真・恋姫無双外伝~覇王の願い~帰還編vol.12『忘却』
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朝。

その朝はやけに肌寒くて

意識がもどれば身震いし、耳に生暖かい息が感じられるほどで・・・・

 

 

・・・。

 

 

 

【一刀】「・・・ん・・・」

【貂蝉】「んぅぅぅぅ」

【一刀】「うぉわぁっ!」

 

 

文字通り飛び起きた俺は現状を把握しようと頭をフル回転させる。

寝ていた俺をまたがるようにして、貂蝉が俺を見下ろしていた。

後数秒、起きるのが遅れれば人として何かを失っていた気がする。

 

【一刀】「・・・寝てる間は近づくなって言っただろ?」

 

【貂蝉】「だけど、ご主人様ってばすごくうなされてたんだもの」

 

【一刀】「そ・・・そっか・・・」

 

それでも、あれはどうかと思うが・・・まあ、いいか。

 

 

 

【卑弥呼】「それで、一刀よ。さっそくで悪いのだが心の準備のほうはできたか」

 

【一刀】「ああ、卑弥呼もきていたんだっけ」

 

【卑弥呼】「うむ」

 

【一刀】「・・・うん。行こう」

 

 

 

 

二人と神殿の中へ入っていく。

 

やはり・・・というべきか、そこはこの時代には似つかわしくないデザインだった。

 

カツカツと足音のなる廊下を抜け、やがて大広間へと出た。

 

【一刀】「ここ・・・・」

 

【貂蝉】「じゃあ、はじめましょうか」

 

そういうと、貂蝉と卑弥呼は前へ歩き出す。

 

その先に見えたのは祭壇。

 

その中には鏡があった。

 

 

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その鏡の前で目を閉じる。

 

むこうに戻ってから、最悪だな。

 

本当にさ

 

正直に言えば、嫌だよな。

 

ものすごく嫌だ。

 

だって、怖いだろ?

 

恋人との記憶全部、消されちゃうんだからさ。

 

しかも

 

俺にはそれだけじゃない。

 

そう

 

記憶を消したところで、それはまた外史としての形を取り戻すだけ。

 

その上で尚、この世界は終端へ向かう。

 

何がいけなかったんだろう。

 

何がだめだったんだろう。

 

形はおかしくても

 

好きな人がいちゃ、いけないか?

 

好きな人の願いをかなえちゃだめなのか?

 

好きな人と・・・一緒にいちゃ、いけないのか・・・?

 

そんなことが頭の中で巡り巡る。

 

文句をあげればきりがない。

 

だけど、

 

俺は守りたい。

 

うん、守りたいんだ。

 

俺の・・・・みんなの居場所を。

 

 

 

 

だから―――

 

 

 

 

 

―二人とも・・・頼みが・・・ある―

 

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それは、とても静かで、

 

小さな紙を少しずつ燃やすように

 

それでも

 

ゆるやかに

 

確実に始まった。

 

 

 

 

 

 

成都――

 

 

 

【関羽】「桃香さま!」

 

【劉備】「ん?愛紗ちゃん、どうしたの?」

 

関羽が血相を変えて広間に駆け込む。

 

【関羽】「それが、物見からの報告で、南蛮のほうよりかなり巨大な光の柱がたっていると」

 

【劉備】「光の柱?それってなにか起こるの?世界の滅亡とか?」

 

【関羽】「いえ・・・そこまでは・・・ただ、あまりにおかしな事態なものですから・・・」

 

【劉備】「落ち着こうよ、愛紗ちゃん。もし、何か起こるんだとしても、みんながいるんだから大丈夫だよ。」

 

【関羽】「桃香さま・・・・」

 

【劉備】「ね?」

 

【関羽】「はい!」

 

 

 

 

誰も気づくことなく。

 

静かに。

 

ただ消えていく。

 

ただ、関わりが薄かった。

 

それだけかもしれない

 

それだけで人の脳は容赦なく、その存在を抹消する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建業――

 

 

【孫策】「冥琳、みた?」

 

【周瑜】「あの光の柱のことか?」

 

【孫策】「ええ・・・なにかの前触れかしら」

 

【周瑜】「たとえそうでも、騒いだところで詮無き事。あれは明らかに我々が手を出せる代物ではない」

 

【孫策】「そうなんだけどね・・・なんていうか、見てるだけってのは性に合わないのよ」

 

【周瑜】「ふふ・・・」

 

【孫策】「なによ~」

 

【周瑜】「いや、別に」

 

【孫策】「ちょっと冥琳~~~」

 

 

 

 

 

 

ただ、この一瞬

 

この瞬間のものは

 

だれが望んだものだろう。

 

人々の心よりただ消え去るひとつの存在。

 

 

 

―――――。

 

 

 

それはあまりに優しく

 

あまりに儚い。

 

それ故に、燃え尽きようとする記憶は

 

彼女らにとって、静か過ぎた

 

 

 

 

 

しかし、それを待ち望んでいたものにとっては

 

城が崩れていくほどのものだったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

【華琳】「帰ってきなさい・・・・か、ず・・・・」

 

 

 

 

 

 

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【華琳】「・・・・ん」

 

体がずれる衝撃で目が覚めた。

 

眠っていたようだ。

 

うたた寝なんて久しぶりだ。

 

でも、妙にすっきりしている。

 

さきほどまで、中庭でなにかしていた。

 

なんだっけ。

 

ぼーっとして、思い出せない。

 

ただ、ぼーっとしていただけなのか。

 

自分がそんな無駄な時間をすごすとは思えないけど、

 

思い出せないのだから仕方ない。

 

【華琳】「あれは・・・」

 

振り返ると、南のほうで筋が一本。

 

いや、光?

 

それが空を割っていた。

 

なぜか見入ってしまう。

 

【桂花】「華琳様~」

 

桂花の声が聞こえた。

 

【華琳】「・・・桂花?」

 

【桂花】「あ、こちらでしたか。・・・・華琳様!!?」

 

え?

 

【桂花】「どうぞ、これをお使いください!」

 

そう言って布を手渡してくる。

 

【華琳】「え?」

 

桂花が何をしているのかわからない。

 

その布をどうしろと?

 

と、手を顔にあてて思案する。

 

だが、答えはすぐにでた。

 

手が濡れていた。

 

 

 

でも、どうして・・・・

 

 

どうして、泣いているんだろう・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

説明
真・恋姫無双(魏ED)のアフターです。
そろそろ佳境に入ってきましたね。
さて、一刀はどうなるのか

1話⇒http://www.tinami.com/view/73594
11話⇒http://www.tinami.com/view/74428
13話⇒http://www.tinami.com/view/74504


番外編vol.1【Never Memories】⇒http://www.tinami.com/view/76029


※番外編はこのお話の華琳視点になってます。よろしければそちらもどうぞ(`・ω・´)
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コメント
その通りですよ(sugerless777)
魏ルートで死ぬのって祭だけじゃなかったけ?(都非様)
あれ? 魏ルートなのに雪蓮と冥琳が生きてる・・・(JDA)
ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・orz(フィル)
記憶は消せても体が覚えていた、もっとも愛した者が消えたことに。(ブックマン)
どうして、泣いているかは あなたしか分かりませんよ。 曹操殿   かなり揺さ振られてしまうよ!早く続き見たいです!!(Poussiere)
本当に忘れちゃったのか華琳!?俺との熱い思いd……ギャランドゥ(`・Д)=●)△`) 早く続きが見たいです!?(混沌)
・・・・・・はい?・・・(乱)
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真・恋姫無双 覇王の願い 一刀 貂蝉 卑弥呼 華琳 

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