stage of gothic Part3 |
Part6:The Gothic Symphony
遂にうるちの宣言により盧遮那 対 芽衣の決戦の火蓋が切って落とされた。
「ゼロ。まずはアスラを攻めろ。小手調べと行こう。カオスはその援護を」
「承知」
盧遮那の指示にゼロはブースターで加速しながらアスラに向かって走る。
「了解しました」
カオスはまだ距離があるのを利用していきなりメダチェンジをしてライフルとレーザーで援護射撃を仕掛ける。
「アスラはゼロを!イヅハはカオスを押さえて連携を断て!」
「おうよ!」
「はいな!」
アスラとイヅハはそれぞれの指示されたターゲットを押さえようと走り出す。
が、それより先にゼロがブースターで加速させて一気に間合いを詰める。
「遅い!」
ゼロは大剣でまず、装甲の厚いアスラを攻める。アスラはゼロの大剣を斬り裂こうとビームブレードを大剣目掛けて斬りつけた。これでゼロの大剣を破壊できると確信した。
が、現実はそうはならなかった。何とゼロの大剣は斬り裂かれるどころか実体がないはずのビームブレードを、電気と金属が接触して弾けるかのようなけたたましい音と火花を散らしながら押さえていた。
「なっ!?ALC装甲!!?」
芽衣はゼロの大剣が何故斬れないのかわかったらしく動揺した。
ALC装甲とはアンチレーザーコーティング装甲の略だ。本来は光学無効のパーツのシールドに使われる装甲板で武器に加工するには難しいとされてきた。仮に武器にしたとしてもかなりの重量がある上にそれで光学武器を防御するのはリスクがあるため使われない。
が、ゼロはヴァイスビートルという両腕パーツを搭載した機体のため、普通の機体と違い、武器を両腕で扱える。そのため、片手で使えない物も格闘武器のセンス次第で易々と使いこなせる上、武器は盾並の防御面積のある大剣のため、その欠点を全て解決し、重量も大剣という武器の性質上、むしろ利点となる。
「見誤っていたわ。けど…イヅハ!」
芽衣はイヅハにアスラに気を取られているゼロをイヅハに背後から攻撃を仕掛けるように指示した。イヅハはビームソードをゼロに切りつけようとした。しかしその直前にシュウと何かが収束する音がした。
「!?…イヅハ!避けて!!」
「あかん!」
間一髪で気づいた芽衣はイヅハに声をかけるとイヅハはゼロから離れた。
その直後、イヅハがいた所に何かが高速で通り過ぎた。それはカオスのレールガンだった。通り過ぎたレールガンは遠くにあった瓦礫の山を貫き、瓦礫はそれによってさらに崩れていった。
芽衣はカオスの位置を特定しようとメダロッチを見た。カオスの反応がなかった。
辺りを見回してみると草原があって、一見、二脚が有利なフィールドに見えたが至る所に建物だったものの廃墟が建っていた。カオスが隠れるにはうってつけだった。
「……(完全隠蔽?いや、それじゃあ攻撃出来るわけがない。なら……ステルス!?)」
そう。カオスの頭部の特殊機能ステルスはジャミングを発して、相手に自分がいないかのように惑わせる事で自分への射撃の照準を外し、格闘をやられる直後に使えば、幻惑して空振りを誘う事が出来る。そして何よりの利点は姿を何か障害物で隠せば、擬似的な完全隠蔽を得る事ができる事だ。ただ、自分の姿が消えるわけではないので格闘攻撃にはタイミングよく使わなくては効果がないという欠点を持つかなり上級者向けの機能だ。それに気づいた芽衣は舌打ちをする。
「……まさかこれほどとは思わなかったわ」
「そりゃどうも」
芽衣はあのふざけた仮面を被った道化にハメられているのにようやく気づいた。はっきり言って彼はふざけた顔、態度、言動をしておきながら、実はかなり頭の切れる人間だった。ゼロとカオスの特性を熟知し、相手に合わせた連携をする技量は並の大会上位メダロッターを軽く上回っている。
今回の場合、芽衣には射撃メダロットがいない事をいい事にカオスに攪乱の役割を与えた。これで下手に攻撃出来ない抑止力となって芽衣を苦しめるのである。
カオスはさらにメダチェンジを解除するとガトリングを撃ちながら前進を始める。それに気付いたイヅハはそれを迎撃するべく両肩の鎧を盾にして、カオスに立ち向かう。
それからカオスとイヅハの交戦が始まる。
カオスは近くの廃ビルに登るように跳躍すると飛び上がりながらガトリングを撃つ。
「ツインランサーで行きなさい!!」
「はいな!そないなことで行きまっしゃろか!」
イヅハは、アスラと同じように柄と柄を連結させて、両端からビームソードを出したツインランサーに強化し、それを回転させる事でガトリングの弾を全て叩き落す。
カオスはさらに廃ビルを上っていく。イヅハもそれに追いすがるように付いていった。そして廃ビルの屋上に辿り着くとイヅハは追いつき、カオスにツインランサーを振るう。カオスは回避しきれず脚部の装甲をやられた。
「カオス。無事か?」
「はい。動くのに支障はない程度のダメージです」
「わかった。だが、相手は光学武器だ。一回でも当たったらやられると思え」
「了解です。指示をお願いします」
「ああ。奴はツインランサーか肩の鎧で防御する。それなら背後は無防備だ。その奴を出し抜くのにその弱点で仕掛け…いや、いい。奴に構うな」
「了解しました」
指示を受けたカオスは行動を開始する。カオスはガトリングでまず足場に地上掃射した。イヅハはその攻撃を何とか跳躍して避けたが間合いを取らざるを得ない。
カオスは間合いを取ろうとするイヅハにライフルで狙い撃つ。イヅハは右肩で防御し、再びカオスにツインランサーで攻撃を仕掛ける。カオスは何とか飛び上がって回避するとイヅハを踏み台にしてさらに飛び上がる。イヅハはそれで体勢を崩した。
カオスは飛び上がったままメダチェンジをする。そしてレーザーで足場を、キャノンを動かしながら撃って焼き切った。そうすると…屋上の足場が一気に崩れた。
カオスはそれによってイヅハを巻き込みながら落下していく。カオスはタンクであるため、安定した状態で着地できたがイヅハは二脚であったため、着地するのにかなり隙が出来てしまった。さらに足場が崩れた影響で粉塵が舞って、あたりを包み込む。
(やはりステルスで姿を消してきたわね。だったら!!
芽衣は煙の中で索敵網から消えたカオスを見て軽く笑う。
「なぎ払え!イヅハ!!」
「わかっとるわ!邪魔なもんはこれで一発やで!!」
イヅハはツインランサーを舞うように振り回して風を巻き起こし、粉塵をすぐに消し去った。しかし時は既に遅く、その直前にカオスはステルスを使った上で姿を瓦礫の中に消していた。
「また消えた!?」
「消えたのもそやけどもうここにはおらんみたいや。ハメられはったわ…」
イヅハはカオスがこの場から離脱したのを確信すると廃ビルを上手く足場になりそうな場所を探して、飛び下りるとカオスを追い始めた。
「うおぉらぁ!!」
アスラはゼロと斬り合いを続けていた。しかし、ゼロと同じ大剣といえどもゼロに押し負けていた。アスラの大剣は実体の無いビームブレードだ。大剣の割に軽く、振りが早い上に光学武器のため、大半の武器や装甲を焼き斬ってしまえる。が、ALC装甲を持つゼロの大剣にはそれは通じず、逆に軽さが仇となってゼロの大剣の重量に圧倒されるのだ。
そしてこのまま大剣による鍔迫り合いに持ち込んでいたら負けると判断したアスラは鍔迫り合いをしながら連結していた大剣を通常の二刀流のビームソードに変更し、片方のビームソードで大剣を受け流してもう片方で反撃を仕掛けた。
「むぅ…」
ゼロはそれを避けきれず左肩のアーマーを斬られた。が、それは深くなく動くのには支障が出るほどのものではなかった。
ゼロはその隙を利用して反撃のフルスイングで大剣を振り回し、アスラを吹き飛ばした。その際、右肩鎧が破損して地面に落ちた。
「うぁぅ!?」
「アスラ!!」
「何のこれしき!!あんな奴に負けてられないね!」
アスラは残った左腕を盾にして再び突撃する。アスラはビームソードを、死角を捉えて次々と必殺の一撃を繰り出した。ゼロは大剣を盾にし、脚部ブレードを上手く使って防御し、この先に出てくるはずの一瞬の隙を狙うために感覚を研ぎ澄ましていく。
サムライカンナの鎧は重い。それは防御力の高い鉄壁となって本体を守ってくれるが素早さが落ちてしまう。それがサムライカンナの鎧の欠点だが、もう一つの欠点をゼロは見つけていた。
それは鎧の重量によって機体の持久性が損なわれている事だった。人間で言うところのスタミナが鎧の維持に充てられているため、攻撃を連続で行うと、機体に過負荷がかかり、持久性がさらに損なわれていくのだ。右肩鎧が破損しているため、幾分かは負荷が軽くなっているが鎧の重量は依然として重いままだ。
現に激しく動くアスラは軒並み高い瞬発力と持久力を持っているようだが段々と動きが遅くなっているのが見えた。
その時、一対一の戦いの中に高速で何かが飛来して割り込んでくる。それはカオスのライフルによる狙撃だった。イヅハから気づかれずに逃げ出したカオスはステルスの効果が切れるまでに狙撃しやすい位置に移動し、アスラを狙い撃ったのだ。撃ち抜いたのは…右肩鎧だった。盾としての機能をまだ持っていたらしくそれにより軽減されて破壊こそ出来なかったが衝撃でアスラは体勢を崩した。その時、隙は……生まれた。
「今だ!!」
「ッはぁっ!!!」
盧遮那の掛け声とゼロの気合と共にゼロは大剣で抉る様に斬り上げた。その攻撃はアスラの股間部装甲と胸部装甲を見事に斬り裂いてアスラに大打撃を与えた。
「ああああぁぁぁっ!!!!」
「終わりだっ!!」
ゼロが深手を負ったアスラにすかさず大剣で袈裟斬りを仕掛ける。が、突然背後からイヅハが襲い掛かってきた。カオスはこの際、無視してアスラの援護に回ったのだ。
「させへん!!」
「ちっ」
ゼロは袈裟斬りの構えから回転斬りをする事で背後から襲おうとしたイヅハを何とか頬の装甲をやられるだけでとどめて吹き飛ばした。
アスラはイヅハが作り出したゼロの隙を突いて、ビームソードを一つゼロに投げつけた。ゼロはそれに反応してブースターで右に強引に平行移動して回避した。それにより辛うじて右腰の装甲にかする程度に抑える。
「アスラ!イヅハ!!無事!?」
「ああ。何とかな。が、ゼロって奴が強い。実力を初めてみたからわかるが間違いなくあたしの剣技をはるかに上回ってやがる」
「そやね。確かにきついやろか。こら。こっちもカオスの援護射撃のせいで迂闊なこともでけへんよ。かとぬかして今は脱衣をすなあかんでもへんからなぁ…」
芽衣の悲鳴のような声に手負いのアスラ、翻弄されるイヅハがまだ余裕であるかのように振舞って答える。芽衣はそれを聞いて一安心するとメダロッチを構えなおす。
「平気よ。アスラ!足軽になりなさい!二人とも!!こうなれば連携で勝負よ!」
気合を入れなおした芽衣が叫ぶとアスラとイヅハはそれぞれ行動を開始する。
「よっしゃ!!脱衣ッ!!」
アスラは左肩装甲と壊れかけの胸部装甲を残して鎧を脱衣する。そしてビームソードを右手に逆手で握り、攻めに入る。足軽とは芽衣自身が考えた形態で全て装甲をパージすれば防御力を格段に減らしてしまう欠点を少しでも抑えるために盾として左肩装甲と、さらに重要な部分である胸部を保護するために胸部装甲を外さずに残したのだ。
これにより、完全な脱衣ほどの素早さは得られないものの欠点である防御力を多少は改善され、さらに武器を捨てなかったため、遠近両方に対応できるようになる。
そして二人はゼロを集中攻撃する。公式戦であるこのロボトルは何とかゼロを倒せばリーダー機破壊で勝利する事が可能だ。そしていくらゼロが強かろうと二対一でなら勝機はあるだろう。
「これでもくらいな!!」
まずはステルスの切れたカオスにアスラが妨害用手榴弾を投げつける。メダチェンジしていたため、カメラアイは保護されている。そのため、聴覚のみが潰される。
カオスはその症状を無視してメダチェンジを解除すると視覚のみを頼りに反撃のガトリングを放つ。が、その攻撃はイヅハがツインランサーを回転させ、まるでシールドのように防御して、全ての弾を落とした。
「甘いで!!」
一方、ゼロはアスラに大剣で攻撃を仕掛ける。アスラは肉薄されながらもその斬撃を何とか回避しながら、反撃にナパーム入りの爆弾を投げつける。さらに背後にイヅハが回りこみ、ゼロの退路を断つ。このままではゼロは直撃して、撃破されるかと思われた。
しかしゼロはそこまで甘くは無かった。ゼロは少しだけジャンプして浮くとブースターを右に向けて全力で噴射し、左に滑るように移動する。
「なっ!?」
さらに投げられた爆弾は、カオスが精密射撃により射抜かれて爆発し、逆に退路を断つためにいるはずのアスラとイヅハがその爆発に巻き込まれる。
その爆発の中、アスラは左肩の装甲を盾に、イヅハは両肩で防御してダメージを抑える。さらに爆発によって生まれた煙は辺りを一瞬にして包み、それぞれのメダロットの視界を遮った。その時、芽衣はメダロッチを見る。カオスはステルスをしていない。どうやら二回が限界のようだと判断した芽衣は勝機を見出した顔をする。
「二人とも!カオスのステルスが切れた!!反撃開始よ!!」
「あんだと!?うっしゃぁ!!どんどん行くぜ!!イヅハ!!」
「了解!やったら行ってみよか!!やろうわ!!アスラ!!」
一気に気持ちを高揚させる芽衣、アスラ、イヅハは叫ぶ。まるで三人の身体に赤く燃えるようなオーラがあるように錯覚しそうな気迫がそこにあった。
「やれやれ。あっちは本気のようだね」
「いかがいたしますか?」
「手を抜けばこっちがやられるのがオチだ。…どれ。こっちも真似てみるか」
「了解しました。行きます!!」
「さっさと終わらせてやろう」
盧遮那達も芽衣達を真似た気合の入れ方をやってみる。するとこっちは明鏡止水の如く、心が落ち着き、静かに感覚が研ぎ澄まされていった。三人の体からはまるで青く静かなオーラが出ているような錯覚が起きそうな気迫を発する。
心を一新した双方は互いを睨み走り出す。
「アスラ!イヅハ!連携で押し切るわよ!!」
「ゼロ。カオス。反撃を狙え。まともにやり合おうと思うな。奴らは必ずゼロを集中攻撃するぞ」
盧遮那と芽衣が各々のメダロットに指示を与えると四体のメダロットは敵を倒すべくそれぞれの武器で戦い始める。
この時の戦いは心を一新する前とはまるで違った。
盧遮那と芽衣は目に籠もった魂が燃え上がるかのように意志が宿り、気持ちを高揚させる。メダロット達は通常の性能を超えた素早い戦いを繰り広げているのだ。
最初はカオスのライフルの銃声から始まった。カオスから放たれたライフルはアスラへと吸い込まれていく。
アスラは残されている左肩鎧でライフルの弾道を反らすように防御し、受け流す。そしてそのまま、カオスに爆弾を投げつける。
その時、カオスはライフルで狙いをつけていたため、回避までの余裕がなかった。しかし、それはカオスを傷つける事はなかった。ゼロが反射フィールドを展開して、カオスの前に立ちはだかったのだ。
反射フィールドによって爆弾は跳ね返りアスラのいる場所へと帰っていく。
アスラはやむを得ずお下げを上手くバット代わりにして爆弾を弾き飛ばした。弾き飛ばされた爆弾は廃ビルに飛んでいって爆発し、廃ビルに惨たらしい爆発の傷を付ける。
それの行方を追う間もなくイヅハがゼロにツインランサーをバトンの様に回転させながら迫る。さらにアスラも逆手で持ったビームソードを振るってイヅハの加勢をする。
ゼロは大剣を盾にして上手く防御し、応戦するがいかんせんアスラとイヅハが単体でも強い上に二体で同時攻撃かつ攻撃の手数が多すぎて、防御仕切れず、ゼロの装甲の損傷を増やしていく。
そんな中、カオスが相手を間合いから離させようと、あわよくば機動力を削ぐために足を狙ってガトリングを放つ。
ガトリングは命中こそしなかったがアスラとイヅハを間合いから離させるには十分効果があった。アスラとイヅハはやむなく後退した。今、機動力を奪われては間違いなく負けるのだから。
ただ、アスラは違った。後退の際、妨害用の爆弾をカオスに投げつけてきたのだ。
カオスはそれを避ける。しかしそれだけではどこかに着弾すれば、爆発して命中した時と同じような結果になってしまう。
そこでカオスは爆弾をライフルの銃身で避ける間際に上手く飛ぶ方向を調整して受け流した。
すると爆弾は瓦礫の中に吸い込まれていきそこで爆発した。爆発した際に音と光が発生するわけだが爆発の衝撃で瓦礫が爆弾を密閉して閉じこめたため、少し音と光が漏れ出す程度になり、ゼロとカオスに影響が出ない程に抑えられた。
「同じ手は何度も食うつもりはないぞ」
「まだまだ!アスラ!イヅハ!メダフォース!『縦・壱・閃』!!」
盧遮那の言葉にさらにテンションを上げる芽衣が叫ぶ。アスラとイヅハはそれに頷いて間合いを離して構える。
「覚悟しな!!」
「これで終わりや!」
アスラとイヅハがメダフォースを発動するとさっきから立ち上る気迫が具現化したかのように紅と蒼のメダフォースがアスラとイヅハを包み込んだ。
二人のメダフォースはあまりの強さで周りの瓦礫を吹き飛ばし、渦を巻くように舞い上がる。
その様に盧遮那は目にゴミが入らないように腕で目を守りながら感嘆とした表情をする。新たな面白い人間を見つけた。そんな表情だ。
「なるほど。縦壱閃。モデル『バースト』か」
盧遮那の言ったモデルとはメダフォースの種類を指している。系統的にはメダフォースを発して直接ダメージを与える『バースト』、メダフォースで補助効果を得る『エクステンド』、メダフォースで相手に妨害を仕掛ける『ディストーション』の三つに別れている。どれが使えるかは大半がメダル次第だがメダフォースを使い込む内に進化するものもある。
「どうする?ルウ」
「あっちが本気ならこっちもそうするまでだ」
「わかりました。やりましょう」
「ゼロ!メダフォース!『インストール』!」
「はぁッ!」
ゼロは白銀のメダフォースを発して身体と大剣にメダフォースを付与した。さらに両肩のブースターから蒼い翼を広げる。
「カオス!メダフォース!『イリュージョン』!」
「オオォォッ……」
カオスは盧遮那の指示を受けて漆黒のメダフォースを身に纏う。するとカオスの身体から大量のゼロとカオスが飛び出した。
芽衣のメダロッチから警告音が発せられた。芽衣はそれを聞いて見ると驚愕する事になった。
メダフォースによりいつの間にかゼロの性能パラメータが飛躍的に上昇し、敵反応数が10になっている。
このままでは単純にメダフォースを使って攻撃する自分達が不利だ。
かと言ってメダフォース無しで勝つのは難しかった。やむを得ないと考えた芽衣は意を決して次の指示を送るべくメダロッチを構える。
「変更よ!『横・壱・閃』!」
「おうよ!」
「らじゃ!」
メダフォースを発射する前に指示されたアスラとイヅハはメダフォースを横壱閃にして放った。それにより計10体の敵にメダフォースが襲いかかり着弾して爆発した。
「やった!」
芽衣は倒したかに見える光景を見て、思わず叫んだ。が、メダロッチを確認すると何と反応がまだ一つ残っていた。
その反応は爆発から飛び出してイヅハの胸部を神速の一撃を見舞った。
イヅハは胸部を一瞬で深く斬られて自分がやられた事に気づかず倒れた。
倒れると反応のあった機体がようやく姿を目で見れる様になった。
見慣れた白銀のKBT ヴァイスビートル ゼロだった。
ゼロは止まるとメダフォースを解除し、溜まった熱を冷却剤と共に排気する。
その隙を突いたアスラは残っているビームソードで切りかかる。
「狙いを変えたのはよかったがまだまだだな」
その瞬間、盧遮那の余裕を持った口調と共にまたシュウとレーザーが収束する音がして、煙の中からレールガンが放たれた。
レールガンはアスラの頭部を見事に貫いてアスラを戦闘不能にした。
アスラが戦闘不能になった直後、カオスがメダチェンジした状態で悪路をものともせず、前進して姿を現した。
「いったいどうなったっていうの!?」
「単純にインストールしたゼロはメダフォースを弾き飛ばして、カオスはくらってガトリングがお釈迦になったってだけだ。ついでに言えばステルスは三回使えるんだ」
「くっ…」
「勝者!鎌足 盧遮那!!」
うるちが叫ぶと観客は一斉に歓声を上げた。それにつられて桜、志帆、真也が盧遮那に歓声を上げる。
真也は姉の負けを思い出してすぐにやめてばつの悪そうな顔をした。
「気分はどうだ?」
「あなたが本物のメダロッターだって事は認めてやるわ」
「…負けは認めないってか?」
「そんなセコい事は言うつもりはないわ。負けくらい、認めないでどうするのよ」
「なら何だい?」
盧遮那がそう問うと代わりに芽衣は何かの小さな厚紙を盧遮那に向かって投げた。盧遮那はそれを器用に片手でキャッチするてそれを見る。
それには芽衣の携帯と思われる電話番号とメールアドレスが達筆で書かれてあった。
「また戦いなさい。今度はあなたに負けない信念と力を持ってあなたを倒してみせるわ」
盧遮那はニッと笑うとそれを懐にしまった。
「あいよ。その時は全力で迎え撃つ事を約束するよ」
そう答えると芽衣はもう次の戦いのための修業を模索しているのか目が熱くなっている。
それを見た盧遮那は彼女らしいとフッと笑う。
そして、うるちから賞品であるミステルテインを盧遮那に手渡され、何故か盧遮那と芽衣に薄謝としてそれぞれ、賞品券三万円とこれから始まるパレードの特等席チケットを2人合わせて五枚進呈された。
それをもらった芽衣は何が起きたのかわからず困惑した。盧遮那はそれを予想していたかのようにニヤリと笑う。
賞品の贈呈が終わると盧遮那と芽衣はフィールドから退場し、盧遮那がでっち上げたエキシビジョンマッチは終わりを告げた。
Part7:The Gothic Epilogue
盧遮那はフィールドを出て少し移動する。そうすると待っていた桜、志帆、真也が駆け寄ってきた。志帆や真也は軽く走っている中、桜は何故か早く走っている
「おめでとう!ルウ!」
桜がチャンスだと思い盧遮那に抱き付こうと跳んだ。しかし盧遮那は少しだけ体を動かして桜の抱擁を受け流した。
桜は当然、先に支えるものがないので大きな音を立てながら派手にこけた。その結果を見た盧遮那はにやりと笑いながら桜を見下ろした。桜は痛そうにしながら起き上がって、盧遮那を不満そうに睨みつける。
「さすがに不意を突かれなければ避けるのはたやすいな」
「入口付近の時は単に油断していただけだ。精進が足りぬ」
「何よ?可愛い恋人の抱擁を避けるなんてひどいんじゃないの?ルウ」
盧遮那がゼロに指摘されながら上手く避けられたのをニヤリと笑いながら桜を見下ろしていると桜が素早く立ち上がって、フッと何かをたくらむように笑いつつ、抱くようなジェスチャーをして見せたりして盧遮那を言いくるめようとする。
「何を言うかな。小学生」
「うっ…(そう来たか…)」
盧遮那はそれを見て、聞いても顔色を変えずに自分が誰であるかを悟らせるストレートな言葉を突きつけた。桜は意外にもその言葉に詰まった。どうやら複雑な言葉よりも率直な言葉で攻められる方が苦手のようである。
「それに人目をはばからずにそれをやるのは俺としては困るんよ。目立つから」
「そうですよ。ルウを彼氏にしたいのでしたらまずは彼の性格を読んで、上手くその気にさせてあげて下さい。そうすれば私も安心して彼女とのデートの予算やスケジュールを組めるというものです」
「何でそうなる……」
盧遮那は付け加えるように言葉を続けるがさらに続くカオスの悪魔のような言葉には手も足も出なかった。それを聞くと桜が怒る。
その辺はまるでせっかくの予定が潰れて我が儘を言う子供のようだった。
「こんにゃろう…」
「とりあえず人目は考えておくれ。俺は変な目で見られるのはかなわないしな」
「ましてや、場所が場所だ。記者でも通りかかったらよくないだろう」
「ええ。意外とあなたの方が有名人である事の自覚がないのかもしれませんね」
盧遮那、ゼロ、カオスの言葉に桜は黙らざるを得なかった。
「……(なかなか手強いわね…)」
「……盧遮那さん!おめでとうございます!」
いつ言うべきか迷っていた真也は盧遮那によって桜が黙らされたのを見計らって盧遮那に話し掛けてきた。盧遮那は真也の言葉に意外そうな顔をする。
「ああ。いいのかぃ?姉さんが負けたのに」
「ええ。むしろありがとうございます。多分、姉さんは全力を出して負けたのはこれが初めてなので良い薬になったと思います」
何故、真也が盧遮那にさり気なく肩入れをしていた理由を真也から聞かされると盧遮那は驚いたような目をして、真也が何をしているのかを察してすぐに苦笑いをした。
「…苦労してるんだな。あんさん」
「否定はしませんよ。でも強くなっていく姉さんを見るのは好きです。見ているだけで誇らしく思いますよ」
真也の人生のスタイルを聞いた盧遮那はそれを興味深そうにして考えた。誰か強くしてやるというのは自分が強くなる以上に難しいものだ。心を読むことなど出来ないのだから想像して動くしかないし、何か欠点があったらそれを対処するために何か使えそうなものをぶつけてみたりしないとならないのだ。割と良心の痛みそうなスタイルだった。
「そうかぃ。特定の奴の成長を見届ける傍観者ってのも面白いもんだな」
「ええ。…あ、姉さ〜ん!」
盧遮那と話していた真也はこちらに歩いてくる芽衣の姿を見つけて姉を呼んだ。芽衣は浮かない顔をして真也を見る。どうも盧遮那に負けた事ではなく真也が話していた無敗伝説が途絶えてしまった事による喪失感が原因ならしい。
「真也…負けちゃったわ」
「落ち込まないでよ。今日の戦いは無駄じゃないよ。もっと強くなるための大きな一歩だと思う」
「そう…かな」
「そうだ。俺が保証してやるよ。あんさん、無敗の王者なそうじゃないか。勝つのもいいが負けないと反省点とかそういうのがわからん。それに挫折は誰にでもあるもんさ」
「…そうね。さっき決意したのにな」
「えぇい。歯がゆいな。あんさんはさっさと立ち直れ。あんさんがそんなヤワな人間とは俺は微塵も思ってないぞ」
また、落ち込んでいる芽衣を見て見かねた盧遮那はまたしても芽衣の頬を摘んで今度は両方の頬をつまみ伸ばすとぐるぐる回す。芽衣はそうされるとカッと顔を赤くした。
「うわっ!?痛いじゃない!このペテン師!」
「それでいい。でなきゃ俺が興醒めしちゃうじゃないか。…あぁ、そうだ。パレードに来いよ。花火はいつでも楽しいもんだぞ?」
頬を摘まみ上げられて怒る芽衣を見て、盧遮那はらしさを取り戻したと言う事に満足したような顔をすると芽衣をパレードへ誘おうとした。すると赤くしていた顔を無理やり隠して何とか冷たい目を作ってそれを盧遮那に向けた。
「…憐れんでいるつもり?」
「まだわかってないな。これは祭りだ。祭りに敗者も憐れみもないんだよ」
睨む芽衣に悪びれもせず、盧遮那はからかう様に笑う。
「…わかったわ。行きましょう。エスコート位してくれるんでしょうね?」
「ああ。もちろん。四人まとめて連れてってやるよ」
「そう。(どうせなら私だけを…って何をバカな事…)」
とうとう折れた芽衣はちょっとした事を想像してみた。割といい感じにいけるのではないかなどと思ったが焦ってその考えを封じ込めた。
「…私の抱擁は避けるくせに何で芽衣の頬を伸ばしたりするのかしら?エキシビジョンマッチの主催者がそんなセクハラ行為をしている方が目立つと思うんですけど。…変な所が無神経なのかしら?彼」
隣では桜が、芽衣が盧遮那に誘われるのを目の当たりにして嫉妬し、ボソリと皆に聞こえないように独り言を呟いた。
「ええ。その辺に関しては本当に無神経ですよ?彼」
「!!?」
桜の独り言を聞き取ったカオスが桜だけに聞こえるように近づいて声を低くして答えた。桜はギクッとしながらカオスの方を向いた。カオスはフッと笑いながら桜に「ちゃんと秘密にしておいてあげますよ?」と付け足すように答える。
「私の聴覚センサーを甘く見ないで頂きたいですね。桜さん。…続きですがルウは傍若無人で天然な所があるのですよ。どうも人目を気にしているようで自分のやっている事に関してはあまり考えていないんです。今のは幸い気づかれなかった様ですが今後はその辺に関しても教育してやらないといけませんね。この様子だと将来が危ないです。全く、世話の焼ける人ですよ。あの快楽主義者は。未だに子供のような神経を持っている人ですから」
桜の独り言について説明し、最後は愚痴っぽく桜に言ってきた。桜は苦笑しながら、それを聞き、カオスの前で独り言を言うまいと決意した。
桜たちの会話こそ聞けなかったがその様子を見た芽衣はここで下手な行動に出たら面倒な事になりかねないのでさりげなくやる事に決めた。それに自分は盧遮那とは同年代。盧遮那が余程、おかしな趣味が無ければ芽衣には彼女達より有利な点はいくらでもあった。
「…(この様子だと花火の量は結構ありそうだな。小規模な都会の割にやるなぁ…)」
一方、三人の狙いにされている盧遮那はというと恋愛がどうとか気づかないかのように…というか鈍感ならしく、気づかずにパレードを楽しみにしながら、ロゼオパークのパンフレットの中にあるパレードのページを見て、花火はどうなるか想像していた。
(姉さん。大丈夫かなぁ…)
と、心配そうな真也。
(桜はこんなのに執念を燃やしていいのでしょ〜かね〜)
エンジェルは少し盧遮那に性格的な疑問を持っていた。
(何で奴なんかを?あたしは嫌だね。こんな奇天烈は)
盧遮那を完全に毛嫌いしているアスラは内心、芽衣が盧遮那に気があるのを信じられないといらだつ。
(これが俗にぬかすツンデレなんやろか?参ったなぁ。こりゃ)
イヅハは盧遮那を毛嫌いしてはいないようだが芽衣が盧遮那を好きになるためのなり方が妙だなと困った顔をした。
『(…とりあえず頑張ってとしか言えないや。これ…)』
それを見た真也や四人のメダロット達は、先は長いなと桜と芽衣に同情の目を向けた。
(ルウを彼氏にしたくば興味をしっかり自分に向け、逆に奴を振り回せる様になってもらわねば面倒になるな)
(奪い合いを見ているのは楽しいので私としてはどんな展開でも構いませんけど)
一方で特にゼロとカオスは盧遮那の日常生活を知っているため、どうなるかいろいろな意味で楽しみにしていた。
「何、みんなして色々な顔をしてるん?早くパレードに行こうじゃないか。間に合わなくなるぞ」
そんなそれぞれの思惑が行き交う中、盧遮那はやはり何も気づかずに皆にパレードを行く事を促した。こんな修羅場で普通にしていられる盧遮那は本当にある意味、大物なのかもしれない。普通は嫌でも気づくだろうに。
「わかったわ。行きましょう」
「そうね。とりあえずそうしないと」
棒読みな二人の女性達は盧遮那の不意を突いて盧遮那の腕を繋ごうとして盧遮那の右腕を芽衣が、左腕を桜が掴んで奪い合いを始めた。
不意打ちをくらった盧遮那は腕に絡み付く腕を振り払おうとした。
(ん?)
……外れない。がっちり絡み付いた腕がどうあがこうとしても外れない。
「何のつもり?腕がもげそうなんですけど」
「何のつもりもないわ」
「そうそう……って何であなたがルウを持ってこうとしているのよ」
棒読みで答える二人の女性達は互いを睨みつけ、火花を散らし始めた。
「私はまだ彼とは決着が付いてないの。そのためにちょっと借りようとおもってね」
「そんなの今じゃなくていいじゃない」
「いいえ。私はそうじゃなきゃ嫌なの。いつまでも放っておけないわ」
「そういうのを建前にしてルウと二人っきりなろうったってそうはいかないよ」
「なっ!?そんな事のためじゃないわ!!」
「図星だ〜」
何でもないと言っておきながら腕を引っ張って奪い合いつつ舌戦を繰り広げる二人の女性達に恐ろしいものを見た気がした盧遮那はさすがに気づいて、ため息をついてやれやれと肩をすくませた。
「……何でこうなるよ?」
「知るか」
ゼロが盧遮那の問いを素っ気なく返す。
「いいじゃないですか。割とモテて」
「モテてるのか?これ。つか恋愛なぞやってる暇ないんですけど」
「個性的ですが将来が明るいかと」
カオスは多少、皮肉が混じらせて盧遮那に答えた。
「お前、とんでもない事をさらりと言ってくれるな」
「あなたの快楽主義者ぶりに比べれば可愛いものですよ。……さて、私はヘッディーの様子でも見てきますよ。彼、一人で寂しがってそうですから」
「随分とご執心な事だね」
それを聞くと盧遮那はカオスに嫌味っぽい目を向けて軽口を叩く。
「同じ境遇のメダロットはほっとけないものですよ」
「……違いない。悪かった。行ってきてやるといい」
カオスは声色変えずにそう答えると盧遮那はフッと笑って詫びる。
「そうします。行ってきますよ。ルウ。頑張ってください」
そういうと盧遮那が止める間も与えずにカオスは素早く姿を消して、ヘッディーの元に向かった。それを見た盧遮那はカオスが消えた所を恨めしそうに見た。
(……ったく。余計なお世話だっての)
盧遮那は仕方ないので奪い合いをする桜、芽衣を無視して引きずりながらパレードの特等席に移動する事にした。
特等席に移動するのにあまり時間がかかる事はなかった。そこは丁度、パレードの終点に位置しており、普通なら昼間から確保しなくてはならないような場所が急遽、囲いを設置してスペースが確保してあった。そこは最前列であり、パレードを間近で見る事が確実に出来る場所だった。
さらにその場所は正面から花火が一番綺麗に見える位置にあった。もしパレードの終わる時に空を見上げれば辺り一面に広がる満天の星空に一瞬の美を見せてくれる花火が彩りを添えてくれるだろう。
「うん。役得とはいいもんだ」
「あなたが『でっち上げた』ね」
盧遮那が大きく頷いていると芽衣が盧遮那を何とか言い負かそうしているのか口を挟む。その時には一旦、奪い合いが終わっていたらしく既に三人とも盧遮那の腕から離れて隣にいた。それを聞いた盧遮那は人差し指を立てて、チッチッチッと口で鳴らしながら人差し指を振る。
「人聞きが悪いね。芽衣。あれは会場の皆さんに楽しみを提供したから来た報酬だ。要は等価交換、ギブアンドテイクって奴だ」
「あなたの考えには理解しかねるわ。見せ物にしてるとも言えないの?」
「そう言ってもいいんだがそれじゃあ、聞こえが良くないだろ?ものは全て言いようさ。全ての物事は良いようにも悪いようにも言える。それにあんさんは大会というものに出てる時点でそういうのは承知してると思ってたんだけどな」
「うっ……」
盧遮那に痛い所を突かれて芽衣は言葉を返すことが出来なくなった。盧遮那の言い分は確かに正しかった。今回は主催者が盧遮那である事以外は大会とは何ら変わらないものだったのだから。
(まだまだだねぇ)
それを見た盧遮那はニヤリと笑い、パンフレットを読み始めた。
そうしているとパレードを見物しに来た客が集まり始めた。子連れの家族からカップルまで多種多様な組み合わせ、老若男女全てがパレードの外側にパレードをより見やすい位置を確保するべく所狭しと群がっている。
そして何気に盧遮那一行の近くには一際多い人だかりが出来る。どの人もメダロットが隣にいたり、腕にメダロッチを付けたメダロッター達だった。
無理もない。ここには『白と黒の弾き手』、『アンティークドール』、『双刀一刃』という有名人が三人もいるのだから。ましてや『白と黒の弾き手』たる盧遮那は公式の場では稀にしか現れない稀有な存在だ。メダロッターなら見てみたい気はするだろう。
「…人の目が気になっちゃうね」
「うん…」
二つ名を持たず、人だかりに慣れていない真也と志帆は少し困った口調で呟きながら辺りを見回した。
「気にすんな。話しかけてくる奴以外は背景だと思っとけ」
「そう言われても…」
「そうだぜ。別に周りはてめえらを取って食うわけじゃねぇんだ。気にする必要はねぇぜ」
盧遮那とアスラに諭された真也と志帆はとりあえず言われた事を実践してみる。すると少しは緊張感が和らいで周りを気にしないようになり、幾分かは楽になる事ができた。
「そういえば何時からパレードなの?」
「ああ。8時10分だ。今、8時だからあと10分だな」
桜はそれを聞くと想像を始めた。あと10分で始まるパレードでは観客を巻き込むサービスがあるのを自分は知っていた。それに自分と盧遮那が巻き込まれて二人で踊る事が出来れば盧遮那に一気に近づけることだろう。そして芽衣のように携帯のアドレスをあげたりしてそのアドレスでやり取りをしてまた会うことができたりそして…。
「桜。…桜!」
「桜〜」
妄想全開の桜に志帆とエンジェルが話し掛ける。すると桜は妄想の世界から現実へと引き戻されてハッとした。呼ばれた方を向くと困った顔をした志帆とエンジェルと少し話しかけ辛そうな顔をしている真也が自分を見ていた。
自分の妄想が顔か何かに出ていたの事にさすがの桜も焦った。志帆とエンジェルならまだしも盧遮那や芽衣に見られては堪ったものではない。
とりあえず盧遮那と芽衣を見る。その二人はパンフレットを見て、パレードの内容について話し合っていた。気づいてないのはよかったが何気に芽衣が盧遮那にくっついて何やら良い雰囲気だったため、桜は複雑な気分になった。
(とにかく私が盧遮那と一緒に踊るのよ。これは絶対よ)
桜は内に野心を秘めてその光景を甘んじて受け入れた。そして十分後、パレードが始まった。
パレードが始まるとモンスター、村人、騎士などファンタジー系の衣装を着込んだ人やメダロットが踊り、ドラゴンやら何かの化け物の飾りと改造を施された車両が派手な装飾をキラキラ輝かせたり、口から火…ではなくそれに似せた煙を吐いたりとかなり手の込んだ仕掛けを動かしたりしながら進む。
パレードの一団が一部通り過ぎると今度は偶然、似たようなあったのかビームソードに似せた棒を持ったサムライカンナと造り物の大剣を持ったヴァイスビートルらしき衣装を身に纏った二人の女性の踊り手が剣の舞の如く踊り、斬り合いを始める。刃はないがなかなか迫力のある踊りである。
「あれは予定外だったなぁ。面白いからやってくれて構わないけど」
「あれってルウの根回しじゃないの?」
盧遮那が感心するように頷いた。芽衣は意外そうな顔をしてルウというあだ名を使って話し掛ける。
「ああ。俺がやったのはエキシビジョンマッチのでっち上げと役得だけだ。あれは俺じゃない」
ルウというあだ名に対して気にもせず、芽衣に答えた。
「それがルウのせいじゃなくても大会を開けるのは凄いわよ」
それを見た桜は腹が立ったのでわざと盧遮那と芽衣の間に割り込んだ。パレードを見る。
すると芽衣はムッとした顔になり、桜を幼稚なものを見て呆れたような目を向ける。桜は盧遮那に気づかれないように芽衣を質の悪い笑みを送る。
「…不毛な戦いだね」
「うん…。見ていてルウ兄が気の毒…」
真也と志帆は苦笑してその光景を見た。何気にこの二人は相方のせいで苦労人となってしまったという共通点で気が合うような様子だった。
しばらくして盧遮那達はまだ自分達の所に来ていない遠くの車両を見た。そこには見物客を巻き込むサービスをする一団がやってきていて、夫婦やカップルをパレード内に引き込んで踊らせていたのが見えた。
それを見た桜はチャンスだと心を躍らせる。このサービスはさっきの妄想を実現させるために欠かせないファクターだ。失敗は許されない。参加しようとするであろう芽衣を押さえて必ず成功させなくては盧遮那と付き合えない。そんな面持ちでそれを待つ。
(…まだかねぇ?花火は。今日の花火は格別にすごいものが用意されているって話だからうちの町の祭りよりも比べ物にならない程にでかい物が見れるといいなぁ)
一方、桜は気づかなかったが肝心の盧遮那はそれには興味はなく、花火を待っていた。彼にとっては桜には重要なサービスを余興か何かとしか考えておらず、踊る夫婦やカップルを何気なく眺めているだけだったのだ。
(…引き込まれない様にしていないと…嫌よ。人前に出るなんて)
芽衣もまたそうだった。戦いの場以外で人前に出るのは恥ずかしいし、踊るのも社交ダンスをテレビで見たくらいしかなかった。
そんな桜の思う事とは裏腹な状況の中、遂に巻き込みサービスの一団が盧遮那達の前を通る。そして一人の女性ダンサーが盧遮那と…芽衣をパレード内に引き込んだ。
(…マジっすか?)
(行きたくないのに……)
桜はその瞬間、かなりショックを受けて顔は何とか冷静さを保ったが内心凍りついた。…妄想も頭の中で音を立てて崩れた。
「………!!(こんの決闘バカがぁー!!)」
桜はクールな顔が崩れるのを何とか抑えて、ダンサーに連れて行かれる芽衣を目だけ恨めしいようにして睨み付ける。かなり本気ならしく、クールを装っている身体から炎のようなオーラが静かに立ち上っているという矛盾した様子になっている。
「落ち着いてくださ〜い…」
「お、落ち着け。さすがにここで騒ぐのはヤバいって」
「…やっぱりそうなるんだなぁ」
「仕方ないよ。カップルであると見るなら歳の近い盧遮那さんと姉さんが選ばれるのは当然の成り行きだと思う」
「あたしもそう思うよ…」
エンジェルとアスラはその様子に慌てふためき、志帆と真也はわかりきっていた展開に苦笑し、まだまだ早過ぎた桜に同情した。
(おいおい。踊りなんぞ生まれて初めてだというに…面倒な事になったわな…)
盧遮那と芽衣はというとこちらはこちらで困っていた。二人とも踊りの経験は全くないため、どうしたらいいかわからない。
(ルウも初心者か……こうなったら)
芽衣はやむを得ず、周りを見て踊り方を見て覚えて、見よう見まねで盧遮那を先導するような形で踊り始めた。そうすると盧遮那は助け舟が来たと言わんばかりに芽衣に合わせて踊る。どうも盧遮那は人に合わせるのも得意なようで傍から見れば結構、様になっていた。これは結果的に、芽衣としては嬉しい誤算となった。
「ルウ兄と芽衣さんって結構、似合ってるね」
「うん。姉さんったら何だかんだ言って楽しんでるみたいだしね」
志帆と信也はそれを楽しそうに眺めている一方で桜はその後ろで……
(く、悔しい…)
…表ではクールを装ってはいるものの裏では悔しがっていた。
一方、パーク内の大きな木の上にいるヘッディーの所にはカオスとイヅハが遊びに来ていた。ヘッディーは珍しい来客に複雑な表情を浮かべていた。
「高い所からパレードを眺めると言うのも乙なものですね」
「いいのか?お前ら、あいつらと一緒にいた方が…」
「何をぬかしておるんさ。あんさんもイヅハのマスターを助けてもろたんでっしゃろ?それの礼を言いたいんに人前から消えちゃってくれはって……水臭いてもんやで」
「…たまたま助けたような感じになっただけだ。お前のマスターを助けた覚えはねぇ」
「素直やないねぇ。こんなんじゃゼロの方が男前やったなぁ」
「いえ。彼はただの目立ちたがり屋なだけです。実際は大した事はないですよ」
「そうなの?」
「ええ。強いメダロットを倒す事が生き甲斐の決闘バカですから」
イヅハとヘッディーは意外な顔をした。歴戦の猛者であるゼロと万能ぶりを発揮する秘書たるカオスは互いを信頼しての息のあった連携をする事ができるのをイヅハは目の当たりにしていた。
それにカオスはこうして他人を貶したりするメダロットには見えなかったのだ。
カオスはそれに微笑して「こういう事の言える仲なんですよ」と付け加えた。
イヅハはそういう事かと納得したように頷く。しかし、内心は…
(黒っ!魔性を感じるで…。こいつ、見た目の割に危へん奴なんかも…)
…かなり危険視していた。
そんなやりとりをしていると人々の歓声がざわめきのような小さな声で遠くから聞こえた。それに気づいた三体はそこに目を向けた。
そこにはパレードをする車両やダンサーの一団が観客の前を行進する姿が見えた。そこの中に引き込まれた盧遮那と芽衣が踊っている姿が見えた。
それを見たイヅハは驚き、カオスはクスクスと笑う。
「芽衣ったら何しとるんや。戦い以外では大して舞台に立てへんってぬかしてたんに…何を血迷ったんさ…。おまけに盧遮那がお相手とはどないな風の吹き回しなんやなぁ…」
「あら。いいじゃないですか。恋する乙女というのは何をするかわからないものですよ?ここはそっと見ているのがいいでしょう。桜さんには申し訳ないですけど、こういう展開になるのもいいものです。人の恋愛とは見ていて楽しいですね」
かなりとんでもない事をさらりと言ってのけるカオスにヘッディーとイヅハはかなり空恐ろしいものを見てしまったような心境になってがっくりとうな垂れた。
(こいつ、優しそうなフリしてかなりヤバい…。って言うか敵に回したくねぇ奴だ)
(他人の恋愛を見物するってある意味、ごっつう質の悪い趣味やろ…)
「何をしているんですか?続きを見ましょうよ」
ヘッディーのイヅハの気落ちに気づいて言っているのかいないのか遠慮なく、カオスは二人に見物を促す。ヘッディーとイヅハは逆らったらとんでもない事になりかねないと考えてやむを得ず、カオスの言葉に従った。
カオス、ヘッディー、イヅハの視線の先にいる二人…盧遮那と芽衣は上手く周りと同じ様に踊る事ができてそれなりに楽しんでいた。芽衣も慣れてくると盧遮那と二人きりでいれるこの瞬間を作り出してくれた女性ダンサーに感謝をした。その女性ダンサーは芽衣と視線が合うとさりげなく芽衣にガッツポーズをしてみせる。
「楽しくなってきたわね」
「俺にはまだしんどい事だ」
「何、言ってるのよ。慣れると気持ち良いものよ?」
「…そう思っとくよ」
「よろしい」
短い会話が終わるとパレードはいよいよ終点へと近づいていく。外では桜が無表情で、真也と志帆が楽しそうに盧遮那と芽衣の踊りを見つめている。ゼロ、エンジェル、アスラは桜が何かしでかさないかと心配しながら桜を警戒しつつ盧遮那と芽衣を見守っている。
三体のメダロットの不安は当たっていた。桜はパレードを見ている内に芽衣が盧遮那を奪っているのを見ているのが嫌になった。すると警戒している三体のメダロットの目を盗んでさっき買ったものが入った大きなビニール袋の中から小さなクッションを取り出して、客の人ごみの中に姿を消した。
「む…?桜はどうした?」
桜が消えてから三十秒ほど経って、まずゼロが、桜が消えている事に気づいて辺りを見回す。当然、桜はおらず、志帆と信也はパレードに夢中で気づいていなかった。
「桜〜。いませんね〜」
「あのガキンチョがいねぇな。やな予感がするぜ」
ゼロの言葉に気づいたアスラとエンジェルはゼロと同じように辺りを見回す。すると無造作に転がっている桜のお土産が入ったビニール袋にエンジェルが気づいて中身を調べる。当然、中からクッションがなくなっている。エンジェルはそれを見て顔を真っ青にした。
「どうした?」
「く、クッション、無くなってます〜!!」
「何だと!?」
「何ぃ!?」
ゼロが話しかけるとわなわなとエンジェルが慌てながら答える。ゼロとアスラはそれを聞くとエンジェルから伝染したかのように焦り始めた。彼女が妨害作戦を始めようとしている事に気づいてしまったのだ。
作戦の内容は至って単純。桜はクッションを人ごみに紛れて芽衣の足元に投げつけ、転ばせようとしているのだ。これで成功すれば芽衣は大恥をかく事、間違いなしである。
「どうしたの?皆?」
志帆がゼロ達に気づいて話しかけてくる。
「いやな。ちとさく・・」
アスラが真正直に答えようとした所をゼロは口を塞いで
「買い物袋が倒れていて調べてみたら桜の土産がどこかに落ちてなくなってしまったようなのだ。今から探しに行く。心配せず二人きりでゆっくり見ているといい」
ゼロが訂正して適当な理由を志帆に言った。それを聞くと二人きりという言葉に反応して志帆は赤くなって恥ずかしそうにパレードのほうを向いてしまった。
ゼロ達はチャンスと言わんばかりに特等席を飛び出して桜探しを始めた。恐らく桜は花火の時に仕掛けるに違いない。となれば終点まであと少しまで来ているのを考えると時間が無かった。
「者ども!桜を探せ!!奴に妨害をさせてはならぬ!!」
「わかってらい!!」
「は〜い〜!」
ゼロ、アスラ、エンジェルは手分けして人ごみを掻き分けて桜を探し回る。しかし人ごみが多い中、なかなか見つからず捜索は困難を極めた。さらに相手が桜であるという事が問題だった。
彼女は賢い。仮に気づいて探しに来たとしても見つかりづらくなおかつ芽衣の妨害をするためのベストポジションを探して身を隠すなど造作でもない事のようにやってのけてしまうだろう。
しかしそれでもゼロ達は探し出さねばならない。彼女は知らない。自分の考えがまだ浅はかであるという事を。そう、第三者なら思いつきかねない展開があるという事を気づいてないのだ。盧遮那、芽衣、桜の双方のためにもゼロ達は必死に探し続ける。
しかし、時は残酷であり、遂にそのときが来てしまった。パレードが終点へと差し掛かって円形の広場を旋回し、フィナーレをするための準備へと取り掛かる。
「くッ……もう時間が!?」
「諦めるな!アスラ!!奴が実行するまでが真のタイムリミットだ!!」
「すまねぇ!そうだった!!」
アスラが弱音を吐いているとゼロが一喝し、気合を入れてやる。そして探し続けるが一向に見つからずじまいだ。ゼロたちの捜索もむなしく、フィナーレのために盧遮那と芽衣が広場に入ってきてダンサーに示された位置に移動する。音楽もいよいよ終わりの方になってきている。花火の方もいつでも発射できるように準備がなされ、音楽が終わる瞬間を待つ。
そして音楽が終わろうとした時、遂にと言うべきか、それは起きた。踊っている盧遮那と芽衣の足元にクッションが投げつけられたのだ。
それに気づかなかった盧遮那と芽衣はそのクッションを桜の予定では芽衣に踏んでもらう予定のはずが二人同時に踏んでしまった。
「きゃぁ!?」
「おわっ!?」
盧遮那と芽衣は花火が上がると同時に倒れて盧遮那に芽衣が覆いかぶさるような形で二人とも倒れてしまった。そして不可抗力なのであろうが……キスをしてしまった。
「…何で……こうなるの……?」
その光景に桜はこれまで味わった事のないショックを受けてクールを装っていた顔が一瞬、崩れた。それもそうだろう。妨害するはずが結果的に二人の仲を一気に深めてしまうような展開を自分自身が作り出してしまったのだから。
「ね、姉さん…?」
「ルウ兄…どうなってんのさ?」
仲良くパレードを見ていた志帆と信也はその光景に呆然とした。目の前の光景は唐突過ぎて二人には受け入れるのに少々、時間がかかった。光景を受け入れるとビックリし、二人の中では二人はもはや恋人同士?という考えが出来た。
「め、芽衣?何をしたのさ?イヅハにはちっともわからへんよ。覆いかぶさって襲うやなんて大胆な事を何故…」
「おいおい。ヤバいんじゃねぇのか?これって」
オロオロと慌てるイヅハは呂律の回らない口調で、ヘッディーは普通に盧遮那と芽衣に起こった事の感想を言う。カオスはそれに全然動じる事も無く、むしろそれを楽しんでいるかのように微笑んでそれを眺める。
「いえ。私にとっては面白い展開だと思いますよ。これは即カップル成立の予感ですね」
カオスの言葉にヘッディーはまたしてもがっくりとする羽目になった。
「こんなときにまで楽しむなんてあんたなぁ……」
「くっ。遅かったか。……何と」
「チクショウ!!ダメか!…っておぃ…あれって…」
「二人とも抱き合ってキスなんて〜大胆ですね〜」
桜の独り言でようやく居場所を探し当てたゼロ、アスラ、エンジェルは桜を捕まえた。が、目の前に広がる光景にさすがのゼロまでもが目を疑って驚いた。
不可抗力なのはクッションのおかげでわかるがどう見たってキスしている光景だった。
観客達はそれを見て、いろいろな表情をしてそれを見た。理由はクッションでわかってくれているようだが笑いを禁じえない。
「……(こうなるとはちっとも予想してなかったぞ。こりゃまずすぎ…)」
「……(ど、どうしよう…)」
盧遮那と芽衣は自分達がしてしまった事に驚いて一瞬真っ白になった後、お互い、顔を真っ赤にしてそっぽを向いて慌てる。まだまだ青い二人であった。
「これは仕方ないわ。まぁ、こういうのは後にしてちょっと花火を見て落ち着いてみたら?少しはほぐれると思うわ」
盧遮那と芽衣を引き込んだダンサーが自分にも少し責任があると思って何とか二人の仲を取り持とうと二人に声をかけ、花火が上がっている方に向かせた。花火はまだ上がっていてきれいな大輪の炎の花を星空に咲かせている。
「…(恋愛なぞしていても時間の無駄だと思ってたんだがなぁ)」
「…(複雑な気分だけど)」
それを見ると盧遮那と芽衣は心の緊張がほぐれて互いを再び見る。すると二人とも照れくさそうに微笑を浮かべて共に花火を見上げた。きれいに咲き誇る大輪の炎の花が二人を祝福するかのように星空から見下ろして短い命を終えて儚く散っていく。
「あの…。付き合って…くれない?」
芽衣は恥じらいながら盧遮那に告白した。それを聞いた盧遮那は驚いて芽衣を見る。芽衣の目は真剣だった。嘘偽り無いとてもきれいな目だ。それを見た盧遮那はフッと笑う。
「…ああ。ここでNOなんて言えん。それにあんさんといると面白い。そうしてみるよ」
盧遮那は芽衣の告白に応じた。こうしてパレードは幕を閉じる。
パレードの周りにいた観客達はそれぞれの思い出を胸に帰っていったり、夜のパークを楽しんだりとそれぞれの時を刻んでいく。盧遮那たちもまた、全員で夜のパークを楽しみ、自分達の思い出の時を刻んでいくのであった…。
終わり
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stage of gothic第三話です。 この小説は絵師さんの描いたメダロットのオリキャラをゲスト出演させてあります。 今回登場している桜と志帆は『オリメダカンパニー』管理者 うらばんXさんのオリキャラです |
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