リリカル東方恋姫外伝 ネギま編 第十話 『因果応報でも、悪いことを思っている時点で、もうアウト』
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「ヴッ…ここは…?」

「おめざめかな、オスティアの皇女様」

 

 アリカが目を覚ますと、そこは牢獄の牢屋の中であった。サルに担がれているうちに気絶してたようだ。

 鉄格子の向こうには、二人の男性と青年一人がいた。男性の一人はいかにも盗賊の頭領とばかりの格好で、もうひとりは大富豪みたな和服を着た禿げのデブ、そして、青年は十五歳ほどで、民族衣装のような着物を着ていた。

 

「貴様らは誰だっ。妾にこんなことしてただで済むと思っておるのかっ…!」

「ふっふふふ、こんな状況なのに、肝が据わっておられる…そそるねぇ」

「その仏頂面を快楽でゆがめながら、食らうのは楽しみですよ」

「これこれ、物騒なことをもうすな。それにしても、むっ〜…意外とセーラー服が似合いそうだわい」

 

 睨むアリカをよそに、三人の中年たちはアリカを下品なことを考えながら色目をつかっていた。

 とくに、最後の禿げデブに意外といわれて、アリカは今すぐ禿げデブを殴り殺したかった。だが、怒りを押さえ込み、状況を把握するために、冷静に中年たちに聞く。

 

「いかにも負ける奴がいう台詞を吐くよりも、名を名乗ってはどうだ貴様ら?」

「くっくく、そうだな。俺の名はヴォルマ。この白獣軍の頭領をしている」

「僕の名は輪王鬼。今は人の姿に変化してけど、本来の姿は大鬼。500年近く、悪逆と殺戮を尽くしたうえ、力ある術者たちを食らい続けてきた大悪鬼だ」

「ワシは醍奈権。旧世界とある宗教の教祖をしていてな。白獣団に資金援助をしておる」

 

 盗賊の頭領はヴォルマ、青年の姿をしているのは悪鬼の輪王鬼、禿げデブは醍奈権と、それぞれ名乗った。

 

「白獣軍だと…!?」

 

 彼らの名と団体にアリカは耳にしたことがある。

 白獣軍。大海賊である八宝菜と並ぶ、モテナイ男や女を犯したいというもの達で構成している傭兵集団である。

 さらに、団長のヴォルマはすべての女たちを男たちの性欲の道具にするという夢、ご奉仕世界の野望をもっていた。そのため、この集団には女共を誘拐、強姦、もしくは、奴隷などの人身売買など悪いうわさが絶えなかった。事実、何千という人、主に女たちが彼らの性奴隷にされ、また、女を犯し繁殖の道具にする妖怪に売るなどと、醜悪な悪事をしている。しかし、実力は本物であり、傭兵集団であるため国ひとつ落とせるほどの戦力を所持し、背後に強大なパトロンがついておるため、警察や政府はそのパトロンの権力と圧力により、あまり手出しができず、世界の裏で、とくに、八宝菜の水面下で活動していた。まさに、エロ同人誌で聖なる乙女たちを強姦する外道の集団であった。

 

「レイプモノのエロ同人誌みたいな世界を作ろうとするアホな賊どもが、なにようにこんなところにおる…!?」

「これはこれは、オスティアの皇女様が我々の野望を知っているとは、ワシらの顔も、八宝菜に負けずに売れているようじゃな。ホッホホホホ」

「御託はよい禿げが。貴様ら、妾を誘拐してどうする気だ!」

「どうするもこうするも、あんたはただ、俺たちの縄張りに入ってきただけで、目的はないさ」

「もっとも、我らにとってはよい拾い物であるがな」

「どういう意味じゃ…?」

「俺たちは、野望である女共を男の性欲の道具とするご奉仕世界を実現するために、この魔法世界を支配する計画を立てているんだ。そのための準備にはこの谷が最適だったってわけだ」

「つまり、妾は偶然に貴様らのテリトリーに入ったわけか。…だが、そんなエロ漫画のような野望が実現するはずがない!」

「そうかな、俺たちが最初に襲撃するのは王族や上級階級だ。なにぶん、国の軍人や兵士どもは戦争のほうで集中しておるから、上級階級の警護は薄手だ。男共を殺し、女を犯し狂わして俺たちの操り人形にする予定だ」

「そして、僕らが王族の女共をつかって世界の裏であやつり、すこしずつ、世界の常識を変える。そうすればこの世界を女共を性欲奴隷にするわけだ。つまり、ご奉仕世界の完成ってところさ」

「そのまえに、うるさい政治家や軍人どもがいるかもしれんが、そんときは、ワシらの忠実な信者たちで快楽に落とせばいいだけだわい。フッホッホホ」

「なんと卑劣な…!?この世界の危機のときに己の快楽のために世界を手に入れようとするのか…!!下衆共が!恥を知れ!」

「己の快楽はおおいに結構!ハーレムを望むのは男として当然のことだ!」

「そのために、あなたも僕らの操り人形になってもらいますよ皇女様」

「そのあとは、ワシの教団で教鞭をとってもらおぉかの〜。むろん、おぬしが体をつかってな。ぐっふふ・・・」

「…卑劣な上に女に飢えた狼…いや、豚だな貴様ら…。もしも、妾に手を出せば、妾の騎士たちと騎士たちが率いる紅い翼がただではすまんぞっ!」

 

 アリカを犯そうと考える三人に、アリカは眼光を鋭くし睨むつける。

 

「フンッ、たとえ、最強の紅い翼でも、俺たち白獣軍の敵じゃねーさ。おい、輪王鬼」

「はいよ」

 

 輪王鬼が水晶玉を持ち、ブツブツと呪文を唱えると水晶玉が光り、空間にスクリーンを映し出した。

 スクリーンには谷の底で、重火器や武器などの資源を運ぶ傭兵達や、杖の手入れをする屑や悪の魔法使いたち、檻に入れられた女性たちを見張ったり隠れ家の谷の洞窟で門番などをする大型のモンスターたちが、大勢いた。その数と、武器の数は、アリカの見方では、もはや一国に軍事力を有してた。

 

「どうだい。俺の野望にシンパし、俺についてきた仲間!白獣団を!!どんだけ、最強無敵の紅い翼でもこれだけの兵力!軍事力!!そして、リア充な男を殺し、女を寝取るという邪な信念をもった俺たちの前に紅い翼なんてただの屑だ!!」

「さいわい、谷にいるのは数名の紅い翼だけだし。まずは、そいつらを殺し、そして、ほかの紅い翼のメンバーを消していく」

「もちろん、紅い翼にいる女はワシらが奴隷にするがな」

 

 三人は笑みを浮かべ、自分たちの勝利が明らかだと確信してきた。

 もっとも、身の危険であるアリカは不敵な笑みをみせていた。

 

「自信ありげにしゃべっていること悪いが、その野望は無理じゃな」

「ふん、傲慢だな。現実を見ろ。どれだけ紅い翼がつよかろうが、戦力ではこちらが――」

「どれほど、おぬしらが最悪で一国の戦力を持とうが、おぬしらの死亡フラグはもはや確定している。あやつを怒らせた時点でな(ニヤリ)」

 

 

ドッカーン!!

 

 

 スクリーンから聞こえてくる爆破音。三人は何事かとスクリーンを見る。

 そこに映し出されているのは、武器が入った箱や大型の兵器が地面に転げ落ち、仲間たちが吹っ飛ばされたように倒れ、無傷の仲間たちと大型のモンスターたちが宙に舞う土煙の中心でたたずむひとりの青年を警戒していた。

 

『み〜つけった』

 

 その青年、腰に長刀と短刀をぶら下げ、黒い髪を靡かせ、鬼か獣のような紅い瞳で敵を見つめて、笑っていた。

 

「やっときたか、妾の最凶の騎士。遮那よ」

 

 

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「さてっと…姫さんはあの洞窟か」

 

 谷の底まで弾道ロケットのように降りてきた遮那が、いかにも悪党がアジトにしてる洞窟に入ろうとする。

 

「まっずい!あいつは紅い翼だっ!殺せぇええ!」

「出入り口を固めろ!!アジトの入らせるな!!」

「相手は一人だ!紅い翼でも俺たちで殺れるはずだ!!」

 

 遮那を囲み警戒していた傭兵達が動く。

 魔法が使えない傭兵達は剣などの接近戦の武器をもって遮那に近づき、銃を持つものと魔法が使える魔法使いは距離を取りつつ、岩陰に隠れて援護射撃をする。

 

「……邪魔」

 

 その一言を呟いた遮那は、接近戦で挑む者たちを体術で捌き、関節技を決めたり投げ飛ばす。ときには敵の武器を奪いその武器で群がる敵を急所を外して嬲り殺す。

 さらに遠距離から射撃する敵には、奪った剣などで投擲し、目や肩など狙って突き刺す。それを機械的に繰り返す遮那はだが、傭兵たちをひとおもいには殺さない。

 なぜかといえば、

 

「うっがぁぁああ俺の腕がぁあああああああ!?!?」

「腰が折れたぁあああああ!?」

「目が!目がみえねぇえええ!?」

「助けってくっれぇええええええ!」

「いったいよ〜!?!?」

「死ぬ!死んじまうぅうううう!?」

「死にたくんぇええええ!」

「誰か魔法で治療してくれぇえええええ!!」

「無理だ!そんな暇がない!!」

「まって、怪我人をこっちにひっぱればいい――ぎゃっぁあああああああああ!?」

「治療班の一人がやられたっぁあああ!?」

 

 自分を女と認識したものに生き地獄を味あわせるためであった。現に、遮那に斬られたり、骨を砕かれたりなどをされた傭兵たちが、怪我の痛みに苦しみながら地面に転がっている。魔法で治療できるとはいえ、現場は混雑してるため治療班が治療にはいけない。ただでさえ、遮那が陣取っているため、怪我人を運ぶこともできない。

 そうしているうちに、傭兵たちが次々と、倒れていく。

 

「こうなれば、ケンタウロス!サイクロップス!トロール!ケロベロス!キメラ!あと、その他の大型モンスター共!あいつをぶっ殺せ!!」

「「「「ガッォオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」

「「「「グッォオオオオオオオオオ!!!(あとでシバクぞ傭兵A(怒))」」」」

 

 見張りをしていた大型モンスター軍団が遮那に襲い掛かっていく(名前を呼ばれなかったモンスターは命令した傭兵Aに怒りをおぼえているが)。

 大型モンスター軍団はまるで大波のように一斉に遮那に押し寄せていく。

 襲い掛かる傭兵たちが倒れていなくなり、遮那は眼前のモンスター軍を見て、軍団にリアクションを起こさず、数秒間ほど考え、左手の指なし手袋に手をかける。

 

「せっかくだし、これ使ってみるか…」

 

 手袋を脱ぎ捨て、左手の甲を大型モンスター軍団に向ける。

 左手の甲には瞼を閉じた眼がひとつあった。

 

「よーく、見やがれろ木偶の坊共。起きろ…悪魔の眼(メドゥサ・アイ)っ!」

 

 閉じていた悪魔の眼がカッ、と開く。

 その眼と合った大型モンスター軍団や生き残りの傭兵たちが一斉に灰化しはじめた。

 

「なんじゃっこりゃぁああああああああ!?」

「幻術でも石化魔法でもない!ほんとうに体が灰なっていくぅううううう!!」

「グッガァアアアアアアアアア!!(デ落ちってあんまりだぁああああああ!!)」

 

 灰となっていく恐怖に傭兵たちと大型モンスター軍団らは絶叫の悲鳴を上げながら灰となり、その肉体を社なの前から消えた。

 

「ふーん、使い勝手は悪いが、眼前に敵がいれば使えるなコレ…」

 

 悪魔の眼を閉じさせ、もう一度、指なし手袋を嵌めた。

 

「オイ…、もう出てきていいぞ」

「いやはや、一人で敵陣に乗り込むなって、あまり無茶をしないでくださいよ」

「まったく、そこだけはナギと一緒だなおぬしわ」

「まっさか、いつも嵌めている手袋にはそんな理由があったとはおどろきです」

 

 物陰から詠春、ゼクト、アルが出てくる。その後ろには奴隷として囚われていた女たちもいた。

 じつは敵陣に乗り込む際、遮那たちは隠れ家の前で囚われている女たちを救うため、遮那が敵の相手に女たちから眼を背ける囮役をし、その隙にアルたちが女たちを救うという作戦を立てていたのだ。ちなみに、囮役では最初、詠春も参加する予定だった遮那が「俺一人で十分だ」といって断っていた。

 

「それにしても、遮那。あなた、まだ力は隠していてたんですね」

「なんだ、見えたのか?」

「はい。覗き見するつもりでありませんが、女性たちを助けた後、あなたの後ろで、あなたがが手袋を脱ぎ捨てって、手の甲を敵に見せたとき敵が灰になるのをみました」

「そう。まぁ。別にかくしたわけじゃねぇし、説明してやるよ」

 

 遮那はもういちど、手袋を脱がし、瞼を閉じた悪魔の眼を見せる。

 そのとき、悪魔の目が自動的に開こうとするが、遮那の強靭な精神で抑えているので簡単には開かない。

 

「俺の左手の甲には悪魔の眼…メドゥサ・アイっていう眼が埋めてあって、この眼を見たやつを灰化することができるんだ」

「それはもしや邪眼か魔眼の類ですか?しかし、メドゥサ・アイという名前ならば、普通敵を石化するものではありません?さきほどのは灰化させていましたよ?」

「そんなもん、俺が知るか作った本人に言えよ」

「遮那らしい答えですね」

 

 遮那がジャンプ派であるため、マガジンの最強キャラを知らなくて当然であった。また、なんで、サムライディーパーkyoの特典なのかといえば、転生させた駄目神がお気に入りだったという趣味の理由でもあった。

 

「なぜ、そんなもの左手に埋め込んでいるのかは、あなたの素性で知っているのスルーしますが、見たものを灰化するその眼、危険ではありませんっか?」

「危険といえば危険だな。こいつ敵味方関係なく灰化しちまうし殺戮兵器だし、なにより、この眼と合ったやつしか灰化できねぇから、面倒くせぇたらあらしねぇよ」

「つまり、使い勝手悪いということですか?」

「そういうこと。一様、俺の意思で閉じれるけど、こいつがじゃじゃ馬でな。いつ、勝手に開くかわかったもんじゃねぇんだよ」

「そのためにいつも左手に手袋をはめていたんですね」

「もしも、ワシたちがみてたらヤバかったのぉ〜」

「私としては、その眼、研究したい物ですが…あとで調べてもよろしいでしょうか?」

「かまわねぇぞ。ホモが灰になるだけだし」

「おや、怖い」

 

 こうして遮那の悪魔の眼を説明し終えた後、遮那たちはまだ話せる傭兵たちの口を無理やり割り、白獣軍の情報を聞き出した。

 

「ふむ、どうやらこいつらは、女共を汚すことで有名な白獣軍のようだな」

「女性を性欲の道具にするなど断じてゆるせません!そんな集団など即刻潰しましょう!」

 

 いつもより、感情的になる詠春。紳士であり婚約者がいる彼にとっては白獣軍の悪行は許せなかった。

 

「詠春、あなたが怒るのはわかるが、まずは保護した女たちをどうするかも考えなくないけませんよ」

「だったら、アリカと白獣は俺に任せって、おまえらはこの女共を遠くに避難しとけ。なにぶん、この変態どもを全員地獄に合わせないと気がすまねぇし」

「念のため、ワシもついていこう。まだ中に囚われている者たちもいるかもしれんしな」

「…わかりました。遮那、私の変わりに、あの女性たちを侮辱したものたちを裁いてください」

「あいよっ」

 

 そして、遮那とゼクトはアリカとまだつかまっているはずの女性たちの救出と、頭領をその幹部を倒すため、白獣団のアジトの出入り口の洞窟に入っていく。残されたアルと詠春は救助した女性たちを保護して、アジトから離れていった。

 

 

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「う、うそだろう…俺の仲間たちが…女共を性奴隷にすることを誓った白獣団が…最強の白獣軍っ!?」

 

 スクリーンに映し出される倒れている、ヴォルマは信じられず、あわあわと震えていた。

 

「やれやれ、自信ありげに言っておったが、所詮は屑の集まりであったな」

「ぐっ!このアマー!!」

「まって、ヴォルゴ!!」

 

 鼻で笑うアリカに、ヴォルマは激怒してアリカを犯そうと鉄格子の扉を開こうとするが、輪王鬼が止めた。

 

「止めるな!こいつは俺の大事な仲間を笑いやがった!今すぐ犯し狂わして紅い翼に前に出さないと気がすまねぇ!」

「落ち着けって。冷静に考えてみてくださいよ。ここで皇女を陵辱しても相手を無闇に怒らすだけですよ」

「そうですぞ。犯すなら絶望に堕としてからのほうがよいですよ。これはデザートとして最後までとっとくのが、よりおいしいものです」

「……それもそうだな…」

 

 ヴォルマは落ち着きにやけて、アリカをみつめた。

 

「快楽地獄の演劇はまだはじまったばかり。あんたの騎士が惨めに死ぬとこをまで付き合ってもらうぞ皇女さまよぉ〜…」

「いっとくけど、このアジトは、一種の迷路になっていてね。簡単にここに来るとはできない。なにより、さまざまな侵入者用のトラップもしけているし、うっかり、罠にかかって死んじゃうかもね」

「なにより、我々の仲間は、外にいるものだけではない。優秀な幹部とチートな力を持つものたちもおる。そいつらなら、紅い翼などもはや蟲同然。屍になるも時間の問題じゃのぉ、ほっほほほほほ」

 

 またもや、自信ありげにいう三人。これは、アリカをワザと怖がらせ、絶望にするためでもあった。

 しかし、アリカは胸を張って堂々とする。その心には恐怖も抱いていない。絶望的だと一欠けらも思っていない。 なぜなら、来るのは最凶の騎士という災害なのだがら。

 

「どれほど自信でありげにいわれようが、その言葉、そっくりおぬしらに返してやるぞ」

 

――妾の騎士をあなどるなよ、三下共

 

 

 

 

 

 その頃、洞窟に入った遮那とゼクトは、一旦、二手に別れて、それぞれアジトを探索していた。

 遮那が迷宮のような洞窟であちらこちらと歩いているが、いっこうにに敵と会わなかった。

 

「おかしい…さっきから歩いているのに、姫さんどころか敵一人出てこねぇ…逃げちまったのか?」

「誰が逃げるか、命知らずの雑魚め」

 

 遮那の前方の曲がり角から、褐色で露出が高い衣装で剣をもつ女性が現れた。

 

「我が名は魔界闘士イングリラン。我が主の命により貴様を葬る!」

 

 イングリランは、素早く動きだし、剣を振り上げ、飛び掛ってきた。

 

「ハァッ!」

 

 兜割といわれる上段からの一人振り。達人でも、見切ることもできず一刀両断はできるだろう。

 だが、遮那はその一振りを余裕で紙一重で交わし、右拳をイングリランの腹をめり込ませてた。

 

「ごっほ!?ば、馬鹿な!?私の剣を見限れた!?」

「そんな程度の腕で俺が剣を抜くかよ。ふんっ!」

 

 拳を腹にめり込んだまま、イングリランを壁へとたたき付けた。

 

「さすがは灼眼幼鬼…魔界と五本の指に入る私でさえ、お前に剣を抜くことさえも出来ないとは…完敗だ…。だが私が倒れても、この先の敵をお前の命をとる…ヴッ」

 

 そう言い残して、イングリランは気を失った。

 

「この先の敵ってことはこのまま進めば大ボスと姫さんがいるってことか…」

 

 

 

 

 遮那がまっすぐ道をすすんでいくと、着いた先はなにかのコロシアムであった。

 

「来たか。剣聖鬼神、黒曜院遮那よ」

 

 コロシアムの中央には、胸元を大きく開いたライダースーツのようなビチビチの戦闘服を着こなし、腕には鉤爪の手甲をする、妖艶なオーラを滲み出す、毒蛇のような女性がいた。

 

「私はこのアリーナの責任者であり調教師兼司会の邪妖忍軍頭領、朧影。おまえを私の忍術で奴隷にしてあげるわ♪」

「闘士の次は忍者かよ。つうか、そんな格好して恥ずかしくないのかおばはん?きつすぎるぞ?」

「なっ、誰がおばさんですってっぇえええええええ!!!こっちとはら花の喜ぶ二十代だぁぁあああああ!!きついんじゃなく妖艶とおぼえんかぁああああああ糞餓鬼ぃいいいい!!!」

 

 おばさん呼ばわりされ激怒する朧影。

 忍者特有の高速移動で遮那の周りを飛び回り、手甲の鉤爪で攻め、さらに手裏剣を投げて攻撃の隙をなくす。

 しかし、遮那は天狼を抜かず、またもや紙一重で避ける続ける。一刀やその部下である夜の偶像の三姉妹に比べれば、朧影の攻撃など遅いのだ。

 

「こんなもんか?うちの忍者(夜の偶像)のほうが強いぞ」

「ふっふふ、忍術っていうのはいかに敵を騙すか、その一点だけよ?」

 

 そのとき、朧影が壁となって気づかなかったが、朧影の攻撃の隙間から無数の鎖が全方向から飛び出し、遮那の首や四肢を拘束した。

 さきほどまで客席に、いかにもサイボーグ手術をしたようなオークが、約五十体ほどがおり、鎖で遮那を拘束していた。

 

「ほっほほほ、どうよ、このアリーナのバトル用に改造した戦闘型オークのパワー!さすがのあなたでも、五十体以上のオークの鎖の拘束は解けないでしょう!」

「…なるほど、忍術で気配を隠していやがったな」

「さぁ、これであんたは手も足も出ない。痛い目に合いたくなったら、私の奴隷になることを誓いなさい。それで許してあ・げ・る」

「けっ、俺におねがいするんなら、もうすこし若い娘で頼みやがれ、ババァ」

「こ、この糞餓鬼〜…!?フン、往生儀間の悪いこと。その口、いつまでいえるのかしら、ネッ!!」

 

 遮那の口の悪さに怒りかける朧影だが、遮那が動けないことで一度冷静になり、遮那の腹に鋭い蹴りをいれた。

 が、蹴りを入れた瞬間、ボキッと、なにか硬い金属のようなものをぶつけたように足の骨が折れた。

 

「うっぎゃぁあああああああああああ私の足がぁあああああああああああ!?!?!?」

 

 折れた足を両手で押さえ、地面で転がる朧影。遮那を拘束しているオークたちはなにが起きたのかわからず、困惑すると、遮那の服から、ゴッス、と何か重たいものが落ちた。それは厚さ五センチもある鉄板であった。

 

「おっ、そういえば、ナギの身代わり対策として腹に鉄板仕込んでいたのわすれてたわ」

「おまえ、そんなもん仕込んでたの!?」

 

 小柄な体型であるにもかかわらず、素早く動いた上、分厚鉄板を仕込んでいたとは、さすがの朧影も気づかなかった。それなのに、おもいっきり鉄板を脛から蹴ったのだ。骨が折れて当然である。

 もっとも、いったいどいう風に仕込んだのは野暮用である。

 

「よくも私をコケにしてくれたわねぇ〜!!」

「いや、あんたが勝手に腹パンした結果だろう?あっ、この場合、足で蹴ったから腹蹴りっか?」

「うるさい!殺して実験体の性処理にしてやるぅうううう!!忍法・黒操刻印!!」

 

 朧影は遮那の頭を掴み、術を発動させる。頭から手を離すと、遮那はぐったりと頭を垂れ下がる。

 

「この技は相手を完全催眠で操ることができるのよ。さぁ、これであんたも私の言いなりの奴隷だ。私に『わたしは朧影様の性人形です』といいなさ――」

「悪魔の顎」

「ぎゃっぁああああああああああああああああああああ!!!」

 

 催眠術で動けないはずの遮那が、黒い炎で自身を中心に焼き尽くす。そのため、そばにいた朧影も燃やされ、、遮那を拘束していた鎖は燃えて融解した。

 悪魔の顎がおさまると、足元に全身黒焦げで重度な火傷を負った黒影が、微かに息をして倒れていた。

 

「なんで…たしかに、術がきまったはず…!?」

「悪いな。こっちとら、そいうオカルトとか催眠系は効かないんだよ」

 

 実は遮那の左手の甲にある悪魔の眼は、眼の保有者をあやるゆ邪術を守る効果があるため、朧影の催眠術はきかないのだ。もっとも、悪魔の眼のことを知らない遮那には、いまだ知らないことである。

 

「その怪我じゃー動けねーだろうよ。先を急ぐんで、そこで寝ていろ。あばよ」

「ぐぅうう、まちなさい!オーク共!さっさとこの餓鬼を殺してしまえ!!」

『ぐっぉおおおおおおおおおお!!!』

 

 

 朧影の命令で、オークたちがいっせいにアリーナに乗り込み、遮那を襲おうとする。

 出入り口へ向かう遮那が、後ろを振り返った。

 

「オイ、豚共。おまえら機械に変えられても、元は本物の獣なんだろう?だったらまず、誰を襲うのかわかっているよな?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 鬼のような紅い眼の眼光がオークを心を射抜き、心臓を掴んだ。オークの視界には、遮那の姿がなく、代わりに巨大な殺意の塊でできた鬼がいた。オークたちは遮那を襲うのをやめ立ち止まり、倒れている朧陰に視線をむけた。

 

「おまえらなに止まっている!さっさとその餓鬼をコロs――」

『ぶっぉおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 オークの野生の本能が叫ぶ。アレに手を出すな。言われたとおり弱ってる獲物に手を出せ、と。でなければ、殺される。オークという種がすべてをアノ『鬼』によって絶滅されてしまう。

 オークたちは絶対なる強者を必死に無視して、朧影の体を貪ろうとする。

 

「や、やめろ!私の触るな汚らわしい化け物め!私の体に触れるな!処分されたいのかk――ぶっ!ぐちゅぐちゅ…ぶっは、私の口によくも舌を入れくれたな…!?切り刻んで焼却するぞ!ってちょっと、その肉棒でいったいどうするk――アァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 脳を機械化され、朧影の命令に設定されていても、オークたちは生存本能で、己の種を残すため朧影を犯し始める。朧影の悲鳴がアリーナに反響するのであった。

 

「世の中、不平等の中に平等あり。聖女を犯す悪女でも、逆に犯されては文句できねぇぞ。おばはん」

 

 因果応報と思いながらも、オークたちの繁殖に背を向けながら、遮那はアリーナから出て行った。

 

 

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「ヴォ、ヴぉルマ、魔界闘士と邪妖忍軍があっさりやられちゃったんだけど大丈夫なのか!?」

 

 スクリーンで、刺客をあっけなく倒す遮那の強さに、醍奈権が怯えていた。

 

「心配ご無用だ教祖さま…しょせん、あの女共はただのカス!こっちにはまだ、魔界の不死王ブラッグ!裏格闘技の試合者財団ゼズが黒曜院遮那を討ち取るはずだ!」

 

 切り札を残しているため、ヴォルマはいまだ自信をもっていた。

 

「なにより、ここにはこの僕、大悪鬼の輪王鬼と、白獣団のヴォルマが一緒にいるんだ。そう怯えるんじゃない」

「そ、そうか…この集団でわしだけ戦闘力が無いし、もしも、灼眼幼鬼が来たら頼んだぞ」

「わかってるって。だが、その暁にはわかっているな」

「うむ…ご奉仕世界のために資金援助と…」

 

 

 

「清純聖乙女生産のための教育の実施だな!!」

 

 

 その言葉に、アリカは思わずずっこけてしまった。

 その約束に、ヴォルマのテンションは上がる。

 

「そうだ。今じゃ男と男の交じり合いを好む腐女とか自分から襲ってくるビッチとか、もう女の価値がだだ下がりだ!!俺らはそんな女の穴を求めていねぇ!俺の肉棒は穢れの知らない女とかリア充の女を寝取るためのものだ!ただ、女を抱きたいわけじゃない!陵辱したいんだよ!犯したいんだよ!俺の色に染めたりんだよ!そのためには、もう一度、純粋な女を教育する、あるいは生産するしか道がない!ちなみに、清純聖乙女は順応でおとなしく、恋人一筋でそれでいて痛いことに涙を流して『いやぁああああやめてぇええええ』と悲鳴を上げるメスのことだ」

 

 清純乙女について熱く語るヴォルマ。彼の中には純粋な乙女を汚したいという欲求でいっぱいであった。

 そのことに、ほか二名も、ヴォルマの悩みに頷く。

 

「最近じゃー触手は性器ではなくバイブとして認識されてきるし。僕の触手を狙って探索する腐女も出てきてさー。ほんと、人って馬鹿な生き物。もう、犯す気も食べる気もなくなっちゃたよ」

「昔は良かった。無知で快楽を知らない乙女たちをこの手で陵辱し、順応なペットへと育てると実感と達成感。あれは実に良いのに、いまじゃー、わしが作った宗教にはただ乱交したいというバカども乱交の場。陵辱のりもありましない…はぁ〜」

「ドSの欲求不満だよな。たっく、これも社会が悪いんだ。放置教育はアカンなやっぱ。子供が勝手に性を覚えてしまう。ビッチ量産だぜまったく。教育委員会はなにをやってんだか…ぶつぶつ」

 

 現在の女性たちの待遇に不満をもつ三人は、うだうだと呟く。

 

(陵辱する側も大変だな…;)

 

 その様子に、アリカも若干同情をする。自信も貞操の危機であるが、なにげに道徳なことをさりげなく言ってるので、危機感が沸かなかった。

 そのとき、アリカが来ると確信し、ヴォルマたちが来られないと確信していた者が、やってきた。

 

「ここにいたか、大ボス。あと姫様」

「遮那!」

「「「げっ、灼眼の幼鬼!?」」」

 

 何食わぬ顔で、遮那がドアを開けて入ってた。

 アリカはまってたぞ、というばかりの声で叫び、ヴォルマたちは遮那がここに来たことに驚いていた。

 

「お、おぬし不死王のブラッグと財団総帥のゼズがどうした!?」

「作者が男のオリキャラとシーンを書くのが面倒くさくなって割愛した。ちなみに、二人は不死の再生能力を超える本気の朱雀の永久攻撃で、消滅させてやったぞ」

「ちょっ、そんなのアリ!?あの二人、元ネタのモデルだと最強キャラなのに!?」

「元がどうあれ、所詮はオリキャラの使い捨てキャラだろうが。男のオリキャラはお前たちで十分だ」

「な、なら罠はどうした!?おまえが通る道にいろいろと仕掛けていたんだけど俺!?」

「あんなもん、全部突破したきたのにきまってんだろう。ただでさせ、前回、ナギとリズが罠にかかりまくったし、罠攻略のシーンなんて無駄だ。これも割愛だ」

(今日の、遮那はメメタだな…とうとう、ナギの馬鹿が移ったかのか…)

 

 いつもよりテンションが低く、さりげなくメタをいう遮那。ナギのバカが感染したのかと、アリカが思った。

 遮那は「離れてろ」と横の牢屋に囚われたアリカに言い、天狼を鞘から抜き、片手で牢屋の鉄格子をバラバラに斬った。

 斬られた鉄格子からアリカは牢屋から出て行き、遮那の背後の壁に避難する。

 

「さぁ、乙女を汚すしか能の無い三下共。俺を女扱いしたやつらの親玉として連帯責任をとってもらうぞ。あと、ついでに、うちを姫様を誘拐した件も含めて」

「妾はついでかい!」

 

 剣先を眼前のヴォルマたちに向けた。後ろでアリカがツッコンでいるが遮那は無視した。

 

「とりあえず、見てて気持ち悪いから、禿げデブ、まずはテメェから消す」

「えぇぇぇええワシィイイイイイ!?ヴォルマ、輪王鬼助けてくれーー!」

「「醍奈権(教祖様)、おまえのことは忘れないぞ〜!」」

「裏切り者ぉおおおおお!!」

 

 醍奈権の横にいたはずのヴォルマと輪王鬼は醍奈権から離れ、別の出入り口のほうへ避難していた。

 あわれ、醍奈権。性格同然の容姿で鬼に選ばれてしまった。

 

「犯し狂わした女たちの涙を数えながら地獄に堕ちな。螢惑輝炎っ」

 

 剣先から放たれる業火の嵐が醍奈権を燃やす。火炎の源である血の呪印『焔血化粧』が醍奈権の肉体にまとわりつき、肉体の内側からは焼き尽くす。

 

「ぐっわぁああああああああああ!!我が陵辱乱交最高の宗教は永遠に不滅だぁああああああ!!!」

 

 醍奈権は火炎の包まれながら叫び、焼失した。

 

「ふんっ。所詮は弱い奴らを騙して、己の欲望を満足しているだけの老害がっ。おまえの宗教なんど、あとで一刀に頼んで社会的につぶしてやるわ」

 

 なぜ、そこで一刀の名前が出てくるというと、物理的につぶすことができても、政治的に潰して苦しめるなら一党のほうが得意であると、本人から聞いて事があるかららしい。

 牢屋の監獄の空間の温度が、遮那の火炎で高くなり、アリカたちは汗を流す。その目には燃え散らす火花の中心に立つ遮那の姿が荒々しく、神々しい印象を捉えていた。

 

「さぁ、残りの奴らも覚悟しな!」

「むぐぐぐ、女みたい体したオカマ風情が!主人公級に負けるかよ!」

「誰がオカマだごらぁあ!!」

 

 禁句を言われ、ヴォルマを殺そうとする居合いを詰める遮那。

 剣を振ろうとしたとき、ヴォルマと間に入り腕を太い触手に変え、遮那に襲い掛かる。遮那は剣で触手を斬り、とっさに後ろに飛び、回避する。

 

「ヴォルマ。ここは僕がひきつけるから、君だけでも逃げろ。君がいれば白獣軍はまた立て直せる」

「輪王鬼…すまんねぇ!」

 

 ヴォルマは輪王鬼を残して、その場から逃げた。

 

「ほぉ、三下の癖に武人みたいな真似する奴もいたか」

「武人ではないさ。ただ、私情で貴様に用があるだけだ。…まさか、僕――儂が長年捜し求めていた『鬼神の力』を貴様がもっていたとはわな!!ウッォオオオオオオオ!!!」

 

 メキメキと肉体を膨らませ、着ていた着物が破れ、肌の色が深い青に変わり、髪の毛が乱れるように長くなり、少年の顔立ちが歪み額に長い双角を伸ばし、少年から巨大な化け物へと変化させる。その姿は鬼。強靭な巨大な肉体に巨大な金棒をもつ凶悪な顔をした悪鬼であった。

 

「絶対なる暴力である鬼神の力を求めて早500年!力ある者を喰らい続けて1000人以上!人共に恐れられ、人共を殺しつくした大悪鬼、輪王鬼とは儂のことじゃ!貴様を喰らい、鬼神の力を得て。儂は真の鬼神となろうぞ!!」

「…なるほど。外道じゃなくって畜生の類か。いい面構えじゃねーか。さっきの三下よりいいぜ」

 

 真の正体を表した輪王鬼。凶悪な容姿相応に殺意とオーラは、さきほどを倒した刺客とは1、2に違った。

 あたりだと思った遮那は微笑む。

 

「参る!」

「フッン!」

 

 先に動いたのは輪王鬼であった。金棒で横に振るう。巨大で長い金棒はちょうど、離れている遮那の頭に届く。このまま、遮那の頭を割ろうとするが。遮那はジャンプして避け金棒に着地して、そのまま金棒の上に走り輪王鬼に近づく。輪王鬼は金棒を払って遮那を落とすが、振ったときには遮那は輪王鬼の眼前に飛び掛り、刀を振り下ろそうとしていた。しかし、輪王鬼はとっさに金棒で防ぎ、カッギン、と甲高い音が鳴る。

 

「正体を見せた以上、貴様は必ず殺すぞ人間!!」

「やってみろ、木偶の坊!」

 

 輪王鬼はそのまま振り払い、剣ごと遮那を前方へ飛ばす。遮那は地面に足裏を引きずりながら着地し、息をするまもなく、脚の跳躍で居合いを詰め、刀を振るう。輪王鬼は金棒で防ぎ、巨大な鉄塊で潰そうとするが、刀に弾かれ防がれる。両者、刀と金棒をぶつけ合い、そのたび、甲高い音が響き、火花が散る。

 

(なんという殺気と剣幕だ…それにあのデカイ、遮那と渡り合っておる。ただ人を喰らっただけの魔物ではないな…)

 

 壁側で巻き込まれないようするアリカが、幼女と悪鬼のぶつかり合いを傍観していた。遮那の強さを知っているため、その遮那と互角に攻防する輪王鬼に、普通の妖魔と違うことを、その目で実感する。

 もっとも、徐々に輪王鬼が押され始めており、遮那はさきほどから楽しいそうに笑っていた。

 

「ぐぅぅううう、スクリーンで見ていたが、もはや人の域を超えておる…これが、鬼神の力っか…!?」

「なにが鬼神の力だ!こんなもん、あの馬鹿(ナギ)とアイツ(一刀)と比べれば通常だ!」

 

 自分が常識側と主張する遮那。ナギはともかく、圧倒的な力と戦略で勝つことができない一刀のほうが化け物だと、心の中で思っていた。

 

「人間風情が!その力を真に使えるのは鬼である儂だけじゃ!早く儂に喰われてその力、寄越せ!!」

「だったら、本気で俺を殺してみろよ!オッラァア!!」

 

 剣幕の間を狙っての一太刀が輪王鬼の胴体を切り裂いた。深い青の肌から赤黒い血が噴射する。

 

「ぐっぉおおお。最凶最悪である儂が人間なんかに…」

「どうした?もうおしまいか!」

「……ならば」

 

 片手で傷口を押さえる輪王鬼。遮那は首を飛ばそうと、刀を平行に振ろうとするが、天井利雷のようなものが飛んでくるが察知し、横へ飛んで回避、アリカを守るため彼女の元まで後退した。

 さきほどいた足元には雷に打たれたように地面が焦げていた。

 

「正攻法はここまで。ここから儂のやり方でいかせてもらうぞ人間」

 

 天井から、人の少女が降りて、輪王鬼を護る様に両側に着地した。

 少女たちは姉妹なのか同じ顔をしており、髪型と胸のサイズは違っていた。片方は遮那と同じロングで、小学生ほどの容姿で、片方は姫カットで胸がもう一人より大きく中学生ほどであった。

 二人は白い羽織だけを着ており、下のほうは羽織が大きいためわからないが、おそらく履いていないそうだ。また、二人とものおなかが不自然にぽっかりでていた。

 さらに、ロングのほうは術札(詠春経由でしっていた)をもっており、さきほどの稲妻はロングがやったと遮那とアリカは推測した。

 

「そいつらは…」

「こやつらは、大昔、儂が喰らった巫女の娘姉妹だ。なにぶん才能があるからのう、不老不死の呪いと儂に従うように術をかけて、儂の下僕にしたのだ」

「だ…だれが下僕ですか…」

「毎度…毎度、下級の妖魔を生産するための…苗床に…してるくせに…」

 

 姉妹は苦しみながら口を開いた。肉体の自由は輪王鬼の支配下にあるが精神と心は操られていないようであった。

 

「ん、まだ、意識があるか。強情じゃ姉妹だな。怨!」

「ぐぅっ!ヴゥゥウウウウウウ!?」

「お、おね…い…ちゃん…いっやぁぁぁあ!?」

 

 姫カット少女、おそらく姉妹の姉が妹一緒に苦しみだし、股から液体をたらして何かを落とした。それはだんごむしのような幼虫であった。姉妹は出産したため膨らんでいたお腹が平たくなる。幼虫は地面をはいつくばるが、奇鳴をあげてすぐに息絶えて動かなくなった。

 

「ふむ、早すぎたか。もうすこし成長させてから出産しとけばよかったかのぉ?この妖魔は使い物にならん」

「ハァハァ…」

「いや…みないで…」

 

 姉妹は出産の痛みと快楽の絶頂に涎を垂らす。妹は恥ずかしいものを遮那たちに見られて涙を流していた。

 姉妹の処遇に、アリカはキレた。

 

「き、きっさまぁああああああ!!幼い娘を汚したうえに、妖魔を作るための道具するとは言語道断だ!!遮那!速攻でこやつ斬れ!妾の視界に写すな!」

「…いわれなくても、こっちだって気分悪いものみせられて胸糞悪いぜ…!」

 

 遮那も同様であった。さきほどまで戦いで楽しんでいたが、操られ妖魔の生産の道具にされた姉妹をみて不愉快になり、速攻で輪王鬼を斬ろうと、刀を振るうが、輪王鬼が「いけ」と姉妹に命令すると、妖魔の出産で動けないはずの姉妹がまるで操り人形のように動きだし、身を張ってゆく手を阻む。

 

「ちっ、邪魔だ!」

 

 遮那を抑えようとする姉妹の姉。妹のほうは白狼のような式紙を召還し、式紙に命令して遮那に襲い掛かからせる。

 遮那は避けながら輪王鬼に近づこうとするが、姉妹が邪魔して近づけない。

 姉妹は涙を流して、遮那に頼む。

 

「私…たち…の…ことはいいから…あいつを殺して…」

「お、おねがい…母上を殺したあいつを…どうか…わたしたちを…解放して…」

「…遮那よ」

「…わかってる。傷つけるなだろう。注文の多い姫様だよ、ったく」

 

 姉妹の涙に、アリカは傷つけないように遮那に頼む。遮那に操られ道具にされている姉妹をぶった斬るわけにもいかず、姉妹の猛攻に避ける一方。

 

「終わりだ人間!」

「しまっ――」

 

 姉妹に気を取られ、輪王鬼が線上にいた姉妹をごと、中距離から金棒を振るい遮那を殴り飛ばす。遮那はそのまま壁に激突し、姉妹は胴体の上と下を別れ、贓物をぶちまけながら地面に飛び散った。

 

「遮那!?おのれ貴様!!姉妹ごとをやるとは…!!」

「最初に言ったはずだ。こやつらには不老不死の呪いをかけたと。数時間には元道理に戻る。それに、こやつは下級妖魔を生産するための道具だ。殺そうが壊そうが儂の勝手だ」

 

 地面に飛び散った姉妹の体徐々に、集まり元道理に戻ろうとしていた。不老不死で死なないが、死ぬほどの痛みが姉妹をさらに苦しめる。その悲惨さに、アリカは輪王鬼に怒りを向ける。だが、輪王鬼はアリカよりも、姉妹よりも、壁でもたれて動けない遮那のほうに視線をむけていた。

 

「こいつ喰らい、鬼神の力を得た後は、おぬし犯して食らってやろう。王家の魔力にも興味があるからな」

「遮那、動け!このままだと…!?」

 

 アリカが叫ぶが輪王鬼の一撃で気絶したのだろうか遮那は答えず壁にもたれて座ったままであった。

 輪王鬼が遮那を食おうと近寄ると、突如、金縛りのように体が動かなくなった。突如、動かなくなった輪王鬼にアリカは不思議に思っい、視線を変えると、肉塊となっていたはずの姉妹が元道理に人の形(服は破れたためすっぽんぽん)に戻り、なにかしらの術、おそらく陰陽術で輪王鬼の動きを止めていた。

 

「…名前の知らない…姫様…どうか、その人を連れて…早く…に、逃げて…」

 

 姉妹の姉が言う。輪王鬼は視線を遮那から姉妹に移す。

 

「むぅ…どうら、半壊させた影響で操りの術が少し解けた。伊達に、儂を追い込んだ娘であるな」

「黙れ…卑怯な手を使って…母上を犯し殺した奴が…!」

「母上の仇は私たちが…」

「ふん、こざかしいぃぃいいい!!」

 

 姉妹の金縛りを輪王鬼は気力であっけなくやぶり、背中からを触手に生やして、触手で姉妹を捕らえ、輪王鬼のところまで引き寄せた。

 

「「きゃっぁあああ!?」」

「ふん、たかが道具風情が。おぬしらは大人しく儂に従って、下僕を産めばいいものよ」

 

 触手で両手をしばれれ宙にぶら下げられる姉妹に、輪王鬼は布に隠していた股から丸太のような極太の一物を二本、露出させ、先端を姉妹の股に近づける。

 

「おぬしらは死ぬことも無く生きることも無く、一生儂のための働く道具じゃ。そのことをもう一度自覚させるための、儂の一物で調教してやろう。フッフフフ」

「や、やめって…!?」

「おねいちゃんに手を出さないで…!?」

「やめるんだ!化け物!!」

 

 丸太のような肉棒が二人の姉妹を貫こうとし脈を打つ。それに、アリカがやめるように叫ぶが、アリカにできることそれだけだった。姉妹たちは涙目でおびえ、肉棒は姉妹の股を――

 

 

シュッパパパパパパパパパパ!!!

 

 

 入れる前に、肉棒はハムのようにスライスされた。

 

「のわぁああああああああ!?儂の一物がぁああああああああ!?」

 

 突如、薄く切られたことに輪王鬼が動揺し暴れるが、斬られたのは一物だけでなく、姉妹を拘束していた触手も細切れにされ、そのため姉妹は開放され地面に落ちるが、刀を鞘に納めた青年の手で二人とも受け止められた。

 

「なに、俺の前で余裕ぶって女を抱こうとしてんだ?舐めてんのか、あぁ?」

「遮那!」

 

 そこには動けず座っていたはず遮那がいつのまにか居た。アリカは遮那が無事であったことに内心安心し、両手で受け止められた二人の姉妹は顔を赤くする。

 だが、遮那の顔はいつもと違って冷め切っており、冷徹といっていいほど目を細めていた。

 遮那は姉妹を地面に「あの金髪の仏頂面女のとこにいけ」といいつけ、姉妹はアリカの元へ避難した。そして、輪王鬼と向き合った。

 

「輪王鬼。おまえ、なんで力を…鬼神の力を求めるんだ…?」

「ぐっぅ。人間風情が儂に問うか。まぁ、よい。死ぬ奴に免じて教えてやろう。そう、あれは500年のまえ――」

「オッラ!!」

「ぐっほ!?」

 

 輪王鬼が律儀に語ろうとするまえに、遮那が巨体である輪王鬼を蹴り飛ばした。

 

「「えぇええええええ!?!?」」

「おまえの目的はようわかった」

「いや、まだ語ってないぞ、そいつ!?」

「ぐっぉおお…真似たまねをしおって…だが、どれほど貴様が強かろうと、儂は渇望する鬼神の力を手に入れ、真の鬼になる!鬼を統べる王となるだ!!そのためには貴様ら人間なぞ、儂の糧となればいいのだ!」

「そのためだけに…人を…母上を喰らったなのか!」

「返せ!母上を返せ!!」

 

 鬼の王を望む輪王鬼に姉妹が怒りにまかせて叫ぶ。母のぬくもりが恋しい妹は涙を流して母を返せと悲嘆の声で叫ぶ。

 その叫びに、輪王鬼は笑いながら言う。

 

「がっははははは、それは無理じゃ。おぬしらの母は骨を残さず食らった。肉壷は柔らかく名器で、血肉もうまかったぞ。おかげで強い力が手に入った!!母には感謝をもしておる」

「外道が!!力を得るために他者の奪うのに飽き足らず、小さき子の母を汚すとは、とことん腐った奴だ!」

「力を求めて何が悪い!何かを得るために犠牲が出るのがあたりまえじゃ。それに卑怯を使ってなにが悪い。人間と同じであろうが!」

 

 下品に笑う輪王鬼に、もはやアリカの堪忍袋の緒が切れた。

 だが、瞳に怒りの炎を満ちる皇女のほかに、輪王鬼に悪徳に、遮那だけが、反対に氷のように冷たい目をしていた。

 

「……たしかに、おまえの言うとおり。この世は弱肉強食…弱かった奴が喰われるだけ…おまえが喰らったやつは全員ただ、弱かった…それだけのことだ…」

「わかておるな人間よ。この世は弱肉強食。弱い奴が強者に従えばいいだけ。よって、貴様ら人間も儂ら糧に――」

「だからこそ、テメェは死ぬんだ」

 

 

 

 

 

――弱肉強食の掟でな

 

 

 

 

BGM【青のレクイエム】

 

 

 

 遮那の周りが変わった。突如として、遮那を中心にどす黒い殺意が空間に満ちた。

 遮那以外のものたち目では遮那の姿を確認できず、代わりに奈落と表現していいほどの底なし穴…闇があった。

 

「なんだ…このオーラは!殺気は!?震えるが止まらん!?大悪鬼と恐れらた儂が怯えるなんぞ、そんな!?」

「遮那…おぬし…」

 

 殺意の闇に輪王鬼はいままで感じたことがなかった恐怖に震えて怯えていた。姉妹たちも底なしの殺意に当てられ、お互いを抱いて震えていた。アリカにいたってはまるで、ブラックホールに吸い込まるように、心が殺意に闇に取り込まれそうになるが、気をしっかりもって、奈落のような殺意を見続ける。暗く、底なしの奈落から紅い眼光が二つ光っていた。

 

「弱ければ強くなればいい。弱いなら卑怯な手を使ってでも強者に勝てばいい。だがな、弱い奴だけ殺して、今を満足している奴が強くもなれないし、強い奴に勝てない。ただ、腐り堕ちるだけだ」

 

 殺意となった遮那は紅い眼で道化(輪王鬼)を睨み、長刀を鞘から抜き、剣先を向けた。

 

「おまえは人でもなければ鬼じゃねぇ。外道でもないし、悪鬼でもなぇ。ただ、力に嫉妬して他人に頼ってばかりの青二才のド三下野郎だっ、輪王鬼」

「黙れ人間風情が!鬼神の力を持っただけの人間が、そもそも儂にかなうわけが無いのだ!!鬼神の力は儂がふさわしいのだ!」

 

 輪王鬼は逃げろという防衛本能を振り払い、遮那を殺そうと金棒を振るう。

 鬼として、下等な人間を喰らう化け物として、いつもの通り、人を女を犯して殺して喰らう。それが当たり前であり、結果であった。だが、その幻想は現実に砕かれた。

 

「鬼神の力鬼神の力ばかり、うるせぇっ。おまえは阪神でも応援でもしとけよコノヤロー!」

 

 遮那は一太刀で金棒を砕いた。斬鉄のように両断したのではなく、叩き割られて砕かれたのだ。

 細長い刀が巨大な鈍器が破壊されたことに、輪王鬼は驚く。

 

「儂の鉄棍がっ!?」

「おまえの前にいるやつが誰かわかるか?人間か?紅い翼の副リーダーか?鬼神の力をもった野郎か?。俺は、鬼の紅い眼を持つ、破壊の鬼神。最凶無敵の黒曜院遮那さまだ!」

 

 このとき、遮那の後ろに居たアリカと姉妹だけしか気づいていない。遮那の背中が紅い十字架が紅く輝いていた。

 遮那は気づいていなかった。自身の手で扱えるようになった力(特典)が、完全に本人ものになったことに。

 鬼神は気づいていなかった。自身の肉体(狂の鬼神の力)が、魂とがっちりと合わさり、壬生一族となったことに。

 転生者は知らない。自分が転生者でもなく、新たな存在へとなったことに。

 この場に一刀がいればこう言うだろう。

 

『鬼の眼の狂の再来だ』、と。

 

 

「ぐ、こうなれば!」

 

 

 輪王鬼はまたしても、腕を触手に変えて、遮那に襲おうとするが、触手は遮那を通りすぎで、後ろに居たアリカを捕まえた。

 

「なっ!?」

 

 アリカは驚くがもやはや遅く、そのまま、触手に持ち上げられ、遮那の頭上を通りすぎ、輪王鬼の前に捕まり盾にされた。

 

「ぐっはははは、これで攻撃できまい」

「ま、またしても卑怯な手を!!」

「私たちを人質にし、無抵抗にした母を殺した時と同じことを…!?」

「汚いわ!!」

「勝つ為ならば手段など選ばん!さぁ、大人しくしなければ、こいつ命がないぞ。さもなくば、こやつを犯す――」

「やれば」

「「「…はっ?」」」

 

 姫を助けに来た騎士とは思えない遮那の返事に、輪王鬼と姉妹は耳を疑った。

 

「勝手にやればいい。俺には関係ない」

「お、おまえこの姫を助けるためにここまで来たのではないのか!?見捨てるというのか!?」

「そもそも、俺は俺を女扱いして下品な目を見た集団を殺しにきたんだ。姫さんの救出なんてついでだ。ついで。殺して犯すならどうぞ。そのときはおまえは八つ裂きになるけどな」

 

 もはや、興味なしというばかりの返答に輪王鬼は、ほんとに騎士なのかと遮那を疑い、姉妹は口をあけて唖然。

 そして、遮那に見捨てれた主は、クスッと微笑し、大笑いした。

 

「ふっはははははは!残念だったな鬼よ!あやつはあぁいう男だ!人の命などこれっぽっちも思っていない。ただ、人が勝手に死んだと思うだけだ!」

「おぬし、あやつの騎士ではないのか!?」

「むろんだ!だが、主従の契りを交わしても、敵に捕まる弱い主など護るものか!遮那よ!妾のことはきにせずこの三下のこの鬼を殺れ!おぬしの剣技を間近で見たかったところじゃ!」

 

 胸を張り、自分ごと殺せとばかりに叫ぶアリカ。若干、やけくそに見えたのは姉妹の見間違いだろうか。

 

「主様のお望みどおり、みてやるよ。本当の外道を…弱いやつをいたぶる、最悪の暴力をよ」

 

 遮那は天狼の刀身を平行にし、腰を低く落として突きの構える。俗にいう平突き(牙突)である。

 

「無明神風流殺人剣…」

 

 遮那は思う。これは本物でない。無明神風流に無い技。だからこそ、イメージする。

 あらゆる敵を貫く神風を。

 あらゆる障害をすり抜ける神風を。

 自分の手で作る。

 

 

 そして、

 

 

 その思いは、無明神風流と天狼が答えた。

 

 

「『飛燕』!」

 

 居合いを詰めた遮那の突きが放たれる。その姿はまさに突風。一陣の風となった遮那は盾にされたアリカをさし貫こうとする瞬間、アリカと遮那以外、全員眼を瞑った。

 そして、輪王鬼と姉妹が、風がやんだことに気づき、目を開けると、アリカは刺し貫かれておらず、剣先がアリカの胸あたりで止まっていた。

 それに、にやりと、輪王鬼は笑う。

 

「ふん、こけ脅しだな。所詮人間は大切なものを見捨てない下等な生物。さぁ、大人しく儂に喰われ――」

 

 パッン!!!

 

 風船が割れた音がした。輪王鬼は音の出どこを探すと、胸のあたりがスースーするのを感じ、自分の胸を見ると、綺麗な円を描いた巨大な風穴が空いていた。

 ちょうど、アリカの胸の後ろあたる高さで。

 

「ば、馬鹿な!人質を傷付けず、儂だけを貫いただと!?」

 

 遮那が放った突き『飛燕』の神風はアリカを傷つけず、輪王鬼を貫き、巨大な風穴を空けさせたのだ。

 その穴から風が音を立てて通り過ぎ、徐々に風は強くなり、風穴は輪王鬼の肉体を壊しながら、広がっていく。

 

「貴様も見ただろう…次元(壁)をすり抜ける飛燕の軌跡を」

「うっがぁああああああああああああああ!?!?」

 

 風穴だけでなく体の内側から神風があふれ出し、アリカを拘束していた触手は崩れ、アリカは触手から開放され、地面に尻餅をつく。

 そして、胸に穴を空けた輪王鬼の肉体はひび割れていき、亀裂から風が蒸気のように噴射する。

 

(風が…熱い神風が儂の中からあふれてくる…これが…鬼神の力…いや、鬼神『遮那』の力か…儂が思っていた力とは想像以上だ…こんなもん、鬼だろうが人であろうが使えるわけがなかった…)

 

 そして、輪王鬼は神風の熱さを感じながらの、神風によって肉体が弾けてとび、崩壊した。

 

「す…すごい…」

「わたしたちが…母上でさえ、倒せなかった鬼を倒した…!?」

 

 不老不死になり、早400年。母親の仇に自由を奪われ奴隷にされた姉妹は、仇である輪王鬼が遮那の手で倒されたことに驚いていた。

 

「よっ、無事か姫さん」

「なんとかな…。おぬしが妾を受け止めてくれなかったら尻餅しなかったがな」

 

 尻餅をついたアリカは遮那が差し出された手をつかみ起き上がった。

 

「しかし、遮那よ。キョウスケに渡された誘拐対策用のマニュアル本通りに従ったが、演技であっとしても、本気で技を放つのは心臓に悪いぞ。数年寿命が縮んだと思ったわ」

 

 アリカはマニュアル本に従い、敵に捕まったとき、人質としての価値を下げ、敵を混乱させるために、あえて自分をも犠牲にするように主張してた。

 原作は崩壊したが、念のためだということで、キョウスケはアリカに対策を授けていたのだ。

 

「結果良ければいいじゃねぇか。無明神風流の新技を土壇場で作れたし。これで、姫様を助けるついでに新技のコツもつかめたし、一石二鳥だぜ」

「ちょっとまて!あの技は土壇場で作った新技だったのか!?失敗して妾が死ぬことを考えていなかったのかおぬし!」

「おいおい、俺を誰と思ってるんだよ。おまえの騎士がそんな失敗するとわけねぇだろうが。心外だなオイ」

「そうか。そうだな――」

「技が失敗して、姫様ごと貫いて死ぬ割合は8割あったけど」

「おぬしという奴はわぁああああああああああ!!」

 

 アリカは王家の魔力が込められた手刀を振り回すが、遮那はよけるため当たらなかった。

 

「あれが、本物の鬼…鬼神…!!」

 

 遮那の強さに、姉妹の姉は震えて感動する。

 夫婦漫才のような二人の様子に、姉妹の妹は苦笑していた。

 

「ここに居ったか遮那よ」

 

 そのとき、遮那とは別行動していたゼクトがやってきた。

 

「おっ、ゼクト」

「そういえば、おぬしもアジトに乗り込んで居ったな」

「姫様も一緒ならちょうどいい。いまさっき、このアジトにいた奴隷たちは皆、転院魔法で外に送った。緊急用の照明弾も撃った後だし、もうじき、迎えの船が来るだろう。あとはワシ等が帰るだけじゃわい」

 

 ちなみに、アジトに残っていた白獣軍の構成員はゼクトが倒し、大半の残りはアジトから逃げていった。

 

「あぁ〜悪いけど、ゼクト。先に行ってくれるか?まだ、一人、デザートが残ってるんでな」

 

 デザートはもちろん、逃げたヴォルマである。

 ヴォルマを逃せば後でリベンジするのが当たり前なので、やっかいな事になる前に、白獣軍を絶つことが賢明だと遮那は判断した。

 

「その代わりじゃんだけど、こいつら頼むわ」

「「へっ?」」

 

 遮那は牢屋にあった布を纏っていた姉妹に指を差す。

 

「この裸の子らは?」

「ここの幹部に道具にされた姉妹じゃ。長年、下級の妖魔の苗床にされて心身ともに疲労してるはずだ。すぐ、医者にみせたほうがよい」

「では、アリカ姫はどうする気なのじゃ?」

「妾も遮那と共に行く。ことの発端は妾が捕まったのが原因じゃ。落とし前自分でつける。いいだろう遮那?」

「どうせ、無理にでもついていくんだろう。こんど捕まったら、見捨てるからな」

「そのまえに、遮那が護ってくれればいい話じゃよ」

「調子のいいこと言いやがって、たっく。うんじゃっ、そういうことで後は頼むわ」

「ま、まって!」

 

 ヴォルマを追おうとする遮那とアリカを、姉妹の姉が呼び止めた。

 

「おねいちゃん…?」

「あの…お名前が…まだ…私、月光院一菊といいます…こっちは妹の桜輪…!」

「…遮那だ。黒曜院遮那」

「妾はアリカじゃ」

「遮那さん…アリカさん…私たちを助けてありがとうございます…!」

「私も…!母の代わりに仇を討ってありがとう!ほんとうにありがとう!」

 

 姉妹の姉の一菊と、妹の桜輪が頭を下げて遮那に感謝した。

 遮那は、数秒言葉を言わず、微笑んだ。

 

「ふっ、用件はそれだけか?」

「えっ?あ、はい…」

「なら、先急ぐんでなっ、俺は行くぞ」

「また、後で会おう、一菊、桜輪よ」

 

 アリカは手を振り、アリカと遮那は牢獄から出て行った。

 

「遮那…さま〜…///」

「お、おねいちゃん…顔赤いよ…カゼ?」

 

 その後、一菊は顔を赤くし呆けて、桜輪は姉がなぜ、顔を赤くしているのかがわからなかった。

 そして、残されたゼクトは姉妹の姉の心境を察して、女癖のない遮那に呆れた。

 

「これが、キョウスケがいうところのフラグが立ったということか…。遮那よ、おぬしもナギや一刀にもまけず、罪深い男じゃな…」

 

 

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 アジトにある大量のミサイルが設置された格納庫。

 そこで、ヴォルマが制御装置を操作し、ミサイルの発射準備をしており、天井に発射口の穴が開こうとしていた。

 

「せめて、こいつだけでも打ち上げて、野望の第一歩に…」

「見つけたぞ、白獣軍頭領ヴォルマ!!」

「ミサイルなんぞ、打ち上げてどうする気だおまえ?」

「っ!?」

 

 ヴォルマが振り返ると、そこには輪王鬼を相手にしていたはずの遮那とアリカがいた。

 

「観念せい!白獣軍の残りは貴様だけだ!」

「くっそぉお!輪王鬼までやられたか!?」

「さぁ、大人しくしこっちにきな。しないと八つ裂きにして、コンクリートに混ぜて東京湾に沈めるぞ。従ったら、やさしく全身の骨を砕いて、ワニの餌にしてやるから」

「どっちも俺、死ぬぞソレ!?」

 

 もはや、死ぬ選択しかないとヴォルマは遮那にツッコミをいれた。

 遮那とアリカがヴォルマに近づこうとすると、ヴォルマは指で制御装置のボタンを触れる。

 

「おっと、動いたらこの発射ボタンを押すぞ!」

「ミサイルなぞ発射した所で、国の防空で打ち落とせる!無駄な抵抗をやめて、いいかげん諦めろ!」

「ふんっ、これをただのミサイルと思ってるのかおまえら?こいつは『GOHO-GOKN-1000』っていう感染すると性欲が開放され、乱交してしまうウィルスを積んだ弾道ミサイルだ!打ち落としても、魔法世界の上空でウィルスが拡散される!つまり、魔法界はみだらな世界になるってことだ!!」

「生物兵器っか!?」

「ちっ、厄介なもん持ち出しやがって」

「がっはっは、死ぬならせめて、俺の野望だけは叶えてやるぜ!」

 

 後がないヴォルマは発狂したかのように、目が血走っていた。

 変に動けばボタンを押されてしまい、ミサイルが発射し、さらに、ミサイルを壊すにしても、この密封された格納庫でウィルスが漏れ出す危険があるため、遮那とアリカはうかつに動くことができなかった。

 いまだ、発射口は完全に開いていないが、発射口が完全に開けばミサイルが発射される。

 遮那はなんとかして発射ボタンを押される前に、ヴォルマを仕留めようと、隙を伺うが、あいては白獣軍の頭領、その辺の賊とは違い、隙はなかった。

 遮那たちとヴォルマの間が、重い沈黙が数秒続くと、突如として、自身のような揺れがおきた。

 

「なんだ、この揺れは!?」

「まさか、アジトの自爆スイッチを押したのか!?」

「うんにゃもんつけるか!?自爆なんて作ってねぇよ!」

 

 遮那はお決まりの自爆だと思ったが、ヴォルマはそうでないとツッコンだ。

 そのとき、壁やミサイルの土台の床がひび割れていき、ヒビは亀裂となって広がり、そこから真っ赤に燃え滾る溶岩が流れてきた。

 

「よ、溶岩!?」

 

 突然の溶岩が流れ込んできたことに、誰もが驚くと、さらに遮那たちの後ろの壁から何が、巨大なものが二つ、壁を壊して出てきた。

 

「ここどこっ!?」

「溶岩から逃げているうちに変なとこに出たな」

「なにかの施設か?」

「おい、あれってミサイルじゃねぇのか?」

 

 それは、バスターバロンとニードル・ワークスに乗ったリズベット、キョウスケ、一刀、ナギであった。

 

「リズ、ナギ!?それに、キョウスケに一刀!?」

「なんで、山に行った奴らがここにいるんだ!?」

 

 谷に作られたアジトに、山のほうへ行ったはずのメンバーが、谷に、それも白獣軍のアジトの格納庫の壁から登場したことに、遮那とアリカは驚く。

 実は、白獣軍のアジトであった谷と谷の洞窟は、もともと溶岩が流れていた道であった。数刻前までは、アヴァロデウスが溶岩の活動を抑えていたが、ナギの活躍によって火山が再び活動し、その地下の溶岩もまた活動を始めて、アジトに溶岩が流れてきたのだ。そこへ、いまだ溶岩の流れ道であった洞窟を一刀たちが通り、壁を壊しながら進んだため、いつしか、アジトの格納庫へとたどり着いたのだった。

 ナギたちは、遮那たちに気づき、バスターバロンの上から遮那たちを見下ろした。

 

「おっ、遮那に姫さん。こんなところで何してんだ?」

「それはこっちの台詞だナギ!そっちから説明しろ!」

「長くなるけどいいか?」

「5行で説明しろ!」

「山なの内部にあった遺跡で伝説の龍神を見つけた。

 俺とリズが戦って、勝った。

 剥ぎ取りで、龍神の材料ゲット。

 実は山が火山で、噴火が起きた。

 壁を壊して溶岩から逃げてたら、ここについた」

「…わかった。つまり、この溶岩はおまえの仕業か!」

「なんでそうなる!?誤解だ!?俺はなにも悪くねぇ!悪いのはぐうーたらのニート龍の怠惰だ!」

『ナギよ…それ、我のことをいっておるのか?』

 

 リズベットの持たされた結晶体の魂になったアヴァロデウスが反応する。魂だけの状態なのに、普通にしゃべることができるのは、神龍であり、高次元生命体である所以であろう。

 次はキョウスケがアリカに問いかける。

 

「ところで、アルたちはどうした?」

「ここに捕まっていた女たちを逃がしておる。おそらく、遠くのほうに外に避難させているのだろう」

「そうか。で、あれはなんだ…?」

「あぁぁあああああ!ミサイルががぁあああ!?」

 

 キョウスケが指をさした先には溶岩で溶かされ、飲み込まれるミサイルに、膝を突いて絶望するヴォルマの姿があった。さすがのウィルスも溶岩によって焼失しているはず。もはや、ヴォルマの野望は潰えたといっていいだろう。

 

「ご奉仕世界を作ろうと女を陵辱する白獣団の頭領で、感染するとその場で性行為をしたくなるウィルスが入ったミサイルを打ち上げようとした、哀れな中年じゃ」

「なるほど…(陵辱ゲームの悪役もオリキャラでいたのか……自業自得だな。ざまwwwwwwwみろwwwwww)」

 

 元オタクとして、陵辱ゲームも知っていたので、キョウスケは納得し、内心いい気味だと思っていた。

 だが、大量のミサイルがドロドロになるなか、格納庫が溶岩で溢れ出し、アジトが崩壊するのは時間の問題であった。その証拠に、格納庫の温度が上がり、遮那とアリカの足元の鉄網の床が融解し、二人の靴を溶かしはじめていた。

 

「って、馬鹿と争ってる場合じゃなかったな」

「ここはもうだめだ!早く脱出しねぇと!」

「俺に任せろ!ようやく、ディメンションARMのアンダータが創造出来た!」

「遮那、アリカ様!早くコッチに来て!転移して脱出するわよ!」

「だが、ミサイルが!?」

「この溶岩でウィルスは処理されるはずだ!あとで俺が結界で隔離するから、今は脱出が先だ!」

 

 一刀がそう言いい、バスターバロンは掌を差し出し、遮那とアリカを乗せようとする。

 遮那はバスターバロンの手に乗ろうとすると、アリカが「ちょっとまって」と言って、未だ膝を突いて溶岩の熱で服が燃えているのに絶望して気づかないヴォルマに駆け寄り、首根っこを掴んで持ち上げた。

 

「妾を誘拐し、胸糞悪いものを見せたお礼だ!!」

 

 首根っこを離し、一瞬、ヴォルマが宙に浮いた瞬間、

 

グッシャ!

 

 アリカの美脚の蹴りがヴォルマの股間に激突し、何かが潰れた。

 

「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」!

「「「のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」

「うわ〜あれはひどい…;」

 

 悲鳴を上げるヴォルマ。一刀とナギと遮那は自分の股間を股で押さえ顔を青くし、リズベットは若干、引いた。

 アリカは股間を押さえて悶絶するヴォルマを見届け、くるりと方向転換して、バスターバロンの手に乗り、ばあスターバロンは二人(横にいた遮那は苦笑いしていたが)を持ち上げた。

 

「さっさとこんな暑い場所から出るぞ。早く転移させろキョウスケ」

「イエッサ!アリカ大佐!」

「大佐ではない、皇女じゃ」

「失礼しました。アリカ女王陛下!!」

 

 敬礼して答え、転移するARMを掲げたキョウスケ。さきほどのアリカに未だ、一刀もナギも恐怖していた。

 

「とりあえず、キソの船に!」

 

 そして、青年少女たちは巨人二体と一緒に、転移し、その場から消えた。

 溶岩によって崩壊しとうとする格納庫で、金玉をつぶされたヴォルマが、痛みに耐えながら、制御装置に身を乗り出した。

 

「まだだ…、まだ。一発だけ残っている!」

 

 何十列のミサイルが地震の揺れで倒れ、溶岩に溶かされているが、奥のほうにあったミサイルだけは無事であった。ちょうどよく、そのミサイルの発射口は開き終えていた。

 ヴォルマはコブシを握り締め、発射ボタンを叩きつけ、押した。

 ミサイルは噴射の煙を撒き散らしながら、発射口へと火を噴いて飛んでいたった。

 

「いっけぇえええええ!我が野望!世界を男の夢へと変えやがれぇえええええ!!」

 

 周りは溶岩で溶け出し、その身が燃えようとsるうが、ヴォルマは邪な笑みで、狂ったように叫び、最後の望みをかけた。

 

 

 

 

 一方、キソの船の甲板、その上に転移した一刀たち。

 巨大なバスターバロンとニードル・ワークスなので甲板に足をつけると壊れてしまうため、一刀とキョウスケすぐさま、二体の顕然を解除した。そのため、突然として消えたため乗っていたナギは着地できず、甲板にキスをした。

 

「あっだ!?」

「あ、すまん」

 

 謝ったのはキョウスケであった。なお、ナギ以外は上手に着地した。

 ナギは「おて〜いて〜」と起き上がると前方に、一刀たちを出迎える者たちがいた。

 

「よっ。お帰り」

 

 手を上げて、出迎えるキソ。彼女の左右には、詠春にアル、ゼクト、そして、代えの服を着た一菊と桜輪がいた。

 どうやら、詠春たちが奴隷たちと一菊と桜輪をキソに船に保護したらいい。周りを見れば、船は空を飛んでいた。おそらく、船は雲の上だろう。

 

「緊急の信号弾をみて急いで迎えに来たんだが、どうやら無事だったみたいだな」

「遮那、アリカ様、ご無事でしたか!」

「なぜ、ナギたちがおるんじゃ?」

「遮那様…!」

「遮那…!」

 

 月光院姉妹がよちよちと遮那に駆け寄るが、扱けてしまい倒れそうになるが、遮那が姉妹を受け止めた。

 

「おっと、もう歩けるのか?」

「はい。ここのお医者さんのおかげで…すこしは…」

「そうか。けど、なんでくっついてんだ?」

「くっつきたいからです♪」

「…………(コクコク)」

 

 一菊は笑いながら自身のやらかな胸を押し付け、桜輪はうなずいた遮那に強く抱きしめ、顔を遮那の胸に埋めた。もっとも、鈍感な遮那にとって、子供がじゃれあって、うっとうしいと思うだけであったが。

 なを、遮那がロリ姉妹に抱かれている様子に、キョウスケは悔し涙を流していた。

 

「ちっくっしょうぉおおお!遮那のやつ、いつのまに、あんなロリ娘Sと仲良くなったんだ!?めっちゃうらやましいぞ!!」

「嫉妬してはだめですキョウスケっ!それだと、モテない大人と思われてしまいすよ。逆に考えるんです。男の娘にロリ姉妹がセットになったと!」

「そうか!それならお得なセットだな!なら、全国のお兄さん代表として、傷だらけになった兄妹たちを俺の胸で愛でてあげないとな!」

「そうです。ちなみに、妹のほうは私お任せよ。やさしいお兄さんとして、妹のスリーサイズを確認しないといけませんので。とくに、膨れ始めた胸はとくに…」

「そうか、ならば俺は遮那の美脚の太ももを手で測るか…じゅるり…おっと、涎が」

 

ゴッン!×2

 

「俺の船で変なことしたら、船から叩き落とすぞ変態兄弟(怒)」

「「ずびまぜん〜」」

 

 暴走しようとしたキョウスケとアルを、キソが鉄拳制裁で止めた。二人は頭に大きなこぶを作り、涙を流して甲板に倒れながらキソに謝る。

 ちなみに、キョウスケと違って、遮那とロリ姉妹に、嫉妬する姫もいた。

 

「………………(イライラ)」

「あの〜、アリカ様。なんでイライラしているのですか?」

「イライラなどしておらん!(なぜだろ、遮那がいちゃいちゃしてる所をみると腹が立つ。それに…)」

 

 ちらりと、ナギのほうを横目でみる。

 

「これでやっと、杖が作れるなリズ♪」

「うん、そうね…(顔が、ち、近い///)」

 

 ナギは、リズベットが手に持っているアヴァロデウスの魂の結晶体をいじくっていた。アヴァロデウスが『やめんか』というが、その間、リズベットはナギが顔を近づけていることに、ほんのりと赤面し、まるで、カップルのように思えていた。もっとも、アリカの目には、ナギがリズベットにいちゃついてる様子しか見えなかった。

 

(ナギの奴め、いつのまにリズとあんな仲良くなりおって…無性に胸の中がムヤムヤする!!)

 

 自身の体から嫉妬のオーラがあふれていることに気づかないアリカ。このままだと、なにかに化けそうになるアリカに詠春がどうどう、と落ち着けようとする。

 そんな、彼らを一刀とゼクトは「「青春だな〜(のぉ〜)」」と、甲板の上で座布団に座ってお茶を飲みながら傍観していた。

 

「ん、なんでしょうアレ?」

 

 アリカを鎮めていた詠春が、当方で、なにか白くて天に向かって伸びるものをがみえた。その白を、一刀やキソなど兵器に詳しいものが、アレが弾道弾が打ちあがったものだとすぐさま理解し、甲板にキソの部下が駆けつけてキソに言った。

 

「キャプテン!東10キロ先で弾道ミサイルが撃ちあがりました!?」

「わかってっる!今、目で確認した!」

「ちっ、あの野郎!ミサイル撃ちやがったな!」

「やばい!!アレには感染すると乱交してしまうウィルスが積んでおるのだぞ!このままだと、ミサイルが魔法世界に爆発してウィルスが漏れてしまう!そうなっては、魔法世界が淫らなR18の世界になってしまう!」

「なんですっと!?」

「それは、なんとかしなければなりませんね…!!」

「…アル。今日はどうしたんだ?いつもならおぬしなら、そこで「なんとすばらしい世界でしょうか!」などとアホな冗談をいうのに、今回はちがって普通の反応じゃな?」

「失礼ですよゼクト。私はそこまで煩悩に忠実でありません。常識はちゃんとあります」

 

 常識側である詠春と同じく驚くアル。そこにゼクトがいつもと違うとツッコムが、アルは正論した。

 さすがのアルも、状況と空気は読んでるようだ。

 

「そもそも、大人の男女がイチャコラする世界なんてお断りです。子供同士のイチャイチャや男性同士のアフ〜ならオールOKですが」

「うむ、いつものアルだのぉ…;」

 

 訂正、通常の変態であった。

 アルとゼクトのコントをさておき、キソが部下に命令する。

 

「やばいもんなら撃ち落とせばいいだけだ。おい、砲撃主に、長距離砲撃の準備をさせろ!」

「ハイッ!」

「駄目だキソ!今、ミサイルを爆発させれば、ウィルスが地上に降る注ぐ!それだとこっちが感染してしまうぞ!」

「ならば、どうすればいい…?」

 

 長距離砲撃でミサイルを打ち落とそうとするキソだが、一刀の言うとおり、爆発させればウィルスが外部に漏れる恐れがあった。また、キソの船の兵装では、長距離某上空まで飛んでいるミサイルに届かないことに一刀はわかっていた。

 キソはどうするか、と一刀に問うと、一刀の代わりにキョウスケが名案を言った。

 

「手はある。ウィルスが生存できない領域でミサイルを爆発させればいい」

「ウィルスが生存できない領域って…?」

 

 キソたちは首を傾げるが、一刀が両腕を組んでいるキョウスケの指が天を指してることに気づき、キョウスケがなにをするのかを理解した。

 

「宇宙かっ」

「そうだ。あのミサイルは弾道弾だ。大気圏まで飛ぶ。そこで、さらに大気圏から押し出して宇宙空間に放り出して、爆発させれば感染はないだろう」

「でも、どうやって?」

「動くモノの所に転移するは無理じゃぞ」

「今から飛んでも、大気圏までいけるわけがありません」

 

 アリカ、ゼクト、アルがいう。転移魔法を使うにしても、高速で動くミサイルに転移するは、上級魔法使いでもむずかしい。さらに、飛行魔法で自力でいくしにても、距離が遠すぎるため、間に合わない。

 遮那たちはいい方法を考えていると、一刀が甲板からみえる長距離砲の巨大な大砲と、遮那とナギとリズベットが持っているアヴァロデウスを見て、あることを閃いた。

 

「…ナギ、遮那。ちょっと付き合ってもらうぞ」

 

 一刀はにやりと、笑った。

 

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 長距離用の大砲の中。

 

「おい、本当にこの方法で大丈夫なのか?」

「たぶんな。一様、人間大砲はやったことあるし、大丈夫だろう。…たぶん」

『我としては、どうして人間大砲をやったのかが気になるが…?』

「それにしても狭いな、ここ…」

 

 砲身の中に詰められた、ナギと一刀と遮那。ナギの懐には結晶体の魂状態のアヴァロデウスがしまわれていた。

 三人を装填した長距離砲を、キソたちが操縦室から見守っていた。

 

「まさか、あの三人を打ち上げて、ミサイルの所まで行くっというのは無茶苦茶な作戦ですよ」

「そういうの考えてしまうのは、一刀のすごいところだ」

「あの三人なら、ラカン並に丈夫ですし、大気圏まで行っても大丈夫でしょう。たぶん」

「この方法は、決め手はこの船の大砲と一刀の特殊磁界、重力操作が要だな」

「そのあと一刀たちが減速したら、次はナギが遮那を打ち上げて、遮那がミサイルを宇宙まで押し出して、ミサイルを破壊する」

「たのむぞ。魔法世界の秩序はおぬしらぬかかっておる」

「ラストステージまでいってないんだから、死んだらゆるさんからねナギ!」

 

 詠春、キソ、アル、キョウスケ、ゼクト、アリカ、リズベットの順に言う。

 人間大砲という方法で上昇する弾道ミサイルまで一刀たちが飛ぶという作戦に、詠春が不安になる。

 キソの部下が操作パネルで大砲を動かし、長距離大砲は弾道ミサイルの軌道上に銃口を設置した。

 

「観測完了。目標の進路上に、銃口を固定完了。いつでも発射できますキャプテン!」

「よし。三人とも、口をあけていると舌かむぞ!!」

『ちょっとまって!まだ心の準備が――』

「発射(うって)ぇえええ!」

 

ドッゴーーン!!

 

 ナギの静止も聞かず、ナギたちを発射された。

 三人はバラバラに離れないよう互いに掴まって、空を高速で飛んだ

 

「重力遮断!マグネットワールド・アンチ・【戦艦】!」

 

 一刀はすかさず、重力をゼロにし、さらに、キソの船と反発させて加速、一刀をナギと遮那を引っ張る形で飛行速度をさらに加速させる。

 その速度、実にマッハ20に届くほどであった。

 

「うっがぁああああああああ!?!?」

「Gがきっつい!?殺センセーに送ってほしかったわ!?」

 

 空気の壁がナギと遮那に襲い、二人はGに苦しむが、常人と違って丈夫なため気絶はしなかった。なお、一刀は顔の辺りの小さな魔法障壁を張っているためGには無事であった。ずるいと、言われてもしかたがないが、特殊磁界と重力操作と障壁展開をするために脳をフル稼働で演算しているため、顔の裏では相当きつかったもよう。

 ミサイルまで距離が中間まで超えたところで、マグネティックワールドの範囲と、一刀の脳の限界がきた。

 

「そろそろ、マグネティックワールドの範囲から出るぞ!ナギ、後は頼む!」

 

 一刀は気で筋力を強化して、ナギたちミサイルの方角へ投げとばした。

 

「アヴァロデウス!力貸せ!」

『いいだろう』

 

 第一エンジンであった一刀を切り払い、第二エンジン役であったナギが遮那をミサイルまで送るために、アヴァロデウスの【発展】で、自身の魔力を底上げする。

 

「オリジナル技、第三弾!『紅帝の飛竜騎士(ドラゴンナイト)』!!」

 

 膨大な魔力で凝縮され作られた赤い飛竜が顕然し、ナギと遮那がバイクの二人乗りのように跨り、赤い飛竜は高速で空へと上昇し、加速する。

 そのたびに、ナギと遮那の服や肌、息が凍結していく。徐々に酸素不足になるが、二人は我慢し、ついに、大気圏を脱出した。そこには、弾道ミサイルが、衛星軌道上に乗ろうといまだに上昇していたのを、目で確認できた。

 

「見えた!やっちまえ遮那!!」

「はいよっ!!」

 

 赤い飛竜を足場にジャンプし、遮那はミサイルに近づいた

 

「舞い上がらせろ、青龍!!」

 

 赤い飛竜の上に立ち上がり、天狼を抜いた遮那が、青龍を放つ。

 青龍の竜巻はミサイルを衛生上からさらに押し出し、飛行ができなくなり、宇宙空間へ放り投げられた。

 

「飛翔しろ、朱雀っ!!」

 

 追撃の朱雀が弾道ミサイルを貫き、朱雀に包まれながら爆発した。

 同時に、浮遊感を感じながら遮那が落下していく。

 

「あぁああああああああああ!?!?着地のこと忘れてたぁあああああ!!」

 

 あとのことを考えていなかった遮那は大気圏突入で激しく燃えてしまいそうだが、玄武で大気圏の熱をふせぎながら、大気圏へと突入する。いまだ衛星軌道上なので、重力に引っ張れて落ちるのは当たり前であった。

 

「遮那無事か!?」

「ナギ!?」

 

 横には、同じく大気圏突入で激しく燃えるナギがいた。体をだらけて、頭から飛び込む形で落ちながら。

 

「なんで、おまえまで落ちてるんだよ!?」

「すまん、力使い過ぎて体がうごけねぇ…」

『我を加工せず、全力全開で力を使ったのだ。反動で動けないのはあたりまえだ』

 

 アヴァロデウスの【発展】で、肉体の限界を超えるほどのパワーを使ったため、体が動かすことができないナギ。

 なお、大気圏突入で燃えているが、アヴァロデウスが【衰退】の力で弱くし、ナギを守っていた。

 

「どうするんだよ!?このままだとトマトみたいにつぶれるぞ!さすがの俺でも無事じゃすまねぇ!」

「安心しろ。まだ、あいつが残ってる」

 

 さすがの遮那もあわてるが、ナギは不敵な笑みをする。

 

 

「サイコキネシスっ!」

 

 

 落下速度が止まり、二人は雲の上で浮遊する。雲の中から、念動力で飛行する一刀が現れた。

 

「一刀か。助かったぞ!!」

「死ぬかと思ったぞ!?おい!」

「悪い悪い。あとでチョココロネ、十個奢るからゆるして」

「100っ個だ。それで許してやる」

「オレは特大パフェな」

「はいはい。うんじゃ、このまま、船まで転移するな」

 

 一刀が二人の肩に触れ、転移した。

 

 

 

 

 そのころ、崩壊する白獣軍のアジトのミサイル格納庫では、ヴォルマが自身の望みを乗せたミサイルが宇宙で爆発したことを、制御装置のモニターで確認し、絶望していた。

 

「バ、バカな…俺の・・・白獣軍が・・・ご奉仕国家の野望が・・・すべての女を清純乙女にする野望が・・・女への欲を満たしてえ女にモテぬもの・・・嫌われる者の野望が・・・・・・歪んだこの野望が・・・・・・燃える…燃えて消えてしまった・・・・・おのれ…剣聖鬼神…遮那・・・・・・・おのれ・・・・・・紅い翼・・・・うっわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 ヴォルマはその身を溶岩によって燃やされながら溶岩と瓦礫に飲み込まれ、アジトとともに命を落としたのであった。

 

 

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 一方で、一刀たちはまた甲板の上に無事に転移していた。

 

「あぁ〜しかし、あのとき死ぬかと思ったぜ〜」

「おおげさな。たかが、大気圏内で落ちるくらいで」

「さすがの俺とナギでも大気圏から落ちたら死ぬぞ普通っ」

「そうか?こっち、大気圏外から落ちたぞ。それも、生身で」

「「マジで!?」」

 

 一刀の過去に驚愕するナギと遮那。もっとも、竜神の装具を身に着けていたので無事であったが正解であるが(そのあと、親友である横島が記憶喪失になって騒動に巻き込まれたのは余談である)。

 

 

「お〜い、ナギ、遮那、一刀〜!」

「ナギ〜!」

「遮那様〜!」

「遮那〜!」

 

 甲板から、アリカ、リズベット、一菊、桜輪が駆けつける。そのうしろには、驚いた顔をする詠春、アル、ゼクト、キョウスケも一緒であった。

 

「今まで異常だとおもっていまいたが、とうとう大気圏突破ところか突入までを生身でするなんて、もはや常人を超えていますよ、あの三人…!?」

「ラカンとマサトなら或いは可能かと考えたことがあります、まさか、ナギたちが常識を超えるとは、さすがの私も驚きです…;」

「もはや、超人のようじゃのぉ」

「ハッハハハハハ、さすは主人公だな!(この先の原作なら、細めの忍者がやってのけるけど、いままは黙っとこう)」

 

 人類初の生身での大気圏突破と突入に、驚愕と賞賛を通り越して、詠春たちは呆れ果てる。

 そんな男たちの傍らに、一菊と桜輪が遮那に抱きつこうとかけると、遮那の後ろで何か霧のようなものがうごめいているのに気づいた。

 

「遮那様、後ろ!?」

「っ!?みずち!」

 

 遮那はとっさに振り返り、刀を抜いてみずちを放つと、霧のようなモノは斬られて、悲鳴を上げた。

 

『ぐっぉおおおおお!?おのれ、魂の状態あるにも剣が届くというのか!?』

 

 霧のようなモノはうごめき、何かの形をとる。それは、見覚えのある面影であった。

 

「おぬしは…輪王鬼!」

 

 そう、アリカの言うとおり、遮那が新技で倒したはずの輪王鬼であった。

 

「あれが、輪王鬼…!?なるほど近衛家の書物にも書かれていたとおりの悪鬼ですねっ!」

「詠春も知ってるのか?」

「これでも退魔の剣士なので。どうやら、あれは肉体を捨てて魂だけの存在になってるようです」

『我と似たようなものか』

 

 アヴァロデウスが言うが、輪王鬼の魂は怨念に近いものであった。

 

「テメェ、しぶといぞ!」

『まだっだ!貴様の体を奪い!儂は鬼神となる!!』

 

 輪王鬼はいまだ遮那の力をあきらめ切れず、遮那の体に憑依して、遮那の体と力を奪おうと考えたのだ。

 

「邪な魂の状態なら、これは利くはず!斬魔剣!」

 

 詠春が退魔の効果がある斬魔剣を放つが、輪王鬼は霧状に散らばり回避。そのまま、遮那の目の前で現れ、遮那の体に入ろうとする。

 

『その肉体、儂に寄越せぇええええええええ!!!』

「「遮那(様)!?」」

「っ!!」

 

 姉妹が叫び、遮那がもう一度、みずちを放とうとすると、輪王鬼に異変が起きた。

 霧状であった輪王鬼が光る縄によって拘束されたのだ。

 

『ぬっぉおおおお!?これは結界!?』

 

 また、霧状で散ろうとするが、散ることが出来ず、さらに、動くことすらも出来なかった。

 

「一刀っか!?」

「いや、俺はまだやってないぞ?」

「むろん、ワシもじゃ」

 

 遮那は結界が得意な一刀の仕業だと思ったが、一刀は違うという。同じく、結界が得意なゼクトもおなじく。

 すると、暴れる輪王鬼の背後で、足がなく、不透明で巫女の姿をした女性がいた。その顔はどこか月光院姉妹に似ていた。

 

『悪行はそこまでです。輪王鬼』

『き、貴様はあのとき喰らった巫女、水蓮!?』

「「母上!?」」

 

 輪王鬼と月光院姉妹が驚く。その女性は数百年の前に、輪王鬼が食らった巫女であり、姉妹の母親であった。

 

『なぜだ…貴様はたしかに儂が肉と力を喰らったはず!』

『いいえ、肉体と力を失っても私は魂となってずぅと、貴方の中にいました。貴方が肉体が失い、魂となったときを狙って…。ごめんね、一菊、桜輪。あなたが苦しんでるときに助けられなくって。この母をゆるして頂戴』

「「母上…」」

 

 水蓮は娘に謝った。輪王鬼の操り人形にされたうえに妖魔の苗床の道具にされたのに、手を出すこともなく、観望してきたことに、数百年も心を悔やんでいた。

 

『おのれ死にぞこないがっ!いい加減、この縄を解け!!』

『暴れても無駄です。力あるものを喰らい強くなったとしてもそれは肉体だけ。あなたはの魂は弱いままです。強靭な肉体で私は犯され食われましたが、お互い魂だけの状態なら負けません。さぁ、私と一緒に黄泉に落ちましょう』

『や、やめろ!そんなことをすれば、娘どもの呪いは解かさぬぞ!』

 

 そう、姉妹には輪王鬼がかけた不老不死の呪いと、輪王鬼に従う術がまだあった。後者のほうは、輪王鬼に一度、肉体を壊され死んだため術は解けたが、不老不死の呪いは、輪王鬼が一度死んだがいまだ健在であった。つまり、呪いはかけた本人が解かない限り、不老不死ということであった。

 一菊と桜輪が永遠という生き地獄にまた味わうことになることに、親である水蓮はためらうが、覚悟した顔で娘たちに言う。

 

『一菊、桜輪。よく聞きなさい。あなたちの不老不死の呪いは私が解けますが、このさきの未来において、貴女たちの力が必要になるときがきます。そのためにはその呪いが必要不可欠。そのため、私は呪いを解きません』

「母上…それはいったいどういう!?」

『時が来ればわかります。なにより、好きな人との傍にいたいのなら、そのほうがよいでしょうし♪』

「ぎっく///!?」

「…???」

 

 一菊は顔を赤くし、桜輪は意味がわらず首を傾げる。

 水蓮の言葉に、理解する者は数名。その中でアリカは女の勘が囁いていたのは、ナギと遮那には知らないことであった。

 

『紅い眼の鬼神…遮那さん。輪王鬼を倒し、娘たちを助けてくれてありがとうございます』

「別に…ただ、そいつが目障りだっただけだ。おまえの娘も偶然、助かっただけ」

『フッフフそうですか…では、最後に、紅い翼の人たちにおねがいします。どうか私ごと輪王鬼を葬ってください。それで、片がつきます』

「母上!?」

「そんな、ようやく会えたのに…」

 

 輪王鬼と共に黄泉に落ちようとする水蓮に姉妹が拒む。すると、一菊の肩に遮那が、桜輪の肩にはアリカが手を乗せた。

 

「子供なら親の気持ちを考えろ…」

「遮那様…」

「もう、休ませてやれ…それが、母親の供養になる」

「アリカさん……わかりました」

 

 姉妹は覚悟を決め、ナギたち、紅い翼に頼む。

 

「みなさん…どうか、母上を開放させてください!!」

「おねがいします!」

 

 頭を下げて頼み込む姉妹にナギたちは微笑し、一刀が一菊の頭を撫でて、姉妹の横を通ると、一刀、キョウスケ、詠春、リズベット、ナギたちが輪王鬼の前に立つ。

 

「ここまで来たんだ。最後はド派手にいくか」

「ロリ姉妹に未亡人に頼まれちゃー仕方がないな」

「一人の退魔師ではなく、一人の人間として、私は剣を振りましょう」

「さっさと、片付けて杖を作りたいし」

「もうすこし、付き合ってもらうぞアヴァロデウス」

『うむ』

 

 一刀たちは真剣な表情になり、魔力を気を高め、輪王鬼の魂を地獄に送ろうと準備する。

 

「喰らい尽くせ…!」

「来い、ガーゴイル!!」

「神鳴流奥義!」

「パルコー!砲撃系でいくわよ!」

『了解』

『発展でおぬしをレベルアップさせたぞナギ』

「サンキュー!じゃ、いくぜ!オレのオリジナル技、第四弾!」

 

 雷龍と怪物が咆哮を轟かせて召還される。

 刀身と大槌が光り輝きだす。

 紅い魔方陣が展開される。

 アルとゼクトはアリカと月光姉妹を避難させようとすると、遮那が姉妹に「オイ」と言って止めた。

 

「一緒に、振るか?」

「「…ハイ(うん)っ!」」

 

 姉妹はすぐさま天狼の柄を遮那と一緒に握った。

 

『いやじゃいやじゃ!!黄泉になど落ちたくない!儂は死にたくない!頼む水蓮!儂が悪かった!助けてくれぇぇええええええ!』

『輪王鬼…弱き妖魔よ…あなたは力を求めたために大罪を重ねすぎました…ですが、私は貴方をうらみません。逆に哀れんでに同情します…私も一緒に黄泉へ落ちましょうい。私も貴方のそばにおります。貴方が蔑んだ人の暖かい想いを、私が与えてあげます。狂った貴方に愛というものを黄泉の国で教えてあげます』

 

 暴れながら泣き叫ぶ輪王鬼だが、光る縄は緩まない。

 輪王鬼の中にいた水蓮は輪王鬼の素性を知った。そして、彼の心境に、心を痛め同情したのだった。そのために、彼の渇望と未練を止めるため、水蓮は彼をやさしく抱きしめる、

 

 

 そして、

 

 

「バオウザケルガ!!」

「ガーゴイル・レイ!!」

「雷光剣!!」

「月光蝶波!!」

「紅帝の怒号!!」

 

 雷龍の顎、極太のレーザー、雷の斬撃に、蝶の形をした金色の波動と紅く拡散する極太魔力砲が、輪王鬼と水蓮にむかって一直線に放たれる。

 同時に、

 

「あばよ、輪王鬼。美人と一緒に神風に抱かれて眠れ…みずち!!」

 

 遮那は姉妹と共に天狼を振るい、みずちを放った。

 

『うっわああああああああああああああああ!?!?』

 

 紅い翼の六人のオーバーキルの攻撃は、まるで光線のように、輪王鬼を覆いかぶさりながら地平線を貫く。

 輪王鬼はまるで、光に包まれるように、光と共に消失した。その間、水蓮も光に包まれながら消えかけるが、最後まで微笑んでいた。

 一刀たちの攻撃が止むと、空に向かって多くの光る球体が舞い上がる。

 

――ありがとう英雄たち

 

 水蓮の声が聞こえる。光る球体からも感謝の声がかすかに聞こえてくる。どうやら、輪王鬼に喰われた死んだものたちの魂のようだ。

 詠春はお経を唱え、リズベットはきれいだなと思った。

 

「「は、母上〜…!」」

 

 姉妹たちが涙を流さぬように耐えていると、アリカがそばに寄り、やさしく声をかけた。

 

「泣きたいときは、泣けばいい。子供は我慢しなくてよい。涙が枯れるまで妾の胸を貸そう。だから泣け。泣いて、幸せな人生を手に入れろ。ぬしらの母上が安心できるようにな」

「ア、アリカさん…ヴッワァアアアアアアアアア!」

 

 桜輪は涙腺崩壊し、アリカに抱きついて泣き出した。アリカはやさしく撫でてあやす。

 遮那は無言でその様子を見ていると、一菊が遮那の袖をひっぱった。

 

「しゃ、遮那様…!」

「なんだ?」

「…あなたも、一緒に、いてくれますか?母上のように消えませんか…?」

「…おまえらが勝手について来るなら、俺はなにもいわねぇよっ。消えたくないなら、消えないように見張ってろ」

 

 そういってあしらう遮那に、一菊は「では、勝手にします」と言って遮那に背中に顔埋めて、涙をぼろぼろ流す。

 遮那は、やれやれとため息を吐いて、一菊が満足するまで立ち尽くす。

 その後、悲しいシリアスな空間と気持ちを変えるため、リズベットが言う。

 

「さてと、それではアジトに戻って、ナギの杖を作りますか!」

「あっ、そういえば、もともとの目的はそれでしたね」

「すっかり忘れておった」

 

 アルとゼクトの言うとおり、目的はナギの杖を作るための材料である龍神を取ることであったが、山では龍神であるアヴァロデウスと決闘、谷では白獣軍の壊滅と、いつのまにか趣旨が変わっていた。さらに、火山や溶岩を噴火させたせいで、荒野に溶岩が地表にまで流れ出し、どこぞの火山地帯へとなっていた。

 そのことにキソが「おまえら、ほんとトラブルに遭う運命だな」と苦笑して言った。一刀とアリカは、キソの言葉通りだったので、言葉が出なかった。

 

『早とこ、我の体を作ってくれ。さすがに魂だけは不便だ』

「今のままでも、十分使えるけど?」

『この状態だと、力を加減できん。加減を間違えばおぬしの体が砕け散るところだぞ』

「げっ。もう二発くらい使ったけど…」

 

 魂だけの状態なのに通常通りにしゃべるアヴァロデウスであった、力を加減できず、さらりと怖いこという。

 そのことに力を使ったナギが、やばそうな顔になるが、周りのものは心配しておらず、無視していた。

 

「うんじゃ、キソ頼む!」

「あいよっ。おまえらー!さっさと、魔法界に帰還するぞ!面舵いっぱい!機関部全力全開だー!」

『アイアイ、キャプテン!』

 

 電話で部下たちに伝令するキソ。船は魔法界へと進路を勧める。

 一刀がキソと一緒に船の中に入ろうとすると、ふと、立ち止まり火山地帯になった荒野を見下ろした。

 

(どうやら、この世界が絶望になるのは、まだ早いみたいだな)

 

 この世界、この星は、まだ死んではいない。熱く流れる溶岩と活発する火山。それこそ地脈は目を覚ましたという証明であった。

 その証明が、魔法界に真実という絶望から救う希望となる。

 杖の材料探しで、一刀はひとつの希望を確認することが出来たのだ。

 

「オーイ、一刀〜!はやく食堂に行こうぜ!オレ、ハラへったわ〜」

「チョココロネとパフェを奢る約束忘れんなよー」

「はいはい、いま行くって…」

 

 一刀は思った。世界はあえて、自分たちをこの星の裏側の荒野に来させただと。アヴァロデウスというイレギュラーをナギ(主人公)に渡すために。世界はいい方向へ進もうとしている。運命(原作)というもを抗いながら、独立した世界になろうとしている。

 ならば、一刀がやるべきことは…。そう、考えながら一刀たちは笑みを浮かべながら、ナギと一菊に抱きつかれている遮那と共に、船の中に入った。

 

 

――まってろ、アスナ。今度はおまえを助ける番だ

 

 

 

 そして、杖の材料探しから五日後。

 

 紅い翼の最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 つづく

 

説明
一刀「前回と今回だと、ナギと遮那が活躍してるから、俺、空気になるんだよな〜…」

作者「肝心なところで活躍するか、そう落ち込むなって…;」

アル「そうですよ。そっちのほうがまだましですよ。私なんて、もはやモブですよ、モブ扱い」

詠春「原作では初登場と、最終面くらいか活躍の場がありませんしね私たちって…;」

ゼクト「ワシにいたって、もはや、出オチ並じゃぞ」

クライン「俺だって、もっと登場してぇよ!」

エギル「俺だって影がグレーとう設定じゃなくて普通に登場してくれ!」

アル、ゼクト、詠春「「「たかが、人気小説の登場人物をモデルにしたオリキャラが、ネギまの登場人物みたいに言うな!!(怒)」」」


ドカドカドカボコボコ!!


クライン、エギル「「ぎゃっぁぁああああ!?!?」」
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