リリカル東方恋姫外伝 ネギま編 第十一話 『弱者をいたぶるのは悪魔と悪人と正義の味方の特権』
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「とっ、いうことで!とうとうやってきましたラストステージ『墓守り人の宮殿』!」

 

 マイクを持ったキョウスケがテンション高く、リポーターのように叫ぶ。となりには同じくマイクを持ったアルもいた。

 

「ここで、紅い翼と悪の組織の完全なる世界との最終決戦の火蓋が落とされようとしています!」

「それではここで、紅い翼のリーダーである千の呪文の男のこと、ナギ=スプリングフィールドと仲間であるジャック=ラカンにインタビューをしたいと思います。ナギさん、いまのお気持ちはどうですか?」

「いや〜不気味なくらい静かだな〜って…。ほんとにラストステージなのか疑問だぜ」

「なめてんだろ。悪の組織なんてそんなもんだ。けど、ほんっと、ここに来るまで長い道のりだったぜ〜。もう、映画だというと長編3〜4本くらいじゃねーの?」

「そうそう。実際、作者の亀更新で二年以上たってるんじゃねぇ?ってくらい、長い閑話を繋げたなげぇ〜話だったぜ〜。ネギまで閑話みたいな紅い翼の話をここまで長くする作者の無駄な努力には、笑っちまうな!」

「言えてる言えてる!」

「「あっはははははは!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに、敵陣の前で暢気にあそんでいるんですか、あなたたちは!(怒)」

 

 

 

 

 笑い出すナギとラカンに、詠春のツッコミが炸裂し、空に響いた。

 紅い翼が今いる場所は、敵である完全ある世界、その本拠地、王都オスティア空中宮殿最奥部《墓守り人の宮殿》の眼前であった。

 

「最終決戦の直前ですよ!もうすこし緊張感をもってください!」

「だってさ〜詠春〜ここにくるまでほんとぉおおおおおおおおおおおおに、長い道のりだったんだぜ〜オレたち〜」

「そうそう。こっこんとこ、濃い話ばっかで読者が読むのを飽きてきちまってるしよ。ここいらでゆる〜く、ギャグを取り入れて閲覧数を増やさないと、100以下になっちまうぜ」

「駄目です!メタなことは言ったら駄目!それ、作者が一番気にしてるんですから!?それ以上傷つけないで!?作者のライフはもうゼロです!?」

 

 閲覧数を気にするナギとラカンに、詠春がひっしに止めた。

 

「だが、長い道のりだったのは変わりない。このラストステージにいくまで、どれほどの労働と時間を費やしたことか…」

 

 キョウスケが墓守り人の宮殿にたどり着けるまでの苦労を思い出す。

 夜の日本の城の上で、鬼の形相で「待ちやがれ千の武器ぃぃいいいい!」と追いかけながら叫ぶスモーキーと、「だぁぁあ、しつこい!」とスモーキーに応戦する一刀。

 さらに、城から逃げ出す頭の布を被り泥棒の姿をしたアル、ラカン、キョウスケの三人と、キセルを片手に大判小判を投げてる義賊の格好をしたナギもいた。

 

「…あのーキョウスケ。なんか、私の記憶にはないものがあるのですが…?」

「悪の手先を、仲間が千切っては投げ、千切っては投げを繰り返す間に、悪の組織の基地から金品財宝を奪っては、基地を跡形もなく消し、仲間が後始末を書いてる間に、活動資金の調達のため頭の固い国から軍資金と拝借し、ついでに、情報を横流ししては国に大恥をかかせてり、悪徳の金持ちに契約書を書かせて資産を奪ったり、ほんと、ここのステージにいくまでどれほどの課金を費やしたことか…」

「いや、なに頑張ったみたいな顔してるんですか!ほとんど一刀さんががんばっている間、犯罪まがいをしただけでしょうが!?しかも理由が、生々しく黒いです!金の匂いがプンプンと悪臭が漂っています!だいたい、なんでがんばれゴエ○ン風ですか!?この魔法国に日本の城がありましたか!?ってか、あんたら一様、クラスは魔法使いでしょう!?まじで魔法使いから忍者に転職したんですか!?」

「泥棒なんて失礼だぜ詠春。そもそも、オレたちは勇者パーティーだぜ。盗みじゃなくって勇者特権で、タンスの中のアイテムをゲットしてるだけだ」

「それ、ゲームの中だけ!現実ではそれ犯罪!つうか、一番の労働者は一刀さんでしょう!あの人こそ、影の労働者でほんとうの英雄です!なんで、あんな人を連合が悪の魔法使いにしたのか頭を疑います!ってか、悪の魔法使いはナギでしょう!もう悪徳の塊ですよこいつ!」

「こいつ扱いなんて、ひでぇ〜よ〜詠春。こんな主人公気質で、最強の俺を悪の魔法使い呼ばわりなんて〜。むしろ勇者だぞ俺?」

「確信犯で犯罪に手に染めてるあなたが勇者以前に偉大なる魔法使いになれません!つうか、なったら絶対抗議しますから私!」

 

 ぶーぶーと不満げにほっぺたを膨らますナギに、叱る詠春。他者からみれば、悪ふざけをした子供を仕付ける母親であった。

 そこへアリアドネー部隊のセラスが報告にくる。

 

「ナギ殿!帝国・連合・アリアドネー混成部隊の準備が完了しました」

 

 ナギは、悪童フェイスから英雄フェイスにチェンジし、ビッシと凛とする。

 このごろ、裏表を使い分けるようになってきている千の呪文であった。

 

「おう。あんたらも自動人形や召喚魔の抑えは頼んだぜ」

「だが、その他の金髪でオットアイ共や白い蟲人みたいな奴らは俺たちがやるからあまり手を出だすなよ」

「一様、あれらが根っこ屑でも君たちには手に負えないはずだ。十分、用心してくれ」

 

 遮那とキョウスケも注意する。墓守り人の宮殿のまわりにクズ転生者と神の使い(本人たちは神の使者と名乗っている)らしきものたちが陣取っていた。

 おそらく、完全なる世界と結託するヴァビロンの手下の部下とクズ転生者であろう。中身がクズでも力は常人以上のため、セラスたちの部隊では適わないはずだ。

 注意事項を聞いたセラスは返事をする。

 

「はっ!!わかりました!…それで、あの…ナギ殿…遮那殿…ササ、サインをお願いできないでしょうか?尊敬していましたので…///」

 

 セラスは顔を赤くしながらナギに言う。いつにまにか色紙二枚とペン二本もっていた。

 原作と違い遮那までサインを求めることに、キョウスケは「なんで、俺じゃないんだ?」と自身にサインをねだらないことだけに疑問に思っていた。

 そして、ナギは「いいぜ」とサインをOKするが、遮那は…

 

「俺はパスだ。なんで俺が、サインなんて…」

 

 と、断った。

 すると、セラスが目に涙を溜めて震えだした。

 

「そ、そうですね…おこがましくすいませんでした…(ウルウル)」

「あ〜あ〜泣か〜しはった泣かしたっ」

「しゃ〜なが、女の子〜を泣かした〜」

「せんせぇ〜に、いいてやろ〜!」

 

 ナギ、ラカン、キョウスケが、むかつく笑みで遮那に指差す。

 それにうざく思う遮那だが、泣き耐えているセラスに、心が折れた。

 

「…はぁ〜わかった。書けばいいんだろう書けば…」

「ありがとうございます!」

 

 ため息を吐く遮那。先気ほどと変わって、セラスはパァァアアアと明るく喜んだ。

 

「なら、俺は、セラスちゃんの服にサインでも…」

「キョウスケ殿はお断りします。むしろ、さわらないでください♪」

「ガーン!?素敵な笑みで拒否された!?」

「あたりまえでしょう…下心丸見えです」

「煩悩丸出しのぉ、当然じゃ」

 

 セラスに拒絶され落ち込むキョウスケ。

 同士であるアルがキョウスケを励ます中、ナギと遮那が色紙にサインを書いていた。

 

「おい、ナギ。そこ、つづりが間違ってんぞ」

「えっ、マジか?これだから英語は嫌いなんだよ」

「おまえ、いちようイギリス人だよな?しかも自分の名前を書き間違えていいのか…;」

 

 サインを書き終えた(一人は書き直しして)二人は、セラスに渡した。

 

「ありがとうございます!一生宝物にします!」

 

 サインを抱きしめ、喜ぶセラス。そのとき、あることにに気がつく。

 

「ところで、『千の武器』と『妖聖剣舞姫』と『薄紅の破壊魔(ピンクデーモン)』の三名は今回の戦いに参加しないのですか?」

 

 現在、ナギたちのところには、主力メンバーであるブレイドこと一刀と、リーファ、リズベットの姿がなかった。

 なお、『薄紅の破壊魔(ピンクデーモン)』というのは、リズベットのことであり、ナギとともに破壊活動したため、その二つ名がつけれた(ご本人はというと『紅い翼の鍛冶師』のほうがいいと愚痴をいっている)。

 

「かず――ブレイドなら決戦用の戦艦に乗ってこっちにむかってるはずだ。そうだろうアル、キョウスケ?」

「ハイ。前日まで、私たちは戦艦に調整をしていましたので、ブレイドさんが最後の調整をすれば、戦艦と援軍をつれてすぐにこちらに戦艦と共に駆けつけると思います」

「護衛としてリーファもついてるから、この戦争には間に合うはずだ」

 

 遮那の問いに、アルとキョウスケが答えた。リーファが一刀の護衛についたのは、本人が一刀にそばにいたいという理由であった。

 また、決戦用の戦艦についてはアル、キョウスケ、一刀以外、どういうったものなのか誰も知らない。

 

「そうですか…ぜひとも、ブレイド殿が著作した本にサインしてもらおうと思っていたので、よかったです」

「えっ?かず――じゃなっかたブレイドの奴、本を出してたのか!?」

 

 どこから出したのか、セラスが本を一冊抱えていた。そのほんのタイトルには『よくわかる魔法・必殺技事典。これでもあなたも大賢者の称号が手に入る』というわけのわからん本で、著作名にはブレイド=フェイクドールという、一刀の偽名があった。

 一刀が本を執筆してたことに、ナギや遮那が驚き、その本のことでアルとゼクトが説明する。

 

「知りませんでしたか?彼、自分がもっている知識と視点で、錬金術や魔法などの論文や研究成果を教材のシリーズ版として出版しているんですよこれが」

「連合側は奴のことを悪の魔法使いと認定しておるか、販売してるのは帝国側だけだが、その人気は帝国の魔法使いや研究者のバイブルとして一週間で完売するほどの有名な本じゃぞ」

「たしか、売り上げ数が数億くらいで、だいだい数十億円くらい販売してるはずだったな」

「そんなに!?だったら、俺もこの戦いを本にして売り出そう〜と!そうすれば印税でがっぽがっぽ大儲けー!」

「スペル間違える奴が本一冊書けるのか?」

「…そうでした」

「そうだぜナギ。おまえの書いた本なんか誰も読むかよ。それよりも俺が製作、主人公にした映画のほうがぜってぇ大ヒット間違いなしだぜ」

 

 落胆するナギに、ラカンが自信ありげに笑い出し、いずれ製作する映画を自慢する。

 その反面、ナギたちが、冷たい目でラカンにむけた。

 

「あほか。てめぇが主人公の映画なんて、誰も好き好んでみるかよ」

「どうせ、子供先生の給料で製作した映画なんて、たかが知れてるしな(原作知識で)」

「作っても、ぜってぇ観客数ゼロだな」

「いえておる」

「身の程をしりなさい」

「オッィイイイイイイ!そこまで言わなくていいぜねぇぇか!なんで、この小説だと俺だけ冷たいんだ!筋肉か?肉達磨だからか!?」

「「「「それいがい何がある(んだ/のじゃ/ありますか)?」」」」

「人種差別だぁっ!?」

 

 容赦ない、仲間の言葉に吼えるラカン。もっとも、筋肉達磨なので、同情する余地は等しくゼロである。

 

「なんでよ!そもそも。あのペドの本が売れるだが!こんな分厚くて角が凶器になるだけのむずかしそうな本、誰が読むんだ?つまんねぇ教科書より、俺が製作した映画とか写真集のほうが断然、売れるはず――」

「今、なんていいました?」

 

 一刀の本をさりげなく馬鹿にしたラカンの言葉に、セラスが反応する。

 さきほどと打って変わって、顔上半分が陰に隠れ、背後に黒いオーラーをだしていた。

 その様子に、ラカンやナギたちも、顔を引き、一歩後退した。

 そして、セラスがゆらりと身体を揺らすと、セラスの瞳が怪しく輝きだしすと・・・・・・・・・・・・、

 

 ・・・・・・噴火のように爆発した。

 

「千の武器ことブレイド=フェイクドール様の本を馬鹿にしないでください!連合側であるメガロセブンスでは販売していないのに、奇跡的に数冊だけ学園の図書館に流れて、私と学園のみんなで読んだら衝撃が走ったブレイド殿の本をあなたの暑苦しい筋肉映画と写真集なんぞと一緒にしないでもらえませんか!ほんとうにこの本最高なんですよ!魔法の構造や戦闘での魔法の効率化に加えて、錬金術や化学式による証明と分析、さらに論文など、こと詳しく、それもわかりやすく書かれていて、学園では人気のベストセラーですよ!もう、私のバイブルというか心の友というか、それ以上に大切で最高の本なんです!!学園の友人にぜひともサインをと頼まれこの本!詰まんない教科書なんていうなどというのなら、私が絶対にゆるしません!」

 

 烈火の勢い、手には一刀の本をもち、息継ぎなしで長い台詞を吐き続けてラカンに迫った。

 

「あ、えぇと…すいません…;」

「はぁはぁ…わかればいいんですわかれば♪」

 

 さすがの無敗の剣闘士も、セラスの剣幕に押されてしまい、謝罪する。

 セラスは呼吸を整え、笑顔でスマイルする。

 

「すげぇ、剣幕だったな…」

「ん…?ブレイド様…?」

「…もしかして、セラスちゃん。ブレイドのファンなのか?」

「そうです!ナギ殿と遮那殿のファンクラブも所属していますが、これでもブレイド様のファンクラブの会長を務めています!ちなみにファンクラブの会員数と規模はナギ殿と遮那殿のクラブ以上で、旧世界から魔法界で一番の大組織になっています!」

「ま、負けた…、やっぱり時代は肉食より理系かよ…」

「むしろ、マダオの道を辿ってるお前に絶望して、ファンクラブが解散してないほうが奇跡だと俺は思うぞ?」

 

 圧倒的な一刀のファンクラブに、負けを認めて落胆するナギ。遮那にいたっては興味がないで平気であった。

 そのとき、ナギたちの前で、一刀とリーファが転移してきた。また、一刀は顔がばれないようシルバースキン着用している。

 

「ふぅ、やっとついた…」

「みんな、おまたせーっ!」

 

 遅れてきた一刀とリーファ。リーファにいたっては一刀と腕を組んでいた。

 

「おっ、ようやく来たか主人公」

「美少女の胸に挟んでの登場とは、いいご身分だな」

 

 ラカンと遮那が茶化すが、一刀は「まぁ…ねぇ…」と元気がなく答えた。

 

「おやおや、かわいい小さな姫様を助け出すときに覇気がありませんね〜?戦艦の中でなにかありましたか?」

「えっ、えーと、ちょっといろいろと…なぁ?///」

「うん…///」

 

 アルの質問に、一刀とリーファが赤くなって頷く。

 その様子にナギたちが察した。

 

(((あ〜こいつらヤッタんだな…)))

(ふっふふ、リーファさん…とうとう、一刀さんと肉体関係をもちましたか…明日はお赤飯ですかね?)

(だから、護衛をやりたいっていったのかリーファの奴…だが、さすがは種馬。何気にフラグを成立させたうえ、きっちりと完食するとは御見それしましたー!)

(人の交際をどうもこうもいうつもりはありませんが、時と場所を考えてくださいよ、お二人さん)

(あの乳を独り占めか…うらやましいぜぇまったく…)

 

 ナギ、遮那、ゼクトは細めで呆れ、アルとキョウスケは内心祝杯を上げ、ラカンはうらやましがった。

 一方、セラスはというと…、

 

「うわ〜生のブレイド様だー…!?わわわわ!?本にサインを、いや、この際、鎧に、むしろ握手を!あーもう!頼もうにも、足がガクガク震えて、動けません…!?」

 

 憧れでの一刀ことブレイドが眼前にいるため、緊張でてんばっていた。

 

「ナギ、彼女は?」

「協力者の一人で、おまえのファンだ」

「なるほど。…協力感謝する、セラスさん♪」

「セ、セラスでいいです!あの、本と鎧にサインを!あとあと握手とか、電話番号とか住所とか教えてっというか、私の住所をあのあのあの!?!?」

「お、おちついて…;」

「はい、一回、深呼吸しようかぁ。すってぇ、はいてぇ…」

 

 リーファがセラスの後ろに入り込み肩を持つ。

 セラスはリーファに言われたとおり深呼吸をして一旦、落ちつたが、

 

「…いっとくけど、ブレイドさん、私を何度も逝かせるほどテクがすごくて、あそこも大きいよ」

 

 リーファがセラスの耳元で小さくぼやき、セラスの顔が真っ赤になった。

 

「大きい!?逝く///!?…きゅぅ〜!?」

「わーっ!?セラス殿ぉおおお!?」

 

 リーファが離れると、ばったんとセラスが倒れる。あわてて詠春が駆け寄った。

 

「セラスになにか言ったかリーファ?」

「なんでもないよ〜っ」

 

 舌を出して、小悪魔ぽく答えるリーファ。なにせ、これ以上恋敵は御免であった。

 一刀やナギたちの目には種族が妖精とエルフのハーフなのに子悪魔らしき尻尾がみえたとか。

 これで、主力が集ったと思いきや、一刀があることに気づく。

 

「…ナギ、ここにリズがいないってことは、まだ…」

「あぁ、まだ、布団のなかだ…」

 

 ナギが手に持った金属状の真っ赤な杖を見つめた。

 

 

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 紅い翼の隠れ家。

 

「すぅ…すぅ…」

『やれやれ、力を使い果た上、三日以上起きないとは、我が奏者はまだまだ未熟ですねぇー』

 

 ベットの上で熟睡するリズベット。壁にはパルコーがかけれていた。

 

『しかし、決戦の三日前に完成させた挙句、我を超えるモノを作ってしまうとは、…我が奏者の潜在能力には、ほんと驚きましたよ…』

「うぅ・・・ナギ〜…すぅ…」

 

 一刀より渡された異世界の材料と伝説の龍神の材料を、聖なる鎚で作り上げたリズベットの寝顔は、まるでやり遂げたようにぐっすりと深く寝ていた。

 

 

 

 

 

 

「リズ、おまえががいなくても、お前が作ってくれた『赤翼皇の魔杖』。たしかに受け取った」

 

 赤い金属の光沢を放つ杖は、まるで猛禽を翼を広げて飛び立とうするような印象があり、杖というよりも戟か斧の形に近く、長方形の金色のプレートが埋め込まれていた。

 これぞ、リズベットが作り上げたナギだけの杖。世界を守ることができるパルコーなどの天器と対極し、世界を壊すことができるモノ…天滅器の一つ『赤翼王の魔杖』である。

 金のプレートに光が点滅すると、アヴァロデウスの声が発せられた。

 

『我が主よ。我が新たな器を作った創造主の願いの元、我は主に力となろう』

「よろくしなアヴァロデウス。それと、オレのことは主じゃなくてナギって呼べよ。オレとおまえは一緒に戦う相棒だぜ♪堅苦しいのは無しだ♪」

『フッ、承知したぞナギ』

 

 不敵に微笑するアヴァロデウス。

 そのときに、ガトウから通信が入る。

 なにやら連合の正規軍説得は間に合わないので決戦を遅らせることはできないか?と聞いてきたが、

 

「無理ですね。私達でやるしかないでしょう」

「既にタイムリミットだ」

 

 アルと詠春が答える。リーファも「帝国のほうも息の掛かった大臣共のせいで動かせない状況よ。今、テオドラとタカミチたちが指揮してるけど、たぶん間に合わないはずよ」といい、一刀と一刀の直属の部隊だけを連れてきたと言う。

 アルも続けて《世界を無に帰す儀式》を始めていることを言うと、一刀も口を開く。

 

「それと同時に、アスナの覚醒も近いな。墓守り人の宮殿の後ろをみてみろ」

 

 墓守り人の宮殿の背後の空間が、まるでガラスが割るように亀裂が生じ、その隙間には、宇宙らしきものがみえた。

 

「空間に亀裂が生じておる!?」

「あ、あれって宇宙かっ!?」

「地球とか月とか見える、あっ、太陽まで!?」

「…おそらく、黄昏の姫の第二に力、特異点の影響で時空が崩壊してるでしょう。このままだと、魔法世界どころか宇宙の崩壊に危機ですよ…;」

「おいおい、世界を無に帰す儀式よりそっちのほうがやべぇって!?」

「くっ、たとえ、儀式を止めたとしても、アスナ様の覚醒で宇宙が終わるとなるともはや打つ手が…」

 

 弱気になった詠春に、ナギが叫んだ。

 

「なに、弱気なんてんだよおまえら!だったら、アスナを助けて、止めればいいだけだろうが!」

 

 腰に手を置いて、どっしりと背中を向けるナギ。首を後ろに振り向き、口元を上げて、にやりと笑った

 

「そうすれば、俺たち世界どころか宇宙を救った英雄になれるぜ」

 

 その言葉に詠春がため息をはいた。

 

「はぁ、ろくに考えもしない、あなたがうらやましいですよナギ。…ですが、今はそれしか道がありませんね」

「やっぱ人類初で大気圏外突破した野郎の言葉は違うなー。あれ俺もかっ」

「宇宙を救った英雄かぁ…悪くないわね♪」

「考えによっては、世界を救うより、すこし、スケールが大きくなったっということにしときましょう」

「おもしろそうだぜ!俺はのったぜナギ!」

 

 ナギの言葉に、赤い翼のメンバーは覚悟をきめた。

 

「乗り物が必要じゃない?武装錬金、バスターバロン!」

 

 一刀がバスターバロンを呼び出すと、一刀とナギたち紅い翼が乗る。

 

「目指すは敵陣!墓守り人の宮殿!目的は四つ!一つ目は儀式の阻止、二つ目は敵組織の壊滅、三つ目はアスナの救出と覚醒防止、そして、最後は誰一人かけることなく生きて帰ることだ!」

「「おう!」」

「よっしゃー!行くぜ野郎共!!」

「女子もいるよ!」

「そうだったな!うんじゃー、紅い翼出撃だ!」

 

 ナギの号令と同時に、バスターバロンのブースターが火を噴き、墓守り人の宮殿に向かって飛び上がった。

 巨大ロボに乗った紅い翼と、控えていた混成部隊は、無数の敵が陣取っている墓守り人の宮殿に殴り込もうと飛び立った。

 

 

 

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「っと、そのまえにっ」

 

 と、思いきや、一刀がバスターバロンを急停止させた。

 

「「「「だぁぁあああああ!?!?」」」」

 

 急な停止に肩などに乗っていたナギたちが前から落ちそうになった。

 ナギは必死にバスターバロンの肩にしがみつき、肩の上によじ登った。

 

「なんだよ一刀〜っ!?せっかく、かっこよく飛び出したのに急に止めんなッ!」

「一刀じゃなくブレイドっ。空気をぶち壊して悪かった。けど、このままいっても、無駄に雑魚にぶつかるだけだろう?」

「たしかに、この先を考えるなら無駄な体力と時間は避けるべきですね」

 

 詠春も納得した。召還された魔物や人形などをかまっていれば、時間ど体力の無駄である。

 

「だから、ここいらどっかーんと一発風穴をあけるために、アレを使いたいとおもいます♪」

「ということはもしや…」

「とうとう、アレを使うのかっ!」

 

 笑っていう一刀。アレというものをアルが察しキョウスケは興奮する。その反面、ナギたちは?マークを浮かべ。リーファだけは一刀の説明を聞いているのでアレがなんなのか分かっており、苦笑の表情をした。

 すると、混成部隊の後ろから、雲から這い出たように一隻の飛行船…もとい、宇宙船が出現した。

 その宇宙船の名は…

 

「さぁ、出番だ!ナデシコ!!」

 

 初代にして、一刀が旅の中、もっとも思いである宇宙戦艦であり、もっともスパロボで作者がマップ兵器で資金集めをした機動戦艦ナデシコであった。

 

「「すっげぇえええええ!!」」

「なんとも独特の形をした戦艦でしょうか…!?」

「おおきのぉ〜」

「決戦用の戦艦はこれのことだったのか!?」

 

 ナデシコの雄姿にナギとラカン、詠春、ゼクト、遮那が驚く。

 ナデシコ建造に協力したアルとキョウスケはドヤ顔をしていた。

 

「相転移エンジン出力全開っ、目標を前方の敵、および墓守り人の宮殿に固定!」

 

 バスターバロンの頭部で一刀が眼前に展開されたディスプレイを操作して、ナデシコ(リモートコントロール式)を動かす。

 ナデシコは重力砲をチャージし、ディプレイに発射のパネルが出現する。

 そして、

 

「グラビティブラスト発射!」

 

 一刀が発射パネルを叩いた瞬間、ナデシコが不可視な重力波を墓守り人の宮殿にむけて放った。

 

 

ドッカーーーーーン!!!!

 

 

 墓守り人の宮殿の周囲が爆発し、衝撃と爆風が一刀たちと見方の部隊まで届く。

 一刀とナギたち紅い翼はバスターバロンにしがみつき、後方の部隊も耐える。

 まさに、一撃必殺、見敵必殺(サーチ&デストロイ)の言葉通り、衝撃がおさまると、眼前にいた敵の軍隊半分と墓守り人の宮殿の五分の三が塵となった。

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 その光景に一刀、キョウスケ、アル以外、全員、驚きのあまりあんぐりと口を開ける

 その結果に一刀が言う。

 

「…うん、だいぶ敵の数が減ったな」

「「「「やりすぎだぁあああああああああ!?!?」」」」

 

 あまりにもの威力に作り笑いをする一刀。設計上ではオリジナルと同様の威力をもっているが、敵陣だから強力な魔法壁など張っているので、捕まってるアスナを気にせず墓守り人の宮殿が攻撃できると思い、あえて威力を下げなかった。だが、想像以上に敵の魔法壁は脆く、墓守り人の宮殿まで届いてしまった。

 囚われているアスナが大丈夫なのか一刀は内心、心配する。

 そんな一刀の心境のさなか、協力者はというと…、

 

「いや〜私の重量魔法を知識があれほどの物を作り出せるとは、プロジェクトに参加したかいがありましたねキョウスケ」

「まさか、俺がナデシコを作ることになるとはオタクとして光栄だ。ほんと、いい仕事をしたな俺たち。時間の都合でエステバリスが出来なかったのがおしかったが…」

「また、あんたらかー!」

「一刀、おまえなんちゅうもん作ったんだ!」

「というか、姫ちゃんまで巻き込まれてないよな!?」

「墓守り人の宮殿だし大丈夫じゃろぉ。たぶん」

 

 アルとキョウスケはおきらくに、グラビティブラスの出来に満足していた。ナギやリーファは一刀と同じくアスナの無事を心配する。

 そこに、さらなる事態が起こる。

 墓守り人の宮殿の背後の空間の亀裂が広がっていた。

 

「やばっ、グラビティブラストの重力波で空間の崩壊が早まった!?」

「なんちゅうことしてるですかっ北郷さん!?」

「おまえは世紀末の大魔王か!?」

「敵が世界を無に帰すまえに、宇宙を滅ぼす気かテメェ!?」

「これはもう使わんほうがよいな」

「えぇ〜もう一発だけグラビティブラストを打ちましょうよ〜ゼクト。こんな機会、なかなかありませんよ?」

「そうだそうだ!そういうことで、今度は俺が…」

「ずるいぞキョウスケ!次は俺様が…」

 

 うっかりをやってしまった一刀に、詠春、ナギ、遮那がせめる。

 空間崩壊するためグラビティブラスが使用不能になるが、アルとキョウスケとラカンがもう一発撃とうとするが、リーファが拳骨で止めた。

 

「はい、コントはそこまでっ。やっこさんが来たよっ」

 

 当方から、神の使者(笑)とクズ転生者たちが飛んでくる。グラビティブラストの範囲外だったが、ところどころ、重力波の衝撃で満身創痍だった。

 また、クズ転生者たちにいたっては、

 

「「「「「俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だ俺がオリ主だゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!」」」」」

 

 こわれた人形のように同じことをゲラゲラと笑いながら繰り返し、瞳に正気が無く、特典の魔槍や聖剣を片手に飛んでいた。

 

「コワッ!?オッドアイが血走って、めちゃっコワッ!?言ってる意味がわかんねぇけど余計にコワイっ!」

「どうやら、俺たちをつぶすためにヴァビロンに理性とか無駄なものをうばれて正気を失ってるようだな」

「なんと、残酷な…!?悪党に手を貸しても、彼らがかわいそすぎますよ!?」

「しかし、詠春。むしろ、あれがあやつらの本性かもしれませんよ?」

「遮那たちと違って、欲望と力の業に飲み込まれた愚者共か…哀れといえ哀れだが、悪に下った時点で、結末はもはや決まっておる」

「自業自得だな」

 

 クズ転生者たちに、哀れみを浮かばない紅い翼。

 空中停止していたバスターバロンは、再びブースターを噴かし、群がる神の使者と転生者たちに突撃する。

 しかし、相手をする気時間がないため、敵を轢き飛ばしながら墓守り人の宮殿へ急ぐ。

 

「いっきに突っ込むぞ!しっかりつかまってろ!」

「オイ、一刀!後ろの部隊はどうするんだよ!?あれらがイカれていても、結構強いぞ!?」

 

 クズ転生者は理性が無いのか、目も前や近くにいる部隊に目をつけ、混成部隊やナデシコに襲い掛かる。

 

「安心しろ、俺たちには強力な仲間たちがいるっ」

 

 一刀がそう言うと、下からクズ転生の断末魔がナギたちの耳に届く。

 下から多くの飛行船が現れ、甲板で武装した魔法使いや傭兵たちなどが、大勢無勢にクズ転生者たちを倒していた。

 

「ナギーッ!後ろは俺たちに任せてとけぇぇえええええ!」

「おまえらは、敵のボスを叩け!」

「中距離から攻撃を!接近をゆるすな!紅い翼の邪魔をさせるな!」

 

 その中には、クラインやエギルもいた。そばには、混成部隊も混じり、いつもまにか復活したセラスも戦闘用の箒に乗りながら部隊を指揮していた。

 

「あれは、クライン!それにエギルも!」

「傭兵や戦闘ギルドの人たちもです!?」

「俺が連れてきたのは俺の部隊だけじゃない」

「みんな、世界の危機のために協力してくれたの♪」

 

 クラインやエギルが、水面下で傭兵やギルドに頼み、ナギたちに強力するように頼んだのだ。

 一刀とリーファがナデシコの出向中、彼らも船に乗ってついて来たのだ。

 

「ぎゃっはははは!種馬はとっととくたばれぇぇええ!」

「真の主人公は俺だぁぁああああ!」

「神の秩序のため死ね!」

 

 前方から、クズ転生者と神の使者(笑)たちが襲ってくる。

 ナギたちが遊撃しようとするまえに、上から二つの影が降りてきた。

 

「やらせるか!影竜一閃ッ!」

「み〜んな、串刺しの刑よ〜影竜の茨ッ!」

 

 スカイとディープであった。

 スカイは居合いの構えで、刀を振り上げ、黒い影の斬撃を放ち、クズ転生者たちの胴体を両断する

 ディープは背後から黒く太い茨で神の使者(笑)に絡みついて拘束し、槍で胸を刺し殺していく。

 

「スカイさん!ディープさん!」

 

 バスターバロンが通りすぎ、詠春が後ろに振り返って二人の名前を叫ぶ。

 だが、戦場にいるのあスカイとディープだけでない。ナデシコのほうでも、船から船に飛び移りながら、空中にいる敵を打ち落とす三つのオレンジの影があった。

 

「これ以上、あなたたちの好きにはさせない!!」

「ナカちゃんの歌をきっぇぇええええ!!」

「私たちの船、ナデシコを落とすわけにはいきません!!」

 

 鈴は杭を無数に放って打ち落とし、うずきは超破壊音波でナデシコに群がる敵を一掃し塵へと変え、ミオは名刀である虎鉄でナデシコや船にへばりついた敵を切り伏せていく。

 

「夜の偶像の三姉妹っどもか!」

「どうやら、北郷隊全員集合ですねっ!」

 

 ゼクトとアルが言う。すると、ナギがうらやましそうに目を一刀に向けた。

 

「い〜な〜一刀は。そっち女が多くて…。うちの筋肉達磨とヘビースモーカーのおっさんとホモと交換してくれねぇ?」

「帝国には筋肉とパイナップルがいるのでいりません(にこり)」

「こんなとき、トレード交渉するなっ!気持ちは分かるけどさすがの俺様も泣くぞ!?」

「私を捨てるなんてひどいですよ〜ナギ〜」

 

 ちなみにヘビースモーカーのおっさんは、連合で交渉しているガトウのことである。

 バスターバロンが群がる敵を突破し、墓守り人の宮殿に近づく。

 

「一刀!紅い翼!アスナを助けなかったら承知しねぇからなっ!」

 

 敵が群がるバスターバロンの後方でスカイが叫ぶ。仮とはいえ、アスナの姉として接してきたスカイ。自分では妹を助けることができないのをわかっているため、スカイは一刀たちに託すのであった。

 

「わかってるよ!」

「俺たちにまかしとけ!」

 

 一刀とナギは返事、スカイに見送られた一向は墓守り人の宮殿と急いで向かった。

 

「まってろ、完全なる世界ッ!」

「今、俺たちが顔を拝め行ってくるぜぇえええ!」」

 

 答えるようにバスターバロンはさらに加速し、墓守り人の宮殿へと急いだ。

 

 

-4ページ-

 

 

 その頃の『墓守り人の宮殿』内部では…、

 

「くっ……申し訳ありません、どうやら私はここまでのようです」

 

 建物内部にて、一人の男が倒れ伏していた。

 彼は完全なる世界の幹部である水の使徒である。彼はグラビティブラストの威力を察知しすると同時に、転移魔法を多重起動させ、自分と仲間の従者達をグラビティブラストの爆発の範囲外へと飛ばした。

 しかし、ただでさえ複雑な転移魔法を即座に、しかも複数転移させた代償は大きく、転移と同時に倒れた。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 水の使徒と特に親しかった火の使徒が駆け寄る。

 

「……すまない、私はここまでのようだ。お前が、アーウェルンクス様をお守りしろ」

「そんなことを言うな!そんな、まるで最後の言葉みたいな……!」

「フッ、まったくお前は……いつまでたっても…………変わらな……」

 

 その言葉を最後に、水の使徒は微笑みながら体から力が抜ける。

 

「う、お、おおおおおおおおおおおお!!!」

 

 抱きかかえる体から力が抜けていくことを感じた火の使徒は、嘆き、怒りが篭った叫びを上げた。

 

(いや、魔力が切れただけで、まだ死んでないけどね)

 

 アーウェルンクスが心の中でツッコミを入れるが、脳筋である火の使徒には理解できてきない。

 

「ゆるさねいぞぉおおおお紅い翼ぁああああああ!!!おまえらはぜってぇええええ叩き潰してやるぅうううううう!!」

 

 怒り憎しみを燃やし、火の使徒は墓守の人の宮殿を破壊した紅い翼に復讐を誓った。

 そのとき、

 

ドッカーン!!

 

「とうちゃーく!」

 

 火の使途の足元から、一刀たちを乗せたバスターバロンが右腕を上げながら床を破壊して登場した。

 

「ぶっへ!?」

 

 突然のことであり、床下からという登場で、火の使徒は反応できずバスターバロンの右コブシにグーンヒット。天井を壊しながら火の使途は飛ばされ、天井に空いた穴から星となった火の使途がキランと光った。

 

「「床下から登場したぁぁあああ!?」」

「火の使徒ぉおおおおおお!?!?」

 

 まさかの、床下からの登場にアーウェルンクスたちは驚く。

 彼らを無視して、バスターバロンから一刀とナギたちが降りた。

 

「よーし、無事に内部に潜入できたな」

「まったく、墓守の人の迷宮の下からに、突入するなんて無茶をやめてください」

「しょうがないだろう、素直に正面から入ると罠とかあって危険だし、なにより時間がおしい」

「そうそう…アスナの危機だし、常識で考えるなって詠春。…ん?」

 

 ナギが目の前にいるアーウェルンクスに気がつく。

 詠春たちは身構えると、アーウェルンクスたちも、なにもなかたような表情でナギたちに挨拶する。

 

「やぁ、千の呪文の男。また会ったね。それにこうして面を向かうのははじめてだね千の武器。まさか、罠をくぐらずに下から現れるなんてびっくりだよ」

「おまえは・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だっけ?」

 

 ナギの言葉に一刀たちだけでなく、アーウェルンクスもずっこけた。

 また、遮那もアーウェルンクスが誰だったのか完全に忘れていた。

 

「何のジョークだい?僕と君は何度も会ってるよ」

 

 アーウェルンクスは気を取り直して、ポーカーフェイスで言う。

 ナギと遮那は、自分の記憶をたどる。

 

「何度も…あっ」

「そうだ。ようやく思い出して――」

「もしかて魔法学校で隣に座っていたハリー君?」

「違うよ!ってかハリー君って誰!?」

「そんじゃーこの前、ジャンプを借りていたヒロシか?わりぃ、おまえのジャンプ、古本と一緒に捨てちまったわ」

「そっちもちがうっ!」

 

 ナギと遮那のボケに乗ってしまうアーウェルンクス。人形のような無表情が困惑な表情に変わっていた。

 

「ナギ、遮那!忘れたのですか!彼は完全なる世界の幹部で、マクギル元老院評に変装し、私たちを指名手配犯に仕立て上げた奴ですよ!」

「そうだよ。ご説明ありがとう」

 

 さすがの詠春もだまってはおられず、ナギたちに説明をし、アーウェルンクスは彼に感謝するも…、

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あったけ、そんこと?」」

 

 長い間を空けて、首をかしげるナギと遮那に、またもや全員ずっこける。

 詠春は青筋を浮かばせて怒鳴る。

 

「あなたたち、まじめにやってくださいよ!」

「しょうがねぇだろう!マジで、おぼえてねぇだしっ!」

「大体、それって、本編で書かれてなかった話だろうが!覚えている以前に、初登場の奴をおぼてるわけねーよ!」

「いやいや、君はたしかに逃げてる最中に僕に火の鳥みたいなもの放ったよ!つうか、初登場じゃないし!ちゃんと一回登場してるよ!きみたちと、そこにいる千の武器に吹き飛ばされたけど!」

「えぇーと…そうだったな…うん、いたいた…(駄目だ。ぜんぜん思いだせない)」

 

 逆切れをするナギと遮那。一刀にいたってはアスナのことで頭がいっぱいだったため覚えておらず、アーウェルンクスにいたってはもはや、キャラ崩壊をしていた。

 

「アーウェルンクス様!奴らのペースに乗せれているぞ!!」

「ハッ、そうだった…」

 

 影の使徒のおかげで、我を取り戻したアーウェルンクス。気を取り直してポーカーフェイスで言う。

 

「僕達もこの半年で君に随分数を減らされてしまったよ。それに、さっきの戦艦の一撃と千の武器の巨人の一撃で、僕の従者が二人戦闘不能になってしまったよ」

「それは、悪かった。で、アスナは無事か?」

「…僕たちより黄昏の姫御子の心配をするのかい千の武器?…まぁいいけど。姫御子のほうは無事さ。この城で一番安全なところにいるよ」

「そこは何処だ?」

「アッチだよ」

 

 アーウェルンクスが奥の通路を指さして、アスナのいる場所を教えた。

 

「ありがとう。うんじゃ、先に進むから〜」

「教えてくれてありがとうな〜」

「「「バイバイ〜」」」

「うん、ばいばい…って、簡単に通すと思ってるのかい?」

 

 一刀たちが手を振ってアーウェルンクスの前を通りすがろうとするも、魔法障壁を張られてしまい、道が塞がれてしまった。

 

「チッ、このままノリで行けると思ったんだけど無理っか」

「本気でそう思ってるなら、そうとう僕らを舐めてるね君たち…(怒)」

 

 舌打ちするナギに、無表情だがアーウェルンクスの額に青筋が浮かんでいた。

 アーウェルンクスがパッチン、と指を鳴らすと、紅い翼の周りに魔方陣がいくつか展開され、クズ転生者たちが召還された。

 

「協力者がいるのは君たちだけじゃない。僕らも力強いスポンサーがいるんだよ」

「あなたたち、そのスポンサーがどれだけ危険かわかってるんですか!?相手は世界を腐らせ、滅ぼす堕天使ですよ!?」

「愚問だね。そいつが危険でどうあれ、僕らの目的が達成できれば、それでいいんだよ」

 

 詠春がヴァビロンの危険と唱えるも、アーウェルンクスは人形のように答える。彼らにとって、創造主の命令以外、眼中にはなかった。

 

「性格はどうあれ、こいつらの力はチートクラスだ。さすがの紅い翼もこの数と質に無傷ではすまないよ」

 

 詠春たちが身構えると、ナギが彼らの前に出る。

 

「おまえらは手を出すな。こいつらは俺とアヴァロデウスがやる」

「なに、言ってるだい千の呪文の男?さすがの君でも僕とこの人数では自殺行為に等しいよ」

「そうですよ!ここは全員で――」

「そうかい。なら、俺の新しい力を試すにはちょうどいいな」

 

 にやりと口もをあげて、杖を肩に置くナギ。詠春が無謀だと抗議するが、一刀がとめた。

 

「心配するな詠春。あいつは新しい力を使いたくってうずうずしてるんだ。あんなモブ共にパワーアップしたナギはやられるわけないよ」

「北郷さん…そうですね」

 

 詠春はわかっていた。ナギとナギがもつ赤翼皇の魔杖に勝てるものない。それ以前に今のナギに不安定要素など存在しないことをわかっていた。

 

「そして、俺たちができることはただひとつ、アイツを信じて気軽に見守ることだ」

 

 そういって、一刀は真剣な表情で言った。

 詠春とナギ以外の皆と、広げたシートに座ってクッキーとジュースを飲み食いしながら。

 

「って、なにやってるんですかあなたたち!?」

「なにって?ナギの活躍を観望しようとおやつを食べてるけど?」

「どうして、悪の組織の城の中でおやつを食べてるんですか!?しかもリーファさんまで!?」

「あたしだっておやつ食べたいよ!」

「時と場所を考えてください!」

「そうだそうだ!俺の分も残しとけリーファ!」

「貴方は、前の敵に集中してくださいナギ!」

「そう、カリカリするなよ詠春?もしかして、クッキーよりせんべいのほうがよかったのか?」

「どっちでもえぇえわ!!」

「だったら、詠春の分を俺に…」

「いい加減、前の敵に集中しろ鳥頭!!」

「…なんかもめてるみたいだけど、まぁ、いいか。…やれっ」

「「「オリ主は俺だぁあああああゲイ・ボルク(突き穿つ死翔の槍!!)」」」

 

 アーウェルンクスの合図で、クズ転生者たちがゲイ・ボルクをナギに向かって投擲する。

 因果逆転の性質を持つ紅い槍が数十本。すべてをよけることは不可能だが、ナギはまだ一歩も動かない。

 

『Level1!!』

 

 赤翼皇の魔杖から声が鳴り、金のプレートにレベル1(ワン)という単語が紅い文字で浮かぶと、ナギの身体から膨大な紅い魔力と気が放たれる。

 まるで、スーパーモードの戦闘種族並のオーラの放出に詠春やアーウェルンクスたちは目を丸くすると、ゲイ・ボルクがナギに突き刺す寸前、ナギが動いた。

 

「オリャァアアアッ!!」

 

 赤翼皇の魔杖を横に一回だけ振った。その動作は第三者の目には素振りが見えず、紅い布をナギを被るように見えるほどのスピード。絶対秘中の槍が、ただの横払いで、ホームランボールのように打ち返された。

 数十本のゲイ・ボルクはそのまま、目には捉えきれない速さで、元のクズ転生者たちにぶつかり、クズ転生者は自分で放った槍の衝撃と貫通力で突き刺さり、または、肉が飛び散った。

 

「うん。傷がついてないな」

 

 ナギが杖を掲げると、杖の表面には傷どころか汚れがついていなかった。

 

「ば、馬鹿な!?僕たちの魔法壁も打ち抜くほどの攻撃をただ杖で払った…っ!?しかも打った杖は無傷!?」

 

 アーウェルンクスはありえない現状に驚く。なにせ、莫大な魔力が込められたゲイ・ボルクが、杖一本で払われて上、その杖が傷ひとつもついてないのだ。

 そのことに、詠春も同様に驚き、ほかのメンバーはナギと赤翼皇の魔杖に関心し、おやつをたべながら観望をつづけていた。

 

「「「「「しししししし死ね死ね死ね死ね死ね死ねーっ!!」」」」

 

 残っていたクズ転生者は待ちきれず、聖剣、槍、大剣、などの武器を片手にナギに襲い掛かる。

 同時に、赤翼皇の魔杖がまた鳴る。

 

『Level2』

 

膨大な魔力を身体から放つナギが、さらに魔力を放出する。

 

「雷の暴風!!」

 

 ここにきて、ナギがはじめて魔法を放つ。中クラスの風と雷の魔法だが、本来の魔法の威力と桁違いであった。

 稲妻と暴風が吹き荒れ、クズ転生者を塵へと変えるなど、もはや、千の雷並みの威力をもっていた。

 

「あれはもしや…?」

 

 その光景に影の使徒がある推測をたてると、赤翼皇の魔杖の声が鳴る。

 

『Level3』

 

 さきほど、桁違いの魔力と気がさらに放出される。同時に目では見えないが、じつはナギの身体もさきほどは比べられないほど力が上がっていた。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

「ぐっは!?」

「がっぼっ!?」

「ぎゃっぁあああ!?」

 

 クズ転生者たちを喧嘩殺法で、殴る、蹴る、頭突きする、急所を突くなどするナギ。けれど、その動きはすでに人の限界を超えており、触っただけで致命傷になる宝具などの紙一重でよけ、早業でクズ転生者を倒していく。

 

 

 その拳で歪みきったイケメンな顔を殴り潰し

 

 その蹴りで華奢な胴体を凹ませ

 

 その指で狂気で濁った色違いの瞳を貫き

 

 その紅い杖でクズの心臓を掻き出す

 

 

 その姿はまさに『悪魔』。

 

 弱者を容赦なく惨殺する紅い悪魔がここにいた。

 

「なんともむごい…もう、一方的な虐殺です!」

「ナギの奴め。新しい力に浮かれておるな。大丈夫かー?」

「浮かれてるっていうより、ハイテンションになってるだけだと思いますよ?」

「ナギのことだし、大丈夫でしょう。たぶん」

「まるで白夜叉モードに銀さんみたいだ…」

「いいぞナギ!もっとやれー!」

「相手はクズだ!泣いて抗議する親はないぞ〜!」

「俺たちに手を出したこと、後悔させてやれぇ!」

 

 紅い翼サイドでは、詠春とゼクトがナギを心配し、ラカンとキョウスケと遮那がナギの活躍をはしゃいで応援していた。

 一刀にいたっては、ナギの姿が恩師の面影が重なってみえていた。

 

「リズ、改めておまえを見直してぜっ。こんなすげぇ杖を作れるなんて、おまえはすげぇよ!最高だぜ!」

 

 悪魔ことナギが笑みをこぼし、悪魔に武器を与えた少女に感謝する。

 その武器に、影の使徒の推測が確証へと変わった。

 

「間違いない!?あの杖で千の呪文の男の力が格段と上がってる!」

「なんだと!?まさか、あの杖は強力なアーティファクトか魔道具なのか!?」

「いえ、アレはそんな強化の類ではない!?あれはもう人の域を超えている!もっと、存在という生態ピラミットの階段を飛び越える、そのような感じだ!?」

「そのとおり!」

 

 クズ転生者を倒しながらナギが胸を誇って言う。

 

「これが『赤翼皇の魔杖』…【発展】の力の一つ『リミデット・ブレイク(限定突破)』!十秒後ごとに、自分の力を【飛躍】させ、レベルアップさせることができる!つまり、時間が経つほど俺のレベルが上がり、レベルが上がれが上がるほど、俺はいずれ生態系の頂点ところか、神や魔王を超えることができるッってことだ!」

「神や魔王を超えるだと!?」

 

 アーウェルンクスたちがまた驚く。悪魔よりの上の魔王、ならびに神をも超えるなど歴史上に存在しない。それをナギが出来ると言い張った。アーウェルンクスはナギの目が嘘を言ってる目には見えず、彼なら本当に神や魔王を超える、と内心思ってしまう。

 

「おい、一刀。アレ、なんかマサトの篭手の能力に似てないか?」

 

 仲間であるマサトがもつ赤龍帝の籠手と似ているためラカンが一刀に質問した。

 

「うーんちょっと違うな。そもそもドライグのは力を【倍増】で、アヴァロデウスのはいわば【飛躍】だ。質と能力は似てるけど、倍増はあくまで元々の力…つまり、能力値を倍加するもの。飛躍はステータスを一段ずつランクアップさせるもので、力の底上げの仕方が違うんだ」

「うーん?もうすこし、分かりやすく説明してくれない?」

 

 ラカンや博識のある仲間はある程度理解できたが、リーファや遮那などはあまり理解できていなかった。

 そこで一刀はどこからだしたのかホワイトボードを取り出し、ナギとラカンのイラストを描いて、横にステータスらしきものを書き加えた。

 

「ようするにだ。マサトとナギのステータスで数値が同じで、ともにAランクだったとしよう。二人がAランクからSランクにパワーアップするために、1000ほどの数値が必要になる。そこで、マサトが【倍増】の能力で自分の数値を倍加させて段々と数値を上げてランクアップをしようとする。それに対し、ナギが【発展】の能力を一回使用すれば簡単にSランクにアップしたうえに、さらにもう一度使用すればSSランク、また続けていけばSSSランクと、このようにお互いのステータスに大きい差がついていくる。つまり、力の底上げなら質量と反則でアヴァロデウスの【発展】のほうが上だってことだ」

「「「なるほなるほど」」」

(石の仮面みたいなものか…)

 

 一刀の説明に紅い翼は理解してうなずき、キョウスケは別の例えで理解した。

 

「と、いうことらいしいです!」

「…敵の説明を聞いて納得すると、なんか虚しくなるよ…;」

 

 一刀の説明に、アーウェルンクスたちも聞いており、影の使徒が空気を読まず言い、アーウェルンクスは頭を痛くなりそうになった。

 

「赤翼皇の魔杖の力はこれだけじゃねぇっ!アヴァロデウスッ、新しい呪文が発現できたかっ?」

『レベル4で、雷の暴風に三つほど発現したぞ』

「よっし!うんじゃいくぜ!」

『Skill up load!!『雷の暴風』⇒『迅雷の暴風槍』⇒『雷風の茨』⇒『嵐獣の爪牙』』

 

 赤翼皇の魔杖のプレートにスキルアップロードという単語が浮かぶと、杖の周りに小さな魔方陣らしきものが三つ、ナギの背後に巨大な魔方陣が一つ展開され、小さな魔方陣の一つが巨大な魔方陣と重なり一つとなった。

 

「まずはこいつだ!迅雷の暴風槍!!」

 

 杖を掲げると稲妻と暴風を槍の形に圧縮しとどめた巨槍が出現した。巨槍は稲妻の速さで集まっていたクズ転生者に飛来し、直撃と同時に圧縮された電撃を暴風を爆発させ、クズ転生者を消し飛ばした。しかし、危険を察知したのか、直撃の寸前に離脱し、回避した者が数名いた。

 

「つづいて、雷風の茨!!」

 

 ふたつめの小さな魔方陣が大きい魔方陣に重なると、こんどは巨槍と違って茨の形した稲妻と風が地面から、雷風の茨はくねくねとすばやく動き出しす風クズ転生を取れる。クズ転生者が茨を解こうと茨を切るも茨の構造は風となっているため、透かしてしまい物理では不可能だった。さらに抗おうとすれば、茨が雷撃を放出してクズ転生者を苦しめる。

 そして、三つ目の小さな魔方陣が大きな魔方陣に重なると、ナギの前方に巨大な魔方陣が出現した。

 

「ほんでこれが、嵐獣の爪牙!!」

 

 魔方陣から現れたのは、巨大な猛虎。

 遮那の白虎や、一刀のに似ており、その巨躯はまるで風が渦巻いているような不透明な空気の体にシマシマの部分は紅い稲妻が走っており、口や背中が、紅い電撃を放電していた。

 一言で荒らせば虎の形をした嵐だ。

 

「やっちまえっ!」

「ガッォオオオオオオオオオ!!!」

 

 嵐の肉体をもつ猛虎は高く吼え、茨で拘束されたクズ転生者たちを茨ごと噛み砕き、紅い電撃付きで感電死させ、さらに風の鎌のような爪で引き裂くなど、クズ転生者たちを次々と蹂躙していった。

 

「ナギの奴が詠唱も無しで魔法を!?それも連続で発動しただと!?」

「しかも、見たこと無い魔法です!?いつのまにあんなオリジナルスペルを!?」

「違うっ、あれも赤翼皇の魔杖の能力…!?」

 

 詠唱と魔法の連続発動に加えて、見たことのない魔法にゼクトと詠春が驚くも、一刀が違うと気づいた。

 そのことに、ナギが説明する。

 

「【発展】の力のひとつ【昇華】の『アンリミテット・コード(無限の術)』ッ!レベルが上がれば上がるほど、俺が持ってるスキル、魔法、技が応用で増えていき、まるで枝分かれして広がっていく木みてぇに、多くのスキルが使えるようになる。まるで全能者みたいに、俺はかるく千以上の魔法が使えるってことだ!」

「俺の『千の顔を持つ英雄』のスキルバージョンみたいだな、それ!?」

「呪文を読めないどころか、以下省略してるナギにはうってつけの能力ですね〜」

「くっ、つまり、君は正真正銘、千の呪文を使える千の呪文の男になったということかぁ…!?」

 

 二つ名で千の呪文の男と言われているナギだが、実際は二桁、それもアンチョビがなければ使えないということは完全ある世界では調査済みであった。

 しかし、赤翼皇の魔杖を手にし、ナギは正真正銘、千の呪文を使える魔法使い、千の呪文の男になったことに誰もが驚き、その反則能力に呆れ果てた(おもにゼクトと詠春と遮那)。

 そうしてる間に嵐獣の爪牙でクズ転生者たちが全滅し、残っているのはアーウェルンクスたち三人だけだった。

 

「最後の手向けだ。こいつのもうひとつの力、【衰退】っていう能力をフルに活用した赤翼皇の魔杖限定技、拝ませやるぜ!」

『ブラスターモード!!』

 

 赤翼皇の魔杖の先端が二つに分かれると、分かれた先端が伸びて、魔方陣が重なって装着され、砲身のようになった。

 その形態にキョウスケがどこぞの白い悪魔の魔法少女を連想するが、一刀やラカンを筆頭に紅い翼のメンバーが本能で危険を感じており、銃口を向けられているアーウェルンクスにいたっては汗を流して、神経が危険信号のサイレンが鳴っていた。

 

 

 

――アレはやばい、と。

 

 

 

 アーウェルンクスたちはすぐさま、多重魔法障壁を展開するが、後に無意味であることを知る。

 

「塵へとなりやがれ!ブレストハリケーン(錆び色の息吹)!!」

 

 杖と魔方陣で構成された砲身から発射されたのは『嵐』。紅よりも黒く赤錆に近い錆色の竜巻の大波であった。

 まるで、大津波のような竜巻と竜巻の渦が障壁ごとアーウェルンクスたちを包み込み、その障壁を、肉体を、魂を、粒子の塵へと風化させていった。

 さらに、ブレストハリケーンは止まらず、城の壁を貫き壊し貫通。おさまると頃には、そこはまるで砂場の砂を削り取ったような跡が残り、前方には外の景色が見えるほど巨大な穴があいた。

 その光景に紅い翼は絶句し、一刀とキョウスケの二人は「ルストハリケーン?」と言って首をかしげていた。

 

「運命により生まれたし龍の息吹はすべての万物を無に帰す残酷の風……たとえ、神であろうとも運命の終焉に防ぐ術なし!」

 

 ナギがカッコよくきめ台詞を吐いた。

 ブレストハリケーンを発射した赤翼皇の魔杖の表面が割れ、排気口となり篭った熱を排出した。

 

「…ほんと…出鱈目だね。障壁ごと…僕らを紙くず同然に塵へと変えるなんて…もはやバグを通り越して人外だ…」

 

 前方にアーウェルンクスが下半身がなく、壊れた石造のようにボロボロに倒れていた。ほかの使徒の二名はいない。おそらく塵となり消えたのであろう。アーウェルンクスだけは運よくブレストハリケーンを耐え抜くことだ出来たが、その身体では反撃する術はなく、完全に壊れるのも時間の問題であった。

 

「人外なんて心外だな。俺はただ強い立派な人間様だ」

((((いやいや、十分、人間やめてるって…))))

 

 人間だと主張するナギに、詠春、リーファ、ラカンが心の中でツッコミ、ほかのメンバーも苦笑する。

 ナギが体が半分となったアーウェルンクスの髪の毛を掴み、持ち上げた。

 

「中ボスを倒したんだ。さっさとボスだせっよ。アスナを浚った奴がこの戦争の黒幕だってことわかってんだぞオイッ」

「っ!?気づいていたのかい…?」

「あたりまえだろう!よく、考えてみれば、黒幕がおまえのようなセールスマンみたいに、アッチコッチ活動するわけねーし。だいたい、ラスボスってもんは、普通、中盤で登場しては最後までラストステージの城の奥にいるもんだっ」

「悪の組織の幹部と黒幕を、サラリーマンと引きこもりのニートみたいにいうなよ…」

 

 ナギの考え方に、遮那がツッコミをいれた。

 

「フッフフ、そうだ。正解だよ千の呪文の男。黒幕は僕ではない…ッ」

 

 アーウェルンクスが笑った瞬間、アーウェルンクス共々、閃光のレーザーがナギを腹部を貫こうとする。

 その刹那、ナギに突き刺す寸前で赤翼皇の魔杖ことアヴァロデウスがナギのアーウェルンクスの間に瞬間移動し、堅牢な赤いボディーで閃光を弾き防いだ。

 

『最後まで気を抜くなっナギ!』

「っ!?すまねぇ!」

 

 ナギはすぐさまビームに貫かれたアーウェルンクスを捨てると、奥のほうから膨大な魔力を感じた。

 ナギたちが奥を見つめたとき、最後に見たのは影のようなフードを被った人の形と巨大な魔方陣から放たれる光の塊だった。

 

「・・・・・・・・あっ、やべ――」

 

 誰かが言ったその言葉を最後に、ナギたちの視界が光に包まれた。

 

 

 

 

つづく

 

説明
ナギが新武器を手にし、ナギ無双!

新しい力は世界を壊す力。

神の武器も、神殺しの武器をも超える、その武器の名は…



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