超次元ゲイムネプテューヌmk2 |
魔剣を封印する場所として隠されていた見上げる程の巨大なギャザリング城は今や瓦礫の山とかしていた。具現された旧神の力は二匹の龍を模り、互いは城を中心に螺旋を描く様に破壊の限りを尽くした。その衝撃波でモンスターの巣となっていた城はまるごと消滅、中にいたネプギアと空は地下へと逃げていた。
「……やられた」
「((女神を要求する未来|ゲハバーン))が……」
大量の砂埃を浴びた二人は目的地まで辿りつき空は落胆、ネプギアは絶望色に表情を歪ませた。
ネプギアにとってこの場は、良き隣人を家族を生贄して世界を救う魔剣を手に入れてしまった罪の始まり。
「((女神を要求する未来|ゲハバーン))の情報は徹底的に隠蔽してるのに……例えどんな物か分かっても、この場所はどこにも記してないのに……どういうことだ…?)」
ゲイムギョウ界の管理者だった空は冷静に考えを纏める。
まずこの場を知っている者は、ギョウカイ墓場を治めるゼクスプロセッサ・ドラゴニスと空のみだ。今まで((女神を要求する未来|ゲハバーン))を使わなければならない可能性が出てきた時は空自身が一般人に化けて女神に朧げに情報を出したりしていたが、未来の選択肢を女神達に譲った時点でゲイムギョウ界に介入することは辞めている。総合した結果、ゼクスが吐かされという可能性が一番だった。信頼を抱いているが故に信じたくなかったが、こうなってしまったことは仕方ないと割り切るのも大事だと結論付けた。
「ネプギア」
「……ぁ、ぁぁ……っ」
((女神を要求する未来|ゲハバーン))を使い世界を救い、ゲイムギョウ界に見放され、人々から忘れられた女神ネプギア。
そのあまりに残酷で無惨な記憶を持ってしまっているネプギアは地面に膝を落とし、魔剣が封印されている筈の祭壇を見つめながら、光泣き瞳から流れた涙が地面に一滴、二敵と墜ちていく。
ポンッ。
「………ぁ」
「まだ未来を選択するときじゃない。諦めなくなかったら立ち上がって」
優しく頭に乗せた手にネプギアは砂埃で薄汚れた空の顔を見た。宝石のように綺麗だった。
空は懐から通信端末を取り出し、電源を入れる。画面が光ると同時に空中に投影される電子ディスプレイの中から連絡を入れる為にゲイムギョウ界の賢者に連絡を入れる。
「イストワール、ちょっといい?」
『空さん!?丁度連絡を入れようとしていたところです』
直ぐに応答は帰ってきた。ディスプレイにはとても焦っているイストワールが映しだされていた。
「こっちも緊急事態だけど……どうしたの?」
『バーチェフォレストが冥獄界化しました!【汚染化】モンスターでけはなく、【猛争化】モンスターまで出現していると情報が……!』
「( ゚-゚)( ゚ロ゚)(( ロ゚)゚((( ロ)~゚ ゚」
『そ、空さん?』
「mwあbの絵cくぁqvvg邪fwvr場オア野神あ!?」
『ゲイムギョウ界の言葉で話してください!』
「っと……わ、分かった。直ぐにそっちに向かうただ怪我人二人と一匹受けれる準備をしていて」
『分かりました。……申し訳ありません』
「誤らなくてもいいよ。頼ってくれてちょっと嬉しいし」
連絡が終わり、空は通信端末を懐に仕舞った。
「……ゼクスが吐いた可能性を取り除けばそっちの可能性も十分にある。ネプギア、プラネテューヌに一度戻ってバーチェフォレストに向かうよ」
「……『((女神を要求する未来|ゲハバーン))は、どうするんですか…?』
「魔剣盗られて、異常事態が発生したんだ。関与している可能性はある……どうする?」
「−−−行きます」
涙を手で拭いて立ち上がった。その瞳には絶対に魔剣を取り戻す意思が燃えていた。
空は良かったと内心呟き、《神獣形態》を撃った反動で体中の筋肉が切れている状態であっても、体の中でガスを発生させ、それを利用しながら無理やり体を動かした。再生する時間は移動しながらも十分だと判断しての行動だ。魔力を充填させたヴァルヴァドスを瓦礫で埋まっている外へと通じる通路に照準を構えた。
「空さん」
「どうした?」
「私は、((私|ネプギア))に誓います。悲愴な結末を選ばないって……」
「…………うん、頑張ってね」
口だけで笑みを空は引き金を引いた。
応急措置を済ませ、二匹の龍達によって崩壊した城を前にして慌てるコンパとアイエフの前の瓦礫の山は白い閃光が吹き飛ばし、空とネプギアの視線は遥か向こうのバーチェフォレストを睨んでいた。
◇
「あぁ、心地いい血潮の臭いが乗った風だ」
木々が生み出す自然の闇の中で黒と緑のレザーロングコートを着た一人の少年はその手に神を糧し、神を殺す魔剣を地面に突き刺し、鋭く冷たい女性の声が闇の中に響く。
「冒涜的な輪廻の中で何度も繰り広げてきた猛争の渦の欠片。泡沫のように滅びる世界。しかし、驚いた。監理者は既にその座に存在することはなく、ただの傍観者と成り果てている。奇跡だと喜ぶべきか、悲劇の始まりだと悲しむか……さて」
いま紅夜の体を動かしているのは冥獄界にへ眠っていた、魂だけの存在((肉体が死滅した前代|・・・・・・・・・))のブラッディハードは、静かにゲイムギョウ界に満ちるネガティブエネルギーを感じ取った。人類の負の頂点たる存在と女神候補生だと生きてきた時代の中で見たことがない存在がこちらを見ているような感覚に笑みが零れる。
「私はただ暴虐にて人類を絶望に落す者。希望がどれだけ光輝に満ちた存在であるかを証明するだけの隷属でしかない。しかし、私は知らぬ女神の為に殺され利用されるのは御免こうむる」
異なる色をした双眸を見開き、『指令』した内容を更に重くする。
所詮多種多様のネガティブエネルギーで作られた自意識が存在しない物は魂まで縛っておかなければ直ぐに寝プラネテューヌに向けて進行するだろう。
それはダメだ。自身の信仰すべき女神がゲイムギョウ界の唯一女神になる為に、魔剣を完成させなくてはいけない。
「あの監理者を相手にするために出来れば楽園の蛇も吸収したかったが……まぁいい」
深く闇に夜空の如き血に染まった星の光が蠢く。
それは天敵に対する恐怖、それは強敵に対する武者震い。
地獄の中で猛争と鮮血によって磨き抜かれた狂気と戦意の塊は合唱を奏でる様に咆哮を上げる。
そこに、最早女神の加護等と言う世界を安定させる為のシステムは影響できないまでの深いネガティブエネルギーが渦巻いていた。正に天国を支配した地獄の亡者どもが、豊かな自然を食い潰す蛮族のように世界を貪る。
闇の世界と光の世界は繋がってしまった。最も恐るべき魔神の手によって。
世界に光の輝きの価値を忘却すれば、何度も証明してやると言わんばかりに先代のブラッディハードは((女神を要求する未来|ゲハバーン))の毒々しい刃を見つめた。
木々を揺らす風が、一瞬だけ刃を照らした。そこからはこの世の終末と再誕を望み狂信者の病的な顔が映った。
◇
頬を優しく撫でる風、澄み渡る青空、眼下には自然のままに成長し続けた森林があった。日の光が風と共に踊る木々の間を通過して地面に差し込み、その光景はまるで宝石のように美しい。プラネテューヌのまだ秘境の地で空亡は川に足を濡らして長旅の疲れを癒していた。冷たい水がどこか心地よく、温かい陽光は眠気を誘うように優しい。そんな自然を前しながら、空亡の表情には影が差しこんであった。
「……ねぇ、デーさん」
『どうした我が主よ』
無造作に両手を上げると一瞬光が両手を包み込み現れたのは氷のような蒼く、炎のように紅い二つの異なる属性が組み合わさりながら、互いを相殺せずに体現された矛盾を孕む二律背反の双籠手に封印された熾凍逆龍『デウスヴェテイン』は、主の声に目を覚ました。
「これから、どうしよう」
『…………』
「父さんは、私の事覚えていない。……あの様子じゃ私の事、分かってて拒絶した。……それってつまり、あの人はもう私に既知感があるだけの他人。……空さんも【本体】じゃ話を聞いてくれない…この世界に空さんの気配がするけど、力を使って探せば……約束、破る事になる」
『女神の加護……面倒な物だ。これだけ広範囲に付与されている状態で下手に主の力が発動すれば……世界の情勢は一気に傾く、脆い蜘蛛の巣だ』
優しい主だと『デウスヴェテイン』は心の中で呟いた。
この五年間、あの邪神皇の庭に放り込まれ直ぐに脱出した。そして空亡が戻った先には誰もいない自分の家。
父も母親の様な先生も、いつも怒っていた父の従者も、空の従者であるあのスライム執事も、−−−本当の姉の様に慕ってくれた妹も、誰もいない家を飛び出し、空亡はあらゆる世界を探した。そして見つけた物からの言葉は拒絶の言葉だった。それでも自棄にならず約束を守り、こうして誰もいない場所でひたすら耐える主に『デウスヴェテイン』は主を泣かせた奴に対して憤懣を抱いていた。
「誰もいない家になんか……帰りたくないよ…」
『……主よ』
生きる者が存在していない辺境の地で降臨していた己に親子愛等理解できない。ただ主の力に一目ぼれして付いてきた彼は幼き主の慰めの言葉はないかと必死に頭を動かすが、全て無駄に終わった。理解できない物をいきなり理解しようとしても頭が痛くなるだけだった。
『む………主よ』
「どう、したの?」
『天壌の邪悪龍から連絡が来ている。繋ぐか?』
「……うん、お願い」
突然の同類であるドラゴンからの連絡に主の許可を頂き、『デウスヴェテイン』は連絡回路を繋げた。
炎の如き紅蓮の赤を中心に氷結の青白いが覆う籠手の宝玉が黒に染まり、能天気な紅夜に仕えるドラゴンの声が響く。
『お久しぶりです。空亡のお嬢!先ほどは本当にごめんね!ウチの相棒はいっぱいおっぱいな奴で……』
『……同じドラゴンとして、もう少し威厳のある言動が出来ぬのか?』
『うるせーよ。ケツドラゴン!!僕はねおっぱいと世界に響かせたいの!でも相棒が今シリアス通り越してダークだからおっぱい講義出来ないんだよ!昔なら思春期の男の子みたいに顔真っ赤にしながら聞いてくれたのに……』
『誰がケツドラゴンだッ!!燃やされたいか!!凍らせたいか!!』
『破壊神の腰からヒップにかけてのラインを見て鼻血出したのはどこの誰だったかな〜♪』
『こ、このおっぱいという萎んでいくためだけの者に執着する愚か者め!』
『あ゛あぁぁ!?』
あーだ、こーだ。口げんかを始める二匹のドラゴンに失った日常を思い出して、懐かしい思いを抱く。
「二人とも、仲いいね……」
『それは否!我は−−−』
『−−−宿命の怨敵だ!』
呼吸の合った突っ込みに「うん、やっぱり仲良し」と今度は心の中で呟いた。
「ところで……どうしたの?」
『あ、そうだった……実は助けてほしいのだけど』
『私は反対だ』
『……まだ内容喋ってないよ。早漏野郎』
『ぐっ……、どうせあの男関係だろう?』
デペアは黙り込んだ。それは肯定という意味であの男と、きたら零崎 紅夜のことだろう。と空亡は直ぐに思い浮かんで顔を暗くする。
『怨敵よ。あれは生きる為に死ぬ輩ではない。死ぬことが何事に敵わない祝福、その為に生きている輩だ。そんな奴を救って何になる。なにより−−−主を泣かせたことが一番気にくわぬ』
『あの体は罪遺物なんだ!もし相棒に異常が起きて暴走してしまったら……』
『その時は闇女が止めるであろう。あれは狂愛者、例え魂が違っても肉体が手に入るのなら喜んで全力を出すだろう』
「……デーさん」
救済とは相手の運命を変える事、運命を変えた代償は誰が受けるのか、助けた者が責任を受け持つ事。
口癖のように力を行使するあまりに大きな責任について、教えてくれた先生という存在。
『確かに彼奴は女神に討たれる事が一番いい選択だと思っている。世界的に見ても一人の犠牲で世界は安定するなら、凄くいい選択だと思うよ……思うけど………』
徐々に声が小さくなっていくデペア。そして素直に空亡もあの男を凄いと思った。自分の身を犠牲して世界を安定させようとしているのなら、それは間違いなく英雄の行為。口にするのは簡単でも、誰にも出来ない行動だ。だが、感情の問題は難しい、誰だって他人と知人をどっちを助けれるのなら、先に知人に手を伸ばす筈だ。それが世界を救う事にもなり、世界を殺す事にもなりえる。
「……デペアさんにとって、あの人は大事な人?」
『まだ会って十年も経っていない。キャプテンと比べれば全然対して付き合いじゃないけど……誰かの為に頑張る命を張るのってかっこいいじゃないか』
『お前は子供か……はぁ、最終決定は主にある。助けるのも助けないのも決めるのは主だ。私は貴方の矛と盾、望むのなら世界を相手にしても戦いましょう』
−−−あの人は父さんではない。
−−−あの人は私を拒絶した。
−−−あの人は世界の為に命を売っている狂人だ。
「先生とその人って、仲いいの?」
『相棒と破壊神?仲良くも悪くもないけど、このことには駆けつけると思うよ』
「分かった」
それだけ分れば十分だと、空亡は立ち上がりコートで濡れた脚を軽く拭いて、動きやすい靴を履き直ぐに走りだせる準備を整えた
『……いいのか、主よ』
「良いも悪くもないよ。私はただ、『おはよう』『おやすみ』って、みんなが笑っていた……あの日々を取り戻したいだけ。((熾火と凍獄の双籠手|エクザハヴォック・ギア))−−−((禁手化|バランス・ブレイク))」
『((Deusveteinn|デウスヴェテイン)) ((dragon|ドラゴン)) ((ovre|オーバー)) ((booster|ブースト))!!!』
紅蓮の炎熱と白銀の氷結、異なる二つの属性を併せ持つドラゴンを象った鎧を身に纏った空亡は空へと飛ぶ。全ては日常を取り戻す為に。空亡が飛び去った後には小さき炎と一部凍った川だけが残されていた。
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まだケイのお使い終わってないんだよねぇ…… | ||
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