真・恋姫無双 覇王伝 第十五話
[全4ページ]
-1ページ-

〜鞘華視点〜

董卓達と共に陣営に戻った私達は現在、洛陽の外に居る

そこに天幕を張って、その中で一君や董卓陣営の人達と共にいる

洛陽での戦闘が終わったからと云って連合軍総勢50万人が一挙に入る訳にはいかないからね

一君を休ませるにはちょうど良いんだけど

洛陽には総大将の袁紹が代表で入り、皇帝に謁見している筈

その後の指示を待っている

董卓の屋敷に火を放って、董卓と賈?が自害した様に思わせる細工をしたから直ぐに解散になるでしょ

 

「あの、一刀さんは大丈夫なんでしょうか?」

董卓が心配そうに尋ねて来たが

「大丈夫だよ」

と答えたのは一君本人だった

「あんた、気が付いていたの?」

賈?が驚いていたが、私は分かっていた

洛陽から秘密の抜け道を通って戻る最中にもう意識を取り戻していた

ただ、自分だけでは立てないし目の焦点が合って無いので肩を貸していたけど

「無事で良かったです

 今回の件、本当に感謝しています

 感謝の印に私の真名『月』を預かって下さい」

董卓が一君の手を握ってお礼を言うが

「ちょっと、月 まだそこまで信用しない方が良いわよ

 あんた、今回は選択肢が他に無いからあんたの提案を受け入れただけよ!

 それを恩に着せて月に妙な真似をしたら、只じゃおかないわ!

 覚えておきなさい!」

賈?は董卓を心配しているのは分かるけど、無礼にも程があるんじゃない?

ついでに董卓に関しても、過保護ね

そう思っていたら

「詠ちゃん

 そんな事言っちゃ駄目だよ」

「でも月・・・」

窘める董卓に賈?が反論しようとしたら、董卓が頬を膨らませる

怒っているのよね?単純に可愛いんだけど

「分かったわよ

 言い過ぎたわ、ごめん」

賈?が一君に謝罪したのでこれ以上はいう事も無い

 

「鞘姉、まだ起き上がるのはちょっと辛いから軍の指揮を頼めるかな」

一君の頼みを断る訳無いでしょ

「分かったわ」

と答えた時

「北郷様、袁紹様よりの命令です

 今回の戦での論功行賞を行うので至急、宮殿まで来るように、との事です」

-2ページ-

「論功行賞?」

私も一君も一瞬戸惑ったが、直ぐに思い至る

朝廷は今回の件を「董卓討伐」として治めたいのね

そうしないと諸侯が勝手に軍を動かし、都である洛陽にやって来た事に対して内外に説明がつかない

朝廷の権威を保ちたい為の言い訳造りね

「何にしても行かないと」

一君が無理に起きあがる

「体調不良と云う理由で私が代理として行くわ」

「いや、宮殿で行うという事は皇帝かその代理の人間が出て来るだろう

 それなのに俺が行かないと、難癖を付けられかねない」

確かにそうね 

結局、私が肩を貸して同行する事にした

 

謁見の間で片膝を付いて私達が待っていると皇帝と宦官らしき人物がやって来た

宦官らしき人物はどうでも良い

問題は皇帝 はっきり言って絶世の美女

整った顔立ちに慈愛を秘めた瞳、豪華な衣装を纏っているにも拘わらず起伏に富んだ事が分かる体型

女として負けた・・・って一君、鼻の下伸ばしたりしてたら承知しないわよ!

 

「今回の『董卓討伐』に関して、ご苦労であった

 其方達の働きで洛陽で専横を極めていた董卓を滅ぼす事ができ、陛下もお喜びである

 よって此処に論功行賞としてそれぞれに褒美を遣わす」

宦官の言葉で、諸侯への官位授与、太守・州牧任命などが行われる

その中で劉備は徐州の州牧に任命された 後で知ったがこれは陶謙が進言した為らしい

一君は官位が授与されたが、漢王朝の官位なんて興味が無いので何を貰ったか覚えていない

呉郡の太守ってだけで今は充分だしね そう思っていたら

「北郷鞘華を丹陽太守に任命する」

この宦官の言葉に場がざわめく 私としても冗談じゃない

「鎮まれ!

 北郷鞘華は水関に於いて充分な活躍をしたと聞き及んでおる

 ならば、将とは云え充分に報いるべきとの陛下のお考えである」

と宦官が言うが、どう考えてもおかしい

将の手柄は君主の物 それなのに何故?そう考えていたら

「お待ちください」

一君が声を上げる

「その命は受けられませぬ」

「何故じゃ!其方とて主ならば部下の出世を喜ぶべきであろう

 異を唱える必要が何処にある」

聞く耳を持たない様であるが、一君は一瞬考えた後少し私の顔を伺って

「北郷鞘華は私の妻で有ります

 夫として愛する妻と離れて暮らすのは望みません!」

「なっ・(うぐ)」

一君の言葉に声を上げそうになったが、それは一君の手で遮られた

宦官は驚いた表情を浮かべるが、そこへ

「それならば仕方無いでしょう

 北郷鞘華の太守任命は取り消しましょう」

皇帝が声を上げた

「しかし、陛下・・・」

「私の言葉に不満ですか?」

宦官と云うか朝廷側にも思惑が有ったのだろうが、皇帝の言葉には逆らえない様だ

でも朝廷と皇帝は一枚岩では無いのね 表向きはどうあれ、皇帝を傀儡にしているって所かな

「そうなると丹陽の太守には・・・」

「お許しいただけるなら、推挙したい人物がございます」

宦官に対して一君が意見を述べる

「言って見なさい」

皇帝がの許しが出たので

「孫堅文台殿です

 彼女の元には優秀な臣下も多く、本人も才気溢れる人物です

 太守に任命しても役者不足ではありません」

「成る程、では孫堅文台に丹陽太守を命じます」

これで論功行賞は終わり、解散となった

-3ページ-

洛陽の街を陣に向かっていると

「一兄〜」

巴ちゃんがやって来て一君に抱き付く

「大丈夫?

 一兄を傷つけた左慈の(精神的)殺し方は既に練ってるわ!」

物騒な事を大声で宣言しない!

 

「北郷さん〜」

やけに軽い声が掛けられた 振り向くと

「西涼の馬岱だよ よろしくね」

確か姉妹喧嘩を始めた娘よね

「以前は挨拶し損ねちゃったからね

 お姉様があんなだからって、西涼の女が皆あんな感じじゃないからね

 じゃ、まったね〜」

結局あの娘、何しに来たの?

 

「一刀さん!どういうつもりです?

 孫堅さんを太守に推挙するなんて!」

「それは私も聞きたいな」

七乃と孫堅がやって来た

「飼い馴らせない虎は野に放ち、狩るしか無いだろう」

一君の言葉は

『孫堅がいつまでも美羽の客将に甘んじている訳が無い

 ならば手元に置いて反乱を起こされる前に外に出した方が良い』

と云った意味と、孫堅への宣戦布告だった

「はっはっは

 やっぱり私の見込んだ通りの男だよ」

孫堅は納得したのか帰って行った

「無茶しますね〜

 責任取って下さいよ〜」

七乃はブツブツと文句を言っていた

「だから私とお嬢様を早く娶って下さいね?」

何言ってるの!

 

「北郷 ちょっといいかしら」

今度声を掛けて来たのは曹操だった

「あ、小百合ちゃん」

「その呼び方は辞めなさい!」

巴ちゃんの言葉に抗議した後

「何故、北郷鞘華の太守任命を断ったの?

 まさかあの場で言った事が全てじゃ無いでしょう」

「ならば曹操が俺の立場なら受けたのか?」

一君の返答に

「気付いていたのね

 まあ朝廷は『天の御遣い』の貴方達を二つに分けて弱体化させたかったのでしょうね

 少し経ったら鞘華を中央官僚に移動させてね その理由付けの為今回の任命をしたかったのでしょう

 『天の御遣い』なんて呼称は漢王朝にとっては不遜極まりない

 でも貴方達は呉郡での評判が高い だから二分して弱体化させたかった こんな所でしょう」

曹操の言葉に私も納得したが

「小百合ちゃん〜、何でもそんなに難しく考えてばかりいると老けるよ〜」

「あんたは私を莫迦にしないと気が済まないの!?」

「うん!」

また巴ちゃんの毒舌が炸裂した

「あんたね〜〜!まあ良いわ!

 それと鞘華 貴女が既に北郷一刀と結婚していたとは知らなかったけどそれは関係ないわ

 貴女が人妻でも私の者にしてみせる 覚えておきなさい」

「なに〜〜〜〜!

 どういう事?小百合ちゃん 詳しく話して!」

曹操に掴みかかって巴ちゃんが訊く

「こら!兎に角曹操様から手を離せ!」

夏侯淵が引き離そうとするが

「話さないなら離してやるもんか〜!」

結局、一君が引き離して曹操は戻って行った

 

「北郷さん」

今度は劉備が話しかけて来た 後ろで関羽が苦虫を噛み潰したような表情をしているのが気になるわね

「私達と同盟を組んでもらえませんか?

 北郷さんに言われた事を考えてみたんですが、確かに反論できませんでした

 私の理想は変わりません その為には私がもっと成長しなければなりません

 でも時には叱ってくれる人が必要なんです だから・・・」

「それに私達の領土は隣接しています

 だから助け合えば双方に益が有る筈です」

劉備の意見に同行していた諸葛亮が補足を入れる

一君の答えは

「断るよ 俺達はどの諸侯とも対等の同盟を結ぶつもりは無い

 仮にあったとしても、それは一時的な物だ

 ついでに言えば、家臣の意思統一をしてから来るべきだ

 後ろの関羽は納得して無いって顔に出てるよ」

一君の言葉に二人共言葉に詰まるが

「しかし、それなら北郷さんは全ての諸侯を敵に回すつもりですか?」

諸葛亮が食い下がって来る

「従うならそれで良し

 そうでなければ敵だ 君達も例外じゃない」

一君がそう言うと

「望むところだ!

 貴様とはいずれ戦う事になるだろう

 その時は私が討ち取ってくれる!」

関羽が一君に言い放った

 

そして建業への帰路・・・

(一君のあの時の言葉

 「夫(一君)として愛する妻(私)と〜」これはあの場での方便なのは分かってる

 でもそれだけなのかな 一君の本心だったら・・・)

と考えていたら

「鞘姉、なに顔赤くして『恋する乙女』表情してるの?」

巴ちゃんの言葉で我に返る

「何でもないわよ」

「もしかして、一兄と何かあってそれを思い出してるんじゃない?

 白状しなさい 何が有った〜!」

「何もないわよ〜!」

「嘘つけ〜!

 私は鞘姉をそんな娘に育てた覚えは無いわよ〜!」

「ある訳無いでしょ!私の方が年上なんだから!」

巴ちゃんに追いかけられてしまった

-4ページ-

 

〜あとがき〜

 

反董卓連合はこれで終結です

 

孫家とは激突必死です

だから一刀も内憂(孫家)外患(諸侯)を避けるために美羽の元から孫家を出させました

 

華琳に対しての巴は相変わらずです

華琳が鞘華に自分の者にすると宣言しました

干吉、華琳と目を付けられると面倒な者達に鞘華は狙われますね

 

桃香との同盟拒否

これで桃香との戦闘も不可避です

愛紗が好戦的過ぎると思われるかもしれませんが、原作でも蜀ルート以外では好戦的でした

おまけに窘める星も居ませんし・・・

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
反董卓連合終結
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
3965 3336 24
コメント
nao様>仰る通りですね。しかも、それを咎める人が居ませんから。(ZSAN)
愛紗はな〜一刀おらんとただの狂信者だからなw(nao)
JackTiam様>桃香が甘えが有るとはいえ、成長しているのに、一の家臣が盲信故にその成長についていけて無いんです。(ZSAN)
よく見たら、叱ってくれる人が必要と言っているが、仮に同盟結んでそんな関係になっても、周りが色々口出して結局は同盟崩壊になるんじゃないのかな。一の家臣が主君のある意味最大の障害になってるってどういうことだよ。(Jack Tlam)
未奈兎様>華琳にとってはある意味天敵ですね。今まで巴の様に接して来た人物はいなかったでしょうから。(ZSAN)
mokiti1976-2010様>本心と云うより軍師に説き伏せられた面もあるでしょうね。で愛紗はそれに納得してないと。鞘華を娶ったら巴は騒ぐでしょうが直ぐに「一夫多妻の世界だから、第二夫人は私が」と言いそうですね。(ZSAN)
アストラナガンXD様>どこまで本気かはどうでしょう。命の恩人なら真名を預けても問題無いと思います。(ZSAN)
Jack Tlam様>華琳は人の恋路なんて考えませんからね。桃香に関しては軍師の入れ知恵も有るでしょう。愛紗は論理的判断より感情が前に出てますから。(ZSAN)
しかし巴ちゃんフリーダム過ぎるw彼女はある意味華琳にとって張昭になれそうw(未奈兎)
関羽があれじゃ劉備とて本心から望んだ事なのか甚だ疑問ですね。そして、鞘華は色々な方々に目をつけられましたね…これは何か起きる前に本当に一刀が娶るしか無いな。そうなった場合、巴がどう思うかがちょっと気になりますが。(mokiti1976-2010)
一刀の「私の妻〜」のくだり、どこまで本気なんだか。 命の恩人とは言え感謝で真名を預けるのは如何なものか?と思います。(アストラナガンXD)
おっと危ない、あの玉無し共まだ生きてたのか。華琳、人の恋路を邪魔するような奴の覇道なんて成功しないよ。桃香は冷静になったのかもしれませんが、軍師の入れ知恵かもね……それで関羽は納得しないと。家臣の意思統一も出来ない桃香もアレだが、その君主を積極的に危険に晒しに行く彼女が果たして「一の家臣」なんて名乗れるんでしょうかね。(Jack Tlam)
タグ
真・恋姫無双 北郷一刀 北郷鞘華 炎蓮 桃香 華琳 蒲公英 

ZSANさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com