超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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荒れ狂う嵐の如く激しネガティブエネルギーが、常闇のような空間を作りだし、完全に姿を消した。同時に星海の様な光たち、この世に憎悪を抱き破壊の限りを尽くすように作られたモンスター達が、世界を喰らいように空いた大穴に集まっていく。その光景は冒涜的な蠱毒。冥獄界の悪鬼群衆の中で選び抜かれたモンスターをこちら側に召喚させ、取り込む事でそのモンスターの性質を解析、付与させることが彼女の唯一絶対の((神格技能|ハードモジュール))ーーー((無尽の塵塚怪神|サルページ・インフェルノ))。それは彼女の夢、彼女の希望、彼女の全てを持って初めて生み出された王の如き力。

 

「ネクストブラッディ・ベルセルクシフトーーー完了」

 

それが彼女の心の形だった。

闇一色に染まった深い霧が晴れ、重厚な足音が、ネプギアの女神としての本能に反応する。ーーー勝てない、と。

個々は既に女神の加護を受け付けない魔境。本来であるのなら、女神化すること事態が大きく負担が掛かる所をゲイムキャラの力で無理に底上げして本来の力を出し切っている。並行世界で死んだ女神の記憶と経験を取り込み、その意志の力はプロセッサユニットを一段階進化させるにも至った。【汚染化】したモンスターすら瞬殺できるであろう女神としても進化した筈のネプギアであっても、あれはこの世で生まれてはいけない存在、それがはっきりと分かった。

 

「紅夜の体を媒体にすれば、ネクストフォームなんて簡単に出来るだろうね。君なら罪遺物の一片すら使える自我がありそうだ。それに君の手には魔剣がある」

 

守護女神とブラッディハード。

打ち倒す側と打ち倒される側という決定的な因果関係を破壊するネクストフォームと神を喰らいその力の分だけ力を発揮する呪われし魔剣。

極限の闇で構成されたプロセッサユニット、あらゆるモンスターを吸収して構成されたそれは、強固で柔軟でなにより触れた者を呪い殺し、支配下に送る感染力と殺傷力が極めて高い病原菌を纏っている代物だ。

 

「行かせてもらうぞ。ゲイムギョウ界の平和の為に」

「「!?ッ」」

 

言い切る前に空が、刹那遅れてネプギアが動いた。同時に隕石が墜ちたような爆光と轟音がバーチェフォレスト揺らした。

 

「ネプギア!!魔剣の攻撃は全部躱せ!小さくても致命傷になる!」

「分かってます!……けど!」

「行け、極上の((希望|えさ))だ」

 

崩壊した足場から跳躍することで魔剣の一撃を躱し、肩を並べる二人。それを鮮血の如き真紅の瞳が捉え、無造作に手を鳴らした瞬間、闇が動いた。

 

「さぁ、殺せ」

 

それは飛び、跳躍し、乗って空を埋め尽くすように散開した【汚染化】モンスターが作り出した巨獣の手だった。

直ぐに二人は何もない真後ろの空間に飛んだ瞬間、下からも迫っていた手と手が合わさり、空間を潰した裂帛の爆音が響いた。その山とも思えるモンスターの山脈にネプギアが|M.P.B.L《マルチプルビームランチャー》の銃口にシェアエネルギーを込めた弾丸が穿つが、全く意味を成さない。それほどまでに暴力的なまでの大軍だった。モンスター共も自らの多さを理解していた。質ではなくただ量を突きとめた例え数百の同類が滅せられても、一瞬でその穴を防ぐことが出来る展開力。無限とも言える黒き海に大穴を穿ったのは二つの魔銃、周囲の光輝く聖剣がその破壊力を物語る。

 

「やはり貴様は私の脅威だ」

「……ネプギア、死なないでね。カバーできるほど余裕はないから」

 

アイン・アルの意識がモンスターに指令を出す。地震を思わせる振動と共に眼前の下にあった黒い大海が持ち上がった。一つ一つがアイン・アルのネガティブエネルギーに乗っ取られた【汚染化】モンスター。女神でなければその爪牙にあっという間に解体される狂暴性と鳥肌が立つ殺気。それ等が一つの大津波となって押し寄せるのに対して負を浄化する聖剣の流星が再度風穴を空ける。崩壊していく暗き大軍の中で神殺しの気を感じた瞬間には魔剣が振り下ろされ、十字に重ねた魔銃で受け止める腹部を消し飛ばし距離を離す。脚部に人間ならば呪殺するほどのネガティブエネルギーが込められていたが、その程度で精神に異常が出る程、空と言う存在は軟ではなかった。

 

「そこですッ!」

 

そしてこの戦いは二人だけの物ではない。空の出方に注意が集中していた隙を狙って肉薄したネプギアの斬撃がアイン・アルの横腹を切り裂いた。苦悶の表情を浮かべるが、直ぐに他のモンスターを吸収することでプロセッサユニットは何事も無かったように再構築される。それ以外にエネルギー状に展開していただけのバックプロセッサが硬質化して、機械的で鬼の様な腕へと変化をした。その指先から黒色の鋭いビームブレイドが伸びる。指が人間サイズの蠢きとその先に伸びる光刃はまるで修羅を連想させた。鬼の腕と化したバックプロセッサユニットを翼のように広げ、その手に握る魔剣と合わせて十一の刃が、それぞれ別の角度から襲い掛かる。

 

「女神はもとより、何故貴様は戦う監理者よ!」

「歴代のブラッディハードは自らの意志で滅びの道を選んで女神に討たれてきた。目的を果たす前に魂までモンスター化した奴もいたけれど、誰だって後悔しない道を選んだ……だけど今回は違う」

 

ブラッディハードは誰だってなれる存在ではない。人々の負を受けても己を保ち続ける愚直なまでの確固たる自我と意志があって初めて資格を得る。同時に女神の転換期というシェアの不安定な時期に、女神の加護が薄くなった場所で負が集まる場所へと偶然にも辿りつけた者だけが手にする禁断の力。手に入れて時点で運命が決まり、行使した時点で結末は定められる者。そう、ブラッディハードは祭り上げられる女神と同じ、英雄や救世主に近い役割なのだ。それは人という生き物であるが故に様々な形を作り出す。

 

「君の体は君の物じゃない。だからこそ、止めさせてもらう」

「誰もが悲しみ苦しむ選択なんてさせません!」

「小賢しいッ!!」

 

空は周囲を覆うモンスター全てを把握した上で的確に捌く星が誕生し生まれるまでの長い時間の中で磨き上げた絶対的な第六感と技能、ネプギアは過去の孤独で戦い続けモンスターを殲滅する為だけに極限まで鍛え上げた洞察力と技能が、戦いの中で遺憾なく発揮された。ビームブレイドを展開させた指先が飛び出し、空中を縦横無尽に駆け巡る。襲い掛かるモンスターの爪牙を受け流しながら、空中にシェアエネルギーで展開させた魔法陣を連続で蹴りながら移動する様は電光石火の如き、それでも躱しきれなくその琥珀のような肌に幾度の傷跡を残していく。それは空でさえも一緒だった。ティシフォネに傷つけられた傷が再生できない程まで握りつぶされた空に取っての核が崩壊させられ、残り少ない魔力も環境再生に使ってしまい底が見え始める。出来るだけ飛翔に使う魔力をセーブする為に襲い掛かってくるモンスターを足場にしながら、アクロバットな動きで次々仕留めていくが、アイン・アルの猛撃が時に腹部を抉り、穿つ。だが、それでも((女神を要求する未来|ゲハバーン))の剣閃は掠りもしなかった。

 

「こいつはブラッディハードとして最も必要とするものが欠けている!だからこそ、使わせてもらったのだ。ただのモンスター化して災厄を生み出す神、大禍津日神となるくらいなら、有効活用させてもらおうとな!」

「冥獄界で眠っていたのなら見たろ!この子も統一されたゲイムギョウ界の中で最後は人々に見捨てられた女神なんだ!!空回りし続け堕落して終わってしまったノワールの終わりを同じことをするのか!!」

「今度こそ私は人の心理に永遠に刻まれない傷跡を刻み付け、絶対なる守護女神を!永遠に信仰される物語を作るのだ!だから、その為にこの魔剣の生贄となれ!!輝かしい次世代の為に!!」

「そんな……そんな身勝手な事の為に祭り上げられる女神の事をなんで考えられないんですか!」

 

荒れ狂う激情を抱きながら|((M.P.B.L|マルチプルビームランチャー))の砲撃がアイン・アルの左バックプロセッサを貫いた。即座にそれは周囲のモンスターを吸収して、再生して腕ではなく巨大な砲撃機構を備えた者へと再構築される。アイン・アルはモンスターの大軍の中に姿を消した。それと同時に途方もないぐらいのネガティブエネルギーの収束と共に空とネプギアはモンスターの壁によって行き場を制限されていく。

 

「………本当、こんな時に命が軽いのは助かる!」

「空さん!?」

 

空がネプギアを掴んで、まだ覆っていないモンスターの穴目掛けて投げた瞬間、空間事消滅させる灼熱の砲撃がモンスターを巻き込みながら光の中で消える。衝撃破によって生み出される鉄の様に重たい風がネプギアの態勢を大きく崩しながら、それでもなお執念深く襲い掛かってくるモンスターによって頭部のプロセッサユニットが噛み砕かれる。

 

「は、離れて!」

 

((M.P.B.L|マルチプルビームランチャー))をモンスター突き刺して、無理やり引き剥がし射撃にてとどめを刺す。左側の視線が真っ赤に染まる手で触れなくても、モンスターの牙が突き刺さってままだという事が嫌でも分かった。痛みに堪えながら、闇の砲撃によって収まった光の中で、見たのは。

その胸に深々と((女神を要求する未来|ゲハバーン))が突き刺さり宙にぶら下がった空の姿だった。

 

「……私の勝ちだ」

「……うそ……空さんッ!!」

 

((女神を要求する未来|ゲハバーン)9が怪しく刃が発光しながら空の全てを喰らいにかかる。その技術、その魔力、その体全てを。アイン・アルにとってこの時点で自分の目的は達成できたと歓喜に満ちていた。ゲイムギョウ界が生まれる前から存在して、得た全てを|女神を要求する未来《ゲハバーン》を通して会得することによって誰も知らないネクストフォームのその先すら得られるかもしれない。その力を使って全人類を永遠に癒えぬ絶望に叩き落とし、唯一信仰する女神の価値を永遠とする目的が「捕まえた」

 

「な…に……?」

 

右半身のほとんどを失った空がゆっくりと面を上げた。残った左腕でアイン・アルの腕を掴み、更に深々((女神を要求する未来|ゲハバーン))を自分の体に突き刺した。今にも死にそうな表情だが、その唇が弧を描くそれはアイン・アルに危機感を生み出すのに十分で、直ぐに魔剣を抜かす為に空の体を押す前に、左腕の袖から飛び出した黄金の剣『クタニド』を逆手に持ち、|女神を要求する未来《ゲハバーン》を持つ手事、切断したと同時に腹部を最後の力を振り絞った閃光の如き脚撃にアイン・アルと空との間が大きく開く。

 

「ぐ、貴様ぁぁぁ!!!」

「最初っからこれが狙い、だったんだよね………ネプギア、ゴメン後は君は決めて」

 

鬼の形相で距離を詰めるアイン・アルに空は|女神を要求する未来《ゲハバーン》を抜き取り、ネプギア目掛け投擲する。その瞬間、アイン・アルのビームブレイドを発生した鬼の手の形をしたバックプロセッサによって生み出された斬撃の嵐を前に散った紅い花のような惨状で、ゆっくりとモンスターの蠢く暗黒へと姿を消した。

 

「……もう決めていますよ。空さん」

「何をするつもりだ!!それはや、辞めろぉぉぉぉぉ!!!」

 

此方に向かってくる((女神を要求する未来|ゲハバーン))。嘗て家族を友人を殺した自身の罪の証。それを前にして、ネプギアは居合の構えを取り、

 

「魔剣に頼らなくても、未来はちゃんと作れるんです」

 

光芒一閃。光の軌跡は|女神を要求する未来《ゲハバーン》を通過して、硝子が砕けるような音共に世界救済の魔剣は、使われることなく本来の使命を果たさないまま、アイン・アルの絶叫と共に力を失い、ただの鉄屑となってモンスターの大軍の中へと消えていった。

 

 

説明
ブラン×ゾンビか……薄い本が厚くなるな
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コメント
空「アイン・アルは親愛混じりの自己中だったね……まぁ、彼女がブラッディハードになった瞬間からもう歯車は狂っていたかもしれないけど、強大な力は何時も人を狂わす」レイス「いいじゃねぇか、どうあれ自分の力だ。それをどのように使うかは個人の勝手だろう?」空亡「他人に迷惑かけちゃダメ……」(燐)
ワーカー「アイン・アル、彼女は黒の女神を愛していたのかもしれない。それ故の〈狂行/凶考〉、それ故の〈膨想/暴走〉、自分の命すらいとわないのは余程の物だ」ユウザ(R)「気に入ってるのかい?」ワーカー「行為は賛同できないが気持ちは分かるよ、人が覚悟を決めるきっかけは何時だって義務じゃない、その時の気持ちだ」(ヒノ)
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