真・恋姫無双 雌雄の御遣い 第三十九話 |
〜一刀視点〜
鞘華達が帰還してきた
鞘華が無事なのでほっと一息ついたところに恋がトコトコと歩いてくる
「一刀、恋、頑張った」
と言って頭を少し此方に傾けて来る
「ありがとう、恋」
そう言ってその頭を撫でてやる
恋は嬉しそうにしている 表情が乏しいのでなんとなくだが
恋が陣営に来てから分かった事だが、彼女は頭を撫でてもらうのが好きなようだ
だから、褒められるような事をしたときは頭を撫でてあげるようにしている
少々、子供っぽいが鞘華曰く
「元々、甘えん坊な性格だったんじゃないの?
それなのに、飛び抜けた武の所為で周りは崇拝、尊敬、畏怖、こんな感じでしか接してこない
だから甘える事が出来なかったんでしょ
今は一刀に甘えられるから恋にとっては一番よかったんじゃないの?」
そうだと良いのだが・・ ただこうしていると決まって
「こら〜、このヘボ太守 恋殿から離れろです〜!
チンキューキッ〜ク!」
と言って音々が飛び蹴りを敢行して来る
勿論、馬鹿正直に喰らう義理も無いので躱すが
「躱すなです!」
いや、躱すだろ
そうしていると
「音々、メっ」
と恋が音々を窘める このやり取りが恒例となっていた
「う〜む一刀と次に結ばれるのは私のつもりでしたが、思わぬ強敵が・・」
「一刀様の側妾に早くなりたいのは皆同じなのだが、恋が割り込んでくることになりそうな雰囲気だな」
「私は順番はどうでもいいけどあんまり待たせて欲しくは無いんですけどね〜」
「一刀は一体何人、女性を引き付ければ気が済むのかしら」
周りがいろんなことを言ってるな(ちなみに、紫苑と静里を抱いた事は鞘華以外は知らない)
「一刀様、荊州の南部を制したので例の件、ご決断を」
葵が進言して来る
正直、この件は余り気が乗らない
その理由でもある雅様の方を見ると寂しそうな笑顔を浮かべて頷いてくる
そうなっては、もう決断するしかない
「分かった」
と俺が答えると雅様が進み出て
「では、漢王朝皇帝 劉協の名に於いて命じます
北郷一刀、貴方を大和国の王に任命します」
そう宣言した
益州と荊州南部を領土として俺が王となる
これはもう暫く先になるが俺が禅譲を受ける前段階だ
有力者が王のような公職を受け、その後禅譲を受ける
史実でも魏が行っている
それを、俺が受けることになる
事の起こりは益州を制圧して政務が軌道に乗った頃に遡る
ある日、雅様が俺の居室にやって来て
「漢王朝は、もはや限界に来ています
一刀、私は貴男に禅譲を行いたいと思います」
そう言って来た
「ちょっと待って下さい
そうしたら漢王朝は正式に滅びたことになります
禅譲しないでも俺達と共に漢王朝を復興させれば・・・」
「いいえ、それは無理です
寧ろ十常侍の専横を許した時点で漢王朝は滅びるべきだったのです
私が「漢王朝の復興」と云う幻想を持っていた為に今日まで過ぎてしまったのです
この国の為には新たなる王朝が建つべきなのです」
こういわれては反論が出来なかった
「分かりました、明日にでも皆に話しましょう」
そして翌日
「それは、良いのですが益州を制圧しただけの今はその時期ではありません」
葵の進言を受け、その時に計画立案を進めていた荊州制圧が終わってからに、と云う話になった
荊州制圧は南部のみで完全には成功しなかったが今が時期と判断して行う事になった
「襄陽に居る静里達にも連絡して式典を執り行いましょう」
葵が進言して皆が動き始め、そして10日後正式にそれが発表された
〜雪蓮視点〜
「冥琳、これどう思う?」
私が冥琳に訊くが答えは分かっている
「分かってて訊くなと言いたくなるような問いだな
間違いなく近いうちに一刀への禅譲が行われる
その前段階だな」
予想通りの返答に私は
「じゃ、私達が取る行動を告げるわ
一刀、いえ大和に使者を送るわ」
「待て、雪蓮
祝辞の使者を送れば降る事を承知したようなものだぞ
お前は一刀に降るつもりなのか?」
冥琳が慌てて私の言葉を遮ってくる
「いずれは、その選択肢もあるかもね
でも今回は違う
使者は冥琳、貴方が行って そして内容は・・・」
私が告げた内容に
「成る程、まあ定石と言えるな
その考えが何故か抜けていた
蓮華様には申し訳ない・・でもないか
寧ろ喜んで、でしょうかね」
「冥琳!」
蓮華が真っ赤になって声を荒げる ふふっ、可愛いわね
「冥琳、直ぐにお願い」
「御意」
そう言って冥琳が退出して行く
(問題は、この話がうまくいった後どうするか
一刀に降る選択肢も含めて、ね)
私は溜息と共に考え込んだ
〜桃香視点〜
「ほえ〜、北郷さん 王になっちゃったよ」
「なに呑気な事を言ってるんですか
これは、いずれ行われる北郷さんへの禅譲の準備段階です」
朱里ちゃんが珍しく声を荒げる
「ええっ そうなの?」
私が驚くと朱里ちゃんと雛里ちゃんが声を潜めて何か話している
(雛里ちゃん、私達 仕える人を間違えたんじゃ・・・)
(朱里ちゃん、それは言って駄目 確かにおつむは足りないけど人徳だけなら一流の筈だから・・
そう思い込もう)
「でも、こうなると私達はどう行動すればいいんだろ?」
朱里ちゃん達の内緒話は置いておくとして、私が話を促す
「この件、その物については傍観するしかありません
ただ、私達はこのままでは大和、孫呉、曹操のいずれかの勢力に攻め滅ぼされる未来しかありません」
朱里ちゃんの発言に
「ならば、そのいずれかと同盟したらどうだ?
同等な立場の同盟は無理でも従属的な同盟なら持って行き方で可能じゃないか?」
白蓮ちゃんが言ってくる
「確かに可能かもしれませんがそうなると桃香様の理想は・・・」
「朱里ちゃん、私の理想は私でなければ叶えても意味が無い訳じゃないよ
私が無理だった場合、誰かが代わりに叶えてくれればそれでも良いんだよ
当然、私が叶えるのが最善で無理だった場合だけどね
白蓮ちゃんの意見なら従属して、その相手が間違った時に諫言する そんな立場になれるんだよ」
朱里ちゃんの発言を私は遮って言う
「分かりました
では、相手はどこにしましょう」
曹操さんは・・・
孫呉は・・・
大和は・・・
色々な意見を聞いて決断し、沙羅様の了承を得て使者を出す
〜華琳視点〜
「やられたわね、いずれこうなると予想はしてたけど・・・
これを牽制する為にも涼州を抑えておこうと思ったのに・・・」
一刀が王になったという桂花の報告を受けて、口から出るのは後悔ばかり
この流れは止められない
ならば、私に出来る事は限られている
ただし、それには力が要る
その力は涼州制圧失敗で落ちてしまった
結論として私は早急に国力の回復を図ることにした
〜翠視点〜
「うん?これ何の意味があるんだ?」
私が受けた一刀が大和の王になったという報告
「別に太守のままでも変わんないだろ?」
「蒲公英に訊かないでよ
お姉様ほど脳筋じゃないけど蒲公英だって頭良くないんだから」
頭が良くない自覚はあるんだな それより誰が脳筋だって〜!
「二人共、何を言ってるんですか!
これは北郷殿が近いうちに陛下から禅譲を受ける前段階です」
馬休が私達に怒鳴る
「なんだって!
そんな事が認められるか!
涼州の将が仕えるのは天子様のみ!
それが本当なら一刀と戦うのも・・・」
「お姉様、ちょっと待ってよ
私達は助けられたばかりなんだよ
そんな恩知らずな事して良いの?」
蒲公英が正論を言ってくる
「しかし・・・」
「なら、成都に行って陛下や一刀お兄様に直接訊いてみよ
それで、納得できるかどうか って事でさ」
蒲公英の意見を採用し成都に蒲公英と共に向かう
〜あとがき〜
新年 明けまして おめでとうございます
今年最初の更新です
急展開です
私の書く話はこういう事が度々ありますね
禅譲にはもっと段取りがあるのは調べて分かりました
でも、それらは直前の「王」になるところまですっ飛ばしました
その他にも批判があるでしょうけれどこの外史ではありなんだ、と思ってください
便利な言葉ですね、外史って
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
説明 | ||
一刀達が動き始める | ||
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コメント | ||
あーもう、〜桃香視点〜直後の朱里と雛里の()無いのセリフが的確過ぎてw(とんぷー) いよいよ建国ですか……うん、自然な流れですね。これがまた新たな火種になりそうだが……(Jack Tlam) |
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