真・恋姫無双外伝〜覇王の願い〜星詠編7 |
華琳と薫の鉢合わせから数時間前―――。
蒸し暑い曇りの昼下がり
華琳自室。
【華琳】「・・・・・・」
ずいぶんと落ち着かない。
蒸し暑いせいでイライラしているのかと思ったが、それもすぐ否定する。
これくらいこの季節では当たり前だ。
それに今日に限って誰も来ない。
いつもなら春蘭あたりが飛び込んできそうだけど。
少し、ぼーっとしていた。
一刀のことを考えていた。
昨日は変な娘のせいでずいぶん心労もたまっていたけど、
結局最後は私から一刀を求めた。
感情が昂ぶっていたせいか、いつも以上にもとめてしまった。
4回以降は覚えていない。
・・・・
・・・・
そういうことじゃなくて!
そう、そうじゃない。
朝起きたとき、一刀はいなかった。
どこに行ったかは後で聞いた。
なんだろう。
やっぱり落ち着かない。
物足りない。
ガタガタ、ドタバタと外が騒がしい。
【華琳】「・・・・?何かあったのかしら」
と、部屋を出る。
出てみると、文官たちがせわしなく走り回っていた。
【華琳】「ちょっと、この騒がしいのは何事?」
近くを通っていた文官を呼び止める。
【文官】「あ、これは曹操様。いえ、それが今日に限って処理する案件が増えまして・・・」
【華琳】「・・・?仕事を増やしたような覚えはないけれど・・・」
【文官】「いえ、それが今日はほとんどの将軍様達が他の用事があるとかで・・・」
【華琳】「・・・・そう。ありがとう、引き止めてしまってすまないわね。」
【文官】「いえいえ、それでは失礼します。」
他の用事?
特にそんなものは聞いてないけど・・・
【華琳】「また一刀がなにかしているのかしら」
とりあえず、一刀を探してみる。
廊下を渡り、大広間へ。
ギィィ
扉を開け、中をのぞく。
人の気配はない
念のため中に入って確認する。
やはり誰もいなかった。
次は一刀の自室。
通路を進み、一刀の部屋の扉の前へ――
コンコン
ノックする。
そこでふと思う。
【華琳】「そういえば、これもいつからの習慣かしらね。」
特にいつから、というわけではない。
いつの間にかするようになっていた。
そして、よくわからない習慣で一刀に来意を知らせる。
しかし反応はない。
いないのかと思ったが、とにかく扉をあける。
だが、そこにも一刀はいなかった。
仕方ないので他の場所を探す。
【華琳】「あ、そこの貴方。ちょっといい?」
部屋の前を通ろうとしていた侍女に声をかける。
【侍女】「曹操様!?・・・あ、はい!何でしょう?」
【華琳】「一刀がどこにいるか知らないかしら?」
【侍女】「北郷様ですか?それなら、朝から外にいってまだお戻りになってませんが・・・おそらく街ではないでしょうか?」
【華琳】「街ね・・・。ありがとう」
【侍女】「あ、はい!では失礼します」
とお辞儀をし、侍女は行った。
一刀は外。
それはわかった。
【華琳】「・・・・・・・・・・・しょうがないわね」
と言っておく。
そう、しょうがない。
外にいるのだから。
自室で政務をしていた秋蘭に街へ行くことを伝え、外出する。
ガヤガヤとにぎわう街。
いつもどおりの街の活気に安心する。
しかし、街にいるとは言っても、どこにいるのやら。
なにしろこの街も広い。
【華琳】「・・・・・あら?」
【真桜】「あ、大将やん」
真桜が前から歩いてきた。
【華琳】「そうだわ、真桜。一刀を見かけなかった?」
【真桜】「??隊長やったらさっきそこの茶屋の前におったけど・・・・」
【華琳】「ふむ。そう、ありがとう。行ってみるわ」
そう聞いて、思わず足が速くなった。
そこにいる。
【真桜】「あ、そうや。大将、隊長に会うんやったら・・・・ってもういてへんし」
活気のある街はいつもより人が多いような気がした。
大通りを少し進み、真桜の言っていた茶屋が近づく。
ここからでも見えないかとさがしてみるが、見つからない。
そのまま茶屋の前まで行ってみる。
しかし、ここにも一刀の姿はなかった。
【華琳】「まったく・・・・用があるときにいないんだから・・・」
そして、振り返ろうとしたとき――
【薫】「きゃあああああ!!痴漢ーーーーー!!!!」
【華琳】「・・・・は?」
急にきこえてきた叫び声。
そして、その声を中心にざわめきだす民衆。
しかも聞こえてきたのはつい昨日聞いたばかりのあの声。
【華琳】「・・・・・あら、沙和?」
【沙和】「ちょっと、通してなのーーー!!!・・・・あ、華琳様!」
【華琳】「こんなところで何しているの?」
【沙和】「ちょっと凪ちゃんに頼まれて人を追ってるの♪」
【華琳】「そう・・・。ところで一刀を見かけなかった?」
【沙和】「うーん、あ!隊長ならさっきそこの路地に変な人と入っていったの見かけたの!」
【華琳】「変な人?」
【沙和】「ほとんど裸でムキムキで坊主で三つ編みでオカマな人なの」
【華琳】「す・・・すごいのね・・・」
一刀が何してるのか知らないけど、とめたほうがいいような気がしてきたのは気のせいかしら。
【沙和】「じゃあ、急いでるからまたもう行くの。またね、華琳様!」
【華琳】「ええ、気をつけてね」
【沙和】「はいなの!」
と、沙和は走っていった。
そこの路地・・・
そう言っていた。
なら、そこに向かう。
普段明かりの入る街とは違い、路地は少しくらい。
それが今日は曇っているのだから、尚のこと。
路地を通る。
カツカツと足音を立てながら薄暗い中を歩く。
ある程度進んできたが、一刀の姿はまだ見えない。
そして、いよいよ路地から再び通りに出るところが見えてくる。
【霞】「そんなもん自分で伝えるわーーーーーー!!!」
と聞こえてきた叫び声。
しかし今度は、霞の声だった。
【華琳】「霞?」
といっても、姿が見えているわけではない。
一瞬のざわめきが聞こえた後、すぐ元通りにもどった。
【華琳】「なんなの・・・?」
用事があるといっていた者達が街に出たとたんに見かけ始める。
まったく、何をしているのか
そして、再び足を進める。
もう通りに出てしまうところまできていたので一刀は路地をぬけたのか。
そう思い、自分も通りへ出ようとした―――
ドオォォーン!!
地鳴り。
かなりちかいところで重いものが地面に落ちた振動がこちらまで伝わってくる。
ドォォーン!!
また。
何事かと思い、音のするほうへ歩いていく。
すると
【季衣】「流琉だって、ボクの採った木の実勝手に料理につかったでしょーーー!」
【流琉】「そのあとちゃんと季衣にもあげたでしょ!!それにそんな昔のこといわないでよ!!」
流琉と季衣がケンカしていた。
こんな街中で・・・。
【華琳】「・・・。季衣!流琉!」
【二人】「華琳様!?」
【華琳】「あなた達こんなところで何しているの。街中で武器振り回して被害がでたらどうするつもり?」
【二人】「・・・・・・ごめんなさい」
【華琳】「・・・・まあ、いいわ。それより、こっちへ一刀はこなかったかしら?この辺にいるらしいのだけど」
【流琉】「兄様は今日はまだみてないですね・・・」
【季衣】「ボクもわからないかな〜」
【華琳】「そう。」
ここにきて、一刀の足跡がきえた。
この通りを越えたことは確実。
かなり限定はされたけど・・・
【季衣】「華琳様、ボク達まだ用事残ってるから、いってくるね〜」
【流琉】「華琳様、ご迷惑おかけしてすみませんでした!失礼します」
【華琳】「ええ、気をつけてね。ケンカは場所をえらぶように。」
【二人】「は〜い」
二人が行った。
どうするか、ここまで来たのだから手当たりしだいに探してもそれほど時間はかからないけど・・・
とりあえず、歩き出す。
そして、しばらく歩きながら、一刀を探す。
当然ながらなかなかみつからない。
【華琳】「ふぅ・・・・」
空を見上げた。
どんよりと曇った空。
ずいぶん身近に感じられる空だった。
こんな気分を持つようになったのはここ最近。
特に、3国での大陸平定が成ってからの2年の間はずっとこんな調子だ。
たしかに、覇道は最初に思い描いていたものとはずいぶんかけ離れてしまったけど、
これはこれで満足している。
なのに、それから気持ちが晴れたことは一度も無い。
一度もない・・・というのは嘘かもしれない。
少なくとも一刀に抱かれている間は満たされているのだから。
しかし、こんなことを考えてることが春蘭や桂花あたりにばれたら大変ね。と自嘲する。
別にあの二人だと満足できないというのではない。
ただ、あの二人や秋蘭、他の子達と一刀はやはり違うのだ。
2年前。
ちょうど文官が不足していた頃に図ったように公募に募り、
そして採用される。
初めて会ったあの城壁。
でも、あの時
初めてではない気がした。
おそらく、初めて会ったその男に対して、会えてうれしいと感じた。
切なさとうれしさが一気に溢れたのだ。
”初めて”会った男に対して。
今なら、認めることも出来る。
あの時は混乱して、否定しかできなかった。
私はあの時、泣いていた―――
ずっと頭に残っていた約束という言葉。
名前も姿もわからない男に対して会いたいと思う違和感。
どうして、そんな感情をもつのかもわからないけど、
すくなくとも、その相手は一刀である。
初めて会ったにもかかわらず、私達は以前から知っている恋人のように抱き合った。
そして言った。
ただ、感情の溢れるままに。
―おかえり、なさいっ・・・・・―
今となってはまったくの謎だ。
よろしく。でもない
好きだ。でもなかった
ただ、『おかえり』
そういえば、一刀も何か言っていた気がする。
私はただ泣いていてうまくは聞けなかったけど、
おそらく同じような気持ちだったのだろうと感じる。
あの瞬間は今までの不満が一気に吹き飛んだ気がした。
だけど、今は・・・
また、昔にもどっている。
なぜなら、一刀は私以外の女とも関係をもつ。
それ自体は別に許せないことではない。
それくらいの器量はあるべきだ。
だけど、
なにか、不満なのだ。
抱くことは許せても、話しているのを見るとつらくなる。
一緒に寝ることは許しても、一緒に出かけることは不満がある。
【華琳】「はぁ・・・」
あげていた視線を落とす。
気を取り直す。
今は一刀を探しているのだ。
気分を入れ替えるように頭を振り、歩き出す。
ドォォーーーーン!!!!!
さきほどの季衣と流琉のときより大きい音。
しかも今度は路地が崩れている。
【華琳】「な・・・・っ!」
あわててその場所へ向かう。
狭い路地であれだけの破壊力をだせる者は限られる。
確実にうちの誰かだろう。
そして、路地の入り口に立つ。
奥から足音が聞こえる。
近づいてくる。
暗い路地のため近くに来なければ、顔まで視認できない。
足音が近づいてきた。
こっちからも少し歩み寄る。
荒い息遣いがきこえる。
何かから逃げている?
【華琳】「・・・・・・」
そして足音が目の前で止まる。
【薫】「・・・・え?」
その顔を見て、明らかに動揺する自分が見える。
【華琳】「騒がしいと思ったら・・・・・また、お前・・・なの?」
できるだけ平静を装って。
こいつとは、昨日最悪の出会いをしたばかり。
なんと言っていいかわからず、そう言ってしまった。
その顔が汚れ、服もボロボロの少女に。
少し、あとがき
皆さんこんにちわ!
これの前に投稿した絵で5時間、この話で8時間で休日を完全にTINAMIにささげた和兎です!
さすがにちょっときつかったですねw
というわけで、これからは寄り道せずに小説のほうに少し集中しようかと(’’
・・・・・で
今後の展開ですが、上にも書いているとおり、主人公の薫及びメインヒロインの華琳の二人の視点を交互にすすめる感じにしようかと。(`・ω・´)
そうすると話そのものの展開が帰還編にくらべて遅くなるかもしれませんがご容赦くださいorz
そうなると一刀の位置ですが、前作の貂蝉や卑弥呼的な位置に持っていこうかと思案中です。
あとは、この話にどう天和達をからませるか・・・・
それに桂花と薫の対決もいれてみたかったり・・・
まだ出番の少ない春蘭と秋蘭も色々と役割あげたいですし
やること多すぎですねw
でも、頑張って最後まで書き上げたいと思いますので最終話までお付き合いいただけると非常にうれしいです。
たぶん涙します。
というわけで、これからもよろしくお願いします!(`・ω・´)
和兎でした。
説明 | ||
真・恋姫無双(魏ED)のASです。 さて、今回は鬼ごっこの裏展開。 華琳のターンです! ずっとどうしようか迷ってきたけど、やっぱり薫と華琳のツートップが一番しっくり来るかなと思い、この二人メインで一刀を少し下がらせようと思います。 そして今回は華琳のターンですが、オリキャラとの絡みのため若干キャラ崩壊の恐れあり>< もしあれ?華琳?って思われた方は温かい目でスルーしていただけるとうれしいですorz 追記:しかし、星詠編に入ってから、読み返すたびに脱字が見つかっている気がする・・・w ■帰還編1話⇒http://www.tinami.com/view/73594 ■星詠編1話⇒http://www.tinami.com/view/74771 ■星詠編6話⇒http://www.tinami.com/view/75434 ■星詠編8話⇒http://www.tinami.com/view/75795 |
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コメント | ||
だんだん分かって来・・・・・・て無いなまだ(スターダスト) 何かが起きる・・・マジで怖い(ブックマン) 1日捧げるとは・・・・・・作者の鏡ですね! 取り合えず、華琳のデレが凄く良かったですwwww あれは、やばいね 萌えたわw あんまし、頑張りすぎて体調を崩さないで下さいねw さて、一刀が脇役位置に行きそうな展開になってきたね(マテコラw) 次の展開に期待ですヾ(≧∇≦)〃(Poussiere) 一日を丸々捧げるなんて・・・・・・・・・凄い根性ですねwww 華琳も複雑ですね〜。最初の方の「・・・しょうがないわね」とかいろいろな感情が混ざってそうだしwww 何はともあれ、お疲れ様ですw体調とか気分とか色々気をつけてくださいねv(>▽<)v(フィル) |
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