将はまだ知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分達を滅ぼす死神が姿を現す事を

 

 

 

 

 

 

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韓遂「張遼はまだ捕まえられないのか!」

 

副官「ただいま程銀様と成宜様を除く、手下八部の6将が同時に一騎打ちを行っていますので、もう少しだと思われます」

 

韓遂「程銀と成宜はなぜ軍を動かさない!わしの命令が聞けないと言うのか!」

 

侯選、張横、李堪、馬玩、梁興、楊秋の6将は命に従い、実行しているのに対し、命を守らず未だ動こうとしない程銀、成宜に苛立ちを覚えていた。

再度攻勢に加わるように自ら命を言いに行こうとした時、異変を知らせる兵士が息を切らしながら韓遂の下へ駆け込んできた

 

兵士「韓遂様一大事でございます!」

 

韓遂「なんだ騒々しい!わしはこれから程銀、成宜の陣へと向かうところだぞ」

 

兵士「はぁ・・はぁ・・・そ、それどころではありません、幽州で黒山賊を殲滅したという呂珂玲綺が戦場に現れました!」

 

韓遂「なんだと!あの呂玲綺がこのような場所にいるんだ、貴様の見間違いではなかろうな」

 

疑いをかけられる兵士は慌てて呂珂の特徴である黄龍偃月刀、単騎で敵と認識した軍に戦いを挑む胆力と武勇などを韓遂に伝える。仮面こそ付けてないものの、噂と合致する部分が多々あったため、韓遂は乱入してきた男を呂玲綺と認識した

 

韓遂「張遼捕縛が終るまで邪魔されてなるものか!後方待機している程銀と成宜に防がせろ!」

 

兵士「申し上げます!華雄を攻撃していた本隊より伝令!汝南で山越軍を壊滅させたと噂の関羽が戦場に現れました!華雄軍に味方し、縦横無人に暴れまわっています!本隊の被害は甚大!」

 

韓遂「今度は関羽だと!ええい、華雄など捨て置け!張遼捕縛を急がせるのだ!」

 

兵士「伝令!程銀様、成宜様謀反!呂珂に寝返り、張遼包囲軍の後方から襲い掛かっています!」

 

兵士「申し上げます!北西より軍勢を確認!西涼馬一族、馬岱の旗印です!」

 

一騎当千の実力者である呂珂、関羽の来襲、味方だった程銀、成宜の反乱、馬岱軍の来襲

同時多発攻撃により、戦場の流れは一気に変わった。狩る側だった韓遂・西羌連合軍は狩られる立場へ…今まで優勢を保ち、勝利を掴み掛けていた兵士達の動揺は凄まじく、各地で大混乱が発生していた

 

韓遂「馬騰め・・・どこまでもわしの邪魔しよって!わしも出陣するぞ!馬騰、馬超ならともかく、馬岱など蹴散らしてやる!本陣の兵はわしに続け!」

 

 

凶報ばかり舞い込む現状に怒り心頭の韓遂は部下の制止も聞かず、本陣に残った兵士を引き連れ馬岱軍へと攻勢をしかける。西涼の雄・馬騰、西涼の錦・馬超より実力が劣る馬岱軍ならば蹴散らすのは容易いと考えての行動だった

 

 

 

一方、親交が続いて董卓の苦境を救うべく派遣された馬岱は、天水軍の悲惨な状況を目の当たりにすると同時に、天水軍に味方する2人の存在に気が付いた

 

馬岱「うっわ〜董卓軍壊滅状態だね…ぎりぎり間に合ったかな?あそこで大暴れしてる人達の働きでなんとか踏みとどまってる感じなのかな」

 

壊滅一歩手前の天水軍を支えているのは誰なのか、それを確認しようとした時に、韓遂本陣に動きがある事に気がつく

 

兵士「馬岱様!韓遂が突っ込んでまいります!」

 

馬岱「おば様とお姉様がいないからって調子に乗ってるな〜!たんぽぽだって馬騰軍の将なんだから!みんなーいっくよ!」

 

兵士「おう!」

 

 

 

 

 

 

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一刀より一足速く戦場に飛び込んだ愛紗は、自分の事を女だと侮って襲い掛かってくる敵兵を次々と薙ぎ倒していた。将ならば愛紗の存在を知っていたかもしれないが、下っ端兵士は愛紗の事を知らなかった・・・そのために、無謀にも愛紗の前に立ちはだかる敵兵を1人残らず叩き斬られていた

 

無人の野の如く進む愛紗の前に、大斧を振り回す1人の女武将を発見する

 

愛紗「貴公が華雄か!」

 

華雄「その通りだ、私こそ大陸最強の武人である華雄であるぞ、貴様は誰だ!敵将ならば容赦はせんぞ!」

 

華雄は愛紗が味方だと知らない、自軍の将にも見覚えがないので、自分の首を獲りに来た敵将だと判断し、今にも襲い掛かろうとしている。

愛紗はここで味方の将と揉めるわけにもいかず、自分に害意がない事を告げるべく、名乗りをあげる

 

愛紗「わが名は関雲長!主の命と董卓殿の願いを受け参上した」

 

華雄「董卓様の願いだと!出鱈目ではないであろうな!」

 

愛紗「それは後で確認しろ、董卓殿からお前達を救ってほしいと頼まれたからな。遂行させてもらう!華雄ここは引け!」

 

華雄「それは出来ん!ここまでコケにされて黙っていられるか!いま引くのは私の自尊心が許さん!死ぬまで戦い続けてやる!」

 

愛紗の退却しろとの忠告を華雄は突っぱねた。自尊心が強く、自分の武は大陸最強だと自負している華雄にとって、自分の誇りを穢されるのは我慢出来ないのだ

 

そんな華雄の姿も愛紗から見ればただの蛮勇に過ぎない、戦場に留まっているのが華雄1人ならば勝手にしろと見捨てるところなのだが、華雄に従う兵士がまだ数多く残されていた。そんな部下を無視し、自分のちっぽけな自尊心を守る為に戦いを継続しようとする華雄に怒りが湧き上がる

 

愛紗「貴様!主命と自分の自尊心どちらが大事なのだ!自分の自尊心を満たすために、兵の命を無駄に散らすのか!そうであるなら貴様は将の資格などない!一兵卒にも劣る愚か者だ!」

 

華雄「なにい!貴様聞いていればでかい口叩きよって!韓遂・西羌軍の前に貴様を片付けやる!」

 

愛紗の言葉を受け、華雄の怒りは爆発

敵である連合軍の兵士を無視し、助けに来た側である愛紗に向かって金剛爆斧を振るいだす。

自分で大陸一の武だと豪語するだけあって、華雄の武は荒々しくそれでいて鋭い攻撃を披露する、愛紗はひたすら防御に徹し、華雄の攻撃を見極めんとジッと好機を伺い続ける

 

傍から見ていれば、華雄が一方的に押していると見えるだろうが、実際焦っているのは華雄だ。速度に重きを置いた攻撃、威力に重きを置いた攻撃など、多彩な攻撃で愛紗を攻撃するが、鉄壁の護りを崩す事がどうしても出来ないのだ

 

華雄の訓練相手は自分と同等の武を持つであろう張遼のみ、実力が格上の相手と戦うのは初めての経験、それゆえに打開策などを見つけられぬまま疲れが溜まり、矛先が鈍り始める

 

その華雄の変化を待っていた愛紗は好機到来と言わんばかりに攻勢に転じる

 

愛紗「武だけでは軍を率いることなどできない!一兵卒からやり直せ!」

 

華雄「ぐは」

 

自分を遥かに上回る鋭さ、打撃力を備えた一撃、華雄は金剛爆斧でなんとか受けきろうとするが、疲れきった体では受け止めきれず地面に思いっきり叩き付けられる

 

愛紗「華雄の兵達よ!お前たちの主人を連れて撤退せよ!敵軍は私が受け持つ!」

 

叩き付けられて気絶した華雄の下に大勢の兵士がやってくる

華雄はいわゆる姉御肌の武人であり、仲間思いの面を併せ持つ。それゆにえ、華雄を慕う部下も数多く存在している。そんな主を強引だが止めてくれた愛紗に感謝している兵士達は、このまま愛紗1人で戦わせ自分達は安全な所に逃げるなんて選択肢は存在しなかった

 

華雄軍兵士「関羽様、私達も残って戦います。このまま尻尾を巻いて逃げるわけには行きません。奴らに一泡、二泡吹かせてみせます」

 

愛紗「それはお前達の総意か?私の指示に従わないということは、主君である董卓殿の命に反する事なのだぞ」

 

愛紗は董卓の名を出し、お前達は早く去れとやんわり伝える

しかし、華雄軍の兵士達は頑として譲らなかった

 

華雄軍兵士「この戦に関係のない関羽様が戦い、この土地に住まう私達が逃げるなんて真似は出来ません。退却はいまだ戦っている友軍を・・・張遼様を助けだしてからです!」

 

華雄軍兵士の目からは戦わせて欲しいという強い信念が伝わってくる

華雄軍の兵士達の覚悟を目の当たりにし、愛紗はとうとう折れた

 

愛紗「そこまでの決意ならば私は止めはしない。数名はは華雄を護送し、残りの者は私に続け!これより反撃に移るぞ!」

 

華雄軍兵士「野郎共!俺達は舐めきっている連合軍に目にもの見せてやるんだ!」

 

愛紗「いい兵達だ・・・西涼軍と連動し、挟撃を開始する!全軍私に続けええ!」

 

 

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西涼馬岱軍と韓遂がぶつかり、愛紗率いる華雄軍が反撃を開始した頃、手下八部の将達に完全包囲されていた張遼は、次々と襲い掛かる兵や度重なる一騎打ちの連続により、満身創痍となり身動きがとれない状況に陥っている

 

張遼「はぁはぁ・・・っく」

 

楊秋「やれやれ、やっと大人しくなりおったか」

 

侯選「我等6人と互角に戦い、あれほどの兵士を打ち倒すか、末恐ろしい女よ」

 

張横「だがその怪我ではもう戦えないだろう、お前達あいつを捕縛しろ」

 

張遼「くそ・・・うちに近寄るんやない!」

 

兵士「うぎゃあ」

 

 

張横の命を受けた1人の兵士は捕縛具を片手に持ち、飛龍偃月刀を杖代わりにして立っている張遼に近づく

張遼は既に飛龍偃月刀に体重をかけてないと立っていることすら困難な程疲労困憊な状態、肩から羽織っている着物や袴は切り裂かれた箇所が多々あり、露出している肌からは出血している箇所も見られる

 

命を受けた兵士は捕縛するのは簡単だろうと張遼の間合いに入った瞬間に飛龍偃月刀の餌食になる

どんなに体がボロボロでも、”誰かと交わした約束”それを果たすためにも、自分はこんな所では負けない、そんな闘志が張遼の体と精神を支えていた

 

馬玩「そのような状態でまだ戦えるのか」

 

李堪「大人しく降れば痛い目にあわないというのにな」

 

このままでは埒が明かない、そう考えた6将は再び一騎打ちを仕掛ける

一騎打ちとは言っても、6将は交代しながら攻撃してるのに反し、張遼はいまだに1人。張遼に従っていた兵士達は6将配下の兵士達の妨害に合い、助けに行けないでいる

 

張遼「っち!」

 

梁興「こちらを忘れてもらっては困りますね」

 

馬玩、李堪、楊秋の攻撃をいなした直後、死角に潜んでいた梁興の攻撃を見切る事が出来ず、飛龍偃月刀を振るっていた利き手を傷つけられてしまった

 

張遼「しまった・・・うちとしたことがこんな奴らに…」

 

侯選「もう武器は振るえまい、立っているのが精一杯だろう」

 

楊秋「そこのお前、今度こそ捕縛しろ」

 

???「了解しました」

 

張遼「それ以上近づいてみ、うちは自害を選ぶで」

 

先ほど斬られた兵士と同じように拘束具を持った兵士が張遼に近づく、張遼はそれ以上近づくならば自害すると宣言した事を受け、楊秋は自害させる暇を与えるな!と新たな命を兵士に下す

 

しかし、命を言い渡された兵士は張遼の傷ついた体全体を見ているだけで、一向に行動を起こす気配が感じられない

 

梁興「なにをしておる!はやくせんか!」

 

張遼「・・・?」

 

催促されても兵士は全く動かない、張遼もそんな自分の前に佇む兵士が何をしたいか全く理解出来なかった。

 

でも…

 

 

 

 

なぜか目の前にいる男は安心出来る

 

 

 

 

 

 

張遼自身もなぜだかわからないが、とてつもない安堵感を得ていた

 

 

 

 

???「貴様か?」

 

梁興「なんだ」

 

???「貴様が霞の腕を刺したのか?」

 

梁興「それがどうかした・・・・うぎゃあーーーーー!腕がああああ!」

 

その場に居た者達は何が起こったかを目で捉える事が出来なかった

理解出来た事は梁興の利き腕が切り落とされたという事だけだった

 

???「それが聞きたかっただけだ、貴様らは・・・全員俺が粛清する」

 

自分達が命じた男からは今まで体感した事の無いほど強大な殺気を感じた

その殺気を浴びた時点で、圧倒的実力差を察した手下八部の将達だが、主命を果たさんと怯える心に渇を入れ、目の前の男と対峙する

 

楊秋「貴様いったい何者だ!」

 

一刀「姓は呂、名は珂、字を玲綺」

 

呂玲綺の名を聞いた瞬間にその場は騒然とする

なぜ呂玲綺の噂を聞いたのは幽州と汝南、それがなぜこの大陸の最北西の位置する涼州にいるのか

 

なぜ呂玲綺が張遼を庇い、自分達に敵対しているのか…

 

 

理解出来た事はただ一つ、呂珂玲綺の逆鱗に触れてしまったという事だけ

 

 

 

 

李堪「呂玲綺だと!なぜこのようば場所にいるのだ!」

 

一刀「教える義務などない、程銀!成宜!いまだかかれ!」

 

遠くに潜んでいる程銀達にもちろん一刀の声は聞こえない

その為に、合図として黄龍偃月刀に気を込め、地面に思いっきり叩き付ける

 

叩き付けられた地面からは爆音が響き、クレーターのような大きな溝が出来上がっていた。この爆音こそ、一刀が合図と決めていた音なのだ

 

程銀「合図の音だ!呂珂殿の指示通り暴れまわれ!かつての戦友だからといって手加減するな!刃向かってきた者には容赦するな!」

 

成宜「程銀隊に負けるな!我らも暴れまわるのだ!人の心を忘れた獣達を駆逐するのだ!」

 

完全に一刀に目を奪われ、背後の注意が散漫になっていたところに程銀、成宜率いる両軍が突撃する。

直前まで味方だった者達からの攻撃を受け、統率の取れてない兵士達は次々討たれていった

 

張横「程銀、成宜裏切ったか!お前達かかれ!裏切り者を打ち倒すのだ!」

 

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霞視点

 

 

目の前にいる男・・・呂珂といったか?どうしてここにおるか解らへんけど…どうやらうちは助かったみたいやな

 

一刀「よし、奴らの注意が程銀達に逸れたな。張遼大丈夫か?」

 

呂珂の目からは、本気でうちを心配してると伝わってくる

もう立ってるのもしんどいし、この男なら気抜いても大丈夫…やな。

 

張遼「流石に……もう限界や」

 

一刀「おっと、全く・・・無理しすぎだよ」

 

うちいま抱きしめられてるのか?なんやろ、男に抱きしめてもらうの初めてなはずやのに…

さっきポロっと真名を呼ばれた時も、こうして抱きしめられても嫌悪感なんか一切ない、逆に心が満たされてる感覚がする。この安心感・・・うちは薄っすらやけど覚えてる・・・この安心感の正体は…

 

一刀「お疲れ、霞。後は俺に任せて、ゆっくり休んでくれ」

 

薄れていく意識やけど、いまはっきりうちの真名を呼んでくれた

 

 

 

 

優しく微笑んでくれた

 

 

 

あぁ…どんなに不利な状況でも安心させてくれるこの笑顔

 

 

 

 

 

魏のみんなから愛された天の御使い・・・帰ってきてくれたんやな

 

 

 

 

霞「おかえり・・・かず・・・と」

 

 

 

 

 

 

 

霞視点END

 

 

 

 

 

 

一刀視点

 

霞「おかえり・・・かず・・・と」

 

一刀「霞!?」

 

気を失っただけか・・・

最後俺の名前を呼んでくれたけど、思い出してくれたのかな

もし思い出してくれてるなら、約束を破っちゃった事と、黙って居なくなって泣かしちゃった事……ちゃんと謝らないとな

 

その前に簡易診察と応急措置を施さないと、傷口をそのままにしておくのは危険だ

道中華陀から医術を学んでいて助かった、後で華陀にも礼を言わないとだな

 

 

・・・止血はこれで大丈夫か、後は疲れを癒せば目を覚ますだろう

 

 

霞の救出に成功した、愛紗も時期にこちらに向かってくるだろう。

憂いは断った、次は……

 

一刀「韓遂!霞を傷つけた落とし前をつけさせてもらうぞ!」

 

 

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侯選「もう一息だったいうのに、程銀達の妨害で見失ったか!」

 

楊秋「いまは張遼を気にしている余裕はない、裏切り者を始末するのが先決だ。このままでは軍の混乱が収まらぬ」

 

李堪「くそ!俺達の苦労が台無しだ!絶対始末してやる!」

 

張遼を捕縛寸前の所まで追い詰めていた侯選達からは苛立ちは激しかった

天水軍に味方する一刀、愛紗の存在よりも、自分達を裏切った程銀と成宜に怒りの矛先が向いている、張遼の発見よりも先に、裏切り者を始末すると意見が纏まり動き出そうとした時、背後から何者かが近づく気配が・・・

 

一刀「残念だが・・・始末させるのはお前だ」

 

李堪「しま・・・た・・・」

 

背後を取られた李堪は何も抵抗する事が出来ず、一刀の振るう黄龍偃月刀に斬り裂かれ、恨み事を呟きながら倒れ命を落とした

 

馬玩「李堪!おのれ今度は俺が相手だ!」

 

一刀「温い!その程度か!」

 

仲間である李堪を討ち取られ、怒りに燃える馬玩が一刀に向け槍を放つ

しかし、怒りに任せた攻撃を喰らう一刀では無い。

自分に向かってくる槍の先端部分を切り落とし、武器を破壊され硬直している馬玩の首を槍同様に切り落とす。

首を失った体は首より少し遅れてドスンと地面に倒れた

 

張横「李堪!馬玩!」

 

楊秋「二人を一太刀かよ・・・噂以上じゃねえか」

 

自分達と同格の存在であった李堪と馬玩をあっさり討ち取れられ、張横と楊秋に動揺が走る

呂珂を討たなければ、自分達も同じ未来を辿るだろう……と

 

一刀「貴様等は俺の大事な人を傷つけた・・・貴様等を生かして帰すつもりなどない」

 

張横と楊秋は一刀の放つ殺気に飲み込まれ、恐怖心で手の振るえが止まらない

それは背後に控える兵士達も同じだ。中には手だけじゃなく膝もガクガク震えている者、恐怖心で涙を流す者、力無く地べたに座り込み迫り来る死を覚悟する者が続出した

 

 

だが、それで許す程、今の一刀は甘くない

自分の大切な者を傷つけられ、敵対する者達には容赦はしない、かつて一刀に生き様を見せ続けていた覇王の思考を受け継いでいるのだ

 

 

かつての外史で、呂布・・・恋が天和達三姉妹が率いる3万の軍勢を全滅させ、その時に人が空を飛んでいる光景も目撃されていた

 

そんな事が出来るのは飛将軍、天下無双と言われた呂布ぐらいだろうと、一刀はその時思っていた

 

 

 

いま一刀が戦場で見せ付けている光景

 

 

 

 

 

 

叩き付け、切り裂き、空へと吹き飛ばす

 

 

 

 

 

 

恋と全く同じ戦い方を韓遂・西羌連合軍に発揮していた

 

 

 

 

 

 

 

 

この光景は韓遂と直接ぶつかっていた馬岱軍からも確認する事が出来ていた

 

 

馬岱「韓遂もなかなかやるね、簡単には突破出来そうにないかな?」

 

馬岱軍兵士「馬岱様、あちらをご覧ください」

 

馬岱「あっちって・・・うわ!人が飛んでるよ!?しかも2箇所で!?」

 

馬岱軍兵士「馬岱様!あの部隊を率いている者がわかりました!あのお方は汝南で名を馳せた関羽殿!もう1箇所で暴れているお方は呂玲綺殿です!」

 

馬岱「関羽って山越軍を叩きのめしたっていう関羽さん?それに黒山賊の部隊を叩き潰した呂珂さん!?・・・この調子なら、たんぽぽ達来なくても勝てたかもしれないね」

 

そう、規格外の光景が”2箇所”で確認されている

そんな事が出来るのは武の頂きに立つ限られた豪傑のみ

 

天下無双に匹敵する武を持つ一刀

一刀や恋と旅をする中で、自身の持つ素質を開花させ後の世で軍神と称される愛紗

 

この者達を敵に回す恐ろしさを西涼軍の兵士達は目の当たりにしている

 

馬岱軍兵士「なぜ居るのかは解りませんが、関羽率いる一隊がこちらに向かってきています!こちらも攻撃の手を激しくし、関羽隊と挟撃を仕掛けましょう!」

 

馬岱「そうだね・・・みんな!今こそあの爺を懲らしめるときだよ!鶴翼の陣で一気に突破するよ!」

 

 

華雄を救い出し、韓遂本隊を突破していた愛紗は西涼軍が自分の考えに合わせて動いてくれたと理解する

本隊を撃破し、韓遂自身も退ければこの戦は・・・負ける事は絶対に無い

 

愛紗「あちらも動いたか・・・速度を落すな!韓遂が西涼軍に気をとられている間に吶喊する!」

 

 

-8ページ-

 

 

 

 

 

韓遂「馬岱め、中々粘るではないか。しかし、鶴翼の陣で攻め込んでくるとは……包囲殲滅などさせぬぞ!」

 

馬岱軍が仕掛けてくた鶴翼の陣に対抗すべく、指示を出そうとした時・・・またしも凶報が舞い込む

 

伝令「も、申し上げます!敵将関羽!我等の背後に出現!本隊は敗れた模様です!更に敵将呂珂が程銀・成宜両名を引き連れこちらに向かってきております!」

 

目の前にいる馬岱軍、背後からの関羽隊、横からは呂珂、程銀、成宜の部隊

この事態に陥りそうやく気がついた・・・

 

 

自分達は”狩る立場”から”狩られる”立場に成り下がったという事を

 

 

 

韓遂「なぜだ!すべて上手く計画が進んでいた、なぜこうなったのだ!」

 

 

念蜜に立てた計画が崩れ去り、韓遂はその場で地団駄を踏む

その間にも馬岱、愛紗、一刀が迫り、とうとう韓遂の前に姿を現す

 

 

一刀「お前が韓遂か・・・自分の私利私欲、ちっぽけな野望の為に軍を動かし、民や俺の大事な人を傷つけた・・・その報いは受けてもらうぞ」

 

韓遂「黙れ小童が!この涼州はわしの領土だ!外から来た者にとやかく言われる筋合いなどない!」

 

この期に及んでも、韓遂は自らの野望を捨て去ろうとせず、姿を現した一刀達に醜悪な姿を見せ付けている

この男に何を説いても無駄か・・・そう判断した一刀は言葉を重ねるのは止め、黄龍偃月刀を構える

 

一刀「せめての慈悲だ。俺が相手してやる…かかってこい」

 

韓遂「青二才が調子に乗りおって!わしがその生意気な口を斬り削いでやるわ!」

 

韓遂も若い時は自ら前線に立ち、五胡との戦いを繰り広げていただけあって、高い武勇を有していた・・・が、それでも一刀の敵ではない。韓遂が必死に戟を振るってるのに対し、一刀は涼しい顔でそれを捌き続けた。誰の目から見ても、どちらが勝者なのかは一目瞭然

 

この智勇を自らの野望のためじゃなく、他の事に使う事が出来れば・・・道が交わることもあったかもしれないな……と一刀は剣を交えながらそう考えていた

 

一刀「敵軍総大将韓遂!呂玲綺が生け捕った!逃げ出した兵は捨て置け!怪我人の手当てを急げ!これ以上無駄に戦い死者を増やすな!」

 

韓遂を捕らえる事に成功した一刀は、逃げ出した兵への追撃無用と怪我人の治療を最優先に行うように命を飛ばす

 

一刀「愛紗、韓遂を頼めるか?董卓さんに城の牢にぶち込むように伝えて欲しい。俺は少し遅れてから戻る」

 

愛紗「わかりました、華雄隊は引き上げるぞ!」

 

一刀「程銀、成宜は旗本6人の首を塩漬けし箱につめてくれ。韓遂と共に馬騰殿に送る、韓遂の処置は馬騰殿に任せる」

 

程銀・成宜「ハ!」

 

愛紗は韓遂を牢へと連行し、程銀と成宜は6人の首を箱詰めにする為に、兵士達は治療を行う為に去っていき、この場に残ったのは一刀1人だけとなった

 

一刀「さて・・・いくか」

 

 

-9ページ-

 

 

 

 

 

 

 

あれ・・・うちは・・・力尽きて一刀に支えられた後・・・どうなったんや

 

霞「そうや一刀!」

 

一刀「呼んだかい?」

 

霞「いたんかい!」

 

一刀の名を叫んだらもたれ掛かっていた木の後ろから、ひょっこり姿を出した一刀に軽快な突っ込みを入れる

 

一刀「ごめんごめん。体は平気か?」

 

霞「血も止まったみたいやし、痛みが残ってまだ動けへんぐらいやな。一刀が治療してくれたん?」

 

一刀「医療の心得があったからね、傷ついたまま寝かせておくわけにもいかなかったし」

 

霞「そっか、ありがとな一刀!それよりも・・・ほんまに一刀なん?」

 

気絶する前に沸いてきた記憶、目を覚ました今ならはっきりと思い出せる

かつて魏の覇王の下で仕え、一軍を率いる将として蜀・呉の英傑と戦い、大陸を統一したこと

恋を知らなかった自分に女の喜びを教えてくれた最愛の存在

 

 

 

失ったと思っていた最愛の存在が・・・・こうして目の前に居て自分と会話している

その事を霞は一刀の口から確認したかったのだ

 

一刀「俺のこと忘れちゃった?」

 

霞「そんなことない!確かに一刀に会うまでは、はっきりとは思い出せへんかったけど・・・もう全部思い出した!うちに愛する事の尊さを教えてくれた大事な存在やもん!」

 

一刀「そっか・・・さっきは言いそびれたちゃったから、改めて言わせてもらうね」

 

霞「ん、なんや?一刀」

 

霞を尋ねに天水までやって来た一刀

 

 

 

霞が覚えていようが、覚えていまいが伝えたかった言葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「ただいま霞、約束・・・守れなくてごめんね」

 

 

”大陸が平和になった2人で羅馬へと旅に行こう”

 

風から霞と凪が一番自暴自棄となって暴れていたと聞いていた一刀は、約束を果たす事が出来ず、消滅してしまった事をずっと悔いていたのだ

 

許してもらおうなんて思ってはいない、それだけの事を彼女にしてしまった。それでも謝りたく頭を下げる

 

霞「・・・顔を上げて、一刀」

 

霞の言葉通り、恐る恐る顔を上げてみると

 

 

 

 

 

 

若干照れくさそうにしつつも、霞は満面の笑みを浮かべていた

 

霞「うちは一刀が帰ってきてくれただけで・・・また一刀に会えて凄く嬉しいんよ。約束を破ったことよりも、ずっと気にしてくれてたのが凄く嬉しい・・・やっぱ一刀は最高の男の子や!もう一刀のこと離さない!ずっとずっと傍におるからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きやで一刀!!

 

 

 

 

 

 

 

-10ページ-

 

 

 

天水動乱編終了です

 

 

いままで一番長いかなこの話し

霞のこと優遇しすぎたかな?でも記憶戻ったときの反応だし派手にしようと思いました!

前回まで稟と一応いちゃついてたから霞といちゃついてもいいよね

 

次回は戦後の話しとなり、天水編は終了となります。

旅が終るまでもう少し!頑張って描いていきます!

説明
霞回!しかいいようがないです
一刀無双になってればいいなあ〜

2016/1/25 修正Ok
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コメント
関西弁苦手なのかな?ちょっと違和感があります(marumo )
闇羽さん>やっぱり漢字でした?ひらがなか漢字どっちか忘れたのでひらがなにしましたが今後漢字にしますね!(おぜぜ)
naoさん>史実の武将も少し出そうかなと思いましてw霞も結構乙女なのでこの展開になりました(おぜぜ)
三年寝太郎さん>話の構成上詠とはぐれてるので出す場面なかったです(おぜぜ)
kiraさん>あ、後でなおしておきまーす(おぜぜ)
心は永遠の中学二年生さん>一刀君の本気出すとこれぐらいだって目安はわかりやすいほうがいいかなとおもったんですが〜だめすかねw(おぜぜ)
げんぶさん>このころ飛将軍(呂布)の勇名がないので比較対象がいないのでもってきたんですけどやっぱそう反応なりますかね(おぜぜ)
あかさん>過去の偉人で武で名を轟かせた武将みたく暴れまわったとの引き合いで項羽出したんですが・・・派手すぎでしたかねw(おぜぜ)
たんぽぽは漢字で蒲公英ってなっとりますのでできれば以後は漢字にして欲しいかなーと。(闇羽)
一人だけ忘れ去られてる永ちゃんは何処?(三年寝太郎)
霞がちゃんと思い出してくれてよかった!あとなんか知らん人が仲間になったw(nao)
誤字報告・・・五湖→五胡です。(kira)
項羽と同等・・・天下を二分する奇才と言いたいのだろうね〜恐ろしい!!(心は永遠の中学二年生)
項羽と同等・・・すごい力なんでしょうね。自分も項羽題材で書いているので改めて楽しんで読ませてもらってませ(あか)
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