「EACH SECRET」 |
◆CONTENT◆
ルフィの秘密
ゾロの秘密
ナミの秘密
ウソップの秘密
ウソップの秘密 〜その後〜
サンジの秘密
チョッパーの秘密
ロビンの秘密
ナミの秘密
ある日のゴーイングメリー号。
航海の途中にたどり着いた島で、一行は隠し財宝の噂を聞きつけた。新たなる冒険に好奇心満点のルフィ。当然のように目がベリーになっているナミ。
「今度はどんな冒険だろう?」
期待に胸を弾ませるチョッパー。恒例の『島に上陸してはいけない病』が発症したウソップ。
「どこまでもお供します、ナミさん」
ハートを振りまくサンジ。大きなあくびをして睡魔に負けてしまうゾロ。そんな彼らを微笑ましく見つめるロビン。よくある光景が広がっていた。
「やっぱり冒険に突き進むナミさんは素敵だ」
ナミの目には財宝しか見えていない。目的達成への突進ぶりに、サンジはうっとり見とれる。
「『冒険に』じゃなくて『お宝に』の間違いだろ」
そこは違うだろうと、ウソップはツッコミを入れた。
「わかってないな、なにかに一心不乱な女性の美しさを」
「財宝以外、なにも見えてねェだけだろ」
呆れながらも再度突っ込むが、まったくの無駄だった。ラブハリケーン中の男には、余計な雑音は聞こえない。
「ウソップ。なぜ、ナミさんがあんなに輝いているかわかるか?」
恋に盲目となっているサンジには、ナミがそう見えるらしい。
「…って言うか、輝いてるのは財宝にくらんだ『目』だけだろ」
冷静な観点から指摘するが、馬の耳に念仏だ。
「どうしてナミさんがあれほど魅力的なのか知っているか?」
「いいや…って言うか、そんなこと訊いてねェし」
「それはな」
「人の話を聞けよ、おい」
ウソップの言葉をまるで聞かず、思いのままにサンジは語る。
「ああ、ナミさん。貴女はどんな宝石よりも輝いている。おれは貴女のすべてに魅入られて、身も心も貴女の虜さ」
陶酔して踊る様子に、さすがのウソップもツッコミ役を放棄した。
「…重傷だな、こりゃ」
だれも止めてくれないまま、サンジはあらゆる形容詞でナミを賛美する。
「あ、チョッパー。いいところに」
そこへチョッパーが通りかかった。
「なんだ? ウソップ」
「あいつの病気をなんとかしてくれ」
肩をすくめながらサンジを指し示す。
「サンジが? 何の病気なんだ?」
怪訝そうな眼差しのチョッパーに、ウソップは呆れ顔で答えた。
「あれは…『恋の病』だ」
ロビンの秘密
ある日のゴーイングメリー号。
のどかな天候の中、船は次の島へ向かって進んでいる。それぞれ気の向くままに過ごす時間、甲板には四人の姿があった。
あちこち駆け回りながら遊んでいるルフィとチョッパー。そんな二人に再三文句を言っているのが、今日は屋外で作業するウソップだ。
「お前ら、ウソップ工場のそばで暴れるなよ。部品がどっかいっちまうだろ」
抗議するものの、相手が聞き入れてくれるはずもなく。仕方なく、船長と船医の騒がしい足音の中で工具を扱っている。
そこへやってきたのは、後部甲板で日課のトレーニングに勤しんでいたゾロ。本日のメニューを終えた彼は、やってくるなりおもむろに寝転がった。どんな場所や状況であろうと、眠気が催すと寝る男だ。ルフィやチョッパーがいかに暴れていようと、睡眠の妨げにはならない。
しかし、今日は意外なことが起こった。あくびをして今にも眠りに就こうとしたとき、とある発明品がゾロの眼中に入り、湧いてきた好奇心が睡魔を遠ざける。
「なんだ、それ」
顎で指したのは、ウソップが手にしていた三本目の腕。肘から指先までをかたどった、作り物の腕だった。実物に触れてみれば偽物だと分かるが、一見しただけでは本物と見間違う出来映えだ。
「これか? これはな――――」
ウソップは鼻を高くして、その発明品の概要を語りだす。要約すると、ロケットパンチにジャンケン機能を付属した画期的な発明らしい。
自分の発明品に誇りを持っているウソップは自信満々に豪語するが、ゾロにはそこまでのものとは思えなかった。
「つまりは、ロビンの『手』みたいなモンだろ?」
あっさりと言い放ち、揚々と説明していたウソップを絶句させる。
「いや、あの女の『手』のほうが便利か? 自在に操れるし、数だって」
まったく悪気はないのだが、ゾロの的確な言葉は発明家の胸に刺さっていた。
「た、たしかにそうかもしれねェが…コイツにだって利点が。そりゃあ、機能や数では叶わないかもしれないけど………」
ウソップは肩を落としていたが、ふと「…数?」と呟いて、なにか思いついたように考え込む。
「なあ、ゾロ」
「なんだ?」
真面目な口調で問いかけると、ゾロは怪訝顔でそちらを見た。
「ロビンの『手』って、何本まで増やせるんだ…?」
「あァ?」
なにを訊かれるかと思いきや、自分が知るはずもない質問。それを受けて、呆れるよりも早く答えを返していた。
「そんなの、おれが知るはずないだろうが」
「少なくとも二十本、三十本? もっとか? 五十本、百本はいくかもな」
ゾロの無関心な返答も気にせず、ウソップは想像を広げていく。
「待てよ。下手したら千本、万本単位まで増やせるんじゃ…?」
「だから、あの女の『手』がどれだけ増やせるとして、それがなんだって言うんだよ」
こちらをほったらかしで熟考するウソップに、ゾロは口を挟んだ。
「わかってないな、ゾロ君。ロビン君の『手』を増やせる能力があれば、新しい発明が、可能性が生まれるのだよ」
学者口調の狙撃手の話に、不可解な表情を崩さない剣士。
「たとえば――――」
自らの発想をさすがだと思いながら、ウソップは真剣に案を披露する。ロビンの能力を活用した荒唐無稽なアイディア、活用方法。その思いつきは面白いと思うが、結果としては実用的でない。そして大半が、バカバカしい用途を目的としていた。こんな話まともには聞いていられないと、途中から眠りに入るゾロ。熱弁をふるうウソップはそれに気づかず、延々と話を続ける。
「まだわからねェのか、この発明の偉大さが。じゃあ、これならどうだ? ロビンの『手』を千本ルフィに付けて、『ゴムゴムの千手観音バズーカ』!」
調子よく浮かれていたウソップは、自分の発明を上機嫌で自画自賛するが、ある人物が船室から出てきたことに気づかなかった。気配に敏感なゾロも熟睡状態だったため、その存在を見過ごし、遊びに夢中だったルフィとチョッパーも当然察知できず。彼らが異変を知ったのは、床から生えてきた大量の『手』に身体を拘束されてからだった。
「うわっ! た、助けてくれ!」
「…あ? もう朝か?」
「船が手に化けた!」
「なんだ、これ? 面白れェ」
怯える者、気に留めない者、楽しむ者。突然の出来事にリアクションはさまざまだ。メリー号の甲板は、限りなく生えてきた『手』で埋め尽くされていた。
「百花繚乱(シエンフルール)」
涼しい声に向き直ると、ロビンが笑いながら彼らを見上げる。
「ロ、ロビン…!」
「まだ朝じゃねェのか。んじゃ、おれは寝るぞ」
「お…おれはこんなの、怖くなんてないぞ」
「いいぞ、ロビン。もっとやれ」
物怖じしない船長と剣士はまるで動じないが、狙撃手と船医は怖がるばかり。
「楽しそうね。こういう能力の使い方はどうかしら? 長鼻君」
笑顔で告げるロビンを見て、ウソップの背筋は凍りつく。そしてもう二度と、ロビンの能力で新たな発明を考案することはなかった。
その日、グランドラインでは手の生えた船が目撃され、グランドラインの七不思議のひとつとして後々にまで語り継がれることになる。
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麦わらの一味、それぞれの秘密。コミカル作品。 ダウンロード版同人誌のサンプル(単一作品・全文)です。 B6判 / 028P / \100 http://www.dlsite.com/girls/work/=/product_id/RJ159358.html |
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