仮面ライダー剣×ゴッドイーター ?掴み取る運命? 第9話
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十真は今日のミッションの受注を済ませると、愛車『ブルースペイダー』が待つ出撃ゲートへと向かった。

 

ゲートではリンドウと、新人アリサが待っていた。

 

アリサの横には真新しい真紅のバイクがあった。ライダーシステム第1号の専用マシン『レッドランバス』だ。十真のブルースペイダーと似たモトクロスタイプの車体で、フロント部が嘴のように伸びているのが特徴的だ。

 

今回のミッションは、十真、アリサ、リンドウの3名で行われる。

 

十真とアリサの実戦訓練も兼ねているが、それだけではない。

 

十真とアリサは、世界的にも数少ない新型ラウザーシステムの適合者であり、それが一つの支部に2人も揃うのは更に稀と言われている。

 

しかし、将来的には新型ラウザーシステムの普及は期待されており、フェンリル本部としてはより多くの戦闘データを必要としている。

 

そんな中、新型を2人も有している極東支部では新型同士の連携についての戦闘データが求められており、今回のミッションはその一環である。

 

 

 

 

十真

「なんか緊張するな…」

 

リンドウ

「まぁ、そんなに気にするな。いい結果を残す必要はないし、仮にお前らが悪かったからといって新型の開発が大きく動くわけでもない。所詮データだからな」

 

アリサ

「…しかし、アラガミとの戦闘においてデータは必須です。それを楽観視するのはどうかと」

 

 

 

 

アリサの少々冷たい言葉を受け、リンドウは軽く苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

リンドウ

「悪ぃ悪ぃ。データはどうでもいいとか思ってるわけじゃねぇんだ。リラックスしようや、ってことだ。誤解するような言い方で悪かったな」

 

 

 

 

…軽いスキンシップ。リンドウはアリサの肩に片手をポンと置いた。

 

 

 

 

アリサ

「っ…!」

 

 

 

 

アリサは一瞬、体をビクつかせると、短く悲鳴を挙げ、リンドウの手を振り払って大きく後ろに下がった。

 

 

 

 

リンドウ

「…おーおー、随分と嫌われちまったもんだ」

 

アリサ

「あ、あの、すいません、何でもありません…大丈夫です…」

 

 

 

 

しかしアリサはいかにも体を震わせ、怯えるように頭を抱え込んでしまった。

 

必死に平静を保とうとするほど、呼吸が荒くなっていく。

 

 

 

 

 

リンドウ

「…………」

 

 

 

 

リンドウは何も言わず、黙って出撃ゲートのハッチの開閉レバーを倒した。

 

ゴウン、ゴウン、と音を立ててハッチは開き、十真とアリサがそれぞれのマシンに跨がろうとした時、リンドウはアリサのレッドランバスに手を置いた。

 

 

 

 

リンドウ

「アリサ。混乱しちまった時はな、空を見るんだ」

 

アリサ

「…?」

 

 

 

 

リンドウはハッチから見える青い空を示すと、優しい口調で続けた。

 

 

 

 

リンドウ

「そんで、動物に似た雲を探すんだ。それまで出撃はするな」

 

アリサ

「な、何で私がそんなこと…」

 

 

 

 

不可解なことを言われ、若干アリサも通常通りになったと思われたが、リンドウは譲らなかった。

 

 

 

 

リンドウ

「いいから。これは命令だ。それを見つけるまでは、ここから一歩も動くな。いいな?」

 

アリサ

「…わかりましたよ」

 

 

 

 

いかにも嫌そうな顔をして、アリサはハッチから空を見上げた。

 

 

 

 

リンドウ

「行くぞ、十真」

 

十真

「あ、はい」

 

 

 

2人はマシンのエンジンをかけると、勢い良く飛び出していった。

 

 

 

 

アリサ

「……………」

 

 

 

 

そんな2人をチラと横目で見て、アリサは再び空を見上げた。

 

 

 

 

 

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サカキ

「ヨハン。久々の我が家はどうだい?」

 

 

 

大量の書類を抱えたサカキは、それらを支部長用のデスクに置いた。

 

 

 

 

ヨハネス

「…我が家というものが気持ち良くくつろげる場所だったのは…いつの時代の話だったかな?」

 

サカキ

「さぁね。そんな考えは、とうに忘れてしまったさ」

 

ヨハネス

「斬峰君…だったかな。ブレイドとして、なかなかいい働きをしているそうじゃないか」

 

サカキ

「あぁ。これを見てくれ」

 

 

 

サカキは書類の中に埋もれた分厚いファイルを開き、その中にある十真の戦闘データを見せた。

 

 

 

 

ヨハネス

「凄まじいな…新人ながらここまでの活躍か」

 

サカキ

「ベテランのリンドウ君やサクヤ君達とも、いい連携を取っている。これはカテゴリーAの力だけじゃなく、彼自身にも素質があるのかもしれないね」

 

ヨハネス

「本部にも良い報告ができる。今後とも、頼りにさせてもらおう」

 

サカキ

「しかし、彼も1人のゴッドイーターであり、人間だ。新型だからと言って、あまり特別視するのはお互いに気をつけよう」

 

ヨハネス

「わかっているさ」

 

サカキ

「では、私は研究の方があるのでね。この辺で失礼するよ」

 

 

 

 

サカキは書類を再び抱え込むと、意外にも軽い足取りで支部長室を後にした。

 

 

 

 

サカキ

「…さてと…どちらが先に、切り札を手に入れるか…」

 

 

 

 

 

 

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…暖かい場所だった。

 

自分と、知らない誰かの鼓動が、バンドのように音を奏で合っている。心地よい音楽だった。

 

しかし、その外から、冷たい音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

『あの子、頭を8針も縫うケガだったのよ。なのに1日で…人間じゃないわ』

 

 

 

 

 

 

『またあいつと組んだ奴が死んだか。これで何人目だ?』

 

 

 

 

 

 

『なんか、アイツと任務に行くとやたらアラガミが多いんだよ。絶対厄病神かなんかだよ、アイツ』

 

 

 

 

 

『アイツはアラガミだよ。人間の皮を被ったアラガミだ』

 

 

 

 

 

 

『アイツとは関わんねぇ方がいいな。あんな死神と一緒にいたら、いつ殺されるかわかったもんじゃねぇ』

 

 

 

 

 

 

聞きたくなかった。ずっとこの場所に居たかった。

 

でも、棘のように鋭い言葉が、その空間を引き裂いて、自分を外の世界に引きずり出した。

 

陽の光が視界を覆う。眩しすぎて、目が開けられなかった。

 

きっと今も、自分の両眼は閉じたままなのだろう…

 

 

 

 

 

 

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贖罪の街。標的のアラガミを索敵中に、リンドウが話しかけてきた。

 

 

 

 

 

リンドウ

「姉上から聞かされたんだが…確かにアリサの戦闘能力は一級品らしい。しかし、精神面に問題があってな…」

 

十真

「トラウマ…とか?」

 

リンドウ

「その通りだ。よくは知らねぇが、結構ヤバイらしい」

 

 

 

 

十真は、先ほどリンドウに肩を叩かれた時のアリサを思い出した。

 

その時の反応から、何が彼女を怯えさせているのかはわからなかったが、少なくともその何気ない行為にすら怯える何かを抱えているに違いない。

 

 

 

 

リンドウ

「同じ新型のよしみだ。お前が支えてやってくれ、な?」

 

 

 

 

リンドウは、アリサの時と同じように十真の肩に右手を置いた。

 

別になんら恐れることはない。不快に感じることなど微塵もないし、むしろリンドウの澄んだ眼差しは、普段の体たらくとは違って頼もしささえ感じさせる。

 

やはり、アリサは何かを抱えているのだろう。

 

 

 

 

十真

「わかりました」

 

 

 

十真ははっきりと、リンドウの目を見て答えた。

 

ゴッドイーターであっても、1人の人間。十真にとって、護るべき命の一つなのだ。断る理由など無い。

 

 

 

 

リンドウ

「ん…」

 

十真

「っ…!」

 

 

 

 

2人はほぼ同時に、同じ方角を見つめた。

 

アラガミの気配だ。まだ姿は見えないが、恐らくビルの陰に隠れている。

 

十真もいくつか実戦を重ねるうちに、その空気の変化を感じ取るようになった。

 

微かな足音、風の動き。そして心なしか、腰の携行ポーチに収められたカテゴリーAのカードが武者震いを起こしているように感じる。

 

十真はブレイバックルを、リンドウはラウズバックルを手に取り、装着した。

 

変身! 心の中で自分を鼓舞すると、十真はリンドウと同時に走り出した。

 

 

 

 

[TURN UP]

 

[SPADE KING]

 

 

 

 

アラガミ…『シユウ』は振り向くと同時に2本の醒剣に斬り裂かれた。

 

 

 

 

リンドウ

「シユウにしては硬ぇな。こいつは手こずるぞ」

 

 

 

 

リンドウがぼやいていると、鳥人型のアラガミ『シユウ』は、その大きな翼でリンドウに襲いかかる。

 

難なくステップで避けると、逆にその的の大きい翼に剣戟を放つ。

 

しかしシユウの翼は比較的丈夫な部位であり、優先して狙うべき箇所ではない。鳥人型だからと言って、飛行能力を奪う必要はない。それはリンドウも承知している。

 

シユウの最大の武器は翼による飛行ではなく、その先端に生えた巨大な拳だからだ。

 

拳の中心は窪んでおり、そこから超高温の熱気や火球を放つことができる。

 

シユウは華奢な体格だが、この能力は侮れず、また俊敏性に優れているため苦手とするゴッドイーターも少なくない。

 

しかし、逆にその両拳は弱点でもある。そこが狙い目だ。

 

 

 

 

十真

「あの拳を壊すか…」

 

 

 

 

[SLASH]

 

 

 

 

リンドウ

「いい判断だ」

 

 

 

 

[THUNDER]

 

 

 

 

リンドウのラウザーから放たれた雷光がシユウを足止めし、その隙にブレイドがシユウの右拳を何度も斬り裂く。

 

ブレイラウザーの斬れ味は鋭く、見事破壊に成功した。

 

しかし、左拳がまだ生きている。

 

シユウは左拳に熱気を溜めると、ブレイドに向かって振り下ろした。

 

間一髪のところで回避すると、リンドウが再び隙のできたシユウの左拳を斬り裂く。

 

既にスラッシュのカードをラウズしており、かなりのダメージを与えた。

 

 

 

 

十真

「あとは…ゴリ押しだ!」

 

 

 

 

シユウの両手は半分機能しなくなり、まともな火炎攻撃は放てなくなった。今が好機だ。

 

しかし、リンドウの直感通りこのシユウはなかなかにタフで、弱った様子を見せない。

 

長期戦を覚悟した十真は、手にしかけたラウズカードを使わず、ブレイラウザーのみで反撃に移った。

 

するとその時、軽快なバイクの走行音が聞こえ、真っ直ぐ十真達の元へと向かっているのが確認できた。

 

アリサのレッドランバスだ。

 

 

 

 

リンドウ

「ちゃんと見つけたか?」

 

アリサ

「…はい」

 

 

 

 

アリサは不機嫌そうに答えると、バックルとカードを手にした。

 

十真のブレイバックルと同型の『ギャレンバックル』に、ダイヤのカテゴリーAを装填する。

 

 

 

 

アリサ

「…変身」

 

 

 

 

[TURN UP]

 

 

 

 

レッドランバスに跨ったまま、バックルのサイドハンドルを引っ張る。

 

ギャレンバックルから翠色のオリハルコンエレメントが飛び出し、アリサはレッドランバスのアクセルを全開にして揺らめく障壁を突き破った。

 

弾丸のような速度でシユウに体当たりをしかけ、ターンを決めてバイクを降りる。

 

そこに立っていたのは、真紅のライダー。ライダーシステム第1号…

 

 

 

 

 

十真

「ギャレン…」

 

アリサ

「……………」

 

 

 

 

ギャレンは素早く腰のホルスターに納められた銃型ラウザー『ギャレンラウザー』を引き抜き、シユウに照準を合わせる。

 

ギャレンに飛びつかんとするシユウ。ギャレンラウザーが、火を噴いた。

 

 

 

 

 

 

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作者より…

 

 

 

 

 

いつもご愛読ありがとうございます。

 

作者のD.C.D.です。

 

みなさんご存知かと思いますが、先日、ホースオルフェノク/木場 勇治役の『泉政行』さんが亡くなられました。

 

療養中であるという話は以前から聞いていましたが、突然の知らせに驚きと悲しみが止まりません。

 

『仮面ライダー555』放送当時、私はまだ小さかったため、本編の内容などは全く覚えていませんでした。

 

しかし改めて555を観直した時、木場勇治の存在を主人公の乾巧以上にハッキリと覚えていたことに気がつきました。

 

怪人か人間か。その葛藤の中で生きる木場勇治を、泉政行さんが全力で演じきったからだと思います。

 

仮面ライダーには、こうして私達の記憶に強く残る、素晴らしい俳優が数え切れないほど出演しています。

 

その歴史に泥を塗ることがないよう、1人のライダーファンとして、読者の皆様を楽しませることのできる作品作りに尽力させていただきます。

 

私の作品を通して、皆様の悲しみが少しでも和らいでくれれば何よりです。

 

 

 

 

 

 

 

泉政行さん。私達に感動をありがとうございました。

 

ご冥福をお祈りします。

 

説明
ギャレン 登場です。
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コメント
睦月さん> コメントありがとうございます。 素晴らしい俳優さんだったので、尚更ですね。(D.C.D.)
仮面ライダーファンとしては、とても悲しいニュースでしたね…(睦月)
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